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【NJRPG-2ND/シナリオ】フォールス・ウインター#6:オペレイシヨン・スターゲイト

あらすじ:おそるべきASATS(対衛星スリケン)の攻撃により、ソウカイヤ・ザイバツの暗闘は激化。主要戦力がネオサイタマ中に分散した今、PCたちは電子ネットワークの門番であるダイダロスの暗殺を図る。一方、隠された過去の因縁は彼らを追い詰めつつあり……インガオホーは果たしてどちらに傾くのか?

これは「ニンジャスレイヤーTRPG2版」のシステムに対応した、「鷲のニンジャ」がテーマのキャンペーン『フォールス・ウインター』の第六話に該当するサンプルシナリオ記事です。

プレイ人数:4~5名
所要時間:12時間(オンラインセッション/テキストセッション)
難易度:キャンペーン専用のルールで作成後、5~6シナリオを踏破した程度の強さのPCを想定(成長の壁(1)をそれぞれ2~3つずつ超えている。ジツを2倍でカウントして、能力値合計25~30程度)

キャンペーン全体の背景設定やルート分岐の調整方法などは、別途CPセッティング記事も参考にしてください。

※各ゲーム要素はニンジャスレイヤーTRPG初版で行ったキャンペーン実卓を元に、2版向けへコンバートされたものです。ゲームバランスは現行環境やプレイヤーキャラクターに合わせて都度調整することを推奨します。

関連記事はこちらのマガジンから。

◇本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター    → ゲームの進行役。描写などを行う。
PL:プレイヤー       → ゲームの参加者。PCを操作する。
PC:プレイヤーキャラクター → ゲーム内の主人公。メインキャラ。

前シナリオ

はじめに

このシナリオではソウカイヤのクレイニアムやダイダロス、そしてニンジャスレイヤーといった、今まで『フォールス・ウインター』の物語に登場しなかった勢力のニンジャたちと遭遇することで、ここまで遮断されていた外部の情報を知ると同時に、PCが薄々勘付きつつあった疑念をより具体的なものへと昇華させてゆくことになる。

大きなストーリー分岐要素としては、『ダイダロスの生死』と『PCの過去を知る人物との遭遇』といったものが用意されており、PCそしてPLは、半ば露骨にバックグラウンドに隠された秘密を知る。しかし、このシナリオの段階ではPCの行動の結果が、どういった方向性でインガオホーとなるのかはまだわからない。

シナリオ全体の構成としては、調査・戦闘・撤退の3シーン構成となっており、PCの行動によって細かな展開が変化する可能性を秘めている。


マップデータ

このシナリオで使用するマップデータはGoogle スプレッドシートで作成されています。下記からローカルにダウンロードするか、ご自身のアカウントにコピーを作成してGoogle スプレッドシート上で使用してください。


導入:ダンゴウ

このシナリオではアジトであるブラックサイトの戦略室に集められたPCに対し、これまでと比較して比較的具体的な指示と作戦の意図が伝えられる。それは今回のミッションが非常に重要で、また不確定要素に満ちているという背景に加え、PCがこれまでの活動で十分に力をつけたことを示すことができているからである。

アシッドウルフ(スパイマスター)は「重要な任務を与える」と前置きしたうえで、次のように話す。「◉」は基本の任務情報、「◎」はPLの問いかけに応じて提示される詳細な作戦指示、「○」はPCの調査に応じて提示される内部情報である。

◉今回PCに与えられる任務は、ソウカイ・シックスゲイツのひとり「ダイダロス」の暗殺である。

◉ダイダロスは極めて強力なハッカーニンジャであり、ソウカイヤの本拠地から電子ネットワークに監視の目を光らせている。本人が直接外部に姿を現す機会はほぼ皆無と言っても過言ではないが、今回彼を誘き出すチャンスを得た。

◉アシッドウルフはジャーナリストを名乗るテンサイ級ハッカー、ナンシー・リーに『ソウカイ・シンジケートとオムラ、ヨロシサンの癒着を示す証拠に繋がる手掛かり』をリークし、彼女をカネモチ向けのジンジャ・クラブに誘導した。このジンジャ・クラブはソウカイヤがケツモチを務めている。

◉またナンシー・リーが上記のジンジャ・クラブを調査に潜入してくるであろう、という情報は、ソウカイネットへの情報リークもあり、彼女の動向を監視しているダイダロスには筒抜けである。

◉ナンシー・リーはペケロッパ・カルトでハッカー訓練を積んだ過去があり、いわゆる「コトダマ空間認識能力」を有する。ダイダロスは何故か彼女のハッカーとしての才能と先述の能力に異常執着しており、ソウカイヤ領で彼女と直接接触できるこのチャンスを逃さないだろう。

◉ASATSによるキョートへの攻撃を引き金に、ネオサイタマにおける水面下でのソウカイヤとザイバツの暗闘は激化している。これに伴ってソウカイヤの主戦力はネオサイタマの各地に分散しており、いくらシックスゲイツとはいえ、ダイダロスもそれほど大量のニンジャを護衛に引き連れるようなことはできないだろうと考えられる。(もっとも、そのような状況でさえ外部に姿を現す根拠となりうるのが先述の異常執着である)

◎まずは当該のジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」に忍び込み、ナンシー・リーを探せ。ジンジャ・クラブにはかなりの人数のユーレイ・ゴスが詰めかけており、騒がしく、薄暗く、彼女もそこに紛れるように変装している可能性が高い。PCもここに紛れる必要があるだろう。

◎ナンシー・リーを発見したら接触は避け、その動向を監視せよ。厄介事が起こればソウカイヤが動き始めるであろうし、ダイダロスの護衛がいる可能性も否定できない。ターゲットが姿を現すまで彼らに検出されることは避けなくてはならない。

◎ダイダロスの出現を確認したら(あるいはそれまでに)チームを二手に分けよ。ターゲットのカラテは虚弱であり、物理戦闘であればPC1人1人を大きく下回るサンシタに過ぎない。1チームはターゲットの暗殺に向かい、残る1チームはソウカイニンジャの干渉を警戒し、出現した場合は足止めを担うこと。

◎ナンシー・リーの生死は問わない。しかし彼女はニンジャスレイヤーの協力者としてソウカイヤにマークされている存在であり、不確定要素としてニンジャスレイヤーが現場にインタラプトしてくる可能性は高い。ニンジャスレイヤーはシックスゲイツも含むニンジャを次々と爆発四散させ、ソウカイヤと真っ向から敵対している狂人であり、恐るべきカラテ強者である。

◎最良の結果はダイダロスが爆発四散することであるが、上記の不確定要素を理由にそれを果たすのが困難になる可能性も想定される。今回の任務は「ダイダロスの暗殺」だが、「ダイダロスが重症を負い行動不能になる」だけで真の目的は達成される。すなわち、彼によるネットワーク監視が当面の間緩むだけで良いのだ。

評価A:ダイダロスをサツバツ!で即死させる、もしくはカイシャクする(爆発四散=サヨナラ!)
評価B:ダイダロスの体力を0以下まで低下させる(行動不能=ヤラレタ!)
評価C:ダイダロスの体力を半分以下まで低下させる(重症=アバーッ!)


○ジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」には屈強なメキシコ人セキュリティが複数人雇われており、それらを束ねるヨージンボとしてスコルピオンというソウカイ・ニンジャが詰めている。セキュリティ控え室は敷地内の南東にある小さな建物である。

○ジンジャ・クラブのダンスホール(ホール)のあちこちには監視カメラが設置されている。これらはセキュリティ控え室に設置されたモニター装置に繋がっており、常時誰かがここでホールを見張っている。

○ホールは数百名を収容できるほど広い。特に毎週金曜日は「ユーレイ・ナイト」としてカチグミ家庭の若者たちが詰めかけ、いつも以上の混雑具合を見せる。

『ダイダロス』を何故暗殺するのか?

PCないしPLがこの疑問を明確に口にするならば、現在の【名声】値と同じ数のダイスによる難易度:U-HARDの判定を行わせる。これに成功した場合、アシッドウルフ(スパイマスター)は次の通り情報を開示する。

◉ASATSは単なる長距離狙撃兵器ではなく、その名の通り宇宙空間の人工衛星を攻撃することを目的とした兵器である。キョートへの狙撃そのものは、本来の意図を隠すための偽装に過ぎなかった。

◉ただしASATSは物理的に人工衛星を狙撃するものではない。毎回これほど精密な装置を宇宙に飛ばしていては、幾ら資金があっても足りなくなってしまう。故にASATSは電子的な攻撃手段であり、宇宙に対するハッキング中継点として機能する。

◉ASATSの切り離された4つの"刃"は宇宙空間へと射出され、衛星軌道上を周回している、旧世紀の狂った軍事用衛星のハッキング中継点として使用される。アシッドウルフらはこれにより静止衛星を含む復数の"蛮神"を制御下に置いた。

◉しかし"蛮神"を用いて攻撃を開始すればその存在は即座に察知され、ハッキングによる妨害・自壊プロトコルの強制を受けてしまうだろう。つまり、新しく手に入れた兵器を活用するには、ダイダロスによるネットワーク監視が邪魔になってしまうのだ。


マップ情報:ジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」

ズンズンズンズズ、ズンズンズンズズ、ズンズンズンズズ、ズンズンズンズズ。非人間的で無機質なインダストリアル・テクノの重低音が、ジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」から深夜のネオサイタマへと漏れ出してくる。

 クラブのカンバンには、ヨウカンのように黒く真四角なサイバー調サングラスをかけたオイランの絵が描かれいる。サングラス部分は電飾仕様になっており、ミステリアスな薄笑いとともに「毎日楽しい」「実際楽しい」「金曜夜はユーレイ・ナイト」などの刹那的なメッセージを発し続けていた。

 ここは、ネオサイタマ有数の富裕層居住地域「カネモチ・ディストリクト」の八番街。通称「カネモチ8」。平安時代には、丘の上に築かれた厳粛な霊場であったが、現在となってはネオ・カブキチョと並ぶいかがわしい繁華街のひとつへと堕している。

 平安時代から続いたこの由緒正しいジンジャ・カテドラルも、今となっては、虚無的なカネモチ・ディストリクトの象徴と化している。ここは今から数年前に、オムラ・インダストリ系列のアミューズメント会社によって神主ごと買収され、サイバーゴス系クラブ「ヤバイ・オオキイ」へと変わったのだ。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

このシナリオではジンジャ・クラブを再現する、1つの中型マップを舞台として任務を遂行することになる。ここではまず、マップ全体に用意されたギミックや各種マスの特殊な処理についてエリアごとに細則を述べる。

なお凡例の表記がないマスについては、すべて通常マスとして処理を行う。

マップの端は「壁」とはみなされず、「弾き飛ばし」などによる激突の対象とはならない。何らかの強制移動効果を受けた場合でも、キャラクターは単純にマップ端で移動を終了する。

入り口

 ライオンの顔がプリントされたTシャツを着込み、威圧的に腕組みしたメキシコ系黒人ゴメスが、サイバー調サングラスをかけてクラブのトリイの前に立っていた。今夜は金曜だ。ユーレイ・ナイトに相応しい格好をしてこなかった愚かな客を追い返すのが、時給五百円でゴメスに与えられた仕事なのである。

 実際、カネモチ8エリアにやってくる客の9割9分は、富裕層ではなく、富裕層と近づきになりたいと考えるカチグミ・ワナビー達だ。そういった連中の中には、暴力をもって何かを強制しないといけない無教養で無軌道な若者が、極めて多いのである。

「カラテ十三段」「殺人のライセンス」「日本語を理解しない」といった戦慄のメッセージが、ゴメスの顔の半分以上を覆うサイバー調サングラスの液晶面を右から左に流れ、彼の仕事を大いにやりやすくしていた。

 トリイの前に新たなキャブが止まり、不健康そうなユーレイ・ゴスガールが姿を現す。ナチョス・ガムをくちゃくちゃと噛みながら、ゴメスは偉そうに頷き、顎をしゃくってクラブへの入場を促した。簡単な仕事だ。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

このジンジャ・クラブの入り口には屈強なメキシコ人のセキュリティ「ゴメス」が腕組みをして立っており、PCも含め不相応な客を追い返す役割を担っている。

変装しているPCは何の障害もなくここを通過できるが、そうでないPCは彼を暴力で黙らせるか、正面の壁を乗り越えて敷地内に侵入する必要がある。変装にこれといった準備や判定は必要ないが、「若い外見のPC」のみがこの選択肢を選べるものとするとよいだろう。

◆メキシコ系黒人のゴメス (種別:モータル)
カラテ     3   体力     1
ニューロン   2   精神力    2
ワザマエ    2   脚力     2
ジツ      ー   万札     0
近接攻撃D:3、射撃D:4、回避D:2					
◇装備や特記事項
 装備:サイバーサングラス、ライオン顔プリントTシャツ


ここに赤いマスで示されるのはトリイ・ゲート、濃いグレーのマスで示されるのはジンジャ・クラブの敷地を囲う壁である。いずれも「遮蔽物」とみなされ、射線を遮り、連続側転か飛行移動時にしか通過することができない。


セキュリティ控え室

「なんだありゃあ、ロドリゴの野郎、意気地のねえ」セキュリティ控え室では、オムラ・インダストリ製のプラズマ液晶モニタを眺めながら、バンザイ・テキーラとナチョ・スシを交互に口に運び、巨漢のメキシコ人がイガラ声で呟いていた。「生きて帰ってきたら、股間にマリアの刺青を入れてやるぜ」

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

マップ右下にある建物はヤバイ・オオキイのセキュリティが待機する控え室である。シナリオ開始時点ではホールの監視カメラ映像が映し出された液晶モニタを前に、ソウカイヤから派遣されたヨージンボのスコルピオンだけが待機している。

配置されているトレジャーは「小型冷蔵庫」であり、スコルピオンが口にしているような「ナチョ・スシ(オーガニック・スシ)」が手に入る。

一方で、この施設の運営元から派遣されたサラリマン、モモタはメキシコ人セキュリティの働きぶりや客の入りを確認するため、この建物を中心に、あちこちを行き来している。

◆スコルピオン(種別:ニンジャ)
カラテ     6  体力     7
ニューロン   4  精神力    4
ワザマエ    3  脚力     3
ジツ      3  万札     5
近接攻撃D:9、精密攻撃D:6、回避D:6
◇装備やスキル
 装備   :『ナイフx2(カタナ二刀流)』、『バンザイ・テキーラ(効果なし)』
 スキル  :『☆サソリの系譜(近接D+2)』、『☆カトン・ジツLV1』、
       『◉ニンジャソウルの闇』、『◉邪悪なサディスト』
       『◉ヒサツ・ワザ:サソリ・キック(回避HARDのサマーソルトキックとみなす)』

 『●サソリ・ファイティング・スタイル』:
   「カタナ二刀流」装備時にも『●戦闘スタイル:強攻撃』が使用可能となる。

 「●武勇伝語り」:
  スコルピオンは『その他の行動』として「武勇伝を語る」ことができる。
  ターンが終了するか、ダメージを受けるまで「回避」判定が不可となる。
  「武勇伝語り」が解除されるとき、ターン終了時であれば【精神力】が1回復し
  そうでなければ次の行動手番における「近接攻撃判定ダイス」が+2される。

 「☆カトン自爆」:
  スコルピオンは爆発四散時、難易度NORMALのジツ判定に成功することで
  自身を中心とする5x5マスに無差別な「火炎ダメージ1」を発生させる(回避難易度NORMAL)。

◇ダイダロスの監視

ソウカイ・シックスゲイツのダイダロスの電子的な監視は当然ながら、ソウカイヤ系の施設であるジンジャ・クラブの監視システムにも及んでいる。PCを含め敵対的なキャラクターが不正にこの部屋のUNIXにアクセスした場合、半自動的な防衛反応として、彼はそのキャラクターのサイバネやIRC端末にウイルスやバックドアを仕込んでしまう。

NMはこれを後のシナリオのフックとして活用しても良いし、単純にこのジンジャ・クラブを舞台としたシナリオのギミックに取り入れても良い。このフックの使用例は本シナリオにも収録されている。


トイレ

マップ左下にある建物は何の変哲もないトイレである。特別これといったイベントも用意されていないが、右が男性用、左が女性用となる。NMは壁を乗り越えて潜入したPCが、ここでユーレイ・ゴスから衣装を奪って変装できる、としても良い。


ダンスホール(外部)

 ズンズンズンズズ、ズンズンズンズズ、ズンズンズンズズ、ズンズンズンズズ。サイバーテクノの重低音に合わせて、姿の見えないDJがネンブツのようなMCを繰り返し唱えながら、終末的なパイプオルガンを弾きならす。「ナムサン、ナムサン、ナムアミダブツ、ナムサン、ナムサン、ナムアミダブツ」と。

 数百名を収容するジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」のホール内は、ピンク、ターコイズ、オレンジなどのけばけばしいライトに目まぐるしく照らし出され、ホールの四方を取り巻く長大なショウジ戸には、ユーレイ・ゴスたちの影絵が刻み付けられていた。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

マップ上の巨大なホールの周囲には厳ついメキシコ人のセキュリティが複数名控えており、不審な客が現れたり乱闘騒ぎが起こったりすれば、ショージ戸を開けてすぐさまその排除にあたる。

セキュリティは行動手番が回ってきたとき、視界内に不審者(変装していないPCを含む)が存在する場合、即座に「セキュリティ控え室」へ連絡をおこなう。控え室に誰かが居た場合、その場にはマップ上の「メキシコ人セキュリティ」全員が駆けつけて不審者の排除にあたる。PCが発見された場合は「スコルピオン」が登場する可能性が高い。

◆メキシコ人セキュリティ (種別:モータル)
カラテ     3   体力     1
ニューロン   2   精神力    2
ワザマエ    2   脚力     2
ジツ      ー   万札     0
近接攻撃D:3、射撃D:4、回避D:2	
◇装備や特記事項
 装備:サイバーサングラス


ダンスホール(内部)

 無数のローソクが立てられた大燭台が天井から六つ吊られ、鎖を軋ませながら沈没寸前の難破船のように揺れて、炎の軌跡を描いていた。かつて大仏が鎮座していた北の壁にはスクリーンが置かれ、釜茹でにされるキリストや、逆さ写しのネンブツといった軽薄で悪魔的な映像が洪水のように映し出されていた。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

このシナリオの主戦場となるのはこの大ホールである。内部には大勢のユーレイ・ゴスがけばけばしいライトに照らされながら、亡霊のようにだらしなく踊り続けている。

ここには下記のような、幾つかの特殊なギミックが用意されている。

二重枠線は引き戸式のショージ戸があることを表している。あらゆるキャラクターは何のペナルティもなく、この境界線を通過することができる。

またショージ戸は射線を遮らないが、これを経由して射撃を行う場合、その回避難易度は通常よりも-1されてしまう。

外周より1段階濃いグレーのマスは、そこに1~2名のユーレイ・ゴスが踊っていることを表している。人混みを通り抜けるにはニンジャであっても大勢を押し退けてゆく必要があり、このマス上で戦う限り全キャラクターは次のルールの影響下に置かれてしまう。

◉このマスは「移動困難な地形」とみなされる。

◉攻撃者が隣接している場合や範囲攻撃を除き、あらゆる射撃(遠隔攻撃)の回避難易度が-1される。これはユーレイ・ゴスの人混みが遮蔽物……肉の盾として機能し、遠隔攻撃を遮ってしまうことを表現している。この効果が発動した時、対象が存在しているマスを通常マスに変化させる。

◉『カトン・ジツ』や『回転斬撃』などの範囲攻撃が発生した場合、ユーレイ・ゴスが巻き添えで死亡してしまう。範囲内の「ホール」マスは効果を失い、通常マスへと変化する。PCがこの無慈悲な選択肢をとった場合、+D3の【DKK】を得る。

ホールの上にはステンドグラスや鐘に囲まれて、6つの巨大な燭台が鎖に吊られている。オレンジ色のマスは基本的に「ホール」マスとみなされ、単にその真上に燭台が吊られていることを表している。

◉燭台の上を移動する:ホールの外、もしくは遮蔽物の上から「連続側転」を行うことで、燭台の上に飛び乗って移動することができる。燭台の上にいる間は近接攻撃を行えないが、その対象ともならない。またこの場所は監視カメラの死角となる。

◉燭台を落とす:現在飛び乗っている燭台を「その他の行動」で、あるいはホールから「射撃」で狙い撃つ(難易度HARD)ことで燭台は落下し、落下点を中心とする3x3の範囲内のキャラ全員に1ダメージを与える(回避難易度:HARD)。燭台に乗っていたキャラは即座に落下点へ再配置される。
 この効果が発揮されると、「大燭台の影」マスは通常マスへと変化する。

北側には巨大な壁面スクリーンが存在し、常時音楽に合わせたVJ映像が流れているが、ホール内で乱闘騒ぎが起こった場合は、その血みどろの映像がスクリーンに映し出される。

またスクリーンの前では、肩に排気ホースを備えた戦闘服のような衣装に身を包むVJがテクノ・オコトを弾き鳴らしながら歌っている。彼が叫んだ言葉は赤文字となってスクリーン上を走り、ホールで繰り広げられる血みどろの騒ぎを煽り立てることだろう。


マップ上のユーレイ・ゴスたちはスクリーンに映し出される映像と、VJカンヌシの煽り立てるようなパフォーマンスに強い影響を受け、オーバードーズ状態も相まって危機察知能力の致命的な欠落を生じる。ニンジャが引き起こす乱闘でさえ野次馬のように取り囲み、何か愉快な見世物のように囃し立てるのだ。

効果的にユーレイ・ゴスを追い払いたいと考えるなら、スクリーンを破壊したり、叫び立てるVJカンヌシを殺したりしてしまうことは1つの解決策となる。

緑色のマスはアルコール飲料を提供するバーカウンターを表している。このジンジャ・クラブでは違法薬物が入ったアルコール飲料が供されており、ほとんどのユーレイ・ゴスがこれらのオーバードーズによりトリップ状態にある。

PCはこのマスに隣接している状態であれば、手番攻撃フェイズに「瞬時行動」として、次の飲料のどちらかを消費することができる。一度アイテムを消費するとこのマスは通常マスに変化する。

◉ズバリ・リキュール:次の手番の【脚力】が+1される。
◉バリキ・カクテル :【体力】を即座に+1回復する。


ホールの北東には、一段高くなったテーブル席「キモン」が設けられている。ここには最もランクの高い客しか座ることを許されておらず、この日は6人のエリート・ユーレイが卓を囲んでいる。何か事件が起こった場合は、腰を抜かした2名を除いて全員がその場を逃げ出してしまう。

◆エリート・ユーレイ (種別:モータル)
カラテ     1   体力     1
ニューロン   2   精神力    2
ワザマエ    2   脚力     1
ジツ      ー   万札     5
近接攻撃D:1、射撃D:2、回避D:2
◇装備や特記事項
 装備:ゴシックナイフ(「カタナ」とみなす)


シーン1:ジンジャ・クラブへの潜入

NMはPCを「初期配置マス」へと自由に配置させてから、ジンジャ・クラブのシーンを開始する。PLはまず、どうやって目的地に侵入するかを考えなくてはならない。

PCがジンジャ・クラブに潜入する手段は2つある。ひとつは「ユーレイ・ゴスに変装して客を装い堂々と正面から入る」という方法。もうひとつは「ニンジャらしく壁を乗り越え、警備をやり過ごして天井アーチに身を潜める」方法だ。

クラブの客層は総じて富裕層の若者達であり、ユーレイ・ナイトに相応しい格好をしてこなかった客や、ただ富裕層とお近づきになろうと考えて寄ってくるカチグミ・ワナビー達は暴力によって追い返される。これは目立たずに変装で潜入しようと考えるPCについても同じことが言える。変装の選択肢については、設定上の外見が若いPCのみが可能な選択肢とするのが自然だろう。

PLが方針を決定し、それぞれジンジャ・クラブの敷地内に忍び込むことに成功した後、NMは次のような流れでシーンを処理してゆく。それぞれの詳細な内容については以降のセクションを参照のこと。

1:各PCの移動やイベント消化処理を行う
2:ナンシー・リーの居場所を探る
3:イベント・タイムラインを処理する
4:未検出の場合、ナンシー・リーの居場所を再び探る
5:ターゲットとナンシー・リーとの接触
6:アンブッシュイベントの発生
7:ボス戦
8:増援の処理

発生イベントとタイムライン

このシナリオではナンシー・リーとダイダロスを探すPCの行動に関係なく、【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】のエピソードに準拠したイベントが並行して進行する。

次にはナンシー・リーを捜索するイベント処理と合わせて、各種発生イベントの詳細とそのタイミングがまとめられている。


◇調査判定:ナンシー・リーを見つけ出す(1)

ナンシーはホールの西側へ、ユーレイ・ゴスに変装した状態で潜入している。PCがナンシーの所在を突き止める方法は大きく分けて3つある。

1:変装した状態でホールを歩き回って探す:「その他の行動」として【ニューロン】判定(U-HARD)を行う。成功した場合、ナンシー・リーの位置が判明する。

2:大燭台の上からホールを見渡す:「その他の行動」として【ワザマエ】判定(U-HARD)を行う。成功した場合、ナンシー・リーの位置が判明する。

3:監視カメラ映像から探す:セキュリティ控え室を制圧する、即ちスコルピオンを爆発四散させたのち「その他の行動」により液晶モニタ越しにホール全体の気配を探ることができる。これは難易度U-HARDのハッキング判定で行う。成功した場合、ナンシー・リーの位置が判明する。


※ニンジャマスターへ:この選択肢は厄介な事態を招く可能性がある。スコルピオンのカトン自爆により現場がパニックに陥ったり、そうでなくとも戦闘開始直後からニンジャスレイヤーが敵として立ちはだかったりするからだ。

またホールから監視カメラをハックして覗き見を試みる場合、その動きは即座にダイダロスに感知されてしまうだろう。

◇NPCデータ:ナンシー・リー

「面白いことになってきたわ…」ホールの西でそつなく踊っていたゴスガールの1人が、黒髪オカッパのカツラを脱ぎ、フンドシを取り去る。そこに現れたのは、ソーメンのようにしなやかなブロンドと、コーカソイドの顔立ち。彼女は小型カメラを構えながら、人ごみを掻き分けサラリマンの方向へと進んだ。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

PCが何らかの判定によってナンシーの居所を突き止めた時、NMはダンスホール中央の7x7範囲内の任意の場所に彼女を配置する。この段階でナンシーはゴスガールに変装しており、外見で判別して見つけ出すのはやや困難だ。

◆ナンシー・リー (種別:モータル)
カラテ    1   体力   1
ニューロン  12  精神力  12
ワザマエ   4   脚力   2/-
ジツ     -   万札   10

攻撃/射撃/機先/電脳  1/4/14/19
回避/精密/側転/発動  12/-/-/-

 ※モータルのため、ナンシーの行う『回避判定』は難易度が+1される。ナンシーは
  監視カメラ網などの複数レイヤー視界を常時有し、敵の攻撃を察知して物陰に隠れるのだ。

◇装備や特記事項
 武器  :『デリンジャー(チャカガン)』、『ステルス・グレネード 』
 装備  :『キーボード・オブ・ゴールデン・エイジ』
 消耗品 :『トロ粉末』
 サイバネ:▶︎▶︎生体LAN端子LV2、▷電脳戦用デッキ、▷ファイアウォール

 スキル :『◉kill-9』、『◉killall』、『◉sudo_kill-9』
      『◉ニューロンブースト/チルアウト』
 
 『◉◉監視カメラレイヤー没入』:
  『集中状態』に入ったナンシーは、別な部屋にいる敵に対しても電脳戦系スキルを使用できる。
  ただしこの場合、各スキルの発動難易度は+1されてしまう。
  また、それが『対抗判定』を必要とするスキルならば、ナンシー側の判定難易度のみ+1されてしまう。


イベントフェイズ1:ヤマダ・ヨリトモ

「イヤーッ!」そのサラリマンはトレンチコートを威勢よく脱ぎ捨て、ねずみ色の背広をあらわにして、空中に三発ほどパンチと手刀を叩き込む勇ましいカラテの型を見せた。その背広の腰の辺りには、年季の入ったブラックベルトが巻かれており、この男が真のカラテ使いであることを暗示していた。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

誰かが最初の調査判定が完了し、ターンが1巡すると、泥酔したカラテ・サラリマン「ヤマダ・ヨリトモ」がジンジャ・クラブを訪れ、入り口のゴメスを殴り倒し、ダンスホールへと向けて直進してくる。

入り口付近へと視線が通っていたPCは判定の必要もなく、この騒動にいち早く気がつくことができる。この場合、彼がダンスホールに到着するまでに対処してしまうこともできるが、下手な乱闘騒ぎを起こせば周囲の注意を引いてしまうだろう。

彼の登場に誰も気が付かないか、気がついたPCが彼を見逃した場合、サラリマンはこの段階でホールの正面入り口に辿り着き、追い出そうと試みた2人のメキシコ人を返り討ちにする。

◆泥酔サラリマン|ヤマダ・ヨリトモ (種別:モータル)
カラテ     5   体力     5
ニューロン   3   精神力    3
ワザマエ    3   脚力     3
ジツ      -   万札     0

攻撃/射撃/機先/電脳  6/3/5/3

◇装備や特記事項
 装備:ブラックベルト(近接攻撃ダイス+1)


◇調査判定:ナンシー・リーを見つけ出す(2)

「面白いことになってきたわ…」ホールの西でそつなく踊っていたゴスガールの1人が、黒髪オカッパのカツラを脱ぎ、フンドシを取り去る。そこに現れたのは、ソーメンのようにしなやかなブロンドと、コーカソイドの顔立ち。彼女は小型カメラを構えながら、人ごみを掻き分けサラリマンの方向へと進んだ。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

まだPCがナンシーの居所を突き止められていない場合、再び「調査判定」を行っても良い。1回目から引き続きナンシーの位置を特定しようと試みるPCは、ある程度範囲の目星がついてきたとして、判定ダイスに+1のボーナスを得られる。

泥酔サラリマンがPCに阻止されていなかった場合、この時点で彼はダンスホールへと侵入している。ナンシーは変装を解いてそちらの方向へと向かうため、さらに調査判定の難易度は-1される。


イベントフェイズ2:ダンスホールの乱闘

ジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」のホールは血生臭い修羅場と化した。非人間的なユーレイテクノのビートに乗って、厳ついメキシコ人のセキュティたちが5人がかりで1人の泥酔サラリマンを止めようと襲い掛かる。顔色の悪いユーレイ・ゴスたちが、それをカブキショウのように取り囲んで見守る。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

2回目の察知判定が完了すると、泥酔サラリマンはダンスホールに侵入し、メキシコ人のセキュリティとの乱闘騒ぎを繰り広げ始める。これに伴い、外部で警備にあたっていたセキュリティは全員がダンスホール内に移動するため外部の警備は0になる。

この時点で全PCが事態に気がつくため、サラリマンに対処しに向かうのか、あるいは持ち場を離れずナンシー・リーの監視ないしダイダロスの捜索を続けるのか判断して行動する必要がある。

◇ダイダロスはどのような反応を示すか
全体を通しての方針として、ダイダロスは自身に直接危害が及んだり、ナンシーが逃げ出したりするような事態にさえ繋がらなければ、どのようなトラブルが起こったとしても無関心のままだ。

しかし、この段階ではまだダイダロスはダンスホール内部には存在しておらず、彼を見つけられていないPCは慎重な行動を求められる。

まだPCがナンシーの居所を突き止められていない場合、ここで再び「調査判定」を行っても良い。


イベントフェイズ3:"悪いスコルピオン"

「ついにソウカイ・ニンジャのお出ましってわけね」ブロンドの女は小型カメラでスコルピオンの姿を撮影しながら、手持ちの違法改造モバイルフォンのアンテナを伸ばした。それから、モバイルフォンから生えたLANケーブルを、自分の右耳の左斜め上くらいに埋め込まれたバイオLAN端子へと接続する。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

PCが泥酔サラリマンに対処していない場合、メキシコ人セキュリティが全滅するまで乱闘騒ぎは継続し、遂にはスコルピオンが事態収集のためダンスホールへと赴く。ナンシーはその場から移動し、PCないしスコルピオンが対処している乱闘騒ぎをビデオ映像に収めようとするだろう。

まだPCがナンシーの居所を突き止められていない場合、ここで再び「調査判定」を行っても良い。あるいは、ダンスホールの外で待機しているPCが存在する場合、調査判定の代わりに【ワザマエ】もしくはジツ判定(難易度HARD)により危険察知を行う。危機察知に成功した場合、次のことが分かる。

ダンスホール内で乱闘が発生した場合:赤黒の影が凄まじい勢いで接近してきていることが分かる。

シーン2:ダイダロスの出現

「ドーモ、ナンシー・リー=サンですね?」 彼女が振り向くと、そこには黒尽くめのニンジャが立っていた。ニンジャ頭巾からはウドンじみた何本ものLANケーブルが延び、背中に負った銀色の通信デヴァイスに接続されている。その目元は360度を監視できる円環型サイバーサングラスに隠されている。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

このシナリオでは『◆発生イベントとタイムライン』から連続する形で、ダイダロスがジンジャ・クラブのダンスホール内部へと姿を見せる。彼は泥のように輪郭を崩れさせるユーレイ・ゴスを脱ぎ捨てるようにして、突然その場に出現する。

サラリマンとスコルピオンの戦いが始まるとナンシーはその様子をハンディカムで撮影しながら、IRCでニンジャスレイヤーへと呼びかけ続けている。業を煮やして理性を欠いた彼女がヒステリックに怒鳴り散らしても、トリップ状態にある周囲のユーレイ・ゴスたちは人間的反応を示さない。

彼女が焦りを感じ始めたとき、ダイダロスがその背後に現れる。ナンシー・リーの位置を既に特定し、彼女を撒き餌として待機していたPCは彼の出現を即座に察知できるだろう。

ナンシー・リーを未発見の場合は?
この時点でナンシー・リーを発見できていない場合、残念ながらダイダロスの出現位置を特定することもできない。NMは再び調査判定を行うことを許しても良いが、続く「LAN直結とアンブッシュ」には一切関与できないとすることが望ましい。極限環境では1手の遅れが致命的な事態に繋がってしまうのだ。


LAN直結とインタラプト

「あなたのIPアドレスを解析し、ここにいることを突き止めました。私のハッキング能力の前では、ファイアウォールなどショウジ戸も同然なのです」ダイダロスはマジックハンドのような動きでナンシーの首を掴んだ。偶然にも結び目がほどけてゴスドレスが脱げ、コーカソイドのたわわな胸が露になった。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

この段階まで到達すると、ダイダロスは遂にナンシーへと接触する。彼は抵抗できないナンシーへ強制LAN直結を試み、PCはどう行動するべきか決断を求められることになる。

選択肢1:即座にダイダロスに襲いかかりインタラプトする。ダイダロスは確定で1ダメージを受け、ナンシーを開放する。ダイダロスは南側(あるいは敵が少ない方向)に逃走を始める。

ダンスホールで乱闘が発生していた場合、ここでニンジャスレイヤーがPOPし、スコルピオンの元へと向かう。ただし、PCがナンシーに干渉しようとする場合、メインターゲットはPCとなってしまう。

選択肢2:ダイダロスがナンシーにLAN直結して致命的な隙を晒すまで待つ。ニンジャスレイヤーのスリケンによるインタラプトがダイダロスを襲い、彼は即座に南側(あるいは敵が少ない方向)へと逃走を始める。あるいはPCが無慈悲にナンシーを傍観するような態度を見せていた場合、そのインタラプトはヘルタツマキとなり、ダイダロス、スコルピオン、そしてPCの全員を襲うことになる。

ダンスホールで乱闘が発生していなかった場合、NMはPCが芸術的なアンブッシュに成功し、ダイダロスに2ダメージを与えられたものとして処理する。ただし、続く戦闘ではスコルピオンが参戦してくることになる。

ナンシーはLAN直結により意識を失い、マップ上に「行動不能」状態で残される。

戦闘の火蓋:ダイダロスの逃走

ダイダロスとナンシーはアンブッシュのイベント発生時、大燭台の落下に巻き込まれないようなホールの中央部分にいる。ダイダロスはイベント発生時点で南側に退却を始め、およそ2~3ターンでホールの外に逃れてしまうだろう。最終的にP35のトリイに到達した時点でダイダロスはマップから脱出し、その【体力】が3以上残っていた場合は任務の失敗が確定する。

ダイダロスは脱出するまでの数ターンには様々なイベントが発生する。


◇NPCデータ:ダイダロス

戦闘が始まると、ダイダロスは毎ターン必ず移動して脱出を図り、監視カメラや肉眼で捉えられる全てのPCに『●クラウドハック』で妨害を仕掛ける(つまり、PC全員が常時射程範囲内と考える)。さらに事前にウイルスを仕込まれたPCや生体LAN端子を持つPCには追加でサイバネハックを仕掛け、混乱を巻き起こすだろう。『kill9』など半ば直接的にダメージを与える行動は取らない。

油断ならないマルチハッキング攻撃の一方、ダイダロスは物理的な攻撃にも対処する必要があり、焦りからも平時通りのハッキング能力が発揮できているとは言い難い。これを反映し、『kill9』など半ば直接的にダメージを与える攻撃手段は一切使用しない。NMはダイダロスが電子的な処理能力を単純に周囲のハッキングやモーター部隊の指揮に運用しているのだ、と説明するべきだろう。

◆ダイダロス (種別:ニンジャ/ハッカー)
カラテ     3   体力     6
ニューロン   17  精神力    19
ワザマエ    6   脚力     3
ジツ      3   万札     0
近接攻撃D:3、射撃D:6、回避D:17、ハッキングD:23
◇装備や特記事項							
 装備   :『*キーボード・オブ・ゴールデン・エイジ*』
 サイバネ :『▶︎▶︎▶︎生体LAN端子Lv3』、『▶ファイアウォールx3』
 スキル  :『●時間差』、『●マルチターゲット』、『●ニンジャ第六感』
       『☆謎めいたニンジャソウルLv3』

『電子の王』:
 ダイダロスは周囲の電子システムを瞬時に掌握し、恐るべきマルチタスクで自在に制御する。
 電子的あるいは物理的に視線の通る、任意の数の敵を対象に、ハッキング系スキルとして使用する。
 判定は『連射X』のようにしてダイスを分割して行い、その効果は1発毎に以下から自由に選択する。
 
 『●クラウドハック』:
  照明や音響システムで危険なサイケパターンを生み出し、さらに群衆の挙動を操作することで
  敵の三半規管を狂わせ行動を妨害する。ある種のゲン・ジツとみなされる。
 
  ダイダロスと同じ部屋、もしくは電子的に視線の通る1部屋に居る敵全員を対象とする。
  判定に成功した場合、対象は次の手番終了時まで『不覚状態』となる。

 『●サイバネハック』:
  ハッキングターゲット1体を対象とする。判定に成功した場合、
  対象の全てのサイバネは動作不良を起こし、次のダイダロスの手番まで完全に効果を失う。

『●ソウカイ・シックスゲイツ』:
 このニンジャの生死は物語全体に大きな影響を及ぼす。「即死」効果を除き、
 【体力】が0以下になってもその場で行動不能になるだけで、即座には爆発四散しない。
 1発でも『近接攻撃』による追加ダメージを受けると、カイシャクされたとみなされ、爆発四散する。


◇NPCデータ:ダイダロス・コネクト(ドクロ/ヤブ)

「ネンゴロを邪魔する無粋者め!よろしい、あなたがたのお相手は……」KRAAAASH!その時ジンジャ・カテドラルの天井から床のヒノキ材を貫き、轟音とともに大質量の金属塊が落下してきた『このモータードクロでして差し上げます』ハックされたホールの音響から無機質なダイダロスの声が響き、モータードクロは8本の武器をハンガーラックから引き抜いた。

『鋼鉄の暴威を前に為す術もなくネギトロと化しなさい』

ニンジャスレイヤー・キルズ

ダイダロスは【ベイン・オブ・サーペント】の出来事から現在に至るまでナンシー・リーを監視し、その動きを背後から誘導してきた存在である。そのため今回のナンシーの動きは予想外ではないが、彼の用意した道筋とはややズレた行動であった。

彼はやや違和感を覚えるナンシー・リーの行動に対する保険として、ジンジャ・クラブに足を踏み入れる前に、付近を飛行していたオムラ社の牽引ヘリにバックドアを仕込んでいた。ダイダロスはPCに襲撃を受けたタイミングでこの操作を奪い、積載されていたモータードクロを乗っ取ると同時にカテドラルへと投下する。

これにより、PCの行動を妨害するダイダロス、足留めと圧倒的な火力支援のモーター兵器という布陣がジンジャ・クラブ内へと即座に完成することとなる。なおこの戦闘において、モータードクロがPCに倒されることは殆ど想定されていない(安直にもモータードクロを倒せるほど火力と注意を集中させてしまえば、ダイダロスはあっという間にジンジャ・クラブから逃げ果せてしまうからだ)

ただしNMから「モータードクロは倒す必要がない」などとは言うべきではなく、ダイダロスの逃走劇を見て、PLが「ドクロは相手にしている場合ではない」と気づくよう上手く誘導する必要がある。

ゼンメツ・アクション・モード:ダイダロスが爆発四散したとき、ゼンメツ・アクション・モードが開放されたモータードクロは皮肉なことにその破壊能力を増加させる。一方でその全方位攻撃は周囲のモータルをも無差別に巻き込み始め、ニンジャスレイヤーからのヘイトを高める。

ダイダロスと戦闘している間は厄介で優先的に排除したいボスとして機能しつつ、ダイダロスが爆発四散した後はニンジャスレイヤーの囮として生かしておいたほうが有利になるという、極めて独特な立ち位置を与えられているのがこのシナリオのモータードクロだ。

◆モータードクロ| ダイダロス・コネクト(種別:戦闘兵器、大型2x2)
カラテ    8    体力   20/-1
ニューロン  17   精神力  –
ワザマエ   12   脚力   4
ジツ     –    万札   12
近接攻撃D:8、射撃D:12
◇装備や特記事項
 スキル:『●即死耐性』、『●轢殺攻撃2』、『●ダメージ軽減1』

 ショック・サスマタ: テック近接武器、連続攻撃2、ダメージ2(1+電磁1)、拘束攻撃
 レッキングボール: 近接武器、連続攻撃1、D6ダメージ、弾き飛ばし、リーチ+1

 ショットガンx2: 銃器、連射2、ダメージ2、時間差、マルチターゲット
 ミサイル: 銃器、連射1、爆発(カトンLV2)
 アンタイニンジャ・スナイパーライフル: 銃器、連射1、ダメージD3、回避HARD
 ガトリングガン: 銃器、連射6、ダメージ1、チェーンターゲット
   (全ターゲットが互いに隣接している場合のみマルチターゲット扱いにできる)


『●ダイダロス・コネクト』:
  この戦闘兵器はソウカイ・シックスゲイツ「ダイダロス」によって制御されている。
  高度な並列操作により、次のスキルを所持するものとみなされる。

  『◉突撃』、『◉ツジギリ』、『◉タクティカル移動射撃』、『★掴み取りの腕』、『◉足留め』
  
  また攻撃フェイズ開始時、ダイダロスが【精神力】を2点消費することで
  このターン、このスキルを持つ全ての戦闘兵器は『◉キリングマシーン』の効果を得る。
  ※『●ゼンメツ・アクション・モード』と併用は不可。

 『●足留め』:
  ダイダロスの戦術指揮により、ブロッキングや牽制射撃で敵の行動を的確に制限する。
  
  手番終了フェイズ、その手番で攻撃対象とした敵の1人を指定して『足留め』を宣言できる。
  その対象は次の行動手番において「移動フェイズ」の行動権を失う。

『●ゼンメツ・アクション・モード』:
 モータードクロは移動フェイズで移動をあきらめる代わりに、射撃を行ってもよい。
 この場合、手番中に「射撃」→「射撃」や「射撃」→「近接攻撃」などの行動が可能である。
 ただし、「攻撃フェイズ」で使用する銃器は、直前の「移動フェイズ」で使用した銃器を選択できない。


モータドクロのみの場合、敵からの攻撃の苛烈さが生ぬるいと感じてしまう可能性が高い。戦闘難易度が足りないと感じる場合、NMは2体のモーターヤブを追加でダイダロスに操作させ、ヘリボーン投下する。

◆モーターヤブ|ダイダロス・コネクト(種別:戦闘兵器)
カラテ    6  体力    12
ニューロン  3  精神力  -
ワザマエ   6  脚力   2
ジツ     –  万札   6
近接攻撃D:6、射撃D:6				
◇装備や特記事項
 ショック・サスマタ: テック近接武器、連続攻撃2、ダメージ2(1+電磁1)、拘束攻撃
 ガトリングガン・アーム: 銃器、連射6、ダメージ1、バースト2x2、射撃難易度:NORMAL

『●射撃スタイル:銃弾の雨1』:
  通常の射撃(連射6)かこの射撃スタイルか、どちらか片方をターンごとに選択する。
   このスタイルは、視線が通っている3x3の範囲に対して自動的に1ダメージを与える(回避:HARD)。

『◉移動スタイル:跳躍移動』:
  3マス以内の好きな地点へと、カンガルーめいた跳躍によって移動する。
  飛行装置を持っているわけではないが、ルール上は『飛行移動』をそのまま使用する。

『●ダイダロスコネクト』:
  この戦闘兵器はソウカイ・シックスゲイツ「ダイダロス」によって制御されている。
  高度な並列操作により、次のスキルを所持するものとみなされる。

  『◉突撃』、『◉ツジギリ』、『◉タクティカル移動射撃』、『★掴み取りの腕』、『◉足留め』
  
  また攻撃フェイズ開始時、ダイダロスが【精神力】を2点消費することで
  このターン、このスキルを持つ全ての戦闘兵器は『◉キリングマシーン』の効果を得る。
  ※『●ゼンメツ・アクション・モード』と併用は不可。

 『●足留め』:
  ダイダロスの戦術指揮により、ブロッキングや牽制射撃で敵の行動を的確に制限する。
  
  手番終了フェイズ、その手番で攻撃対象とした敵の1人を指定して『足留め』を宣言できる。
  その対象は次の行動手番において「移動フェイズ」の行動権を失う。

『ダイダロス・コネクト』を持つモーター兵器は、PCの移動フェイズを問答無用で阻害する強力なクラウドコントロール能力を持っている。基本的な運用としてはモータードクロが2x2の巨体でダイダロスを守り、PCの射線を遮りながら、近接攻撃に特化した強力なPCの攻撃を一手に引き受けるような使い方になる。

これは全てを無視して一目散にターゲット(=ダイダロス)を狙う、という状況になってしまうことを防止する意味合いが強い。これによって逃げ出すダイダロスを追うPC、モータードクロ/ヤブの足留めを受けながらカラテ応酬を行うPC、と自然と役割分担が発生するだろう。

◇踏み潰し

冷酷無情なロボ・ニンジャは人混みのユーレイ・ゴスを薙ぎ倒したり踏み潰したりしながらダンスホールを進軍する。これを反映し、通過した後の「ホール」マスは効果を失う。

あるいはマシンガン掃射などによってユーレイ・ゴスが次々と巻き添えで死んでいくような描写を行っても良いだろう。ニンジャスレイヤー、ソウカイヤ、シックスゲイツ、モーター兵器、PC、この中で最も無慈悲でヘイト(あるいはDKK)を稼ぐキャラクターであるとしておくことが望ましい。


◇NPCデータ:ニンジャスレイヤー

 スコルピオンは獲物を狙うライオンの眼で、燭台の上に立ち直立不動の姿勢を取る敵の姿を観察した。相手は赤黒いニンジャ装束に身を包み、口元は「忍」「殺」と彫られた金属メンポで隠されている。スコルピオンは知らないが、彼こそはすべてのニンジャを殺す者、復讐の戦士ニンジャスレイヤーであった。

【ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ】

インタラプトシーンで登場していない場合、戦闘開始から2ターン経過時にニンジャスレイヤーがダンスホールへとエントリーする。

本来のトリロジーエピソードより早くエゴが鍛えられているニンジャスレイヤーの行動優先度は「ナンシーの身の安全 > モータルを虐げる暴虐の排除 > ニンジャの殺害」である。これに従うと、彼はまずナンシーを守りながらスコルピオンと戦いつつ、ユーレイ・ゴスを巻き込んで暴れまわるモータードクロに意識を取られることになる。

1対1の状況下において、ニンジャスレイヤーは戦闘開始からおそらく2ターン程度でスコルピオンを殺害し、カトン自爆がカテドラルを炎に包む。しかしながらモータルを殺戮して回るモータードクロも看過できない存在であり、スコルピオンに対処しながらモータードクロの排除に取り掛かる可能性も高い。

TIPS:要するに、スタンダードな状態においてはニンジャスレイヤーがPCやダイダロスを優先攻撃ターゲットに据えないよう設計されている。一方でPCがモータルを範囲攻撃で吹き飛ばしながら戦っていたり、ナンシーを囮に利用して犠牲にしていた場合はそれに限らない。

この場合、ニンジャスレイヤーは状況判断し、スコルピオンとPCを最も優先的な攻撃対象としてランダムで攻撃を仕掛けてくる。このとき『●最終的に全員殺せば良いのだ!』の効果を発動するかどうかはNMの裁量に任されている。

◆ニンジャスレイヤー:ベイン・オブ・ソウカイヤ (種別:ニンジャ)
カラテ    16  体力   16
ニューロン  10  精神力  12
ワザマエ   12  脚力   8/N
ジツ     0  万札   10

攻撃/射撃/機先/電脳  16/12/10/10
回避/精密/側転/発動  17/12/12/10

回避難易度修正: 対近接攻撃(難易度−1/ジュージツ)、対スリケン射撃(難易度−1/見切り)
ダメージ修正 : 『鉄拳』の効果により、『近接攻撃』はダメージ2(1+1)、『装甲貫通1』となる。
         ランスキックは3ダメージ(1+1+痛打1)、『装甲貫通1』、『弾き飛ばし』となる。

◇装備や特記事項
 装備 :家族の写真、パーソナルメンポ、伝統的ニンジャ装束
 スキル:『●連続攻撃3』、『●連射2』、『●時間差』、『●マルチターゲット』
     『◉◉タツジン:ジュージツ』、『◉スリケンの見切り』、『◉鉄拳』、『◉ランスキック』
     『◉ヒサツ:ワザ・ポン・パンチ』、『◉ヒサツ・ワザ:サマーソルトキック』
     『◉チャドー呼吸』、『◉ヒサツ・ワザ:タツマキケン』、『◉◉憎悪:ニンジャソウルの闇』
     『◉憎悪:ソウカイヤ』、『◉憎悪:ザイバツ』、『◉憎悪:アマクダリ』、
     『◉ヘルタツマキ』、『◉ツヨイ・スリケン』、『◉ナラク・ウィズイン』、『◉即死耐性』

『●憎悪の炉』:
 対峙する敵対ニンジャが持つDKK値の合計の半分(端数切り上げ)だけ「近接攻撃ダイス」が増加する。

『●舌鋒鋭き死神』:
 ニンジャスレイヤーは舌戦により相手を打ち負かすことで精神的優位に立つ。
 手番開始時、『瞬時行動』として敵対キャラ1体を対象に【ニューロン】による対抗判定を挑める。
 この判定にはサイバネによるダイスボーナスは得られない。

 ニンジャスレイヤーが対抗判定に勝利した場合、対象は【精神力】ダメージ1を受け、
 対象の次の手番終了フェイズまで『集中』状態に入れなくなり、ニンジャスレイヤーに対する
 攻撃および回避判定の難易度がすべて+1されてしまう。
 この効果はシナリオ中、同じキャラには1回までしか挑むことができない。

『●最終的に全員殺せば良いのだ!』:
 ニンジャスレイヤーは複数人の敵と対峙するとき、巧みな立ち回りで敵を分断し、
 不利な状況に追い込んだ上で順番に殺す。
 
 敵対するボス級の敵が3人以上の場合、ニンジャスレイヤーは「敵対するボス級の敵の数-2」
 の半分(端数切り上げ)に等しい値分だけ、『回避ダイス』が+8され、追加の行動手番を得る。
 
 ※つまり、PCが3名+スコルピオンと4人のニンジャを相手にするとき、ニンジャスレイヤーは
  毎ターン獲得できる回避ダイスが25個となり、手番終了後さらに2回目の行動手番を得ることになる。

ニンジャ殺すべし!:このシナリオで登場するニンジャスレイヤーは本編時系列と比較しても遥かに強く鍛え上げられている。これはAoS時空で所属ニンジャの質と人数を急速に向上させているソウカイヤとのイクサの日々、あるいはアマクダリなど新たな敵対組織が台頭する混沌状況に対応しつつあることを反映したものだ。場合によっては未だゲンドーソーが生存しており、彼にインストラクションを授けているのかもしれない。

少なくともこれは「今敵に回せば非常に不味い状況になる」とPCやPLに感じさせるためのものである。このシナリオではニンジャスレイヤーに狙われるリスクと、任務の迅速な遂行を天秤にかけなくてはならないのだ。


シーン3:新たなシックスゲイツ

血みどろの殺戮劇が繰り広げられるジンジャ・カテドラル。そこへトリイを潜り、新たに2人の客がエントリーした「やけにニンジャくさいと思ったら、これだ。後方担当がフラフラ出歩いてんじゃねぇぞ、ダイダロス=サン!」否、それはミリタリー装束のニンジャである!

「お前ら……なんで生きてやがる?」一瞬、クレイニアムの顔が訝しげな表情を作った「……で、何だァその腕は?ピッカピカの良いサイバネじゃあないか。けどなぁ、ソウカイヤをヌケニンして、んなもんでカラテ鍛えたつもりになってんなら、笑っちまうね!」

このシナリオではダイダロスの無謀な行動を"嗅ぎつけ"待ち伏せていたシックスゲイツのひとりクレイニアムが、騒ぎがおきるやいなや、部下を引き連れてその救出にジンジャ・クラブへと乗り込んでくる。NMはこのイベントを、ダイダロスがホールの外に脱出する直前、おおよそ戦闘開始から2ターン経過時点で発生させるのがよいだろう。

クレイニアムとその部下は入り口のトリイ・ゲート付近に配置され、そこから行動を開始する。一旦はダンスホールの外側で移動を停止するため、実際に戦闘へと干渉することになるのはさらに1ターンが経過してからだ。シナリオ進行上のタイミングとしては、PCがダイダロスを追い詰める直前程度にこれが発生することが望ましい。

ダイダロスを始末した場合、PCはクレイニアムの追撃を受けながら撤退することとなる。この場合、「初期配置マス」まで到達することでマップから離脱に成功したものとみなされる。

なお、ダイダロスが爆発四散ないし行動不能となったとき、このシーンにおけるクレイニアムとの戦闘では『乱戦』のルールが適用される。つまり、ボス級の敵に対して敵味方問わず最大で2人までしか攻撃を行うことができなくなる。

◇NPCデータ:クレイニアム

クレイニアムは爆発四散したヒュージシュリケンとアースクエイクの欠員を埋めるため最近シックスゲイツに加わった教官ニンジャである。多連装式のランチャー砲に加え、瞬時にリボルバーやダガーナイフに変形する機構を備えたアパッチ・ナックルダスターで武装し、自傷もいとわない特殊カトン・ジツを組み合わせた苛烈なミリタリー・ボックスカラテで戦う。

湾岸警備隊上がりである彼女はスカウト部門と連携し、トコロザワ・ピラーを始めとする数カ所のトレーニンググラウンドでニュービーを、また見込みのある者を部下として重点教育を行っている。


このキャラクターはPCの過去を知る重要な登場人物である。PCたちはかつてソウカイヤで彼女の部下としてカラテ教育を受けており、不審なニンジャ活動の疑惑があるエリア調査へと送り出された結果、爆発四散痕として発見された(これはPCたちを叩きのめしたアシッドウルフによる偽装工作であり、彼女はこれを見て部下たちが相打ちで爆発四散したのだと信じ込んでしまった)。

彼女は上記の理由からPCたちの本当のニンジャネームを知っており、彼らが名乗るニンジャネームを訝しみ、その生存に僅かに動揺してみせる。しかしこのシナリオでは多くを語らず、彼女も深く考えることを止め、PCの目的の妨害だけを考えてシンプルな暴力を振るってくる。

「やってみな……できるものならな!」

◆クレイニアム (種別:ニンジャ)
カラテ     12   体力     19
ニューロン   8   精神力    9
ワザマエ    7   脚力     6
ジツ      5   万札     50
近接攻撃D:14(15)、射撃D:9、回避D:14、緊急回避D:9
◇装備や特記事項
 装備 :『**ガスマスクメンポ&ミリタリー装束+2**(業物の近代的ニンジャ装束一式+2)』
 消耗品:『オーガニック・トロスシ』、『ZBRタバコ(効果なし)』
 スキル:『●連続攻撃2』、『●連射2』、『●時間差』、『●マルチターゲット』
     『◉特殊近接ステップ』、『◉◉タツジン:ボックスカラテ』
     『◉緊急ブリッジ回避』、『◉頑強なる肉体』、『◉防具習熟』、『●即死耐性』
     『☆カトン・ジツLv3』、『★カトン・パンチ』

『★◉特殊カトン・ジツ』:
 カラテ打撃と同時に、拳の先に小爆発を生じさせる特殊なカトン・ジツ。
 攻撃フェイズ開始時、【精神力】Xを消費することで次の戦闘スタイルを使用できる。

 『●戦闘スタイル:捨て身の強打|強打』:精神力コスト1
  この攻撃は『エンハンス不可』となるが、判定の成否に関わらず
  攻撃対象を中心に「爆発(3x3)」が自動的に発生するようになる(全て『時間差可』)。

  ※発生する「爆発(3x3)」は術者を含む敵味方全員を巻き込む。術者はこれを回避できない。
  ※例えば「連続攻撃3」に全成功した場合、これは時間差可の6連続攻撃となる。

 『●戦闘スタイル:収束カトン・パンチ|収束』:精神力コスト3
  この攻撃は『エンハンス不可』となるが、判定の成否に関わらず、
  最後の近接攻撃対象を中心に『グレーター・カトン・ジツ』が発生する。
  シナリオ中1回までの使用。

  ※発生するカトンは術者を含む敵味方全員を巻き込む。術者はこれを回避できない(D3ダメージ)。


◇NPCデータ:メイントリガー

クレイニアム直属の部下であるメイントリガーは高度なミリタリー訓練を受けており、彼はこれを繊細なデン・ジツと組み合わせた遠近両用のカラテスタイルを確立している。メイントリガーは自らが用いる殺人ワイヤーやアサルトライフルにまでデン・ジツによるエンハンスを施しており、これによる弾頭の加速やワイヤーの挙動制御といった繊細だが極めて危険な攻撃を繰り出す。

このミリタリーニンジャはかつてPCの組手の相手を務めたこともあり、カラテを交したPCは妙な既視感を覚える可能性がある。ただし彼の最優先目標はシックスゲイツの身の安全であり、PCを殺すことには何の躊躇いもない。


クレイニアムと共にジンジャ・クラブに突入してくるメイントリガーは、彼女の指示に従い、まずはニンジャスレイヤーと交戦中のスコルピオンの応援に向かう。(PCがダイダロスを始末し)ニンジャスレイヤーがナンシーを連れて撤退すると、その標的は逃走するPCとなる。

◆メイントリガー(種別:ニンジャ)
カラテ     7  体力     9
ニューロン   9  精神力    9
ワザマエ    8  脚力     5
ジツ      3  万札     25
近接攻撃D:7、精密攻撃D:9、射撃D:10、回避D:10
◇装備やスキル
サイバネ:『▶サイバネアイLv1』、『▶︎ヒキャク』
装備  :『近代的タクティカルニンジャ装束一式』、『湾岸警備隊制式グレネードベルト』
スキル :『●連続攻撃2』、『●連射2』、『●時間差』、『●マルチターゲット』
     『◉◉タツジン:ムチ・ドー』、『◉タクティカル移動射撃』
     『◉シャープシューター』、『◉回転斬撃強化』

『アサルトライフル&ミハル・ドットサイト(電磁エンハンス)』:
 遠隔武器、小銃、ライフル、連射2、時間差可、ダメージ1、電磁ダメージ1、出目【6,6】痛打+1

『電磁スモーク・グレネード』:
 遠隔武器、手榴弾、使い捨て、爆発『3x3』、電磁ダメージ1、回避ダイスダメージ2

『モノフィラメント・ワイヤーウィップ(ムチ)』:
 通常のムチのステータスへエンハンスによる『電磁ダメージボーナス+1』が付与されている。


◇NPCデータ:オグナンジェ

『こんなの上から聞いてなぃ!』『セキュリティ部門の予算を喰らえッ!』

ジンジャ・クラブには姿を表さないが、周辺に停車している軍用車両にはダイダロスの部下がひとりアグラメンテーションしながら待機している。このニンジャ、オグナンジェは特殊なミガワリ・ジツの使い手であり、電子的に観測できる相手や、事前にタグ付けしておいた対象と他の誰かの位置を、まるでテレポーテーションのように入れ替えることができる。

このシナリオでクレイニアムが即死した、あるいは【体力】が0以下まで低下した場合、オグナンジェのジツが「第2の心臓」のように機能し、彼女をジンジャ・クラブから救出する。

補足:ダイダロスをジンジャ・クラブに突然出現させたのも、他ならぬオグナンジェのジツの仕業だが、このジツには同じ対象を1日に1回までしか対象にできないという縛りが存在している。そのため、オグナンジェはダイダロスがPCに襲われてもテレポーテーションで救い出すことができなかった。

PCがクレイニアムの追跡から逃れた場合、オグナンジェは電子的な目を介して彼らを追跡し、次々と通行人をクローンヤクザに入れ替えて飽和攻撃を仕掛けてくる。

◆オグナンジェ(種別:ニンジャ)
カラテ     3    体力     3
ニューロン   13    精神力    19
ワザマエ    4    脚力     2
ジツ      5    万札     50
近接攻撃D:3、射撃D:4、回避D:13
◇装備やスキル
 スキル :『●時間差』、『●マルチターゲット』、『●ニンジャ第六感』
      『◉kill_9』、『◉killall』、『◉ニューロマンシー』
      『◉ニューロンブースト』、『◉◉グレーター級ソウルの力』

 装備  :『パーソナルメンポ』、『退廃的ニンジャ装束(効果なし)』
      『退廃的アジト&巨大ザゼンドリンク冷蔵庫』

 『★チェンジリング・ジツ』:
  手番開始時に【精神力】を1消費して発動する(難易度HARD、瞬時)。
  生物を1体選択し、選択した別の生物と位置を入れ替える(戦闘兵器など無機物は対象外)。
  それぞれの対象は術者が肉眼もしくは電子的に視認できるキャラでなくてはならない。
  このジツは同じ対象についてシナリオ中1回までしか使用できない。
 
 『●クローンヤクザ軍団転送』:
  手番開始時に【精神力】3を消費し、難易度HARDで発動判定を行う(瞬時)。
  成功した場合、監視中のマップに3体までの「廉価版デストロヤクザ」をPOPさせてもよい。
  あるいは術者が望むなら、代わりに3体までの「クローンヤクザ」をPOPさせてもよい。
  
  このとき【精神力】を追加で2消費する時、さらに3体の「クローンヤクザ」をPOPさせる。

 『★ミガワリ・ジツ』:
  術者もしくは味方がダメージを受ける時、【精神力】を3消費し難易度U-HARDで発動判定を行う。
  成功した場合、その肉体は即座に泥のように分解し、受けるはずだったダメージを無効化する。
  このとき術者が視認できる他のキャラと即座に位置を入れ替えるかマップから除外しても構わない。
  
  攻撃者にまだ攻撃回数が残っていたとしても、攻撃フェイズは強制的に中断する。
 
 『●ブレイクタイム』:
  オグナンジェは『その他の行動』として席を外し、小休憩を取ることができる。
  このときD3+1の【精神力】を回復するが、D3の出目が3の場合は薬物の過剰摂取の副作用により
  次の手番に行動できなくなる。


分岐ポイント

このシナリオでは幾つかCPの今後の展開に係る分岐ポイントが存在している。具体的には「ダイダロスの生死」「クレイニアムとの遭遇の有無」の2つだ。

PCが先走ってスコルピオンを襲撃するなど騒ぎを起こしたり、監視カメラに映ったりした場合、ダイダロスはそもそもこのシナリオに現れず生存が確定する。彼らはダイダロスによるトレース対策として、ほとぼりが冷めるまでブラックサイトに帰ることは許されないだろう。ダイダロスをほぼ無傷の状態(HP4~3)で逃した場合も同様だ。

ダイダロスがHP2以下の状態で逃げおおせた、あるいはカイシャクされなかった場合、彼は重症で床に伏せることとなり、当面の間は電子ネットワーク上の監視が緩む。これによってザイバツ側の攻勢が強まり、ネオサイタマにおける戦闘は激化する。

上記のパターンでは少なくともダイダロスは生存するため、最終局面で「アシッドウルフ側」につく場合は極めて強力な電子世界のボスとして大立ち回りを演じ、逆に「ソウカイヤ側」やその他勢力につく場合は非常に頼もしい後方支援担当として機能する。

一方でダイダロスが爆発四散した場合、上記の「ボス」「後方支援」のどちらも原則発生しなくなる。このシナリオの段階でPC・PLには先の分岐点を予測することはできない。当然、NMも彼らが何を選択するかを完璧に予想することはできない。ダイダロスとの戦いの結末がどのような形でインガオホーとなるかはまだ誰にもわからないのだ。

グリーンゴースト:展開によっては、アシッドウルフの計画を打ち砕くための重要なピースが致命的に欠け「詰み」に陥る可能性も考えられる。それを解決するオプションとして、ダイダロスの「サイバネハック」による攻撃を受けていたPCのサイバネティクスには、彼の残留思念が「グリーンゴースト」として宿ってしまう(あるいは宿ってしまっていた)ことにしても構わない。これは土壇場での予想外の助け、あるいは敵となることだろう。

またクレイニアムとの遭遇はほぼ不可避であり、PCは「自分たちの隠されたニンジャネームを知る人物が存在する」ことや「自分たちが生きていたことに驚く人物が存在する」ことを知り、少なからず自らのバックグラウンドや過去に疑念を抱くことになる。

場合によっては『オペレイシヨン・ケイオス(後編)』で開放される『個人的な調査』により、クレイニアムの居所を突き止めてインタビューしようと考えるPCも出てくるかもしれない。その場合は、サンプルシナリオ8話『コールドフィート』の内容を改変して実施することが望ましい。


結末:脱出あるいはストリートのイクサ

先述の通り、ダイダロスを始末した場合、PCはクレイニアムの追撃を受けながら撤退することとなる。この場合、マップ中の「初期配置マス」すなわちカネモチ・ディストリクトのストリートに到達した時点で脱出に成功したとみなされ、マップから離脱することができる(シナリオクリア)

NMは全PCが脱出に成功した時点でシナリオを終了させても構わないし、あるいはオグナンジェによって転送されたソウカイヤのクローンヤクザ部隊が襲撃してくるなどのイベントを発生させてイクサを延長戦にもつれ込ませても構わない(あるいはそれをロールプレイ・イベントとして処理する)。


エピローグ

暗殺者を追撃しようとしたクレイニアムは、新たなアンブッシュ者のカラテを膝、拳の装甲で受け、首と肩で掴み取ったカタナを圧し折った。

「ドーモ、シールドバックラーです」「エイティスケルタルです」「カタナワームです」アンブッシュ者は飛び退き、アイサツした。

「ドーモ、クレイニアムです」シールドバックラーの頭蓋骨が鉄板入りブーツの蹴りを受け粉微塵に砕けた。次に、カタナワームの顎先が爆散した。「「アバーッ!サヨナラ!」」

「バカな……!」エイティスケルタルは驚愕の表情で一歩後ろに下がった。「もうひとり居るんだろ?バレバレなんだよ」「フフフ、流石だ。貴様がソウカイ・シックスゲイツのクレイニアム=サンだな」苛立つ声に応えるように、影から更にひとりのニンジャが現れた。

「ドーモ、エッジシャドウです。不用意に外出すべきではなかったな?その首、ザイバツが貰い受ける」クレイニアムは闇に姿をくらます暗殺者を目で追った。「アタシは今苛ついてんだ。死ね」ネオサイタマの闇をかけるブラックサイトのニンジャたちの背後から、再び、凄まじい爆発音が響き渡った……。


かくして、ネオサイタマ全土のネットワークを監視するシックスゲイツのニンジャ、ダイダロスは爆発四散した。"ボス"は空虚な拍手を両のサイバネで打ち鳴らしながら言うだろう。

ソラへの門が開かれた、もはや障害はない。

01010101たちは重大な何かを成し遂げた……あるいは"しでかした"のだ。
このインガオホーが如何なる方で結末に影響を及ぼすのかは……まだ誰にも分からない。

PCの追撃を続けようとするクレイニアムは、ザイバツの暗殺者の登場によりその中断を余儀なくされてしまう。良い意味でも悪い意味でも、これはPCたちにとってインガオホーである。先述のように、このシナリオにおけるPCの行動の結果が凶と出るか吉と出るかはまだ誰にもわからない。


◇報酬(PC1人あたり)

基本報酬:余暇4日

※撃破したキャラクターの所持万札は除く。
 調整したい場合、所持万札のドロップを無しにして想定獲得分を基本報酬に加算する。
◇シナリオ目標の達成度に応じた追加報酬

評価A:1人あたり【万札】50、【名声】+2 :ダイダロスを爆発四散させた。
評価B:1人あたり【万札】50、【名声】+1 :ダイダロスを行動不能状態に追い込んだ。
評価C:1人あたり【万札】25、【名声】+1 :ダイダロスの体力を半分以下まで減らし、重症を負わせた。
評価D:1人あたり【万札】10 :ダイダロスに逃げられてしまった。


補足コメント

「オペレイシヨン・スターゲイト」というタイトルの引用元となったのは、『スターゲイト計画』と呼ばれるアメリカ陸軍の極秘計画であり、軍事作戦に超能力の一種である"遠隔透視"を利用しようと試みる計画でした。

これは1970年代の米ソ冷戦時代に行われていたもので、共産圏との超能力研究の格差(遅れ)に焦りを感じて始まったもの……とされています。最終的に、このプロジェクトはCIAに移管され「成果なし」と判断されて幕を閉じることになりました。一方で、そこで蓄積された心理戦の観点からみた技術は米陸軍内で引き継がれているのでは、という声もあります。

「オペレイシヨン・スターゲイト」では、『スターゲイト』というキーワードを2つの意味合いでタイトルに用いられています。1つはこのシナリオにおけるミッションが電子的な「星の門」に関わっており、軌道上の軍事衛星、ひいては月面のA.R.G.O.S.へと繋がる道を、門番であるダイダロスを倒すことで開くことができる……と直接的にシナリオの内容に掛けたニュアンスで。

もうひとつは、ダイダロスが持つハッキングによる遠隔透視能力を、かつて米軍が求めた"遠隔監視"能力に重ね合わせ、さらにはそれを排除した時、さらに強大なA.R.G.O.S.の"遠隔監視"能力がもたらされるのだ……と、ある意味でこのシナリオがかつての『スターゲイト計画』の延長線上にあるかのようなニュアンスで用いられています。

実際のところ、ニンジャスレイヤーの世界における『スターゲイト計画』はA.R.G.O.S.の開発やインターネットないしオヒガンの研究計画の一環であったのかもしれません。


シナリオ演出面ではニンジャスレイヤーのメディアミックス的な要素にもフォーカスを当てたかった部分があり、ダイダロスのシックスゲイツとしての油断なさを演出するため、『ニンジャスレイヤー・キルズ』をオマージュする形で、ダイダロスに同時操作されるモーター兵器部隊を登場させています。一方、音楽が爆音で鳴り響きレーザーライトが飛び交うダンスクラブにて、特定のターゲットを狙った無差別な銃撃戦が展開されてしまうというシチュエーションは『Call of Duty:Black Ops 2』から強く影響を受けています。

これまでのシナリオとは打って変わり、無関係の民間人が逃げ惑う(あるいはぼんやりと突っ立っている)状況で、損益も込でどのように立ち回るべきか、素早い判断を求められるのもこのシナリオの特徴に仕上がっているかと思います。


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