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日本女子プロゴルフ界の次の展開

経済的、政治的、文化的に没落の一直線を辿る日本において、女子プロゴルフ業界は、歴史的な隆盛時期を既に過ぎてしまい、現状の取組みのままでは縮小し続けることは明白である。コロナによって、歴史的な隆盛時期が過ぎたことが誰の目にも明白になったことは、不幸中の幸いである。一般的には、ある組織の取組みのピークが過ぎたことを知るのは、数年〜10年以上時間が経過し、過去を振り返った時である。たった半年〜1年で知ることができたというのは歴史的例外である。

先日大きなニュースが報じられた。米PGAツアーとヨーロッパ・ツアーが統合ではないが、協調することで話が進んでいるとのことである。
グローバル化を一層進め、あらゆるビジネス・チャンスを残らず掻き集めようとしていて、欧米のビジネスマンの商魂の逞しさをまざまざと見せつけられている。

更なるビジネス・チャンスをものにするためには、一定程度の以上の規模のビジネスはグローバル展開する必要がある。その前提は、コロナのような例外的時期があるとしても、今後100年は変わらないほど強固なものだろう。

では、日本LPGAツアーは、どの程度グローバル化した事業と言えるのだろうか。

1. 海外から選手が多く参戦している。しかし、韓国、中国、フィリピン等のアジア圏の選手が大半で、アメリカ、ヨーロッパからの参戦はほぼない。
2. 日本LPGAツアーの試合が世界的に放送されていない。
3. 日本LPGAツアー上位の選手の大半が世界的に認知されていない。

日本単独のツアーが世界的な注目度を集めるのは、難易度が高過ぎる。賞金額をアメリカツアーよりも増やすことが困難だからである。賞金額をアメリカツアーよりも増やすことがクリア出来て初めて、グローバルに注目を集める試合が成立する。そのためには、アジアと中東を一つにしたツアーを創設することである。

中東では現時点ではサウジアラビア王国しかゴルフを開催できないだろうが、戦火が収まった地域で経済復興していくことになれば、ゴルフ国になっていく可能性はある。それよりも重要なことは、アジアと中東がゴルフ競技でまとまっていくという理念を持つことである。欧米が中東を100年以上に渡り破壊し続けてきた。そのため、アジアが中東を癒やすのである。中東を癒やすためには、プロゴルファーになり、活躍できれば、現在の戦火や貧困から抜け出せるというシルク・ドリームを作ることである。残念ながらゴルフボールはゴムの塊、クラブは鉄の塊であり、シルクは無関係だが。

コロナ禍が収まった後の日本で、長期的に観客数が増加することはない。人口減少、ゴルフ人口減少というトレンドは割けられないからである。そのため、日本での開催される試合数は減らすべきであり、アジア・中東ツアーを開催すれば一石二鳥である。

日本のゴルフ界が世界に誇れる点のひとつとして、コース整備、グリーン整備の質の高さである。しかし現状で、日本のグリーンキーパーの何人が海外で雇われて、腕を発揮していることだろうか。数人ではないだろうか? アジア・中東ツアーという枠組みがあれば、個々のグリーンキーパーが営業力や語学力を持たずとも、協会が斡旋することにより、各国のコース整備を実施したり、アドバイスしたりすることが容易になるだろう。

気候の点から考えると、アメリカには冬でも温かいフロリダ州と夏でも涼しい州があり、1年中快適にプロゴルフ競技が出来る。しかし日本では11月末の1年最後の試合が開催される宮崎県では、競技としては寒過ぎる。ジャンバーを頻繁に着脱する必要がある。しかし、アジア・中東の各国で開催すると、競技に適した気候で1年中開催できるだろう。

賞金額、日本ゴルフ界の地位向上や関係者の仕事の増加、プレーのしやすさという4点において、日本だけのツアーよりもアジア・中東ツアーを開催するメリットがある。

逆に、デメリットとしては何か。サウジアラビア王国のように、ある日突然ドロドロとした事件が起こるというリスクがあることである。場合によっては、渡航禁止になり、競技どころではないようになる。しかし楽観的に考えれば、コロナ禍に限らず、自然的、人為的な悪影響により、通常の営みができなくなることは誰でも時々経験した方が良い。日々の当たり前が貴重な体験になるからや社会として危機管理ができる体制になるからである。

JLPGAツアー選手権リコーカップ 最終日で、興味深いインタビュー記事が配信されていた。 鈴木愛「散々練習やって、この結果」2季連続賞金女王へ白旗?

2017年、2019年の賞金女王の鈴木愛選手が完全に燃え尽きているようである。「何故トレーニングをするのか?」という疑問に対してプロゴルファーなら基本的に一つの答えしかない。「勝ち続けるため。」しかし2度の賞金女王になれた先に、本人が求めていたような幸福感はなかったようである。

逆に何故タイガー・ウッズ選手は、ボロボロの身体になりながら競技を続けるのか。勝つ楽しさを今だに味わえるからだろう。では何故それが味わえるのか? PGAツアーが世界一のツアーだからである。つまり、鈴木愛選手がもし世界一のツアーで2度賞金女王になっていれば、現在も燃え尽きることはなかった可能性が高い。特に2019年では、賞金女王になった自分よりも、海外メジャーで1勝した渋野日向子選手の方が圧倒的にマスコミにちやほやされたことに傷ついた。日本ツアーという「下部ツアー」がもたらす最大の問題である。そして日本人選手のレベルが上がれば上がるほど、その問題は大きくなっていく。

アメリカLPGAツアーは、上位が韓国人選手、または韓国系選手によって寡占されている。今後、韓国人選手の代わりに、日本人が寡占することが日本のプロゴルフ界にとっての最適な道なのだろうか。残念ながらそうではない。ゴルフの多様性が増えないからである。

サッカーや野球等の大半の競技ではどこで開催されてもプレー内容に大差はない。しかし、ゴルフではどの場所で開催をするかによってプレー内容が大きく異なる。開催国を分散させた方が、より幅の広いプレーが求められ、世界一の称号に相応しくなる。

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