らくがき「ひだまりのスープ」
わたしたちは、ずっと友達。ずっと、ずっと、ずっと、生きても、死んでも、ずっと友達。
そんな、叶わない、夢を見る。
スープを作る、夢を見る。わたしたちは、二人で海には、行けなかった。碧い、碧い、割れた宝石みたいな、海の砂の、夢を見る。飲まずに捨ててしまったビールの、短くなったタバコの、壊れたスマートフォンの、傷だらけのこどもたちの、まっくろの花束の、夢を見る。恋の色をした粉を纏った、きらきら光る蝶の、夢を見る。屍人の指で自慰を重ねる、脆い獣の、夢を見る。白くて暖かいひだまりの、夢を見る。長く長く、伸びた手足を、小さく小さく、折り畳んで、ずっと幸せな、夢を見る。桜を見に行く、夢を見る。苹果を齧る、夢を見る。二人で溺れる、夢を見る。やさしいスープを作る、夢を見る。空想の、スープの、夢を見る。
空想のスープは、いつでも、どこでも、いつまでも、どこまでも、やさしかった。手足が冷えたら、そっと温めてくれた。すっかり忘れて放っておいても、蛆が湧いたりしなかった。選ばなくても、選んでくれた。愛さなくても、愛してくれた。ずっと友達で、いてくれた。やさしくて、やさしいだけで、一口だって、一滴だって、飲み込めやしない。舌に触れた途端、塩辛くて、苦くて、噎せ返って、溺れてしまう。やさしい海の、夢だった。
ずっと続くものなんて存在しないことは、最初から分かっていた。でも、枯れるなら、咲かないでほしかった。腐るなら、実らないでほしかった。死ぬなら、生まれないでほしかった。最後のページなんか破り捨てて、ずっと、一緒にいてほしかった!わたしは、それでも、欲しかった。あたたかいスープが、あたたかいひだまりが。それが空想でも、夢でも、何でも良かった。生まれる前から、死んだ後まで、友達でいてくれるなら。
わたしたちがずっと友達でいるための、ひだまりのスープ、いかがですか。
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