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【中村天風】山のような仕事に立ち向かうには『心を磨く』中村天風講演録

同書からの抜粋となります。

第三章 「正しい心の使い方」ができる人・できない人


山のような仕事に立ち向かうには

 昔の話ですが、
徳川三代将軍家光のお指南番として有名な初代の柳生但馬守。
まだあれだけの使い手にならないときに、あるとき、
禅の坊さんで有名な沢庵禅師に、こういうことを聞いた。
「一本の刃(やいば)が目の前に現れたときは、
どうやら日頃会得しました剣の道であしらうことができます。
なれど、
三本、四本、五本と数多くの剣が目の前へ一時に出てきますと、
いかにともあしらいかねるような気持ちになります。
一体かような場合に、いかなる心構えが必要でございましょうや」
昔の禅の坊さんは、
剣の道に対しても、心のほうができていただけに、
よほどそこに剣一本で命を生かしていた武士なども、
悟れないことを悟っていたらしい。
 よく、昔の兵法の本の中には、
禅の坊さんの教えで目が覚めたということが書いてありますが、
今の禅の坊さんはどうか、
私はあまりおつきあいがないから知りませんが。
 その質問を受けたときに沢庵禅師が、
「いとたやすいそれはお訊ねじゃ。
 一本も数本も同じこと。
 一本、一本あしらいなされ」
 と、こう言ったっていうんだ。
 これは俗人の問答じゃわかりますまいか。
 なれど、剣一本、
それが命の、ただ一つのもの
ということで毎日を生きていた剣道家には、
この言葉が一遍でわかったらしい。
 つまり、沢庵禅師の言った言葉は、
一本出たって、五本出たって、
あしらうのは一本一本だから、
一本をあしらっているときと同じように、
一本一本をはっきりあしらえばいいじゃないかと、
こういう言葉なんです。ね。
 だから、
どんな山のような仕事ができちゃったって、
一時にそれをしようとするから、
まごついちまうんだろう。
 やっぱり片っ端から、
パキパキ片付けていくよりかは、
手はないんだもの。
 その心得がありゃ、
どんな場合にも、急ぎもあわてもしないで、
そして傍から見たらば、
よくまああれだけの忙しい仕事をやってるなと思うような、
用の多い仕事をするときでも、
どうにもしょうがない、なんていうことは、
決してそういう人間は心の中に感じませんわね。




こちらの内容は、

『心を磨く』

中村天風講演録

発行所 株式会社PHP研究所
著者 中村天風
2018年11月14日 第1版第1刷発行

を引用させて頂いています。



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