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【NJRPG-2ND/シナリオ】フォールス・ウインター#5-1:オペレイシヨン・ケイオス(前編)

あらすじ:戦争を引き起こすべくキョート・リパブリック国境付近へと赴くブラックサイトの鷲のニンジャたち。ドサンコで暗躍するエージェントらが姿を見せるなか、行く先には盤面をひっくり返す、ブラックサイトの秘密兵器が待ち受けるのであった。

これは「ニンジャスレイヤーTRPG2版」のシステムに対応した、「鷲のニンジャ」がテーマのキャンペーン『フォールス・ウインター』の第五話に該当するサンプルシナリオ記事です。

プレイ人数:4~5名
所要時間:16時間(オンラインセッション/テキストセッション)
難易度:キャンペーン専用のルールで作成後、4シナリオを踏破した程度の強さのPCを想定(成長の壁(1)をそれぞれ1~3つずつ超えている)

キャンペーン全体の背景設定やルート分岐の調整方法などは、別途CPセッティング記事も参考にしてください。

※各ゲーム要素はニンジャスレイヤーTRPG初版で行ったキャンペーン実卓を元に、2版向けへコンバートされたものです。ゲームバランスは現行環境やプレイヤーキャラクターに合わせて都度調整することを推奨します。

関連記事はこちらのマガジンから。

◇本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター    → ゲームの進行役。描写などを行う。
PL:プレイヤー       → ゲームの参加者。PCを操作する。
PC:プレイヤーキャラクター → ゲーム内の主人公。メインキャラ。

前シナリオ

マップデータ

このシナリオで使用するマップデータはGoogle スプレッドシートで作成されています。下記からローカルにダウンロードするか、ご自身のアカウントにコピーを作成してGoogle スプレッドシート上で使用してください。


はじめに

このシナリオはCP全体の物語で言うと、三幕構成のうち第一幕の終わりに訪れるターニングポイントに相当する。PCはここまでのシナリオにおいて、『鷲のニンジャとしてアマクダリに対抗し、アシッドウルフと共に〈鷲の一族〉の支配を取り戻す』という漠然とした目的や立ち位置を頭に叩き込まれてきた。このシナリオはそんな彼らに、アシッドウルフが目的達成のため具体的に何をしようとしているのか、その大それた計画の一端を垣間見せる役割を担っている。

『オペレイシヨン・ケイオス』は重要なイベントと簡単な戦闘が発生する前篇と、3回の戦闘が発生する後編の前後編の構成となっている(本記事は前編シナリオに該当)。前編において、アシッドウルフは恐るべきASATS(対衛星スリケン)によりオムラのキョート支社を攻撃する。後編ではASATSに施されたオナタカミ偽装データを発端として、オムラ対オナタカミの抗争が勃発。PCはそこに介入し、オナタカミを消耗させることでネオサイタマの勢力図を傾けてゆくことになる。


一方で、PCが従順さに欠け、上記の目的や役割を十分に理解できていない場合、アシッドウルフは彼らが『まだ使えない』と判断し、このシナリオは発生しない可能性がある。この場合、NMは『オペレイシヨン・ケイオス』を別のシナリオに置き換えるか、別のシナリオを1つ挟んでから実施すると良い。前者の場合、PCはアシッドウルフの計画に近づくことができず、場合によっては不信感を募らせる結果になるだろう。


導入:カットシーン(前編)

 ギゴンギゴンギゴン……。ターンテーブルめいた線路が軋みながら回転を止め、重々しい鋼鉄と無骨な強化カーボネイト装甲板によって包まれた黒い新幹線の車体が、リボルバーに装填される弾丸めいて、ゆっくりとホームへ滑り込んできた。ホームの両端に並んだ細い鉄の柱から、定期的に火柱が吹き上がる。

導入の描写テキスト

このシナリオはPCたちがネオサイタマの出国ゲートを潜り、搭乗予定であるチョッコビン・エクスプレス社の新幹線のホームに辿り着いたところからシーンが始まる。

PCたちのボスであるアシッドウルフは『チョッコビン・エクスプレス社の新幹線に乗れ』という簡潔な指示と共に、偽造パスポートとチケットを寄越した。彼らはいつものごとく目的を知らされないまま、キョート行きの新幹線に乗ることとなる。チケットの指定座席は機密性のためか、驚くべきことにダイミョ・クラスとなっている。

「NS893便の準備が整いましたので、ダイミョ・クラスのお客様から乗車ドスエ」ホームと出発ロビーに、電子マイコ音声のアナウンスと和太鼓の小気味良いBGMが流れ、キョート・アトモスフィアを高める。ダイミョ・クラスは、一般的な飛行機で言うところのファースト・クラスだ。

チョッコビン鉄道社はソウカイヤ系の企業であり、PCが手にするパスポートもその存在を匂わせるものなのか、彼らは何の手荷物検査を受けることもなく、また誰にも見咎められることなくダイミョ・クラス車両に乗り込むことができる。NMはある程度のRP時間を設けた後、シーンを進行する。


シーン1:合流/ダイミョ・クラス車両

君たちがダイミョ・クラス車両へ足を踏み入れると、アグラメンテーションを行っていた老ニンジャが座敷の奥で青い目を開いた。普段とは異なるメンポを身に着け、深く皺の刻まれた目元を見せるのはアシッドウルフその人である。彼の側には見慣れない2人のニンジャの姿があった。

PCが車両に足を踏み入れると、そこにはアシッドウルフ(アレン)とその部下のニンジャ2人が待ち受けている。そして彼らは、恐らくここで初めてアシッドウルフの素顔を眼にする。彼は白髮を短く整えた70歳近いコーカソイド系の外見をしており、目元には深い皺が刻まれている。その眼は青く、注意深く観察すればその瞳孔は黒いエメツ結晶で構成されていることが分かる。

TIPS:過去のシナリオでPCが対面しているのはすべて『アシッドウルフ(スパイマスター)』であり、顔のすべてを覆うフルメンポによりその素顔を目にする機会はなかった。

このシナリオでは初めて『アシッドウルフ(アレン)』がPCの前に姿を現し、ハーフメンポで隠されてはいるが、その素顔を顕にする。これにより、PCおよびPLは必然的に『アシッドウルフ(スパイマスター)』のフルメンポの下にも同じ顔があると思い込む。しかし実際にはアシッドウルフは2人存在し、それぞれ別の素顔を持つが、現段階でPCらにそれを知る術はない。

外見を除き、明確に『アシッドウルフ(スパイマスター)』と異なる点は人称であり、アレンは常に『私/貴様』という表現を用いる。

アシッドウルフ(アレン)が引き連れている2人のニンジャはドサンコ・ウェイストランドで活動していた鷲のニンジャである。PCは自分たち以外にもこうしたエージェント(=腕のニンジャ)が存在することを初めて知る。

アシッドウルフ(アレン)は「目的地までまだ時間が掛かるため適当にしていろ」と言いつつ、先述の2人について簡潔に紹介する。


◇NPCデータ:ミスクリエイテッド

ミスクリエイテッドはフードローブに隠れてしまうような小柄な体躯をしているが、複数のサイバネが歪に組み合わさった身体を持ち、さらにそれを突然変異めいて異常に変貌させるゴウトク・ジツの使い手である。本人のカラテそのものも決して侮れないが、戦いが長引くほどにその破壊力は手がつけられないほどに膨れ上がる。

彼は控え目で穏便に振る舞うが、必要であれば躊躇なく無関係のモータルさえ殺してみせる無慈悲さを併せ持つ。そしてそれを省みることもない。

このニンジャはアシッドウルフによる洗脳を受けているが、その特殊なジツとバイオサイバネ施術の影響により影響が薄くなっており、記憶の齟齬など異様な状態にうすうす感づいている。従順だがヤクザ的気質が抜けきらないPCに対し、彼は個人的なホットラインを設け、裏で手を組もうと持ちかけるかもしれない。ミスクリエイテッドはPCがアシッドウルフと敵対する場合の内通者となり得る。

「ああ、はい」 // 「死ね」

◆ミスクリエイテッド(種別:ニンジャ)
カラテ     8  体力     14
ニューロン   6  精神力    12
ワザマエ    3  脚力     4(7)
ジツ      6  万札     25
近接攻撃D:9、射撃D:3、回避D:10、発動D:12
◇装備やスキル
 装備  :『ニンジャローブ(伝統的ニンジャ装束)』
 サイバネ:『▶︎鷲の腕Lv1』、『▲▲▲▲戦闘用バイオトルソーLV2』
 スキル :『●連続攻撃2』、『◉◉グレーター級ソウルの力』
      『★◉動く砦』、『★筋肉の盾』、『★★肉体破壊』

 「★ゴウトク・ヘンゲ・ジツ」:
  他者から奪った身体部位を取り込み、己の肉体を異常な姿に強化する恐ろしいジツ。
  手番開始フェイズに【精神力】2を消費して発動(難易度NORMAL、瞬時)。
 
  発動に成功した場合、術者は【ジツ】値と同じターンの間、以下の効果を得る(変身)。
  ・連続側転不可、【カラテ】+1、【脚力】+2、素手による基礎ダメージ2。
  ・『サツバツ!』などにより能力値ダメージが発生したとき、同じ値だけ自身の能力値が増加する。
  ・効果終了時、【精神力】2を支払うことで【ジツ】値と同じターンだけさらに効果が持続する。


◇NPCデータ:デシグネーション

デシグネーションはドサンコ・ウェイストランドでペケロッパ・カルトと協力し、死蔵IPとA.R.G.O.S.座標のサルベージ任務を行っていたハッカーニンジャだ。彼は持ち前のステルス・ジツを駆使し、忍び込んだ敵の内部からデータを食い荒らすローテクとハイテックを組み合わせた高度なハック&スラッシュをこなす。

その性質故か、デシグネーションは威力部門に該当するPCたちに対して味方にも関わらず露骨に不快感を示すような態度を取る。

デシグネーションはミスクリエイテッドの相棒に該当するキャラクターだが、仮に彼がPCと共にアシッドウルフへ反旗を翻したとしても、淡々とその対処にあたる。デシグネーションにとってはA.R.G.O.S.などの旧世紀のレリックへの好奇心が全てに優先されるのだ。

「あまり調子に乗るなよ」 // 「ノスタルジーを理解できんカスめ!」

◆デシグネーション(種別:ニンジャ)
カラテ     6   体力     7
ニューロン   10  精神力    9
ワザマエ    7   脚力     4
ジツ      1   万札     25
近接攻撃D:8、精密D:7、射撃D:7、回避D:12、ハッキングD:18
◇装備やスキル
 装備  :『高速振動ナイフ(パルスダガー)』、『LAN直結型ハンドガン+回避パターン解析』
      『スリムフィット装束(体力+1)』
 サイバネ:『▶︎▶︎鷲の腕Lv2』、『▶︎▶︎生体LAN端子Lv2』、『▷外付ファイアウォール』
      『▷電脳戦用デッキ』
 スキル :『●連射2』、『●時間差』、『●マルチターゲット』
      『☆ステルス・ジツLv1』、『◉kill-9』、『◉killall』、『◉ニューロマンシー』
      『◉トライアングル・リープキック』、『◉ツジギリ』

『◉ヴィンテージ・ウィルス』:
 このニンジャはハッキングスキルによる攻撃時にも『サツバツ!』が発生するようになる。

『●戦闘スタイル:強制LAN直結』:
 『素手』装備時かつ『ステルス状態』にのみ使用可能。
 【ワザマエ】による攻撃判定を行う。ダメージ0。回避難易度U-HARD。
 1発でも命中し、なおかつ対象がハッキングターゲットの場合、フェイズ終了時に
 回避難易度+1の状態でさらにハッキング系スキルによる攻撃を行うことができる。


自由行動

目的地に到着するまでの間、PCは次の選択肢から2つの行動を取ることができる。基本的にはいずれもPCにとって有益な効果の得られるものであり、NMはその前提を崩さなければ他に行動選択肢を提示しても構わない。

PCおよびPLは選択した行動に絡めながら、NPCと交流するようなロールプレイをおこなう。

◉オーガニック・スシ、マッチャ(トロ粉末)、ZBRアドレナリン注射器のいずれかひとつを乗務員に手配させる。

◉乗務員にオイランドロイドを手配させる。このシナリオ(前編)中、【精神力】が上限を超えて+1される。

◉NPCとコミュニケーションを取る。(アシッドウルフはフラット、デシグネーションは敵意、ミスクリエイテッドは無関心を示している。)この会話から先述のNPC情報を断片的に得ることができる。

 ◎アシッドウルフ(アレン):彼の計画の重要な箇所に触らなければ、ある程度の質問は抽象的な、回りくどい言い方で答えを返してくれる。ただし巧妙にも論点をずらしたり、実際にはPCの問いかけに対する答えになっていないような言葉を返したりすることが大半である。答えたくない質問はすべて『まだ貴様がそれを知るべき時ではない』である。

 ◎デシグネーション:彼は先述の通りPCに悪印象を抱いており、基本的に攻撃的な態度を崩さない。一方で完全に会話を拒むということもなく、油断をしているとニューロンを焼かれると脅しを欠けたり、真のテクノロジーは旧世紀に根ざしていると熱く語ったりする。これは彼の役割や、暗にY2K以前の何かが今回の一件に関わることを示す。

 ◎ミスクリエイテッド:彼はPCに無関心で、ただひたすらコミックブックを読み続けている。しかしデシグネーションと同様に会話を拒むということはなく、コミックブックから眼をそらさずに言葉だけは交わすように振る舞う。彼はドサンコでペケロッパ・カルトとIP発掘を行っていたことや、デシグネーションがPCを嫌っているのはスタイルの違いも影響していることなど、尋ねられたなら特に別け隔てなく回答する。


シーン2:セキバハラへ

「そろそろか」新幹線がヴァレイ・オブ・センジンに差し掛かろうかという頃、アシッドウルフはやおら立ち上がるとダイミョ・クラス車両の後部へと歩き始めた。ミスクリエイテッドとデシグネーションがあとに続く。

老ニンジャがドアロックを腐食破壊し、殺人的暴風が音を立てて車内へ吹き込む。「後始末は」彼は一瞬足を止め問うた。「恙無く」デシグネーションが答えた。「では下車する」アシッドウルフは君たちに目配せすると、時速666kmの風の中へと飛び降りた。

……君達が降りたった場所はバトルフィールド・セキバハラ。 日本とキョートの国境地帯に位置する広大で不吉な古戦場跡である。大小様々な黄土色のキャニオンが乱立する盆地。重金属酸性雨は滅多に降らないが、灼熱の太陽が照り受ける地面には命の気配は無い。上空では2羽のバイオハゲタカが新たな獲物を求めて上空を旋回する。

彼らの目的地はキョート共和国ではなく、ネオサイタマとキョートを隔てるバトルフィールド・セキバハラの荒野である。夕焼けが訪れようとしているこの場所で、一行は新幹線から飛び降り、アシッドウルフ(アレン)の先導のもとさらなるニンジャたちと合流する。

合流地点はヴァレイ・オブ・センジンを眼下に抱く、巨大な岩壁に阻まれた物陰だが、そこには一見して幾つかの巨大な岩が転がっているようにしか見えない。しかしそれは巧妙なカモフラージュであり、彼らが近づくとそれを払い去り2人のニンジャが現れる。


◇NPCデータ:サイオコール

潜伏ニンジャのひとりは全身をサイバネ強化し、巨大な狙撃腕を持つサイオコールである。彼の背後には2m超の彼より僅かに大きな、黒い装甲のUNIXめいたオブジェクトが置かれている。オナタカミ的な外見特徴を有するこれは、ASATSと呼ばれる巨大なテクノロジーダイシュリケンである(詳細後述)。

彼は危険な兵器であるASATSを用いた超長距離狙撃を行うため、この場所を訪れている。

「証明シテ、ミセヨウ。彼ノ思想ガ、絵空事デハナイ、コトヲ」 /// 「仔細ナシ。射ツ」

◆サイオコール(種別:ニンジャ/重サイバネ/戦闘兵器)
カラテ     6  体力     11
ニューロン   8  精神力    -
ワザマエ    13  脚力     8
ジツ      0  万札     50
近接攻撃D:9、射撃D:22、回避D:16
◇装備やスキル
 装備  :『カモフラージュネット(ステルス迷彩ローブ)』、『巨大サイバネ腕(ノダチ)』
 サイバネ:『▶︎▶︎生体LAN端子Lv2』、『▶︎▶︎▶︎サイバネアイLv3』、『▷高性能赤外線ターゲッター』
      『▶▶▶テッコLv3』、『▷▷▷試作型電磁誘導式スナイパースリケンカタパルト』

 スキル :『●連射3』、『●マルチターゲット』、『●時間差』、
      『◉シャープシューター』、『◉翻弄』、『◉ウィークポイント射撃』
      『◉重サイバネ化』、『◉◉戦闘兵器化』、『◉サイバネ殺し』

『▷▷▷電磁誘導型スナイパースリケン・カタパルト』:
  射撃時は「銃器(小銃:スナイパー)」、敵による回避時は「スリケン」とみなされる。

  射撃方法1:連射2、ダメージD3、射撃難易度:HARD、回避難易度:HARD、【6,6,6】でサツバツ発生
  射撃方法2:集中状態のみ使用可
        連射1、ダメージ2D3+1、装甲貫通2、射撃難易度:U-HARD、回避難易度:U-HARD   
        射撃時【6,6,5+】でサツバツ発生

『●射撃スタイル:バンプファイア』:
  サイオコールの巨大なサイバネ腕と重装甲フレームは、重量と反動吸収機構を組み合わせた
  強引に連射性能を引き上げるためのバンプファイアストックめいた装置である。
  
  集中状態に限り、あらゆる射撃時に『連射+1』効果を得る。


◇NPCデータ:キルナイン

潜伏ニンジャのもうひとりもまた、2メートル近い巨漢の重サイバネニンジャである。ヘルムが一体化した汚染物質処理服のようなニンジャ装束に、左腕はガトリング銃にサイバネ置換されたそのニンジャは、ペケロッパ・カルトに所属するキルナインと呼ばれているニンジャだ。

ペケロッパ・カルトは勢力拡大が遅れているアマクダリ・セクトではなく、アシッドウルフらブラックサイト勢力と先んじて手を結んでおり、先述のようにドサンコ・ウェイストランドにてA.R.G.O.S.の座標情報と死蔵IPの発掘作業に取り組んでいた。

アシッドウルフはダイダロスなど強力なハッカーニンジャの存在が、いずれ大きな障害になると考えており、彼らに対する電子面でのカウンター装置やファイアウォールのような役割を担わせるためペケロッパと手を結んでいる。

キルナインがこの場に同伴している理由もそれであり、万が一逆探知された場合でも安全な「移動式の使い捨てUNIX」かつ「補助演算装置」として、そのボディに埋め込まれたUNIXを"使われる"ため彼はセキバハラへと派遣されている。

「ドーモ、キルナインです」FM音源じみた謎の電子音声とともに、胸のLED文字板に同じメッセージが流れた! /// 「KILL -9、KILL -9、KILL -9」 /// 「セマフォ!」

◆キルナイン (種別:ニンジャ、重サイバネ)
カラテ    7  体力   12
ニューロン  5  精神力  3
ワザマエ   6  脚力   3/N
ジツ     0  万札   5

攻撃/射撃/機先/電脳  8/6/6/7
回避/精密/側転/発動  8/6/-/5

◇装備や特記事項
 ▶︎生体LAN端子LV1、▶︎テッコLV1、キルナインサイバネフレーム(反映済)、ガトリングガン腕
 『●連続攻撃2』、『●連続側転不能』、『◉重サイバネ』

ガトリングガン腕:
 この武器はキルナインの体と一体化しており、各種ペナルティは存在しない。
 各ターン開始時に、「超大型近接武器」または銃器の「ガトリングガン」のどちらかを選択できる。


合流

君たちが岩陰に足を踏み入れると、転がる巨大な岩のひとつがズルリと皮をはぐようにその場から消え、その場にはカモフラージュフロシキを手に持つ2人のニンジャが現れた。

片方は巨大な狙撃腕を持つ長身痩躯のニンジャ……サイオコールである。「ドーモ。サイオコール、デス」彼の背後には、その長身より僅かに大きな黒い装甲のUNIXめいたオブジェクトが見え隠れする。

その隣に直立するのもまた、ヘルムが一体化した、汚染物質処理服の如きニンジャ装束に身を包む2メートル近い巨漢の重サイバネニンジャだ。その左腕はガトリング銃にサイバネ置換されている。「ドーモ、キルナインです」FM音源じみた謎の電子音声とともに、胸のLED文字板に同じメッセージが流れた!

「ドーモ、デシグネーションです。キルナイン=サン、今何人目だ?」「セマフォ!」「アア?」

PCはアシッドウルフ(アレン)およびミスクリエイテッド、デシグネーションと共に上記の2人のニンジャと合流する。しかし、これだけ大量のニンジャを集めてなお、アシッドウルフ(アレン)はPCたちに明確な目的を伝えない。ただ今から「正統な支配を取り戻すための偉大な第一歩が成される」として傍観するように促す。

すべてがPCに明かされることはないが、今回の作戦におけるアシッドウルフ(アレン)の目的は次のようなものである。


◆アレンの計画◆
ー想定通りにシナリオが進めばPCが知ることになる情報ー

◉セキバハラでは危険なICBS(都市間弾道スリケン)思想に着想を得たサイオコールにより作り上げられたASATS(アンチ・サテライト・スリケン)、即ち対衛星スリケンの実地テストを行う。これはサイオコールの背後にある直径2m級の黒いUNIXスリケンである。

◉アレンはサイオコールに、キョートのアッパーガイオンにあるオムラ・インダストリのキョート支社を狙撃させる。ASATSには意図的にオナタカミ社の装甲が流用されており、また『オペレイシヨン・クロスボウ』でPCが盗み出した機密データに含まれていた、暗号化されたオナタカミ社のIP情報が仕込まれている。

◉今日この日、オムラのキョート支社ではザイバツとの会合が行われている。狙撃によりアッパーガイオンの1区画ごとキョート支社が損壊すれば、ザイバツとオムラの両名はネオサイタマからの悪意に否が応でも気がつくことだろう。

◉狙撃には激しい爆風と轟音が発生するため、攻撃の事実はセキバハラに偵察拠点を構えるザイバツニンジャによって即座に察知され、この場には敵が殺到すると考えられる。PCには「クロスカタナのエンブレム」が渡され、"作業"が完了するまでこれをつけてザイバツニンジャを迎撃するよう命じられる。


◆アレンの計画の目的◆
ーPCに知らされない可能性がある情報ー

◉先述の仕込みにより、まずオムラ社はこの"ミサイル爆撃"がオナタカミ社によるアサルト行為であると誤認し、ネオサイタマにおける局地戦闘を激化させるだろう(これは"戦争コンサル"として社内に入り込んだサイオコールによる誘導も影響している)。

◉"ソウカイヤ"によるキョートへの弾道狙撃行為は、相手方のスナイパーニンジャの観測により、すぐザイバツの知るところとなる。オムラの下請けを使った支社への狙撃……それはメイクマネーと戦術的効果の両立を狙うソウカイヤの狡猾なアサルト行為とみなされ、ネオサイタマにおけるザイバツとソウカイヤの暗闘は激化する。

◉オムラ対オナタカミ、ソウカイヤ対ザイバツ。あるいはネオサイタマ対キョート。この関係性の悪化こそがアレンの狙いである。彼はネオサイタマにおけるパワーバランスを掻き乱すことで、最終的な計画を混乱によって覆い隠し、敵に嗅ぎつけられるリスクを最小限に抑えようと考えている。


◆ASATSの真の目的◆
ーPCに知らされない情報ー

すべてが上手く運べば、アシッドウルフは宇宙への道を切り拓き、ネオサイタマの暗部に混沌と戦争をもたらすことになる。

◉ASATSは単なる長距離狙撃兵器ではなく、その名の通り、ロケット推進力と磁気嵐突破機能により、宇宙空間の人工衛星を狙うことを目的とした兵器である。より簡潔に述べるならば、これはロケットエンジンとカラテで発射される巨大なスリケン型の衛星だ。

ASATSは衛星軌道上に到達すると、平型スリケンの先端部からピラミッド型の小型衛星(ビーコン)を最大で4つ切り離す。このビーコンを経由して地上から宇宙空間へのハッキング攻撃を可能とするのが、ASATS本来の用途である。

◉優れたハッカーであるデシグネーションはASATSとリンクされたキルナインの内蔵UNIXを使用し、サイオコールの狙撃直後からハッキング作業を行う。彼らはこれにより、衛星軌道上の狂った軍事衛星の制御権を奪おうとしている。

 PCおよびミスクリエイテッドの真の役目は、彼らを殺到するザイバツニンジャから守ることだ。

◉アレンは将来的に、ここで制御権を奪った軍事衛星のレーザー兵器を用いて、邪魔な暴走軍事衛星やスペースデブリを破壊し、宇宙までの道を切り拓こうと考えている。時が来れば、彼はアマクダリよりも早くA.R.G.O.S.とのリンケージを確立するため、その僅かな隙間を縫って再びASATSが宇宙へと打ち出すだろう。


放たれるASATS

「仔細ナシ」サイオコールは小さく頷くと、その巨大な右腕を伸ばした。「証明シテ、ミセヨウ。彼ノ思想ガ、絵空事デハナイ、コトヲ」その指関節が、掌が、腕が!変形機構により次々と展開延長され、腕のシルエットをさらに巨大化させる。

そして彼はその腕で、背後の黒い装甲UNIXを掴んだ。それは巨大な……スリケンである!「ドコヲ狙ウ?ジグラット、カ?」「いや、キョートだ。オムラの支社を狙え」「良カロウ。離レテイルガ良イ」アシッドウルフは距離を取った。君たちが疑問を覚えるほど遠くへ。

サイオコールは大地を踏みしめ、スリケンを構えた。むき出しの関節機構にはバチバチと青白い稲妻が駆け巡る。「イイイイ………」カラテが張り詰める。

「イイイイイイヤアアアアアアーッ!!!」サイバネティックスの電磁カタパルト機構がスリケンに凄まじい推進力を与え、サイオコールはそれを……射った。BDDDDDOOOOOOM……重い金色の煙がスリケンの刃から沸き起こり、地に溢れ、拡散した。

おぉ見よ!巨大スリケンは空を貫き、明滅する青白い光の柱を伴いながらキョートへと向かって軌跡を描いている。これこそがASATS、即ち対衛星スリケンである!その機構はよもや……宇宙をも貫くであろう……!

アレンは前項で述べた内容について、最低限の説明をPCに行うと、サイオコールにオムラのキョート支社を狙うよう指示を出し、彼の周囲から退避するよう全員に促す。やがてサイオコールのすさまじいスリケン投擲が轟音を放ち、それを号砲としてザイバツとのイクサが始まる。

なお、このイベントの後、それぞれのNPCは次のように行動する。

アシッドウルフ(アレン):戦闘には非干渉。PCを迎撃に送り出した後、サイオコールと撤収の準備を始める。

サイオコール:狙撃の反動によりボディにダメージを受け、戦闘ができる状況ではない。区域からの離脱を優先する。

キルナイン:物陰で跪き、背部の埋め込みUNIXを展開する。

デシグネーション:キルナインのUNIXを使い、何らかのハッキング作業を開始しようとする。

ミスクリエイテッド:PCと共にザイバツの迎撃に赴く。もしくはデシグネーションの護衛としてその場に残る。


シーン3:ザイバツの刺客

「お出迎えだ。少し遊んでやれ」アシッドウルフが指差すヴァレイ・オブ・センジンの対岸からは、砂埃と共に鉄道橋を渡らんとするサイバー馬の隊列……それに跨るはニンジャである!

サイオコールの狙撃はミサイルの打ち上げと遜色ない程に激しく目立ち、セキバハラに偵察拠点を構えるザイバツ・ニンジャたちは何者かの存在を即座に知ることになる。サイバー馬に乗ったザイバツのニンジャたちは武装クローンヤクザを引き連れ、新幹線の線路を経由してヴァレイ・オブ・センジンを渡り、ASATSの発射地点へと殺到する。

アシッドウルフ(アレン)は「クロスカタナのエンブレム」を投げ渡すと、これを身に着けてザイバツニンジャを撃退するよう命じる。つまり彼らは「ソウカイヤのニンジャに成りすまして」ザイバツと戦うことになる。


マップ情報

このシナリオにおける戦闘マップは比較的大型の屋外マップとなり、幾つかのギミックを持ったマスが存在している。次には、このマップにおける戦闘処理の細則を述べる。


①マップ端は「壁」とはみなされず、「弾き飛ばし」などによる激突の対象とはならない。何らかの強制移動効果を受けた場合でも、キャラクターは単純にマップ端で移動を終了する。


②マップ上のマスは「高さ」の概念を持つ。白色のマスを「高さ0」として、幾つかのマスには上記の凡例の通り1~2の高さが設定されている。攻撃者の現在マスより高いマスだけが「遮蔽物」として射線を遮り、高低差のあるマス同士は非隣接状態として扱われる。高所→低所への『近接攻撃』は全て難易度が−1される。

「高さ」が指定されていないあらゆるマスは、「高さ0」の通常マスとみなされる。


③マップの左端には黒く塗りつぶされたヴァレイ・オブ・センジンの大亀裂が存在している。このマスは『飛行移動』以外で通過不可であり、「弾き飛ばし」などでこのマスに押し出された場合、そのキャラクターは落下死する(キャラロスト)。



戦闘が始まると、このマップにはドットブレードとホロシューティングがクローンヤクザを引き連れて現れる他、マップ外からの狙撃者としてアマゾンプレデターが登場する。

NMは狙撃者の存在を隠した状態で、PCを任意の場所に配置させてから戦闘処理を開始する。アマゾンプレデター以外の敵を全滅させると、このシナリオは終了となる。


◇NPCデータ:ドットブレード

キョート/ネオサイタマ間の国境、ヴァレイ・オブ・センジンに配置された防衛ニンジャ。サソリ・ニンジャクランのレッサー憑依者。キアイにより苦痛を無効化しながら敵のワザマエを推し量り、機を見れば鋭い捨て身の連撃を繰り出す。愛用のナギナタ「イチ」と「ニ」は夫婦刀である。

ドットブレードは原則として、二刀流による強攻撃のみを使用する強気の戦闘スタイルを崩さない。彼はサイバー馬で『轢殺』しながら次々と『ツジギリ』でダメージをばら撒く戦法を取る。

一方で非常に好戦的な性格をしているため、近接武器で襲いかかるPCが挑発や一騎討ちを要求する場合、それに応えてそのPCだけを狙い始める。

「貴様ら……ソウカイヤ!これは明確な休戦協定違反だぞ!」
「イクサの真髄を見せてくるわーッ!タクティクス!そしてカラテ成!!」

◆ドットブレード(種別:ニンジャ)
カラテ     6  体力     8(13)
ニューロン   4  精神力    4
ワザマエ    4  脚力     3(8)
ジツ      3  万札     10
近接攻撃D:8、射撃D:-、回避D:7
◇装備やスキル
 装備 :『ソード・オブ・ナギナタx2(カタナ二刀流)』
 スキル:『☆サソリの系譜(近接D+2)』、『☆カトン・ジツLv1』
     『●頑強なる肉体』、『◉ツジギリ』

 『●サソリ・ファイティング・スタイル』:
   「カタナ二刀流」装備時にも『●戦闘スタイル:強攻撃』が使用可能となる。

 『●サイバー馬騎乗』:
   サイバー馬が破壊されるまでの間、このキャラクターは次の効果を得る。

   ・『連続側転不可』かつ【脚力】8とみなされ、『●轢殺攻撃2』を得る。
   ・本人の『回避判定』難易度+1。
   ・合計5ダメージまで「サイバー馬」がダメージを肩代わりする。
    ※5ダメージを受けた時点で「サイバー馬」は破壊され、上記の効果は失われる。


◇NPCデータ:ホロシューティング

キョート/ネオサイタマ間の国境、ヴァレイ・オブ・センジンに配置された防衛ニンジャ。二挺の5連発リボルバーを得物とする。弾切れに見せかけた銃から圧縮空気を発射するソニック・ファンニングなどのだまし撃ち戦法の使い手。

ホロシューティング自身の戦闘能力はそれほど高くなく、基本的には弾幕により回避ダイスを削ることによるドットブレードの支援や、アマゾンプレデターの狙撃ターゲットのポインティングを行う。

基本的にはホロシューティングの射撃を受けたPCが、優先的に狙撃ターゲットとなる、と考えて良いだろう。

「適度に痛めつけたのち、貴様らをインタビューする」

◆ホロシューティング(種別:ニンジャ)
カラテ     3  体力     3(8)
ニューロン   6  精神力    6
ワザマエ    6  脚力     3(8)
ジツ      3  万札     10
近接攻撃D:3、射撃D:9(12)、回避D:7
◇装備やスキル
 装備 :『リボルバー・ピストルx2(オノミチ・カスタムx2)』
 スキル:『◉タクティカル移動射撃』、『◉シャープシューター』
     『☆カゼの系譜(射撃ダイス+3)』

 『●射撃スタイル:ソニックカラテ弾射撃』:
  ソウル由来のソニックカラテ衝撃波をリボルバー弾として射出する。
  【精神力】2を消費し、拳銃の射撃スタイルとして使用する。2ターン連続使用不可。

   ・『射撃難易度-1』に加え、一時的に『時間差』の効果を得る。
   ・攻撃対象が初めてこの射撃スタイルの対象となる場合、さらに『回避難易度+1』となる。

 『●サイバー馬騎乗』:
   サイバー馬が破壊されるまでの間、このキャラクターは次の効果を得る。

   ・『連続側転不可』かつ【脚力】8とみなされ、『●轢殺攻撃2』を得る。
   ・本人の『回避判定』難易度+1。
   ・合計5ダメージまで「サイバー馬」がダメージを肩代わりする。
    ※5ダメージを受けた時点で「サイバー馬」は破壊され、上記の効果は失われる。


◇NPCデータ:騎乗クローンヤクザ

ドットブレードとホロシューティングには(PC人数-1)*2体のクローンヤクザが随伴して現れる。彼らはもれなくサイバー馬に騎乗し、通常よりタフで強力になっているため、NMはこのキャラクターに対するあらゆる遠隔攻撃に『ヘッドショット』のルール(射撃で出目6,6が発生するとモブNPCを即死させる)を適用するなど、何らかの緩和策を用意しておくのが望ましい。

◆クローンヤクザY-11型 (種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ)
カラテ     1  体力     1(6)
ニューロン   1  精神力    1
ワザマエ    3  脚力     2(8)
ジツ      -  万札     2
近接攻撃D:1、射撃D:3
◇装備や特記事項
 ノーカスタム・チャカガン:『遠隔武器』、『ダメージ1』

 『●サイバー馬騎乗』:
   サイバー馬が破壊されるまでの間、このキャラクターは次の効果を得る。

   ・『連続側転不可』かつ【脚力】8とみなされ、『●轢殺攻撃2』を得る。
   ・本人の『回避判定』難易度+1。
   ・合計5ダメージまで「サイバー馬」がダメージを肩代わりする。
    ※5ダメージを受けた時点で「サイバー馬」は破壊され、上記の効果は失われる。
 
 『●ヘッドショット殺!』:任意採用のオプションルール
   このキャラクターは出目【6,6】を含む遠隔攻撃を受けた時、サイバー馬ではなく
   騎乗している本体が攻撃を受けたものとして『即死』する。

   これは『☆カラテ・ミサイル』など、1回の判定で複数回の攻撃が発生する手段にも反映される。


◇NPCデータ:アマゾンプレデター

キョート/ネオサイタマ間の国境、ヴァレイ・オブ・センジンに配置された防衛ニンジャ。ステルス・ギリースーツと持ち前の高いニンジャ野伏力で身を隠しながら、専用に改造された大口径のスナイパーライフルで狙撃をする。

アマゾンプレデターはヴァレイ・オブ・センジンの対岸のさらに奥から長距離狙撃を行ってくるため、マップ上には存在しない(つまり、原則としてPCは彼を狙うことが出来ない)。

彼は戦闘中、常時『集中状態』となり、すべての遮蔽物を無視してスナイパーライフルによる射撃を行ってくる。その射線はマップ左端上部から引くものとする。この攻撃から身を守るには、「高さ0」の通常マスで射線を遮るように遮蔽物に隣接して戦う必要がある。


物語上、アマゾンプレデターは生存することが想定されており、"ソウカイヤ"の出現と長距離狙撃をキョートに警告することで、アシッドウルフの思惑が達成されるという役割を担う。ただしPCにスナイパーニンジャが存在するようなら、狙撃対決などのイベント要素を盛り込んでも良いだろう。

(((何だ……何だあれは!?あれは……スリケン……なのか?)))

◆アマゾンプレデター(種別:ニンジャ)
カラテ     5  体力     5
ニューロン   4  精神力    4
ワザマエ    8  脚力     4
ジツ      0  万札     10
近接攻撃D:5、射撃D:8、回避D:6
◇装備やスキル
 装備  :『ステルス・ギリースーツ(回避D+2)』、『LAN直結型ハンドガン』
 スキル :『◉常人の三倍の脚力』、『◉タクティカル移動射撃』
 サイバネ:『▶生体LAN端子Lv1』

『ミハル社製大口経スナイパーライフル・Zカスタム』:
  小銃、ライフル、スナイパー、ダメージD3、連射2、バースト3x3、時間差
  移動後射撃不可、回避ダイス-4

『☆ニンジャ野伏力』:
  アマゾンプレデターはステルス・ギリースーツと持ち前の高いニンジャ野伏力により
  手番終了時に【精神力】を1消費することで、判定なしで『☆ステルス・ジツLv1』を発動できる。
  
  以降のターン、移動フェイズ開始時に「ステルス状態」を解除する代わりに、
  瞬時行動としてマップ上の任意の場所に自身を再配置(瞬間移動とみなす)しても良い。


結末

「ボス。予定通り、何機か捕まえましたぜ。サイオコール=サンは良い仕事をしやがる」デシグネーションがキルナインのUNIXコンソールから顔を上げ、やや興奮気味にアシッドウルフへ報告を上げる。「見事だ。これで計画は偉大な一歩を踏み出した事になる……」

ザイバツとのイクサが決着を迎えた時、PCたちのイクサ場から離れた地点にて、アシッドウルフ(アレン)の目の前で、デシグネーションは数機の軍事用衛星のハッキングに成功する。これによって彼らは宇宙からの目を持つレーザー兵器を手にしたことになる。


一方で、PCがミスクリエイテッドの助けを借りてイクサに臨んでいた場合、彼はアシッドウルフ(アレン)らの注意が逸れた一瞬を逃さず、ジツで膨張した肉体を収縮させる動きに隠すようにして、最も近くにいるPC1人の懐にフロッピーディスクを押し込んでくる。

先述の通り、ミスクリエイテッドはその特殊なジツとバイオサイバネ施術の影響により、アシッドウルフ(アレン)のジツによる違和感に気が付きつつある。彼はこのフロッピーディスクの情報を通じて、PCにもその"違和感"を伝えようとしている。

◇「ミスクリエイテッド」のフロッピーディスク
ミスクリエイテッドが強引に、しかし密かに渡してきたフロッピーディスク。余暇を使って調査することで、中には幾つかの短いテキスト情報と、ミスクリエイテッドのIRCアカウント情報が記されていることが判明する。

=========================
記憶に違和感。齟齬。欠落。どこまでが現実か、君は確証を持って答えられるか?

*いつ"アシッドウルフ"と出会った?それはどこだ?
*『鷲のニンジャ』とは?
*"過去"とは?何をしていた?
*そのサイバネ腕はいつ施術した?

頭の中を整理しよう。どこかに違和感が潜んでいる。そしてそれが真実への近道だ。


一連のイベント後、アシッドウルフ(アレン)の指示により各キャラクターは次のように移動を行う。

◉アシッドウルフ(アレン)、デシグネーション、ミスクリエイテッド、キルナイン:3話にてアシッドウルフが制圧した旧世紀軍事施設に移動する。彼らはペケロッパ・カルトと合流し、計画の下準備を進める。

◉サイオコール、PC:ネオサイタマに帰還する。サイオコールはオムラへの最終的な仕込みに動き、PCにはしばらく後のイクサに向けて待機するよう言い渡される。


◇報酬(PC1人あたり, 前編分)

基本報酬:万札10、余暇2日

※撃破したキャラクターの所持万札は除く。
 調整したい場合、所持万札のドロップを無しにして想定獲得分を基本報酬に加算する。
◇名声
 ・増加なし(他シナリオで成果が振るわず、十分な数字でない場合は+して調整する)


補足コメント

 『ケイオス作戦(あるいはMHケイオス作戦)』は1967年から1974年にかけてCIAによって実施された諜報作戦であり、その前身は国家安全保障法に基づいて生まれたCIAが米国内を対象に実施していた、反体制派をターゲットとする幾つものプロジェクトでした。

  • HTLINGUAL:ソ連と中国宛に送られる電子メールを傍受することを目的とした計画。実際には公民権運動の活動家や平和活動家もこの標的となっていた。

  • Project 2:外国情報機関に潜入することを最終目的とした計画。密かにエージェントを国内の過激派組織に配置することより、その人物には反体制派としての経歴と信頼性が付与され、最終ターゲットに潜入しやすくなるという内容であった。

  • Project MERRIMAC:CIAに対する潜在的脅威をターゲットとした潜入計画。あまりにも急進的、あるいは反戦的な組織へエージェントを潜入させていた。

  • Project RESISTANCE:CIAに対する潜在的脅威の情報を収集し、対象を特定する計画。地域の地元警察、大学職員といった情報提供者と協力し、対ベトナム外交政策に反対する過激派学生運動グループを追跡するなどした。

 ケイオス作戦はこれらのプロジェクトを統合したものであり、その目的は大量に集めた情報によって、反体制派と外国勢力間の違法な(つまり国家転覆などの脅威に繋がるような)接触を明らかにするというものです。

 ところが『オペレイシヨン・ケイオス』において、PCたち(そしてCIA)はネオサイタマを対象とした諜報作戦のデータを利用して戦争を引き起こそうとする、全く真逆の立ち位置に置かれることとなります。
 これに伴い、「ケイオス=混沌=戦争を引き起こす」という字面のイメージがタイトルから拾われるわけですが、少し掘り下げると、実はPCたちも情報統制をされているなど、潜在的脅威として(アシッドウルフに)監視を受けている側であった……という実態が見えてくる構造になっています。


 シナリオの構成としては非常にシンプルなもので、幾つかのロールプレイシーンと戦闘をベースに、謎の多いASATSの(ゲーム的な)カットシーンや、ミスクリエイテッドの離反の気配などがスパイスとして散りばめられています。
 このうち、ミスクリエイテッドからフロッピーディスクを渡されるシーンは、当初ルート分岐の布石として必ず発生する(それももう少し過激なかたちで)予定でしたが、最終的なサンプルシナリオにおいて、発生の有無はNMの判断に委ねられています。これはテストプレイ(=初版ルールで行われた実卓プレイ)において、PCが彼の手を借りないことを選択し、なおかつ奮戦するドットブレードのサツバツ!によってPCの1人が気絶させられるというアクシデントが起きてしまったことでイベントをスキップしてしまった……という背景があっての調整でした。

 ひとつ間違いないのは、このシナリオでPCがどのような行動を取ったとしても、ASATSの射出を契機にネオサイタマ対キョートの緊張状態は高まり、ネオサイタマには「後編」で描かれる出来事を始めとする混沌が広がり始めることになる、ということでしょう。


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