コンスタンティノープルの陥落と歴史小説を読む方法とか。

塩野七生先生のコンスタンティノープルの陥落で泣いた。

まあ、実際には泣かないんだけど。
でも、まあ、心は涙だった。

なにせローマの終わりなのだ。
紀元前からずっと続くローマ帝国の終わりこそが、コンスタンティノープルの陥落で、何とも涙なのだ。

塩野七生先生のローマ人の物語から読んでいるとさらに涙できる。

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さて、今回は理系の僕が歴史小説を読む方法と、なぜ歴史小説が楽しいと思うかを書いてみる。
あんまりまとまりなく、覚書のようなものだけど。

結論から言うと、先に答えをカンニングするということだ。

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僕は理系の出身で、世界史は取っていないのでよく分からない。歴史というのは何とも苦手なのだ。
文系科目はさっぱり出来なくて、数学だけバリバリできる純粋理系なので、世界史はそもそもまともに取っていないし、なぜか日本史を選択したが、やはり歴史というのは僕の脳みそには入ってこないらしくテストもダメダメで、大学入試では最後に現代社会に逃げた。そして、現代社会もダメだった。
つまり、歴史ってのは本当に苦手なのだ。

そんな僕だが、歴史小説は読む。

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歴史がダメな僕が使うのが、ポッドキャストのコテンラジオだ。
COTEN RADIO | 歴史を面白く学ぶコテンラジオ | 株式会社COTEN

アップルのポッドキャスト以外にもYouTubeなんかでも聞けるらしい。

歴史をおもしろおかしくトークしてくれる番組だ。
これさえ使えば、歴史小説が結構読める。

特に今回のコンスタンティノープルの陥落については、活用させて頂いた。

オスマン帝国についてのシリーズがあるのだが、ここが分かると、よく分かる。

https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%82%92%E9%9D%A2%E7%99%BD%E3%81%8F%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%82%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA-coten-radio/id1450522865?i=1000487609369

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歴史小説を楽しむには、ある程度前提知識がないと楽しみにくい。
歴史小説は決して歴史書でもないし、教科書でもないから、全く前提知識がなくても読めるのは読める。

ただ、現実問題としてオスマントルコのスルタンが、ビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを攻めると言われてもよく分からない。
特にオスマントルコなんてのは、僕ら日本人には本当に馴染みがない。
アメリカとヨーロッパ、それから中国くらいは何となく歴史が分からんでもない人でも、オスマントルコって言われると分からないって人も多いだろう。

坂本龍馬の小説なんかは、日本人なら結構楽しめる人が多い。それこそ司馬遼太郎の「竜馬がゆく」なんかは割と誰でもさくっと読める。まあ、長いけれど。

日本人なら何となくは幕末と坂本龍馬については知っている。
登場人物についても、日本人の名前だから覚えられる。
カリル・パシャとかザガノス・パシャとか言われても名前が覚えられない。
ローマとかでもそうだけど、何たら何世とか同じ名前も多い。
その点、日本の幕末なんかはとっつきやすい。

もちろん、司馬遼太郎が上手いからということもある。
特に司馬遼太郎の読者というとビジネスマンが多い気がする。歴史から学べるビジネスの心得みたいなものがあるからだろう。
本を読む目的、モチベーションみたいなものが作りやすい。
別に司馬遼太郎自身はそんなことを狙って書いているわけでもなかろうが。

司馬遼太郎の上手さなんかを抜きにしても、幕末物は前提知識みたいなものが誰でもある程度分かるので読める。

逆を言えば、オスマントルコだって、ある程度の事前知識があれば読めるのだ。

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そんなわけで、コンスタンティノープルの陥落についても、ある程度事前知識があると読みやすい。

コテンラジオをサクッと聞けば、歴史小説を楽しく読める程度の知識は手に入るというわけだ。

ビザンツ帝国=東ローマ帝国で、ローマ帝国が東西に分裂して、西ローマは早々に滅びて、東ローマはローマでキリスト教なんだけど、西の本家ローマ教会の方とは違うギリシア正教なので西のヨーロッパ勢からもいまいち助けてもらえない。
ローマ帝国の流れを引いているけど、弱い。コンスタンティノープル、今のイスタンブールの立地から、西と東の交易の要所だったので、そういう意味では良いけど。
オスマン帝国はイスラム教。やたら強い。
イエニチェリ軍団が強い。イエニチェリ軍団は、戦争で買った国の子どもを育てて作るスルタン(オスマン帝国の君主)直属の部隊。スルタンの夜の相手もする。(スルタンの少年愛はオスマン帝国ではそういうものだったらしい)

この辺りのザックリした話が、おもしろおかしく話してくれるコテンラジオは実にありがたい。

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時代背景や予備知識を仕入れるならコテンラジオでも良いけれど、面白いマンガがあればそっちを読んでから小説を読むのも良い。
なにせ、歴史小説っていうのは、登場人物が多いので、マンガで絵付きでキャラを覚えると楽なのだ。

竜馬がゆくならマンガ「おーい!竜馬」なんかで良いだろう。まあ、坂本龍馬は、みんな知ってるし、マンガを読まなくても良い気はするけど。

三国志ならマンガ「蒼天航路」が面白い。
普通の有名な三国志のマンガでも良いのだが、「蒼天航路」は悪役に書かれがちな曹操孟徳の魅力が分かるし、劉備のへっぽこさ、わらじ売りスタートで、別にすごい能力もないのに皇帝に成り上がる感じなんかも分かる。まあ、劉備は人望だけでわらじ売りから皇帝にまでなるからこそすごいんだけど。
何よりも蒼天航路は絵の勢いがすごい。やみつきになる。

そういう意味では三国志はとっつきやすい。
マンガやゲームなんかでもたくさん出ている。

三国志じゃないけど、最近流行りのキングダムを読めば、始皇帝がらみの小説を楽しく読める。

とにかく、とっつきやすいものからカンニングして読んでいくと歴史物は苦労の部分をすっ飛ばして、楽しく読める。

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「でもさ、そんなカンニングしてまで歴史物を読んで何か意味があるの?」
「別にビジネスマンでもないし、ビジネスの心得みたいなものはいらないよ」
と思う人もいるかもしれない。

なぜ歴史小説は楽しいのか。

まず、でたらめじゃないからだろう。ドキュメンタリーやノンフィクション的なおもしろさがある。
とはいえ、三国志なんかは随分と話が脚色されている部分はあるだろうけど。
コンスタンティノープルの陥落やローマ人の物語については脚色はない。もちろん、筆者の味付けはある。

三国志は間違いなくモリモリに盛られている。
それでも、全くのでたらめってことはない。
いや、結構でたらめレベルで盛られているところはあるだろうけど。
それでも、戦国時代で世が荒れて、出身が貴族でも何でもない英雄たちが天下を争った時代があったことは間違いない。

(すべてが事実ではないかもしれないが、そこに反映されているのは、人々の理想の英雄のイメージであり、言うなれば、求める美徳ともいえる。人間とはこうありたいというのが反映されている。
もちろん、本当にそういう人もいたのかもしれないけれど。ただ、どう考えたって、青竜刀なんかの重たいものをぶんまわすのは人間には出来ないし、刃物なんて人間を何人も真っ二つに切ることはできない。どんなに達人と言ったって、何十人もに囲まれて全員やっつけるなんて無理がある。やっぱり話を盛っているところはあるだろう。
そもそも、中国の歴史物というのは、勝った側が都合良く書き残すようなところが強い気もする)

とはいえ、やはり歴史の事実をベースに作られている。

事実は小説より奇なりとも言うようにドキュメンタリーはある意味で作り話よりも物語として面白いことがある。

作り話はどうしても作者の意図によって物語の方向性が決まる。
プロの文章家は売れないと食っていけないし、面白いものを書くからプロでもある。どうしたって面白い方向に話が進む。話が閉じるようになっている。
面白ければ良いような気もするけれど、どうしても人為的なストーリーになる。そりゃ、人間が意図的に作っているから。
アマチュアの文章家にしても、やっぱり話の方向性はある。方向性がないと話は完結しないので、そもそも作品を世に出せない。

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歴史物のもう一つの強さは、圧倒的に作りこまれた世界設定だ。
物語を語るときには、必ず世界設定が大事になる。
ジブリなんかが強いのは、世界設定、世界感が緻密に作りこまれているところだろう。

逆に現代の小説がいまいち弱いのは、現代という世界だ。確かに作りこまれている、実在している正にこの世界なんだけど、どうも物語の世界としては弱い。リアリティはあるけれど、面白みにかける。上手く切り取ったり、キャラクターで面白さを作っていかないといけない。

面白いSF作品なんかは、世界設定が上手い。
へぼい話は世界が弱い。

この点、歴史物というのは、世界を作らなくても実在した世界だから当然リアリティーはある。その上、現代とは違う異世界だから、面白い。2000年以上前のローマにはすでに道路はもちろん水道があった。これってすごい。どうなってるんだ、と思う。
でたらめの妄想の世界ではなく、実在した世界で、そういうすごい世界があり、その中で話が展開されていく面白さがある。な

さらに、その延長に今の世界がつながってくる

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事実をベースにしている、そういう意味では、歴史小説じゃなくてドキュメンタリーでも良いとも言えるし、ドキュメンタリーもある意味では歴史物とも言えなくもない。

個人的に楽しかったノンフィクションとしては。
「フェルマーの最終定理」サイモン・シン
「異端の統計学 ベイズ」
「キャパの十字架」 沢木耕太郎
「血とシャンパン」 ロバートキャパのドキュメンタリー
何だか数学とロバートキャパに偏っているけど、パッとその辺りが思い付いた。
他にもたくさんある気はするけど、思い出せない。

伝説の戦場カメラマンロバートキャパについては、一人の人間の一生だけど、それでも、ロバートキャパを追うということは、世界大戦を追うような側面もあるから、ある意味では歴史物と言える。
キャパの写真なんかを少し知っている方が、つまり事前知識が少しある方が楽しい。特に沢木耕太郎の方は、キャパのファンである程おもしろい。

フェルマーの最終定理は、フェルマーの最終定理を通して数学の歴史を紹介するような本なので、まさに歴史物と言える。

ベイズの法則についても、ベイズ統計の歴史を描いているから、やっぱり歴史物だ。
ちなみにベイズ統計とは、普通は何かが起きる確率って、毎回同じというのが普通の確率論だけど、それまでに実際に起きたことを加味して確率を計算するというやり方で、ナチスドイツのエニグマ暗号解読なんかにも使われた手法だそうな。内容が少し難しいけれど、数学をしていない人でも読める。
フェルマーの最終定理の方も、一応は数学をしていない人でも読めるけど、こちらはいくらかでも大学の数学をしている方が読んで面白い。

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もう少し脱線するなら、サピエンス全史、銃・病原菌・鉄のような人類全体の歴史のようなものも、まあ、ある意味では歴史物と言える。

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ところで、ここで物語ということの重要性も出て来る。

突然だけど、物語こそ人間にとって最強なのだ。

聖書で、はじめに言葉があった、言葉は神とともにあった、言葉は神であった、というフレーズがある。
早とちりすると、言葉ってすげーんだぜ、言葉があるから人間は世界を認識できるんだぜ、となりそうだ。
だけど、この言葉というのは、神の言葉だったり、キリストのことを指すニュアンスの方が強い。
英語でも、In the beginning was the Word. と大文字のWordであり、ただの言葉ではなく特殊な意味合いを持ったWordらしい。
まあ、詳しいことは教会に行って神父さんに聞いてみると面白いかもしれない。

だけど、キリスト今日がなぜこうも広まったかというと、聖書が物語の教典だからということも一つあるだろう。もちろん、他の要素もたくさんあるけど。

物語は強い。
物語というのは、人間にとって少し特殊な意味のあるものだと言える。

人間の暗記や理解って本当に心許ない。
これは営業職をすると分かるが、話したことの8割くらいはまともに伝わっていない。
理解が曲がっていたり、そもそも聞き取れていなかったりする。

これが物語になると、人間ってかなり覚えられる。特に感情が付随する物語は記憶に残る。

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さらに言えば、物語だけでも強力なのだが、書くということ自体がすこぶる強力だと言える。
書かないと、我々は3日前の朝ごはんも覚えられない。
まあ、僕はたいてい納豆ご飯に卵焼きなんだけど。

文字に書かれた物語は強い。
そして、文字によって残ってきた物語、つまり歴史というのは強い。

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歴史小説がすごいのは、そういうところなんだろうと勝手に思っている。

特にまとまりはないけれど。

とりあえず、コンスタンティノープルの陥落は実に素晴らしかった。
塩野七生先生はやっぱり偉大だ。

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