一歩前に。


ある日の午後

一歩前に。一歩前に出るだけで景色が変わる。目の前の景色を変えたいとき、僕はそう思った。こうして日常が繰り返すルーティンと化していく時、次の景色を見たい。開拓したいと思う。

どこに行けばいいのかわからない、船出の切符だけ持たされて、行き先もわからず彷徨った、荒れ狂う海の波を思い出す。心苦しくも荷物を海に放り投げ、残ったのは着てるものだけ。大声で誰かを叫んだ。でもそれは自分の声ではない。そんな景色は遠くなり、晴れた景色に身をあずけると、途端に焼け付く暑さに苛まれる。白い砂浜に、一本のヤシの木、景色は波打っている。一歩前へ。

好な人ができた。名前は果歩って名前だった。その子は穏やかな声をしていた。この人は愛されて育っている。そう思った。

景色の中に、自分の色を見つけると何となく怒りにも似た気持ちになる。それは踏み出せない自分を愛する気持ちか、それとも捨てたい過去から必死に思いを背けようとする足掻きか。一歩前へ。

外の景色を文章にしたいと思った。どこに行けば見たい景色を見れるのか僕は探した。でも、そんなのどこにもないと思う。あなたはどこに行った?
心の中で叫んでみた。

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