見出し画像

子宮内胎児死亡による帝王切開術での死産までの記録


ご報告と記録を兼ねて…

数少ない親しい友人にしかお伝えしなかったのは、レズビアンのカップルの元に産まれてくる我が子のプライバシーを守る為でもあり、私たちの尊厳を守る為にも、わざわざ公共の場で妊娠報告をすることに必要性を感じていなかった為、ひっそりと静かに不妊治療をしてひっそりと穏やかに妊娠生活を送っていました。

6年かけて話し合い、1年間不妊治療をして、昨年6月12日に顕微受精で授かった私たちの大切な息子は2022年1月28日に35週(妊娠9ヶ月)で原因もなく急にお腹の中で心拍が止まってしまいました。

現在不妊治療中の方、妊娠中の方、同じ経験を持つ方や私たちと同じようなレズビアンなど性的少数者の方は、以下の記録を見ることで、心が辛くなってしまうこともあると思います。

それは本当に申し訳ないけれど、誰かの命が急に消えてしまう事はどんな人にも起こり得るという事、そしてそれはタイミングなども含めて誰にも予測、見通しを持つことや事前決定はできないことです。

だからこそ命の尊さについてや、大切な人を大切にするというのはどういう事で、何が必要で何が大切かを改めて考える1つのきっかけになってくれたら…という想いから、私たちに起きた出来事を文章にします。


私たちは、パートナシップ宣誓制度ではなく養子縁組制度を利用しているレズビアンカップルです。2015年の8月から帝王切開術前後の入院以外では、ほぼ1日も別々の夜を過ごす事もなく、苦しい時も楽しい時も2人で一緒に日常を積み重ねています。


パートナーが養母、私が養子という形で戸籍上は親族ですが、他人と他人が愛し合って、1人でも生きては行けるけれど2人でいる事で、人生を豊かにしたいとお互いに思い、一緒に暮らしを整えて積み重ねて、たくさんの事を考えて、話し合って子どもを持つと決めて、家族を育んでいっておられるマジョリティの夫婦と何も変わらない家族だと私たち自身は思っています。

日本人の精子提供ドナーさんに協力いただき、卵子から顕微受精で培養士さんに育てていただいた5日目胚盤胞を2021年6月12日に移植し彼を授かりました。いわゆる不妊治療期間は1年半でありがたいことに2度目の移植で着床してくれました。

ドナーさんと私たちの間に金銭のやりとりはありません。ただ純粋なボランティアとして精子を提供していただきました。

私たちは子どもがどのような姿形で、どのような特性を持って産まれてこようと育てると決めていたので、あえて胚盤胞から胎児に成長する過程で自費等で行う遺伝子検査はしていませんが、彼の心拍が止まってしまった1月28日の3日前、35週の妊婦検診まで、遺伝子的な疾患等はエコーで見える範囲ではなく、検診等でも異常も見られず順調に成長している事が逆に怖いくらいに平均的にすくすく育っていました。

リスクとなりうるのかは不明ですし、原因となるかといえばほぼ関係ないありませんが、妊娠糖尿病の食後2時間の結果の1つがほんの少し引っかかったことと、橋本病という持病があったことが分かったくらいで数値等は治療が必要なものではありませんでした。

ただ、これも死産の原因には関係ないですが、つわりが帝王切開の2日後頃まで続いていていて、貧血も続いていました。

妊娠初期はとにかく水しか飲めない吐きつわり。匂いつわり。                  妊娠中期はとにかく夜間の気持ち悪さとよだれつわりが酷かったです。              妊娠後期は吐きつわりと軽症の食べつわり、よだれつわりのフルコースでした。

出来ることならつわりは二度と経験したくないです。今つわりに悩まされている方もたくさんいらっしゃるかと思います。聞き飽きたかも知れませんが、つわりは必ず終わりが来ます。妊娠初期のうちは赤ちゃんは卵黄嚢(栄養分として必要なお弁当みたいなもの)を持っているから、食べれないからといって赤ちゃんの成長を妨げる事にもならないそうです。水分と食べたい物だけで大丈夫です。もしも食べれなくて不安でも、そこだけは安心してくださいね。

私は手作りの激薄ラーメンと燻製卵と素焼きの食パンだけは美味しく食べれてました。

ご参考になると良いのですが…

画像3

さて我が子の話に戻ります。

私たちはなぜかお腹の中の新しい命を女の子だと思いこんでいたので男の子と分かった時は少しショックでした。家庭内に男性のいないレズビアンカップルの私たちに男の子を育てる事は不安すぎて、何度も何度も男の子のシンボルを確認してもらいました。

だけれど、検診のたびにすくすく大きくなる我が子の姿をパートナーと共にエコーで見るうちに性別なんてどちらでもいいやと不安も少しずつ楽しみに変わっていきました。

画像4

あんこといちごや素焼きのパンが好きだったのか、私が食べようと思い立つたびに、ドタバタと動き回っていたので、彼はそれらが好きだったのではないかと思います。特に近所の和菓子屋さんの練り切りの時はお腹の中でお祭り騒ぎでした。

胎動も強く、逆子になったり横向きになったり、とにかく妊娠後期はいたいし苦しいし重たいし…

それでもやっぱり胎動を感じるとなんとも言えない幸福感に包まれる思いでした。

明け方、ベットの中でパートナーがお腹を触って胎動を一緒に感じる時間は毎日の楽しみであの時間があるから今日も一日頑張ろうと思えました。たぶんパートナーも同じ想いでいてくれたと思います。

画像5

順調な成長すぎてあと出産まであと1週間を切った検診の日、毎回毎回心音を必ず聞かせてくれと先生にお願いしていたのに、もう生まれてくるものだと思って心音を聴き忘れたのをとても後悔しています。

「7つまでは神の子」と昔の人が言うのだから、生まれてくるまでは決して、何が起こるかは分からないと、ずっと2人で言っていたのに、出産まで1週間を切った事で油断が出てしまったんだと思います。

あの日少し息苦しかったのも、少し下腹部痛があったのも、胎動がいつもよりマイルドだったのも、彼からのサインに気がつく事すら出来ないほどに油断して無事に産まれてくれるものだと思ってしまった自分を一生許す事はできません。


どうか少しでも異変を感じたら、恥ずかしいとか、騒ぎすぎかなと思わず、産院に連絡してください。何もなければそれで良いのだから。



1月28日の明け方3時45分頃、生理痛の様な痛みがあり目が覚めてふと胎動が少ない気がして、おかしいおかしいと1時間待ち続けた時の事は一生忘れないし、思い出すと身が凍るような感覚になるほど恐ろしい時間でした。

彼と繋がっている臍の緒のすぐ近くの部分が、子どもの小指程度の細さになっていたので、子宮内胎児死亡の原因は臍の緒の捻転によるものではとの所見でした。

ただ検死解剖や遺伝子検査はしていないので実際のところは分かりません。

2022年1月31日の朝の10時11分に帝王切開術で死産という形ではありますが、私たちに穏やかで愛おしい顔をやっと見せてくれました。

体重2328g、身長は47.0cmの週数の割に少し大きめの、遺伝子は入ってないはずなのにパートナーそっくりの人の話をよく聴く大きな耳をした、私にそっくりの手足の凛々しい男の子でした。

いっちゃん加工済み




戸籍には死産の為、彼の痕跡は残せないけれど、名前は心拍確認ができたときから決めていて、お腹の中で成長していた時もずっとその名前で話しかけて来たので、予定していた名前をそのまま使い「逸花(いちか)」と名付けました。

なんの変哲もない野道の花でも、大切に思えるような豊かな心が育つようにと、男の子だけど花の字を使いました。


画像4


検診では顔を隠している事が多くて、中々顔を見る事が出来ず、「恥ずかしがり屋なのかな」「早く会いたいね」とパートナーと待ち望んでいただけに、帝王切開術後対面した彼と会って、そこにもう命がない事を感じた時はとても悲しかったけれど、改めて自宅に帰り家族3人と犬たち2匹と少しの時間を過ごすことが出来た火葬の日には病院にいる時よりも穏やかで柔らかな表情を見せてくれました。

エンゼルケアの経験がある友人が、彼のお手当をしてくれた後から、顔の表情が柔らかくなって、親族に綺麗な彼を見てもらう事が出来たので、私たちはその友人に足を向けて寝ることは出来ません。

お骨もしっかりと指まで残してくれて、私たちにたくさんの幸せをくれた親孝行な子どもでした。

もしかしたら心は女の子だったかもしれないので彼という表現が正しいかは、逸花本人にしか分からないけれど、身体の性別は男の子だったので彼と表記します。

彼に私たちがプレゼント出来たのは名前だけなのに、彼からもらったものは身に余るほどの大きなものだなと、術後1ヶ月検診も終え、少しだけ落ち着いた今は感じられるようになりました。

まだ四十九日も終えてない中でこのような投稿をするのは早過ぎるようにも、薄情な様にも見えるかもしれないけれど、文章化し投稿することは私たち家族が彼の思い出をポジティブなものとして、心に持ちながら生きていくために、必要な過程だと思っています。

だからこそ前に進むために、痛みを忘れてしまわないうちに文章化しています。

ただの私たちのエゴですが、私たちが蒔く種がどこかの誰かの中で、小さくでも芽吹いて、命の尊さ、家族の大切さについて今一度考え、危険認識を高めて、「自分ごと」にして頂くきっかけになったらと願っています。


画像7

いま、ご妊娠されている方へ

妊娠中は悪阻で栄養失調になったり、食べたくないのに食べつわりで食べるしかなかったり、体重計とにらめっこしながら検診日に怯えたり…と人によっては辛さが違うから、誰も分かってくれない気持ちになったり、自分の身体も心も変わっていく変化も相まって心と身体のバランスをぎりぎりで綱渡りしている気分になる方も多いと思います。

私もつわりが長くて、お腹の中の子に悪態を何回もついてはお腹を蹴られて喧嘩して...

今となってはありがたい経験をさせてもらって感謝しかありませんが、それ以上に幸せな期間なので、つい痛みや異変に気がつきにくくなります。

何かおかしいなと思うサインがあれば、恥ずかしいとか、みんな我慢してるからとか、大袈裟なんて思わず、産院へ電話や受診するなどの対処を迷わずしてください。

ご家族に病気療養中の方や妊娠されている方、お子さまやお孫さんがいらっしゃる方々へ

コロナ禍で中々思うように受診もできませんし、もどかしいご時世ですが、大切な人に何か異変がないか出来るだけ気を配ってください。異変を感じたら出来るだけたくさんのヘルプを出してください。大袈裟だと思わず痛みを痛みとして、違和感を違和感として真っ直ぐに受け止めてください。

私たちと同じ性的少数者の方へ

少なくとも私たちは7年間互いに寄り添い愛し合って幸せな家族として過ごしています。悲観的にならずにどうか自分や家族、愛する人を大切に過ごしてください。今回私たちは県立の総合病院にて検診から死産までの間、受診していますが、カミングアウトをした状態でも、たくさんの方の理解に恵まれて家族として対応して頂けました。カミングアウトを無理に薦める気は全くないけれど、少しずつ世の中は寛容になって来ている事だけはせめて知っていてもらいたいです。

もう誰にも私たちのような悲しい想いは味わって欲しくないし、不必要に悲しみに寄り添ってくれる誰かも今のところ私たちには必要ありません。
家族がいるので何かの力も他に何も必要とはしていません。


悲しみの吐き出しではないです。

本当にただのエゴです。

その事を承知の上で、私はこの投稿をしており、誰かの心が苦しくなってしまうことも、全部とは言えませんが理解しているつもりです。

また私たちの乗り越えるためのステップやエゴで文章化しているのは重々自覚しております。
心が苦しくなってしまった方には本当に申し訳ございません。

その上でお願いできる立場ではありませんし、
人の事を言えるような事をしていないのも分かっていますが、この投稿に関連する形で、誰かが傷ついてしまうような可能性のある言動や発言はそれぞれの心で考えて控えて頂けますと幸いです。

私たちは、まだまだ日本では一般的な家族の形とは認められていない養子縁組をしたレズビアンのカップルです。
そして2022年1月28日までは、少し普通とは違う形の家族だけれど、命の誕生を楽しみに待つ9ヶ月の妊婦で35週の子どもの親でした。


愛情を私とパートナーもお互いに持って、幸せな家族として幸せに日々を生きてきていました。
ただ、今回の悲しい出来事があれど、それでも私たちは今も一緒に生きていきますし、家族間で愛情が消える事も今のところありそうにないです。

親族にも社会的にもカミングアウトもしているし、普通の夫婦と何も変わらない大切な家族と生活していきます。だからといってカミングアウトが必ずしも良いものだとは思っていません。

どうか皆さまも自分の気持ちを豊かにする為に必要な事を選んで大切に日々を過ごしてください。

今一度命の大切さについて考えたり、家族で過ごす時間がどれほどまでに尊いことか大切なことかをどうか見つめ直して自分や身近な人が、もしそうなったらと考えて見つめなおしてもらえたらと願っています。


末文となってしまいましたが、この場をお借りして、私たちの周りで支えてくださった医療関係者の皆様、精子提供ドナー様とその仲介の方々に心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。また末永くよろしくお願い申し上げます。

画像7


そしてもう1人だけ…




マイベストフレンド○○さんへ🙏

そんなにずっとありがとうと言われても困るだろうし、ここで伝えるくらいがちょうどいいかなとも思うから、ここで伝えるね。

あの時は心のこもったお手当を本当にありがとう。

おかげ様でいっちゃんは綺麗な姿で親族と会えたよ。あなたがいなかったら私たちは、今前を向けてなかったよ。何かあればいつでも私たちも助けになれる様に整えておくからね。いつでもいってね。

追伸…

あなたの優しいフィルターで撮ってくれた私たちの家族写真は一生の宝物になりそうだよ。

画像8




長文乱文に最後までお付き合い頂きありがとうございます。皆さまのご健康をお祈り申し上げます。

令和4年3月4日 岡田 桜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?