その1.部屋の広い狭いを畳数だけで見ない【注文住宅 間取りで失敗しない10のコツ】
よくある間取りの失敗で、広さを畳数、平方メートルだけに惑わされてしまうのがある。
家を考える時には、数字上の広さに惑わされないのが重要、じゃあ、広さをどう考えるか、これを知っているだけで家づくりの失敗は随分と減る。
こちらの話はYouTube豊かな暮らしチャンネルでもお話させて頂きました。良かったら動画の方も参考にしてください。
豊かな暮らしチャンネルは、八ヶ岳移住の味方チエリンが、移住に役立つアレコレを配信しているチャンネルです。
僕は時々、出させてもらっています。
20畳なのに広く感じないリビングと16畳なのに解放感のあるリビング問題。
「リビングは16畳あれば十分広いですよ。今住んでいるアパートと比べて見て下さい」
住宅会社の営業マンがよく言う言葉だ。
「リビングを18畳にしたけど、実際に暮らしてみたらもっと広い方が良かった」
これはこれで家づくりの失敗アルアルでよく聞く話。
本当のところ、何畳あれば良いんだろう?
実のところ、畳数だけを気にして、へぼい家になってしまったという失敗は、僕自身が新人の頃に何回かやってしまった。
二つの間取りがある。
一つ目の間取りは20畳のリビングに6畳の和室と面積的には大きい。
なのに、完成してみると不思議と広さ感が出なかった。
そのお客さんはそこそこ経済的にゆとりがあった。夫婦共働きで、奥さんもフルタイムで資格持ちの仕事だからそこそこ稼ぐ。
それで、予算についてはあまり心配なく、お客さんの希望通り20畳のリビングに、6畳の和室があって、3畳の広い洗面脱衣室を作った。ウォークインクローゼットも3畳あった。
面積と部屋数だけ考えれば素晴らしい家のはずだったが、完成してみると、不思議と広さを感じにくい空間だった。
逆に、予算的には絞って建てたいというお客さんがいた。
目標の予算に合わせて、家全体がそんなに大きくならないように、16畳のリビングで4.5畳の和室。比較すれば面積としては狭いはずなのに、完成してみると不思議と広々としたものすごく開放感のある素晴らしい家になった。
最終的な家の金額としても、400万円程度の差があった。
ちなみに、土地についても600万円ほどの差があった上に、地盤改良の有無もあって、合計で言えば1000万円以上の差となった。
安くて狭い家の方が不思議なまでに高級感があって、空間としてゆったりしていて、美しかった。
当時、新人だった僕にはなぜそういうことが起きたか分からなかった。
どちらも自分で書いた間取りで、当時は未熟だったから、狙いというほどの狙いはなかった。漠然とお客さんの希望を反映させて、知恵の輪を解くように間取りを作っただけだった。
それから、何十件もの間取りを描いては、完成した家を見てを繰り返す中で、僕は間取りのコツや失敗のボイントなんかが分かってきた。
ポイントは面積じゃなくて、人間の広さ感覚
広さは面積、畳数、平方メートルも大事ではあるが、どちらかというと奥行きの長さ、高さの方が人間の広さの感覚的なところにダイレクトに響く。
当然だけど、大抵の人は、狭いよりは広い方が嬉しい。
もし、あなたがミニマリストだとしても、狭苦しい空間よりは心が落ち着く程度のゆったりした感じのある空間の方が嬉しいだろう。
かといって、体育館のようなバカみたいに広すぎる空間も落ち着かない。
面積が大きいか小さいかではなくて、重要なのは家族それぞれの居場所があるかどうかだったり、外とのつながりや、高さの感覚、空間としての期待感だ。
家具の位置と人間が実際にどこで過ごすか
18畳でも狭く感じて、もっと広くすれば良かったというよくある失敗談は、18畳だからダメってわけじゃない。
いろいろ原因はあるのだが、一番多いのはリビングのレイアウトが適切じゃないから狭く感じるパターンは多い。
一番多いのがソファの位置と大きさかが良くないということ。
よくある失敗が、ソファとオットマン、さらにリビングテーブルのフルセットを通り道の真ん中に置いてしまう例だ。
20畳などの広いリビングを取れれば、問題ないのだが、16畳くらいだと厳しい。
特にL型のソファなんて置こうものなら、20畳でも場合によっては狭くなる。
リビングが狭くても大きなソファを置くにはコツがいる。
まず、テーブルとキッチン、もしくは壁をくっつける。
ソファの後ろを壁にする。もしくは、窓にする。だから、そこの窓は掃き出し、背の高い窓にしない。
ソファの後ろやテーブルをぐるりと回れる動線はなくても問題ない場合も多い。
逆に面積を取る割に広くなりにくいレイアウトとして、アイランドキッチンがある。
ただし、開放感はある。
ただ、キッチン本体やレンジフード、換気扇の値段も高くなりやすい。
20畳くらいまで大きくするならアイランドキッチンの開放感を楽しむのも良いかもしれない。
少なくとも細長いだけの20畳のリビングよりはアイランドキッチンの方が華がある。
ソファとテレビを対面させなかったら上手く行くことも多い。
間取りを考える時、三人がけのソファに並んで座ってテレビを見るイメージをする人が多いが、実際の生活では、誰かが、ソファに寝転ぶということは多い。ソファに一人が寝転んで、別の人はヨギボー、また、別の人はダイニングの椅子に座って、そういう方が現実的な暮らしのスタイルに合っていることは多い。
ソファの向きのみならず、失敗しやすいのが、
「キッチンからも、ダイニングテーブルからも、ソファからもテレビが見えるようにして欲しい」
という要望だ。
もちろん、不可能ではないのだが、
確かにテレビは見えるのだが、他のこと、動きやすさだったり、居心地の良さが上手くいかなくなりやすい。
家具のレイアウトだけでも、広さの感覚は変わる。
具体的な生活をどう想定するかが重要。要注意の南北に細長い20畳リビング。
畳数だけ考えて失敗するのが細長い20畳のリビングだ。
具体的に言うと3.64m×9.1mだ。
確かに長いと奥行きがあるので広く感じる人もいる。
ただ、奥行きの割に幅がなく、閉塞感を感じさせる場合がある。
ただ、このタイプのリビングは多い。
少し細かい話をするけれど。なぜ、細長いリビングが多いか。
木造住宅の場合、柱と柱の距離を4m以内に抑えたい。
4m以上で構造的にしっかり取ろうと思うと、大きなハリを使う必要があって木材の値段が高くなったり、いろいろと木造では都合が悪いのだ。
それ以上のスパンでも間に柱を一本立てれば解決するんだけど、リビングの真ん中に柱があると邪魔っけだ。これを上手く邪魔っけにならないように捌けるか、上手く柱を装飾として活用したりはプランナーの上手さなんだけど。まあ、普通は客に嫌がられるし、化粧柱は値段が高いから、そういうスパンで柱を飛ばさない。
それで、奥行きが長いわりに幅は3.64m(昨今だとメートル単位の家もあるけど、それでも4m)と細長くなりがちだ。
20畳も取れるなら、本当は細長い圧迫感のあるリビングじゃなくて、もう少し工夫のあるリビングを作る方が良かろうと思う。
細長くない20畳を考える
例えば日本の建物の心地良い広さに九間と書いてココノマというのがある。3間(5.46m)×3間(5.46m)で広さで言えば18畳だ。
↓典型的な九間の窮邃亭(きゅうすいてい)
https://sankan.kunaicho.go.jp/multilingual/shugakuin/place11.html
今の木材だと真ん中付近のどこかに柱が欲しいけれど、上手く柱を作れば気持ち良い空間になる。
ただ、ソファやテーブルなんかの家具の配置なんかが少し難しいのも事実だ。
ココノマでも18畳なんだから、20畳あればいろいろやりようはある。
ココノマ以外にも20畳あれば17畳のリビングに3畳の小上がりの畳スペースやスタディスペースを作る方が広く感じる場合もある。
かといって、使いもしないスタディスペースなんかは不要だし、広さも感じられないってこともある。小上がりも明確に暮らしをイメージして作らないと、ただの無駄な空間になりやすい。
不要なスタディスペースやカウンターは郵便物が山積みされるのがオチである。
でも、カウンターなんかは、提案されるとついついウキウキして付けたくなって、失敗しがちなポイントでもある。
明確に、いつ、どのように、だれがそのスペースを使うのかがイメージできなければ意味がない。
下手なスタディスペースよりも大きなダイニングテーブルでくらしを
無駄なスタディスペースにするよりは、通常より大きなダイニングテーブルを置けるようにレイアウトする方法もある。
通常の四人がけのダイニングテーブルは140cm程度だけど、これを思い切って200cmくらいのすごく大きなダイニングテーブルを置けるようにすると、ダイニングテーブルの意味が大きく変わる。
通常のダイニングテーブルだと、食事以外のものを置くのは難しいが、200cm以上のサイズになると、子どもが宿題をするにも、奥さんが化粧をするにも、旦那さんがパソコンするにも、使い勝手が良い。片付けなくても、端によせれば、そのまま食事も出来る。
何をするにしても、とりあえず大きなテーブルを使う。
ただ食事するためだけの場所ではなく、家族が集まるシンボリックな場所になる。
とはいえ、200cm以上のテーブルはあまり売られていなくて高いし、やっぱり場所を食う。
そうはいっても、わざわざスタディスペースを確保する面積を考えれば、広いダイニングテーブルは魅力的と言える。
また、別のところで詳しく話すけど、窓でも随分と広さの感覚は変わる。
特に南北に細長いリビングは、大きな窓を南に取りたいので、窓が少なくなりやすい。
細長いリビングなら東西に長い方が良い。
明るくなるし、外への期待感が広々した感じがする。
ただし、和室がある場合にはまた少し注意がいるし、南面が道路が近かったら、窓からの視線を考えないと、窓の多い家は失敗する。
詳しくは窓についてのところで。
高さで〇〇感を作る
畳数よりも吹き抜けや斜め天井のように、高さを作る方が開放感を感じることもある。
かと言って、バカみたいに大きな吹き抜けを付ければ良いというわけでもない。
どこにどういう意味の吹き抜けを作るかだ。
吹き抜けは期待感を作る。上に向かって何かがあるような。
そう、家を考える時には、期待感っていうのは大事だ。人間はロボットじゃないので、数値の上での面積や体積ではなくて、何かがありそうなウキウキ感だったり、解放感みたいなものが重要。期待感や広さ感、解放感など、〇〇感を作れるかが重要になる。
吹き抜けの高い位置に窓があれば光が落ちる。高いところから落ちてくる外の光は嬉しい。
特に、市街地で隣の家が近い場合なんかは、通常の一階の窓を大きく取ると、外の目線が気になってカーテンをしめることになる。
吹き抜けの高い位置の窓なら、そういう心配が少なく、外からの光を高い位置から落とせる。
そういう吹き抜けは広さ感に強く影響してくれる。
大きな吹き抜けじゃなくても良いので、効果的な吹き抜けは空間を豊かにしてくれる。
人間の本能や感覚は平面では分かりにくい
いろいろ話すと長くなるし、難しくなるけど。
今回はとにかく単純な畳数だけで考えるのは非常に危ういということを知ってもらえればと思う。
間取りの難しさは、平面じゃ、実際の暮らしが分かりにくいということだ。
暮らしと言うのも漠然としているけれど。
単純に、ダイニングの椅子に座った時にリラックスできる家か、何となく居心地が悪い家なのか。
そういうのって、人間の本能や感覚の部分が大事になる。
心理学とかの方が近いのかもしれない。
実際にプランを描いて、完成した家で時間を過ごして、写真や動画を撮って、可能ならお客さんが暮らし始めた後も、お邪魔させてもらって、空間を勉強させてもらう。
そういう良いプランナーに出会えると嬉しい。
とはいえなかなか難しい。
住宅営業っていうのは、残念ながら、良い家を作れなくても、契約さえ取れれば会社的には優秀な良い営業マンだ。
住宅会社の設計士も、暮らしの感覚的な部分の話には疎くて、構造的に柱がどこに入るかだったり、図面を丁寧に書いたり、そういう作業的な面が多い。
お客さんと直接打ち合わせて、良い家を作るというのは、プラスアルファというか、残念ながら、今の日本の住宅業界では、あんまり重要なスキルとされていない。
暮らしを想定して、豊かな時間が流れる空間かどうか。どうしてもプランナーの経験値も必要な部分なんだけど。
とにかく何畳だから広いの考え方はリスキーだと覚えておくだけでも、家づくりの失敗を避けられる。
今回の間取りのNGチェックポイント
◯畳だから、だけで部屋の広さを判断していないか?
畳数じゃない広さ感を作る工夫は入っているか?
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