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【NJRPG-2ND/シナリオ】フォールス・ウインター#3:オペレイシヨン・マタドール

あらすじ:磁気嵐の荒野に駆り出された鷲のニンジャたちは、アサノサン・パワーズ社の墜落ツェッペリンMG775の機体回収へと派遣される。しかしそれを狙うのは、ブラックサイトのエージェントたちだけではなかった。

これは「ニンジャスレイヤーTRPG2版」のシステムに対応した、「鷲のニンジャ」がテーマのキャンペーン『フォールス・ウインター』の第三話に該当するサンプルシナリオ記事です。

プレイ人数:4~5名
所要時間:12~16時間(オンラインセッション/テキストセッション)
難易度:キャンペーン専用のルールで作成後、2シナリオを踏破した程度の強さのPCを想定(成長の壁(1)をそれぞれ1つずつ超えている)

キャンペーン全体の背景設定やルート分岐の調整方法などは、別途CPセッティング記事も参考にしてください。

※各ゲーム要素はニンジャスレイヤーTRPG初版で行ったキャンペーン実卓を元に、2版向けへコンバートされたものです。ゲームバランスは現行環境やプレイヤーキャラクターに合わせて都度調整することを推奨します。

関連記事はこちらのマガジンから。

◇本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター    → ゲームの進行役。描写などを行う。
PL:プレイヤー       → ゲームの参加者。PCを操作する。
PC:プレイヤーキャラクター → ゲーム内の主人公。メインキャラ。

前シナリオ

シナリオ分岐について

この『オペレイシヨン・マタドール』は、前シナリオ『オペレイシヨン・ペーパークリップ』において、PCが100点満点の結果を残せなかった場合に第三話として発生することを想定したシナリオとなります。より具体的には、盲目的に(≒機械的に)鷲のニンジャとして与えられた任務をこなさなかった場合が該当すると考えてください。

該当するケース
◉スマートな隠密行動ではなく、正面突破を手段に選択する。
◉不手際やミスにより、ターゲットに到達するより先に発見されてしまう。
◉ブラックメイルを逃してしまう(=目撃者を残してしまう)。
◉アルトゥール博士の殺害を躊躇してしまう。
◉PCの誰かが行動不能の状態になってしまう。
◉事前調査で十分な情報を得られず、シナリオ中でも補完できない。

アシッドウルフ(スパイマスター)はPCの様子を見て、まだまだ練度が足りず、洗脳教育の定着も薄いと判断し、現段階では彼の計画の重要な部分にはPCを触れさせないように計らうのです。

彼らが『オペレイシヨン・ペーパークリップ』で満点の結果を残せた場合のシナリオ展開については、本記事の最下部にプロット案を収録しています。

マップデータ

このシナリオで使用するマップデータはGoogle スプレッドシートで作成されています。下記からローカルにダウンロードするか、ご自身のアカウントにコピーを作成してGoogle スプレッドシート上で使用してください。

マップの詳細は以降のシナリオ本文中で解説されます。

◆はじめに

このシナリオでPCたちはアシッドウルフ(スパイマスター)に率いられ、ネオサイタマ市街地の南西部とフジサンの間にある磁気嵐荒野を訪れる。彼らはメガコーポの社員や一般的なサルベージャーに変装し、サイバーホースで荒野を踏破する。

アシッドウルフ(スパイマスター)の目的は『ブレイン・ウォーフェア』で回収したデータから特定した旧世紀の地下軍事施設であり、そこは『ブレイン・ウォーフェア』の舞台となった空中戦艦の出発地点であると同時に、かつて〈鷲の一族〉が宇宙へ逃れるために用いた、"記録にない"スペースシャトル発着場のひとつでもある。

しかしながら、アシッドウルフ(スパイマスター)はその事実をPCに明かすつもりはなく、既に姿を見られてしまっている彼らにアマクダリ・セクトの妨害任務を命じることで、彼の本来の目的からセクトの目をそらすための陽動作戦を実行しようと考えている。

シナリオの背後ではニンジャスレイヤーのトリロジーエピソード、【ブラックメイルド・バイ・ニンジャ】が始まろうとしており、PCは暗躍するアシッドウルフの表に立ち、このエピソードの始まりに介入することで、アマクダリ・セクトの注意を引き付ける役割を担う。

シナリオ後半では『オペレイシヨン・ペーパークリップ』で逃したブラックメイルと再戦する機会が与えられる一方、前半では新たな敵との因縁が芽生える可能性のある「上げて落とす」あるいは「落として上げる」ような全体構成となっている。

導入:カットシーン

010101010101010101
君の顔面に金属の拳が叩き込まれた。広がる血の味、めまい。

「01に01010101?」

なんと言った?ひどい耳鳴りがする。腕も、脚も動かせない。
「0101はお前0101の何手も先を見01いる」影の声が頭の中で幾度も反響し、膨れ上がるような痛みを引き起こす。

再び腕を振り上げ、君アルトゥールの顔面に金属の拳を叩き込んだ。アルトゥールは椅子に縛られ、酷く顔を腫れ上がらせている。

何故これほどの暴行を受けながら意識を失わないのか。傍らには2つの点滴が冷たく鈍い光沢を放ち、ア■■■■■の手首には0101010101。

■が君の首に■■を突き刺した。

熱い。
いや、冷たい。

ア■■■■■は君だった。

はナイフを手0101010101
01010101010101010101
010101
「0101ろ」
「……01010101ろ」
「おい、起きろ〈登場PCのコードネーム〉=サン」


熱された風が君の頬を撫でる。君の眼前には何もない、砂に塗れた荒野が広がっていた。〈登場PCのコードネーム〉は恐ろしい白昼夢、あるいは磁気嵐の見せる幻覚から、荒野を駆けるサイバー馬の鞍の上で意識を取り戻した。

導入の描写テキスト

オペレイシヨン・ペーパークリップ』でアルトゥール博士の尋問に立ち会っていた場合、このシナリオはPCの誰かひとりの視点にて、上記のような最悪な"夢"の描写が行われるところから始まる。

それは支離滅裂なもので、ブラック・サイト(あるいは尋問現場)に響いていた音から想起される、アルトゥール博士に加えられた激しい尋問と暴行に加え、実際にPCたちが目にした光景が入り混じっている。それは『オペレイシヨン・ペーパークリップ』で見たものに限らない(例えば、ソウカイヤ時代のPCがアシッドウルフに尋問されるシーンなどが混じり合っている)。

この幻覚ないし夢を見るPCは、次の瞬間には磁気嵐の荒野を掛けるサイバー馬の上で我に返る。アシッドウルフ(スパイマスター)はPCが酷い顔をしていて心ここにあらずといった様子だと言い、気を引き締めるよう促す。

ダンゴウ

そして君は思い出す。

この日、アシッドウルフは今回の任務の目的地が、ネオサイタマ市街地の南西部とフジサンの間にある磁気嵐の荒野であることだけを告げ、君たちを駆り出した。彼は"敵"に発見されるリスクを避けるため、それぞれにサイバー馬を与えた上、ツーマンセルで十分な距離を取らせて行軍するものとした。

もし十分な戦果を上げ、彼に己の価値を示していれば……あるいは既にその行き先を知り得たかもしれない。しかし行軍を開始してかなりの時間が経過してなお、彼に着いて進む〈登場PC1人のコードネーム〉にさえこの旅の終着点については何も明かされていなかった。

アシッドウルフ(スパイマスター)は今回の任務の目的地が、ネオサイタマ市街地の南西部とフジサンの間にある磁気嵐荒野であることだけを告げ、PCを急遽任務に駆り出した。彼らはサイバー馬で荒野を駆ける最中、アシッドウルフ(スパイマスター)より次のように任務の概要を伝えられる。

◉行方不明とされていた、アサノサン・パワーズ社の試作型ツェッペリンMG775の墜落機体が先刻発見された。機体はほぼ無傷の状態であるが、乗客は全員死亡している。

◉発見したのはMG775の開発に携わったスマコチラ社の調査部隊であり、現在は周辺に調査車両を待機させたまま、リスク回避しつつなんらかのビジネスチャンスを生み出せないか社内協議を行っている。しかしそう時間はかからず、パワーズ社に発見の旨を通達するだろう。

◉MG775試作機に搭載されたパワーズ社のハイブリッド・ニューク燃料炉には、実は重大な欠陥があった。機体が回収されれば、それが明るみに出る。機体が無傷で残っている現状を知れば、パワーズ社は株価暴落を防ぐため隠蔽を試みるだろう。しかし、それを知らないスマコチラ社も自社システムの過失可能性を恐れており、隠蔽に同調行動を取る可能性がある。

◉今回の任務は、その全てに先手を打つこと。PCたちはスマコチラ社の車両をジャックしてMG775の機体を回収しなくてはならない。回収先やその後の行動については、現場で機体を確保した際に指示がくだされる。

◉『アマクダリ・セクト』と呼ばれるニンジャ組織もまた、本件へと介入しようとする動きが見られる。MG775が消えたとなれば、パワーズ社への介入に支障をきたすため、慌てて機体を追いかけてくると考えられる。

◉作戦中、アシッドウルフは別行動となる。彼らの行動・目的・正体の"隠蔽"を最優先し、細かな状況判断はPCに委ねられる。アマクダリ・セクトのエージェントは可能な限り排除が望ましいが、既に存在が露見している以上、無駄に深追いをする必要はない。

TIPS:アマクダリ・セクトについては、『オペレイシヨン・ペーパークリップ』におけるブラックメイルとの戦闘を介して、あるいは彼女がドロップした天下紋のエンブレムをきっかけに、アシッドウルフから語られる形で知ることになる。

シーン1:荒野の旅

アシッドウルフはMG775の位置座標を伝えると、サイバー馬の踵を返し、君たちとは別方向へと磁気嵐に紛れて姿を消した。

君たちは磁気嵐の吹き荒れる荒野にサイバー馬を走らせる。ここではIRC端末による通信は困難。しかし比較的その影響が軽微なエリアは暗黒メガコーポが産業用途で占有しており、警備も厳重。接近するなど言語道断である。

なるべく平地を避け姿を隠しながら、しかし着実に目的地へと歩みを進める必要があるだろう。

ダンゴウが終了すると、アシッドウルフ(スパイマスター)は別行動を開始し、PCも与えられた目標地点へと向けて移動し始めることになる。この道中では特別なにか事件が起きるわけではなく、ただPC同士の交流を目的とした時間だけがゆったりと流れる。

重要なのはPCたち以外にはその場に誰もおらず、また磁気嵐の強い影響を理由に盗聴なども極めて困難な状況下にあるということである。PC(あるいはPL)はこれまでのシナリオにおいて感じていた疑問・疑念について仲間たちと改めて共有し、考えを整理することができるだろう。

もし会話のきっかけとして何らかのイベントがほしいのであれば、「ネオサイタマ地理ガイド」を参考に蜃気楼や幻覚、無自覚のうちに同じ場所をぐるぐると回ってしまうというような方向感覚の乱れなどを演出すると良い。

シーン2:暗黒メガコーポの輸送コンボイ

君たちはサイバー馬を走らせ、時折互いに言い聞かせるような歓談をはさみながら、磁気嵐の荒野を駆ける。やがて一行が、Y2Kで滅びた暗黒メガコーポの廃墟オフィスビル群に差し掛かったときだ。

〈最もイニシアチブが高いPC〉が最初に、遠くで立っている砂煙に気がついた。君のニンジャ視力は、それが少しずつ……こちらに近づいてくる様子を捉えた。

しばらく荒野を駆けていると、PCは遠くから土煙をあげて大型の輸送コンボイ隊列(つまり複数の輸送車両)が迫ってくることに気がつく。

実際この隊列はPCやMG775を目的に移動しているわけではなく、そもそもその存在すら知らないのだが、彼らにそれを知る術はない。この不確定要素に対してどう対応すべきなのか、PCは迅速に判断を下さなくてはならない。

輸送コンボイへの対処

ここでNMはPLに対して次のような選択肢を提示する。詳細を明かす必要はないが、それぞれメリット・デメリットが存在しており、また最終的にはどれも似たような展開(戦闘)に辿り着くことは伝えるべきだろう。

選択肢1:迫りくる輸送車両を即座に排除する:最前列の輸送車両車輪の破壊を試みる。【ワザマエ】判定(難易度:NORMAL)で判定し、成功した場合、相手の運動量をそのまま破壊力に上乗せし、隊列の足を派手に止めることができる。

*結果:続く戦闘でPOPする湾岸警備隊員の人数が減る。また湾岸警備隊員およびアマクダリ・セクトのニンジャエージェントがマップにPOPするタイミングが遅れる。

*デメリット:PC/PLは事前に敵の戦力を把握することができず、場当たり的に対処することになる。最初からモータートラが展開され攻撃を仕掛けてくる。

選択肢2:身を潜めて様子を伺う:相手の出方を伺ってから行動する。しかし、即座に排除を試みる場合と比較して、劇的な効果を得ることは難しい。また何が起きるか分からない。

*結果:隊列は廃墟オフィスビル群で停車する。湾岸警備隊員たちと2人のニンジャエージェントが現れ、何かを探しているような様子が見て取れる。PCは任意のタイミングで攻撃を仕掛けられる。

*デメリット:敵戦力を一切削れていない状態で戦闘に入ることになる。また湾岸警備隊員とニンジャ戦力が展開された状態での戦闘開始となる。

シーン3:輸送コンボイの反応/敵の迎撃

KRAAASH!ハンドル操作を失った輸送車両は蛇行した後、横転し、激しく砂塵を巻き上げながら数度大地を跳ねた。視界を遮る砂煙。そして君たちはそれを貫くようにして飛び出した、2つの影を見逃さなかった。ニンジャである。

選択肢1:狙撃を受けた隊列は事故を起こして一時停止するが、即座にアマクダリ・セクトのニンジャ2人が車外へと飛び出して斥候を行う。続いてモーター・トラが迎撃のために展開されるため、PCはマス・ステルス・ジツでも使用していなければ即座に発見されて戦闘になってしまうだろう。

この場合、最初にモータートラが3機(PCの戦闘能力に応じて±1機)が戦闘マップ上にPOPしてから1ターン目が始まる。さらに次のターンからはアマクダリ・ニンジャもマップに登場し始める。

1ターン目:モータートラx3
2ターン目:ベンドナイト(アマクダリニンジャ)
3ターン目:ダストブレイカー(アマクダリニンジャ)
4ターン目:湾岸警備隊員x4
*戦闘がPC優位に進んでいる場合、湾岸警備隊員はダストブレイカーと同時に登場する。

PCが狙撃判定に失敗した場合、敵はPCが攻撃を仕掛けてきていることに反応し、(山賊かなにかと判断して)モータートラを全機投入して排除にあたる。隊列は一行を置いて先に進み、以降は『選択肢2』と同じ展開になる。


選択肢2:先述のように、隊列は廃墟オフィスビル群で停車する。湾岸警備隊員たちと2人のニンジャエージェントが現れ、何かを探しているような様子が見て取れる。彼らの目的はダストブレイカーのジツを用いて、磁気嵐の荒野に眠る、記録にない〈鷲の一族〉にまつわる旧世紀施設の場所を突き止めることである。これはアシッドウルフ(スパイマスター)が向かった先でもある。

この場合、PCは彼らが着用する天下紋のエンブレムを視認したうえで、ニンジャもしくは湾岸警備隊員を対象に『アンブッシュ』を試みることができる。

◇アンブッシュ:戦闘開始直後、任意のPC1名は即座に行動手番を開始しても良い。このPCの1発目の攻撃は『回避難易度+1』の効果を得る。

ただし手番終了後、そのPCの次のイニシアチブから通常の戦闘1ターン目の処理が始まる。つまり、アンブッシュを行ったPCよりイニシアチブが速いキャラの手番はスキップされてしまう。

このとき、マップにはアマクダリニンジャ2人と湾岸警備隊員4名が配置されている(PCが対象として視認できている)ものとみなされる。一度戦闘が開始されると、次のような流れで敵がPOPする。

1ターン目:ベンドナイト&ダストブレイカー(アマクダリニンジャ)
       湾岸警備隊員x4
2ターン目:湾岸警備隊員x2
3ターン目:湾岸警備隊員x2
4ターン目:モータートラx3

◇NPCデータ:モータートラ//ドラグーン

クローンヤクザ生体脳を搭載した、変形機構付きのロボニンジャ。極めて機敏に動作し、遠隔でオペレーターの制御を受けている場合、十字砲火などより高度な連携を取ることができる。

このシナリオにおいては、最後尾の輸送車両にオナタカミ社の技術者が搭乗しており、モータートラ(ドラグーン)の制御を行う。その恩恵として、モータートラは特殊な『回避ダイス』の獲得と、射撃に対する回避性能を得ている。

「敵対者」ドラグーンが音声を発し、ロックオン対象をクロームドルフィンから旋回するニンジャスレイヤーへ変更。スクエアな両腕を向ける。BRATATATATAT!マズル光が闇を裂く!

【ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード】
◆モータートラ(種別:戦闘兵器/クローンヤクザ*)
カラテ     5  体力     8
ニューロン   3  精神力    -
ワザマエ    8  脚力     4
ジツ      -  万札     -
近接攻撃D:5、射撃D:8、回避D:3(HARD)
◇装備やスキル
 スキル :『タクティカル移動射撃』、『シャープシューター』、『疾駆』、『突撃』

 『アームバルカンx2』:遠隔武器、連射4、バースト2x2、ダメージ1、小銃
 『アームパンチ』  :テック近接武器、ダメージ2

 『●移動スタイル:モーターサイクルモード』:
  一時的に脚力が2倍となり、ナナメ移動が可能となる。

*『高機動回避』:
  このキャラは毎ターン【ニューロン】に等しい数だけ『回避ダイス』を獲得し、
  「射撃」種別の攻撃に対してのみ「回避判定」を行える(基本難易度HARD)。

*『クローンヤクザ生体脳』:
  このキャラは精神攻撃系のジツに対して「クローンヤクザ」とみなされる(モータルではない)。
  そのジツが【精神力】ダメージを与えるものだった場合、【体力】ダメージに読み替えられる。
  このルールはジツに対してのみ有効であり、精神攻撃系のスキルは対象外である。


◇NPCデータ:湾岸警備隊員

湾岸警備隊の武装をした隊員たちはダストブレイカーの周囲を固め、独特な射撃陣形を整えて効果的な制圧射撃を行う。

◆湾岸警備隊員(種別:モータル)
カラテ     3  体力     2
ニューロン   2  精神力    2
ワザマエ    4  脚力     2
ジツ      -  万札     2
近接攻撃D:4、射撃D:6
◇装備やスキル
 スキル  :『◉タクティカル移動射撃』
 サイバネ :『▶︎サイバネアイLv1』、『▶︎テッコLv1』
 
 『アサルトライフル』:遠隔武器、連射2、ダメージ1、小銃、バースト2x2


◇NPCデータ:ベンドナイト

ベンドナイトは特殊な繊維で編まれた多重スリット入りロングコートを「サイコキネティック・タナカ・ジツ」で自在に操り、ヤリめいた鋭さの恐るべき連撃を繰り出す、特に「対多数」に優れた手練のニンジャである。ジュージツにより近接攻撃は容易に受け流され、広い攻撃範囲を持つことから接近にもリスクが伴う。

ベンドナイトとダストブレイカーはそのジツの特性からか、タナバタ・ニンジャクランのように精神的な繋がりを得ており、テレパスのように高度な連携行動を取る。一方で片方が爆発四散してしまった場合、磁気嵐の荒野の影響なのか、何らかの特異な現象により、ニンジャソウル(あるいはその断片、IPアドレス)が生き残った片方へと受け継がれる。例えばダストブレイカーが爆発四散した場合、ベンドナイトは未来予知めいた力を身につける。

これは原作におけるシルバーキー/イグナイトの事例のように、1つの肉体に複数のソウルや人格の類が同棲可能であるという事実を示し、PC/PLがアシッドウルフについて二重人格説を疑っているのであれば、その裏付けとなるヒントかつ(実際にはアシッドウルフが2人存在する事実から目を逸らせるための)ミスリードとして機能する。

TIPS:ベンドナイトは常に余裕を崩さないエリート兵士のように振る舞い、登場から1~2ターンの間はPCの実力を測るため、モータートラを当て馬に自身はスリケン投擲などで攻撃し様子を見る。これは、ネンリキにより突如としてPCの足元から瓦礫が飛び上がったり、破壊したモータートラのパーツが不自然な動きでPCへと吹き飛んできたりといった描写で演出される。

◆ベンドナイト(種別:ニンジャ)
カラテ     5  体力     5
ニューロン   4  精神力    5
ワザマエ    7  脚力     5
ジツ      3  万札     10
近接攻撃D:5、ジツ判定D:8、射撃D:7、回避D:7
◇装備やスキル
 スキル :『●連射2』、『◉◉タツジン(ジュージツ)』、『◉特殊近接ステップ』、『◉疾走』
 装備  :『パーソナルメンポ』、『特殊伝導ミリタリーニンジャコート(ジツ判定D+1)』

『☆サイコキネティック・タナカ・ジツ』:
 手番開始時に【精神力】1を消費して発動(難易度HARD, 瞬時)。
 この手番の間、一時的に【ジツ】値+1と同じ値の『●連続攻撃X(固定)』を得る。
 
 この効果中は『近接攻撃リーチ+1』の『標準近接武器』を装備しているものとして扱い、
 「攻撃判定」は近接攻撃ダイスの代わりにジツ判定ダイスを用いて行う。


◇NPCデータ:ダストブレイカー

生まれながらにサイキック能力を持つ、女性のニンジャソウル憑依者。周囲の思考断片ログを読み取り、行動を先読みする。ベンドナイトとはニューロンに特別な繋がりを持っている。

非常に無口なニンジャで、発言はおろかダメージを受けてもほぼ声を発しない。非常に存在感は薄いが状況判断能力に優れており、両腕に仕込んだ「キネシス干渉波発生装置」によりカラテミサイルやヒカリ・ジツなどカラテ粒子由来のエネルギーを撹乱・飛散させ尽くし、味方への被害を最小限に抑える。

このニンジャは湾岸警備隊の隊員への指揮官役も務めており、ベンドナイトに射撃を行っているPCや、自身に接近戦を仕掛けてきているPCを優先的に狙わせる傾向にある。

TIPS:戦闘バランスの設計上、ダストブレイカーはベンドナイトより先にやられてしまうことを想定している。NMは『▷キネシス干渉波発生装置』をベンドナイトに対しての攻撃へ優先的に使用することで、PCからのヘイトをダストブレイカーに集中させることができる。

◆ダストブレイカー(種別:ニンジャ/重サイバネ)
カラテ     4  体力     7
ニューロン   5  精神力    4
ワザマエ    5  脚力     4/E
ジツ      0  万札     10
近接攻撃D:6、射撃D:8、回避D:7
◇装備やスキル
スキル :『◉常人の三倍の脚力』、『◉銃弾の見切り』、『◉重サイバネ化』
装備  :『LAN直結型ハンドガン』
サイバネ:『▶︎生体LAN端子Lv1』、『▶︎サイバネアイLv1』、『▶︎▶︎テッコLv2』、『▶クロームハートLv1』
消耗品 :ZBRアドレナリン注射器

『▷キネシス干渉波発生装置』:
 自身および視線が通っている味方に対し、ジツによる遠隔攻撃(精神攻撃を除く)が発生したとき、
 【精神力】を1消費して【ニューロン】判定(難易度:HARD)で使用を試みることができる。
 判定に成功した時、その遠隔攻撃の軌道を狂わせ、攻撃自体を無効化してしまう。


◇TIPS:プレイヤーが戦闘を避けようとした場合は?

もしかするとPLは「狙撃による妨害だけを行う」だとか「身を潜めてやり過ごす」といった方法で先を急ごうとするかもしれない。NMは彼らの工夫や発想に酬いる形でそれを認めても構わないが、セッションがシナリオ想定よりもボリューム不足になる可能性が高い。

そうした場合、NMは次のような展開を挿入することで、不可避な戦闘シーンを発生させることができる。

①排除命令:このシナリオでは『オペレイシヨン・ペーパークリップ』にも存在したスナイパーニンジャ「サイオコール」が超遠距離からPCを観測している。彼はPCがアマクダリと接敵したことを確認すると、アシッドウルフ(スパイマスター)に情報を共有し、それを排除(ないし撃退)するよう指令を受ける。サイオコールはそれにもとづき、次のどちらかの行動を取る。

◉サイオコールは突然、スナイパースリケンでアマクダリ戦力を狙撃する。アマクダリは警戒態勢を強め、ダストブレイカーの"ダウジング"が近くに潜むPCを発見し、戦闘に発展してしまう。

◉サイオコールはPC全員が接続しているIRCチャンネルに突然接続し、アシッドウルフからの指示であるとして、監視中のアマクダリ戦力を排除(ないし撃退)するよう通達する。

いずれの場合でも、PCは下記の『狙撃支援』の恩恵を得られる。

1ターンに合計1回まで、任意のPCの手番終了フェイズの「瞬時行動」として
サイオコールによる次の『狙撃支援』を発生させることができる。

狙撃支援:『スナイパースリケン』、『ダメージD3』、『回避難易度:HARD』
     この攻撃が命中したとき、対象を1マスだけノックバックさせる。


②ダウンジング探知:アマクダリ・ニンジャのひとり、ダストブレイカーはキネシスによる周辺走査の能力に長けている。PCが身を隠していたとしても、彼女が周辺走査を開始した場合、その存在は即座に感知されてしまう。

この場合、『選択肢1』と同様の展開となり、まずはモータートラがPCの迎撃に差し向けられる。

③戦闘兵器の追撃:敵がPCの存在を察知し、なおかつPCがその場を逃れようとした場合、アマクダリ・セクトの戦力は彼らを追跡し始める。この場合、PCはモータートラ4機の追撃に対処しなくてはならない。明らかにPCが優勢な戦闘となる場合、マップには登場しないが、アマクダリ・ニンジャのベンドナイトもまたスリケンによる遠隔攻撃で戦闘に参加する。

PCがモータートラをすべて撃破したとき、追撃を振り切ったものとしてシーンが終了する。アマクダリもそれ以上深追いしてくることはない。

どのようなケースであれ、アマクダリの調査部隊との戦闘に決着が付いた時点でこのシーンは完了となる。


◇マップのアレンジ

この戦闘においては、PCの行動選択や判定結果に応じて敵の配置が変わるため、用意されたマップには『敵がPOPする可能性のある位置』だけが示されている。NMはこれを参考に、シチュエーションに応じて敵の配置を調整する必要がある。

基本的な指針として、湾岸警備隊は敵を2方向から挟むように、モータートラはなるべく敵からの攻撃が分散するように配置する。湾岸警備隊の人数が減っている場合、ドラグーンの一機が彼らと連携し、十字砲火が行えるような位置関係を保つように行動させる。

◇難易度オプション:テウチ

ニンジャ同士のイクサは必ずしもどちらかが爆発四散するまで続くものではない。このシーンにおける戦闘は比較的難易度が高く設定されているため、PCとアマクダリ・セクトのニンジャたちの両方が適度に傷ついており、決着がなかなかつかなさそうなとき、アトモスフィアを上昇する代わりにテウチを提案する。

この場での利害関係の対立さえなければ、お互いに引いてそれぞれの目的だけ果たすという選択肢もある。

TIPS:これ以降のサンプルシナリオについては、この戦闘が『ベンドナイト:生存』『ダストブレイカー:爆発四散』という結果になった想定で構築されている。

これは実セッション(実卓テストプレイ)の戦闘結果に合わせて調整したシナリオを元に、サンプルシナリオが構築されているからだ。当然ながら『このキャラクターが既に爆発四散している場合は~』と代替案も併記されているが、敵との因縁を分かりやすく作りたいNMや、整合性を気にするNMはこのオプションを用いるなどして敵を撤退させると良いだろう。

◇難易度オプション:戦闘兵器の起動遅延

トラック転倒の衝撃を受けたモータートラはオペレーターによる起動プロセスがうまく進行せず、破損していなくとも機動に時間がかかる可能性がある。こうした場合、湾岸警備隊とPOPのタイミングを入れ替えることで、隊員の数が減ったタイミングで増援として登場するように調整することもできる。


オナタカミ技術者

最後尾の輸送車両には、先述の通りオナタカミ社の技術者が搭乗している。アマクダリ戦力を撃退した場合、彼や搭載してあるUNIX端末からいくらかの情報を引き出すことができる。

◉この技術者は指定チーム(つまりアマクダリ戦力だ)と合流し、モータートラの実地テストをするようにとだけ指示されていた。アマクダリ側からは何も伝えられていない。

◉UNIX端末にはオナタカミ社の市街地戦闘試験サイトの座標が収められている。モータートラを悪列な荒野環境でのテスト後、輸送。蓄積データのアップロードと同時に、試験サイトで二次テストが実行される予定であった。

◉モータートラ//ドラグーンはクローンヤクザの生体脳を使用している。(技術者として考えるに)ニンジャの脳を同様に使用するには、コスト面でも技術面でも大きな課題が残り、難しいと思われる。
*これは『オペレイシヨン・ペーパークリップ』において、コスモクライムが口にする"概念蘇生"というキーワードについて掘り下げる要素であり、PCが興味を持って質問した場合にのみ回答される見解である。

シーン4:MG775墜落現場

君たちは戦闘の傷を癒やすと、再びサイバー馬を走らせて指定された地点へと到達した。そこは墜落時の衝撃が影響してか、盆地型の地形となっており、傍目からはツェッペリンが墜落しているようには見えない。

様子を伺えば、スマコチラ社が独断で動かしていた大型トレーラー車両と回収クレーン車両、既に積み込まれたMG775の墜落機体の姿が確認できるだろう。そして……

現場に辿り着いた一行は、スマコチラ社が独断で動かしていた大型トレーラー車両と回収クレーン車両、既に積み込まれたMG775の墜落機体と遭遇する。そこは墜落時の衝撃が影響してか、盆地型の地形になっており、傍目からはツェッペリンが墜落しているようには見えない。

ここでは先のシーンにおいて、どのようなイベントが発生したかによって若干展開が異なる。

サイオコールの支援を受けていた場合:トレーラー車両の周辺にはエンジニア風のツナギを着用したスマコチラ社員が3名、雇われのサイバネ傭兵が2名待機している。PCたちにとって彼らは造作もなく殺せる相手であり、特別戦闘処理を行う必要はないだろう。
*あるいは先の戦闘を簡略化していた場合、実際にNPCを配置して戦闘を行っても良い。

トレーラー車両を奪って移動する際、サイオコールは目的地に誘導すると言って鉄塔の側を通過させる。このとき彼は鉄塔の頂上から飛び降り、音もなくツェッペリンに着地している。トレーラーの後ろで待機しているPCが居れば、それに気がつく。

サイオコールの支援を受けていなかった場合:クレーターにはスマコチラ社の社員とサイバネ傭兵の死体が転がっている。一見して同士討ちにも見えるが、よく観察するといずれも頭を叩き潰されているか、スリケンにより急所を撃ち抜かれて死亡していることがわかる。

この犯人はサイオコールであり、警戒する一行の前にはMG775の機体の中から状況を改めたサイオコールが姿を現すことになる。

いずれのケースでも、PCはMG775の搬送中にサイオコールと直接的に会話を行うチャンスを得る。彼のパーソナリティやバックボーンについては、下記のセクションの概略もしくはCPセッティング記事を参照すること。


◇NPCデータ:サイオコール

2m近くの長身痩躯の重サイバネニンジャ。サイバネ腕だけが異様に巨大であり、このシナリオにおいては宇宙飛行士めいた白い重サイバネフレームの上に特殊なカモフラージュネットを纏った不気味なシルエットをしている。このカモフラージュネットは温度差を隠蔽することでサーマル検出を阻害する。

TIPS:サイオコールもまた、アシッドウルフのように秘密主義を徹底する謎めいたニンジャとして立ち回る。しかし彼はアシッドウルフやPCの部下でも仲間もはなく、あくまでも利害関係が一致した協力関係に過ぎず、互いに多くの秘密を隠し持っていることも理解している。故に彼はリスクヘッジとして、ときには幾つかの情報をPCにあえて提供し、いざとなれば味方へ引き込みたいと考えている。

彼は『フォールス・ウインター』においては貴重な「まともにPCと会話をしてくれる味方NPC」だが、真のアイデンティティは「月に執着する(しかし行動は一貫しない)危険なスリケン投擲マシーン」という点には注意が必要である

一行と合流したサイオコールは次なる目的が『MG775の機体をチョッコビン社の倉庫へと運ぶ』であることを告げる。その狙いは、この墜落事故にかこつけてアサノサン・パワーズ社に介入し、MG775を用いて情勢に干渉しようとしているアマクダリ・セクトの活動妨害、またその活動要員のあぶり出しである。MG775は餌であり、PCたちはそれに釣られたアマクダリ・セクトのエージェントを始末し、パワーズ社介入に関わるマキモノを奪わなくてはならない。

既に彼の狙撃支援を受けていた場合、負傷しているサイオコールは一時的に離脱し、その戦闘では支援が受けられなくなってしまう。何れのケースでも彼と話をする機会は得られる。

「ドーモ、サイオコール、デス」ニンジャは身をかがめ、タラップから飛び降りた「悪イガ、オ前タチヲ、監視サセテモラッテイタ」

◆サイオコール(種別:ニンジャ/重サイバネ/戦闘兵器)
カラテ     6  体力     11
ニューロン   8  精神力    -
ワザマエ    13  脚力     8
ジツ      0  万札     50
近接攻撃D:9、射撃D:22、回避D:16
◇装備やスキル
 装備  :『カモフラージュネット(ステルス迷彩ローブ)』、
      『巨大サイバネ腕(ノダチ/所持・装備ペナルティなし)』
 サイバネ:『▶︎▶︎生体LAN端子Lv2』、『▶︎▶︎▶︎サイバネアイLv3』、『▷高性能赤外線ターゲッター』
      『▶▶▶テッコLv3』、『▷▷▷試作型電磁誘導式スナイパースリケンカタパルト』

 スキル :『●連射3』、『●マルチターゲット』、『●時間差』、
      『◉シャープシューター』、『◉翻弄』、『◉ウィークポイント射撃』
      『◉重サイバネ化』、『◉◉戦闘兵器化』、『◉サイバネ殺し』

『▷▷▷電磁誘導型スナイパースリケン・カタパルト』:
  射撃時は「銃器(小銃:スナイパー)」、敵による回避時は「スリケン」とみなされる。

  射撃方法1:連射2、ダメージD3、射撃難易度:HARD、回避難易度:HARD、【6,6,6】でサツバツ発生
  射撃方法2:集中状態のみ使用可
        連射1、ダメージ2D3+1、装甲貫通2、射撃難易度:U-HARD、回避難易度:U-HARD   
        射撃時【6,6,5+】でサツバツ発生

『●射撃スタイル:バンプファイア』:
  サイオコールの巨大なサイバネ腕と重装甲フレームは、重量と反動吸収機構を組み合わせた
  強引に連射性能を引き上げるためのバンプファイアストックめいた装置である。
  
  集中状態に限り、あらゆる射撃時に『連射+1』効果を得る。


シーン5:チョッコビン社倉庫

このシーンはチョッコビン社の倉庫にMG775を運び終えた後から始まり、PCはMG775を囮にしてアマクダリ・ニンジャを待ち伏せすることになる。彼らには知らされないが、機体のハイブリッド・ニューク燃料炉にはサイオコールによって細工が施されており、どちらが敗北しても遠隔起爆で機体を木っ端微塵に吹き飛ばせるように仕組まれている。

事前に仄めかしを行いたいならば、NMは事前にサイオコールの不審な行動などを描写し、PCから彼を問い詰めさせると良い。サイオコールはPCがなにかに気が付いたならば『MG775のハイブリッド・ニューク燃料炉に細工を行っており、遠隔起爆できるようにした。PCが全滅するか、敵が強すぎて抑えきれないと判断した場合に起爆する』と素直に答える。

TIPS:これは通常のアクシス級より強い敵NPC(後述)が登場する場合のフェイルセーフとして機能する。PCが対処可能なブラックメイル級以上の強さの敵をPOPさせる場合は、規定ターンを耐え凌ぐ(防衛する"演技"をする)ことを勝利条件とし、PCの脱出とともにこれを爆破する(無論、両者ともに生存し、イクサは強制的なテウチとなる)。

この背景では、アシッドウルフの情報操作もあり、アサノサン・パワーズ社やスゴイテック社はスマコチラ社が抜け駆けしてMG775の機体を回収したかのように思い込む。一方で社員の死亡を確認したスマコチラ社はそれを言い掛かりだとして、他2社の陰謀ではないかと疑念を強める。

これによって事態は再び膠着状態に陥るが、利用できるコマの損失を避けたいアマクダリ・セクト(ないし担当させられていたブラックメイル)は、当初の目論見どおり「MG775がキョートのメガコーポに撃墜され、回収された」シナリオを作り上げ「ネオサイタマ・キョート間の緊張関係の高まり」を演出するため機体の奪取へと動く。


◇オプション:臨時の余暇

続くシーンではチョッコ便社の倉庫にMG775を配置し、待ち伏せを行うことになる。機体を倉庫まで運搬し、機体消失の情報が伝わり、居場所が突き止められ、アマクダリ・ニンジャが駆けつけるまでおおよそ1~2日の猶予がある。

NMはPLが望むならば、この間にシナリオ報酬の余暇を1~2日前倒しで使用できるものとしても構わない。ただしその間に可能なのはスキルトレーニングや能力値トレーニングのみだ。


待ち伏せ作戦

このシーンにおける戦闘は待ち伏せを伴う防衛戦であるため、PCは戦闘が始まる前に、幾つかの下準備を行うことができる。

貨物パレットの移動:マップ上にサーモンピンクのセルで示されている貨物パレット(2x2サイズ)は、戦闘開始前までなら自由に配置を変えることができる。望むならマップから取り除いても構わない。

高所からの射撃:PCは望むなら高所(ツェッペリンの上や欄干付きのキャットウォーク)に配置してから戦闘を開始しても構わない。

サイオコールの狙撃支援:サイオコールをマップ上、北側か南側に配置して狙撃支援を受けられる。サイオコールは配置した方角に位置する窓を起点に、ターゲットまで射線が通る場合のみ狙撃が行える(北側に配置した場合、マップ上側の窓2つのいずれかから射線が通る必要がある)。

配置後は移動不可。またサイオコールは最適な狙撃ポジションに付くまで、戦闘開始から2~3ターンを要する(3~4ターン目から狙撃が可能となる)。

1ターンに合計1回まで、任意のPCの手番終了フェイズの「瞬時行動」として
サイオコールによる次の『狙撃支援』を発生させることができる。

狙撃支援:『スナイパースリケン』、『ダメージD3』、『回避難易度:HARD』
     この攻撃が命中したとき、対象を1マスだけノックバックさせる。


アマクダリ・セクトの襲撃

このシーンではPCの強さや選択に応じて、登場する敵キャラクターが変化する。いずれの場合でも、まずはPC側の消耗を狙ってクローンヤクザ部隊が飽和攻撃を仕掛けてくる。

逆矢尻陣形:敵はクローンヤクザ飽和攻撃によるPCの消耗を狙っている。戦闘開始から最初の1ターンの間、PCの手番開始フェイズ直前に、マップ外(AA列から右側)に控えているクローンヤクザ(9>7>5>3人の逆矢じり型陣形)が次々とPOPする。増援はPOP時に1マスだけ左側に移動し、重なるクローンヤクザを左方向に押し出すように強制移動させることで逆矢尻の陣形を構築する。

PCはマップ外のクローンヤクザに攻撃することはできない。

◆クローンヤクザY-12型 (種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ)
カラテ     2  体力     1
ニューロン   2  精神力    1
ワザマエ    3  脚力     2
ジツ      ー  万札     0
近接攻撃D:2、射撃D:3
◇装備や特記事項
 ノーカスタム・チャカガン:『遠隔武器』、『ダメージ1』

2ターン目の開始時には、ボスキャラクターとしてアマクダリのニンジャがPOPする。PCの戦力に対して強さが心許ない場合は、さらにクローンヤクザの戦力を引き連れて登場させよう。

襲撃パターン1

怒れるブラックメイルがクローンヤクザ軍団を率いて襲撃してくる。彼女は『オペレイシヨン・ペーパークリップ』における失態により組織内での立場を危うくしており、さらには今回のアサノサン・パワーズ社絡みの案件でPCを原因としたインシデントに巻き込まれたことで後がない。この場所でPCと遭遇する彼女は怒りに震え、爆発四散するまで戦いを止めることはないだろう。

*ブラックメイルは前回登場時からやや強化された状態で再登場する。ブラックメイルが既に爆発四散している場合、別のオプションを採用するか、似たステータスの別のニンジャを登場させる。

◆ブラックメイル  (種別:ニンジャ)
カラテ    4  体力   6
ニューロン  4  精神力  4
ワザマエ   8  脚力   4/N
ジツ     5  万札   10

攻撃/射撃/機先/電脳  4/4/5/6
回避/精密/側転/発動  8/8/8/9

◇装備や特記事項
 ▶︎生体LAN端子LV1、▷ファイアウォールx1、アサシンダガー
 消耗品:ZBRアドレナリン注射器、トロ粉末、オーガニック・スシ
 スキル:『◉頑強なる肉体』、『◉滅多斬り』、『◉ツジギリ』、『◉疾駆』、
     『☆◉バリケード化』、『☆◉瞬時の解除』、『☆◉レッサー・ムテキウェポン』
     『☆ムテキ・アティチュードLV1-3』、『★ムテキ・メイル』

「決着をつけよう。殺す」:このシナリオではブラックメイルに撤退するという選択肢はなく、基本的には爆発四散するまで戦う。しかし瀕死の状態まで追い込まれ、孤軍奮闘を強いられるとき、別の建物へ離脱して手持ちのアイテムで回復を行う場合がある。(PCたちが追うことを選択するなら、全アイテム消費後のブラックメイルと別マップでの戦闘となる。仕切り直しだ)

追撃戦を行う場合、【ニューロン】判定でブラックメイルより成功数が多かったPCは最初の1ターン目から、それ以外のPCは2ターン目からの参戦となる。

◇『天下紋のマキモノ』:ブラックメイルが爆発四散するか、体力が3以下の状態でダメージを受けたとき、隣接マスにこのアイテムをドロップする。PCの目的はこのアイテムの確保となる。

襲撃パターン2

ブラックメイルに加え、チリングブレードもしくはアクシスのニンジャがアンブッシュを仕掛けてくる。彼らはしばらくブラックメイルとPCに戦闘を行わせ、十分に注意が引き付けられた段階で、首を飛ばそうと倉庫の天井を貫いて現れる。

このアンブッシュはチリングブレードのイニシアチブ順が回ってきたタイミングで、チリングブレードのPOPおよび行動手番の開始という形で行われ、彼の攻撃を受けるPCの回避難易度は+1されてしまう。ただしサイオコールが狙撃支援に入っている場合、謎のニンジャの存在を警告され難易度の上昇が発生しない。

TIPS:「フォールス・ウインター」において、コリ・ニンジャクランは極めて微妙な立ち位置にある。ホワイトドラゴンがカスミガセキ・ジグラットの地下で眠りについており、アマクダリ・セクトとの同盟関係を協議中であることは変わらないが、計画に遅れをきたすセクトの状況と、ブラックサイトからの密かな接触を受けていることから、尖兵を使って慎重に戦況を見極めようとしている。

このシナリオでチリングブレードが登場する場合、彼の真の目的はPCたちの実力を測ることであり、不自然に全員を満遍なくターゲティングしたりといった行動を取る。詳しくはCPセッティング記事を参照のこと。

◆チリングブレード (種別:ニンジャ)
カラテ    7  体力   9
ニューロン  6  精神力  7
ワザマエ   7  脚力   4/N
ジツ     4  万札   10

攻撃/射撃/機先/電脳  7/7/6/6
回避/精密/側転/発動  7/7/7/10

◇装備や特記事項
 『●連続攻撃2』、『●連射2』、
 『◉頑強なる肉体』、『◉忠誠心(コリニンジャ・クラン)』、
 『☆コリ・ジツ』、『★コリ・ケン生成』、『☆◉コリ・ジツ強化』

『☆コリ・ジツ』+『☆◉コリ・ジツ強化』:
 周囲の床や壁を急激に凍結させる。生物がいればその体の一部が氷漬けになる。
 手番「攻撃フェイズ」に【精神力】を1消費し、攻撃の代わりに発動判定を行う(『発動:NORMAL』)。
 発動に成功した場合、自分を中心とした3×3マスにいる敵全員に対し、
 1ダメージと『回避ダイスダメージ2』を与える(『回避:NORMAL』)。
  【6,6】:2ダメージ+『回避ダイスダメージ3』となる(『回避:NORMAL』)。

『★コリ・ケン生成』:
 手番開始時に【精神力】を2消費し、「難易度:NORMAL」で判定する。
 発動に成功すると、チリングブレードの手に冷気を纏った超自然のカタナが出現する。このカタナは、
 エンハンスにより「攻撃判定ダイス+1」、「無属性ダメージボーナス+1」、『回避ダイスダメージ2』を持つ。
 また、通常のカタナを装備しているかのように、各種戦闘スタイルを使用可能となる。
 このジツの効果は戦闘終了まで持続する。

『●やらいでかーッ!』:
 チリングブレードが真に忠誠心を捧げる先はアマクダリ・セクトではない。
 【体力】が3以下まで低下するか劣勢に陥ったとき、彼は憎まれ口を叩きながら撤退する。


襲撃パターン3

PCたちが極めて強力な場合、アマクダリ・アクシスのひとりにして強大なアーチ級ソウルの憑依者、インヘイルが投下される。インヘイルは炎を鎧に閉じ込めたような超常的ニンジャであり、意思疎通は困難である。

彼は殲滅を目的としたデストロイヤー的な運用をされており、単純に単騎で突入しPCを殺そうとする。

◆インヘイル(種別:ニンジャ)
カラテ     11  体力      26
ニューロン   6   精神力    17
ワザマエ    7   脚力     6/U
ジツ      7   万札     30
近接攻撃D:11、射撃D:7、回避D:13
◇装備や特記事項
 装備 :『ダイ・カタナ(ノダチ)』
 スキル:『●連続攻撃2』、『●連射2』、『◉◉タツジン:ノダチ』
     『◉◉グレーター級ソウルの力』、『◉◉アーチ級ソウルの力』、『◉防具習熟』
 ジツ:『★カトン・エンハンス』、『★★カトン・ジャンプ』
    『★◉ヒサツ・ワザ:カトン注ぎ込み』、『★★★◉アーチ級装束生成』

『**キセナガ・インフェルノ**』:
 全てが鍛え上げられた黒い鋼鉄で構成された大鎧。重装なアーチ級生成装束とみなされる。
  【体力】+8、【精神力】+4、回避ダイス+1、緊急回避ダイス+8、脚力ダメージ軽減1

『★★灼熱の肉体』:
 このニンジャの肉体は燃え上がる炎そのものであり、触れるもの全てを焼き尽くす。
 『ダメージ軽減1(火炎属性のみ対象)』に加え、『★チドク・ジツ』の効果を得る。
 ただし後者により発生するダメージは『火炎属性ダメージ1』である。


襲撃パターン4

『オペレイシヨン・ペーパークリップ』でブラックメイルが爆発四散しておらず、なおかつPCが磁気嵐の荒野でベンドナイトらとの戦闘を(敵の逃亡という形ではなく)テウチに済ませていた場合、度々登場する"工作員"の正体を確かめるべくハタモトがこの場に現れる。

このパターンでは最初にクローンヤクザによる飽和攻撃が行われ、それを捌き切ったタイミングでスワッシュバックラーが音もなく登場する。この段階ではPCの練度によって勝ち筋が見えるかもしれないが、彼は執拗に最も強いPCを試すように攻撃を仕掛ける。

さらに1ターン後には武装ヘリから飛び降りたドラゴンベインが『強襲降下』によるアンブッシュを仕掛けてくる。この時点でPCたちに勝ち目はなくなるだろうし、サイオコールからも撤退が推奨される。彼はハタモトの2名を始末するため、容赦なくハイブリッド・ニューク燃料炉の起爆トリガーを引くだろう(先述の「強制的なテウチ」を参照のこと)。この戦いは必ず痛み分けになる。

◆スワッシュバックラー (種別:ニンジャ)
カラテ    7   体力   10
ニューロン  7   精神力   11
ワザマエ   15  脚力   8/N
ジツ     3   万札   30

攻撃/射撃/機先/電脳  7/15/7/7
回避/精密/側転/発動  15/15/15/-

◇装備や特記事項
 刺突剣(カタナとみなす)
 『●連続攻撃2』、『●連射3』、『●時間差』、『●マルチターゲット』、
 『◉忠誠心:アマクダリ』x3、『◉マーク・オブ・アマクダリ』、
 『◉電光石火』、『◉バック転回避』、『◉殺人剣』、
 『◉◉タツジン(イアイドー)』、『◉ヒサツ・ワザ:タイノサキ』、
 『◉針の穴』、『◉連続精密刺突』

『◉戦闘スタイル:連続精密刺突』:
 『●連続攻撃5』となり、【ワザマエ】で『近接攻撃判定』を行う。
 ターゲット敵1体固定。1発につきダメージ1固定(『エンハンス』『サツバツ!』『痛打』全て不可)。
 敵はこの攻撃に対し『カウンター不能』。 

『◉戦闘スタイル:針の穴』:
 装備する剣の切っ先にカラテエンハンスの力を凝集させるとともに、
 敵の装甲継ぎ目など、わずか数ミリ四方のウィークポイントを狙って、高速の突きを繰り出す。
 攻撃開始前に【精神力】を1消費し、『針の穴』の使用を宣言すること。
 ターゲット敵1体固定。【ワザマエ】で『近接攻撃判定』を行う。
 『ダメージ1』、『痛打+1』、『回避難易度:HARD』、『装甲貫通1』
◆ドラゴンベイン (種別:ニンジャ)
カラテ    15  体力   27
ニューロン  7   精神力  13
ワザマエ   8   脚力   5/E
ジツ     5   万札   30

攻撃/射撃/機先/電脳  15/8/7/7
回避/精密/側転/発動  15/8/8/12

◇装備や特記事項
 **ツラナイテタオス** (所持ペナルティ【脚力】-2、反映済み)
 **業物の西洋鎧甲冑一式** (【体力】+12、【脚力】-2、反映済み)

 『●連続攻撃3』、『●連射2』、『●時間差』、『●マルチターゲット』、
 『★★強襲降下』、『◉常人の3倍の脚力』、
 『◉回転弾き飛ばし』、『◉不屈の精神』、『◉忠誠心:アマクダリ』x3、『◉マーク・オブ・アマクダリ』

**ツラナイテタオス**: 以下のルールを持つ特殊な「超大型武器」とみなす
  『攻撃難易度:U-HARD』、『ダメージ3』、『痛打+1』、『連続側転難易度:U-HARD』(軽減されHARDに)
  『●戦闘スタイル:回転斬撃』、『●戦闘スタイル:串刺し』

『●戦闘スタイル:回転斬撃』:
  『連続攻撃上限1』。『痛打』『サツバツ!』発生なし。
  【ワザマエ:HARD】で『発動判定』。隣接している敵全員に1ダメージを与える。

『●戦闘スタイル:串刺し』:
  このスタイル選択時は、敵1体のみしか攻撃できない。
  『リーチ+1』、『装甲貫通1』、『拘束攻撃(脱出:U-HARD)』を得る。
  隣接している敵を『拘束』することに成功した場合、その敵を強制的に1マス後退させてもよい。

『◉回転弾き飛ばし』:
  超大型近接武器が持つ戦闘スタイル「●回転斬撃」の効果を強化する。
  「●回転斬撃」でダメージを受けた敵全員に『弾き飛ばし』の効果を与える。

『★★強襲降下』:
 移動フェイズの開始時に使用。2ターン続けての使用不可。
 【精神力】を1消費して『ジツ発動判定』を難易度HARDで行う。
 ドラゴンベインは空高く飛び上がった直後、カラテを一点集中させた大槍で急降下攻撃を繰り出す。
 マップ内で視界が通っている好きな場所へと、直ちにドラゴンベインを移動させること(これを着地点と呼ぶ)。
 着地点と隣接する敵1体は、自動的ダメージD3を受ける(『装甲貫通2』、『回避:HARD』)。
 『強襲降下』は移動フェイズに発生するため、ドラゴンベインは続けて攻撃フェイズを行える。


結末

目的は果たした。そろそろ潮時だろう。君たちはオナタカミ社の座標データ、そして黒いマキモノを回収し、チョッコ便社の倉庫を遠く離れる。

そして……KRATOOOM!!凄まじい爆発がチョッコビン社の倉庫から膨れ上がり、周囲を飲み込んだ。遅れて、骨を揺らすような衝撃波と爆発音が襲いかかる。1度、2度。

ハイブリッド・ニューク燃料炉の欠陥が今になって爆発を引き起こしたのか?当然、そうではない。これはスナイパーニンジャの施した細工によるものである。

MG775の機体はチョッコビン社の倉庫と共に、跡形もなく吹き飛んだ。何であれ、アマクダリ・セクトの目的が果たされることはないだろう。国家間の緊張関係の高まりは回避された。

だが、ネオサイタマには種が巻かれた。疑念と、猜疑心。そして混乱を呼び起こすための。

チョッコビン社倉庫での決着がついた段階で、このシナリオは完了となる。


エピローグ

NMはシナリオ終了後、次のようなショートエピソードを開示し、シナリオの背景でアシッドウルフ(スパイマスター)が何をしていたのかが明かされる。ここではアシッドウルフ(スパイマスター)が旧世紀の隠された軍事基地に到達し、如何にしてか網膜パターン/虹彩/指紋といった幾つかの生体認証を突破するシーンが描かれる。

不気味な音声ガイドの反応は〈鷲の一族〉を歓迎しているようにも捉えることができ、PC/PLはアシッドウルフが〈鷲の一族〉なのではないか?という可能性を考えに加えることになる。これはミスリードであり、実際には彼のサイバネ化された腕や眼に組み込まれた〈鷲の一族〉の生体情報がシステムを"騙して"いるだけだ。

【磁気嵐の荒野|隠された軍事施設跡】
機械の指が汚れたレンズを拭い、ほこりを拭い取る。それから数度小突かれて、スキャナーはようやく青白い走査光を放ち、アシッドウルフの眼を読み取り始めた。

その場には甲高くハウリングするような機械音、それから破壊されたレーザー砲塔が腐食して立てるシュウシュウという不快な音だけが響き渡る。彼らは健気にもこの場所を守り続けていたが、致命的に狂っていた。あるべきものが欠けていれば、狂ってしまうのは機械も、人も同じだ。

網膜パターン……虹彩……指紋……。幾つかの生体情報認証が完了し『キャ…バ……ー…ン…!』ノイズ塗れの不気味な音声ガイドが彼を歓迎した『よ…こそ……偉大な…る………の…た』。彼は僅かに頭を引き、メンポで顔を、青い眼を覆った。

少々手間取ったが、ようやくここまで辿り着いた。手勢も揃えた。巻いた種は芽を出し始め、滴した毒は着実に相手の土壌を汚染しつつある。

「……さあ、ここからだ」世界を、あるべき状態へと進めなくてはならない。主には忠実で勇敢な戦士が、戦士には仕えるべき偉大なる主が必要だ。どちらも用意した。

その役割に相応しい価値を証明できるかどうかは、彼ら次第だ。

「俺は、期待している」彼は呟き、巨大な集積UNIXの前で足を止めた。それは彼を歓迎するかのように煌々とLED光を放ちながら、再起動する。

「お前たちの、可能性に」

◇報酬(PC1人あたり)

基本報酬:万札30、余暇6日 (シナリオ中の前借り分を除く)

※撃破したキャラクターの所持万札は除く。
 調整したい場合、所持万札のドロップを無しにして想定獲得分を基本報酬に加算する。
◇名声
 磁気嵐の荒野でアマクダリ・ニンジャ2人を撃退した(テウチを除く):+1
 ブラックメイルを爆発四散させた:+1
 チリングブレードなどアクシス級以上のニンジャを撃退した:+1


別の分岐シナリオ可能性

冒頭で述べた通り、この『オペレイシヨン・マタドール』は、前シナリオ『オペレイシヨン・ペーパークリップ』において、PCが100点満点の結果を残せなかった場合に第三話として発生することを想定したシナリオとなっている。
 仮にPCが『オペレイシヨン・ペーパークリップ』において(かなり難易度は高いが)完璧な働きを見せた場合、アシッドウルフは彼らの有用性を評価し、第三話は全く別のシナリオ内容となる。その大まかな内容構成は次のようなものだ。

◉PCはアシッドウルフ(スパイマスター)と別行動を取る代わりに、彼に同行して磁気嵐の荒野に隠された旧世紀の地下軍事施設を訪れることになる。そこは『ブレイン・ウォーフェア』の舞台となった空中戦艦の出発地点であると同時に、PCには知らされないが、かつて〈鷲の一族〉が宇宙へ逃れた"記録にない"スペースシャトル発着場のひとつでもある。

◉一行は旧世紀の狂った防衛システムに迎えられ、それを破壊しながら強引に施設の中心部を目指すことになる。やがて辿り着いた隔壁で、アシッドウルフ(スパイマスター)は如何にしてか網膜パターン/虹彩/指紋といった幾つかの生体認証を突破し、中心部への道をひらく。
*ノイズ塗れの不気味な音声ガイドが〈鷲の一族〉を想起させ、PC/PLはアシッドウルフが〈鷲の一族〉なのではないか?という疑いを持たされる。これはミスリードであり、実際には彼のサイバネ化された腕や眼に組み込まれた〈鷲の一族〉の生体情報がシステムを"騙して"いるだけだ。

中心部には超高性能な集積UNIXシステムが待ち受けている。アシッドウルフ(スパイマスター)はこれを本格的に運用するために、周辺の荒野へまばらに配置されているブースターアンテナ(あるいは何らかの機器)を手動で再起動しなくてはならないと言う。

◉PCは地下の軍事基地から再び磁気嵐の荒野へと赴き、幾つかの廃墟に残るブースターアンテナを再起動することになる。その道中、彼らは地下軍事施設を探すアマクダリ・セクトの調査部隊と遭遇してしまう(シーン2~3の戦闘が発生する可能性がある)。

◉ブースターアンテナの再起動が完了し、PCが撤収を開始したとき、セクトの調査部隊ないし増援が現れる。場合によって、これはスワッシュバックラーらハタモトとなる。

◉PCは軍事基地の秘密を守るため、敵を迅速に排除しなくてはならない。相手がハタモトなど遥かに格上の場合、戦闘にはアシッドウルフ(スパイマスター)が介入する。
*これにより、アマクダリ・セクトはアシッドウルフの存在あるいは生存を知ってしまう。


補足コメント

『マタドール作戦』は1975年にCIAが計画していた作戦で、その内容は『アリゾリアン計画(通称:ジェニファー計画)』で回収しきれなかった、核魚雷を積んだソ連の潜水艦の残骸を海底から引き揚げるというものでした。アリゾリアン計画において、表向きは引き揚げた潜水艦から、目的である当時のソ連の軍事技術や暗号化技術について情報を得ることはできなかったとされていますが、結局『マタドール作戦』が実行されることはありませんでした。

『オペレイシヨン・マタドール』もまた「砂礫の海からMG775の残骸を回収し(それを餌に)セクトの機密情報を得る」というパターンと、「別の分岐シナリオ可能性」にある「砂礫の海から(船港でもある)軍事基地を探し当てる」というパターンの両方で、上記の計画がモチーフに取り入れられた物語構成となっています。

ただし、前者が【ブラックメイルド・バイ・ニンジャ】が関わるシナリオとなることは当初プロットでは決まっておらず、テストプレイ(=初版ルールで行われた実卓プレイ)において、『オペレイシヨン・ペーパークリップ』でブラックメイルを仕留め損ねて悔しがるプレイヤーに対して早く再戦の機会を用意しなくては、ということで急遽拵えられた要素でした。

注:この際、アシッドウルフ(スパイマスター)の精神的な二面性を表現するため、セクトのニンジャを仕留め損ねた(セクトに存在がバレた)ことを激しく叱咤してくるシーンを挿入していました。結果としてプレイヤーにはかなりのフラストレーションを与えてしまい、反省から上記のようなシナリオ構成に至ったという背景があります。サンプルシナリオからもひっそりと当該イベント要素が排除されています。

つまり「冷戦中のアメリカ合衆国とソビエト連邦の緊張関係に重大な影響を及ぼし得る潜水艦K-129」 と 「ネオサイタマ⇔キョート共和国間の緊張関係に重大な影響を及ぼし得るツェッペリンMG775」。それぞれの要素がうまく対応したのは全くの偶然だったわけです。


また最初期のプロットにおいて、『オペレイシヨン・マタドール』に対応する第三話目のシナリオは『オペレイシヨン・アコースティック・キティ』というタイトルになる予定でした。これはショートキャンペーンを前提に構成していた際のもので「第一話と第二話で手に入れた技術(あるいは人材)を組み合わせ、〈鷲の一族〉の生体認証システムを突破して旧世紀施設から機密データを抽出する」という、1つ1つのシナリオの重みを増すような、しかし駆け足な展開の内容が想定されていました。

「アコースティック・キティー計画」は「猫にマイクやアンテナを埋め込み盗聴させる」というCIAの怪しい計画(当然ながら大失敗した)であり、『オペレイシヨン・アコースティック・キティ』というタイトルは、「謎の技術を埋め込まれてスパイさせられるプレイヤーキャラクター(ないしアシッドウルフ)」をそのネコになぞらえて皮肉るものでもあったというわけです。

なお、もし『オペレイシヨン・アコースティック・キティ』が第三話となっていた場合、本シナリオとモチーフを同じとする『オペレイシヨン・ジェニファー』というシナリオが第五話に挿入され、機密データの代わりにPCの混濁したニューロンから失われた記憶を引き揚げるという精神世界の物語が展開される予定でした。

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