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ちいかわのコスプレをしながらドリンクバーの前に立った時、何を選んだらギリギリ面白くなれるか、真剣に考える



わかるよ。


10/30 世間はハロウィン一色。

渋谷ではハロウィンのコスプレが禁止されたらしいが、池袋とかは相変わらず盛況のようだし、タイムラインやスマホゲームにはヴァンパイア等々のコスプレをした魅力的なキャラクターたちがじゃんじゃか出てくるわけです。

絵師のみなさまは、好きなキャラの吸血鬼コスが見たくて絵を書き始めた幼き日の自分に立ち返ってほしい。切に願います。頼む!マジで!地雷系の洋服を着せてくれるとなお嬉しい!


そんな中で、サムネみたいなちいかわコスでウケを狙いに行くの、いちばん寒いヤツだよな。


わかってる。そんなことはわかってるんだよ。

でもさ、おれたちって一昔前はおもしろフラッシュ倉庫で笑ってたし、かつてはムキムキのドラえもんやアンパンマンが世界でいちばん面白いものだと思っていた時期がある訳じゃん。

小さな頃は笑う犬の冒険のミル姉さんで大笑いしていたし、SMAP×SMAPのキムタクがピンクの犬になるやつが大好きだった。

おれはもういい歳だけど、ストレッチマンだってまだギリギリ笑える気がするんだよ。


ちいキモ(ちいかわの恰好をしたキモいおじさん)が面白くなれる可能性を捨てたくないんだ、おれは………………………


前提として

前提としてこれを言っておかなければいけないと思うのだが、
差別や偏見をもとにした笑いというものは、ある。

それは、バカなアイツを嘲笑ったり、ハゲやデブやブスをからかったりするような直接的なものではなくとも、笑いは差別や偏見を前提にしている場合が多々あるということだ。

そして今回のちいかわドリンクバーは思いっきしそれに該当している。

やさしい言い方をすればパブリックなイメージを利用する、でもいい。
どういうこっちゃという方には少し前に話題になったACジャパンの広告がわかりやすいだろう。

大変申し訳ないがこれの是非は一旦棚にあげさせていただきたい。
たぶんおれなんかよりよっぽど頭の良い方たちが議論をしていると思うので、そちらに任せたいと思う。


とにかくおれが言いたいのは、子供をあやしながら家事をしている顔の見えない人物は母親として扱われることが大半だし、ピンクのクマを親にねだっているの幼い少女でイメージされることが殆どだということだ。

笑いでも、漫画やアニメや小説なんかでも、最低限の言葉で人物を表現するためにパブリックなイメージはよく用いられるし、時にはそれの反対を行くものを「キャラ付け」や「ギャップ」として扱ったりもする。

繰り返すようで恐縮だが、それの是非はいったん棚にあげさせていただく。


おれが言いたいのは、最低限「いま自分がやろうとした面白は目の前を傷付けていないか?」は頭の片隅に置いておきながら、面白を考えてほしいということだ。

そうやって、目の前にいる人の幸せを考えながら言葉を紡ぐという行為は、きっと無理に面白を探しにいくことよりもよっぽど大切なことだと、おれは思う。

長い前置きを聞いてくれてありがとう。
それでは本題に入ろう。


ドリンク

1.オレンジジュース

まず最初に、思い浮かべて欲しい。
サムネイルのようにウケを狙ってちいキモの恰好をしたおじさんが、どういう理屈か分からないがあなたの家の近所にあるファミレスにいる。

そのおじさんが手に持っているドリンクが……オレンジジュースだとしたら。

最悪だ。

オレンジジュースはどちらかと言うと子供が飲むというイメージがあり、ちいキモが飲んでいる場合、「幼気いたいけな」ちいかわになりきろうとしている姿が目に浮かぶ。

……意外性もなにもない。
順張りでオレンジジュースを飲むならウケを狙わずしっかりとちいかわの恰好をした方がいいに決まっている。

ボケが。

「キモいちいかわの恰好」とは面白としてかなりマイナスのスタートである事を自覚しなくてはいけない。
そこに飲み物を加えるという事は、なにかしらの化学反応を起こそうという行いであるのだ。

オレンジジュースなんか飲んでいたら化学反応は起こせない。
コイツはちいキモの恰好をするのが心の底からオモロだと思ってる雑魚」と思われるのがオチである。


2.ビール(ストゼロ)

おそらく真っ先に向かう人が多いであろうドリンクだ。

なるほど確かに「ちいさくてかわいい」ものと、アルコールを常飲しているロクでもない大人の存在は対極にある。
作中ではくりまんじゅう氏がアルコールを常飲しているし、一定のバリューはあるだろう。

だが、それ故にもう見飽きられている。

おれたちは人が良さそうな神父をみれば裏で汚い事をしていると思うし、サキュバスは恥ずかしがり屋な処女しかいない事も知っている。

頻出のギャップネタというのは積極的に笑いを取りに行く力がなく、あるあるネタでしかない。

ちいキモがビールを飲んでいたらもっとやばいヤツがやって来て、ツッコミに回らざるを得なくなった……くらいならまぁギリギリアリだと思う。おれはスベッた奴がそのままツッコミに回る奴が大好きだから……


3.うんこ

…………文章なら、ギリ、か?

今年のキングオブコントを見ていただければ一目瞭然かと思うが、数ある笑いの中でも、うんち・おしり・チンパンジー・理不尽な暴力のバリューは頭抜けて高い。うんちは笑いのTierSだ。

ただでさえ近寄りがたい、なんか小さくて気持ちの悪いおっさんが白昼堂々ファミレスでうんこを貪り食っている……

いや……文章でもギリアウトか……?
でも、過剰な要素の足し算は割と面白いしな……

しかし見た目が終わってるのが辛いところだ。

……うんちや下痢便や剛便という単語はかなり面白いものの、実際目にするとかなり嫌な気持ちになるという、トリコで言うところの特殊調理食材みたいな取り扱いの難しさがある。

今回のレギュレーションでは現実的にファミレスでドリンクバーの前に立つちいキモを想定しているので、残念ながらナシだろう、誠に残念だ。


今年のキングオブコントは「空港へ行け」が好きでした。理不尽な暴力が好きなので。


4.コーヒー

疲れてきた。

もしかしてちいキモを面白くするのって無理なんじゃないか?

もうコーヒーが面白いってことにしないか?

ちいキモが真面目くさった顔でコーヒー飲んでたらギリ面白いだろ。
コーヒーを一気に飲み干して「熱っ!」ってなって舌を火傷しているちいキモはギリギリで面白いかもしれないだろ。


なあ。

助けてくれよ。

ちいキモでおウケをいただこうなんて土台無理な話だったんだよ。



(そんなことないわよぉ……)

なんだ? 今なにか聞こえたような気が……


(諦めちゃダメ)

こ、この声は……!



ミル姉さん!!!
アンタ、おれのピンチを聞いて駆けつけてきてくれたのか……!


「ミル姉さんだけじゃないぜ!!!」

この声は…まさかアナタまで!


木村拓哉さん!!!

事務所が大変な時だっていうのに、おれなんかのために駆け付けてきてくれたって言うのかよ!!!


「ちいキモだって必ず面白くなる方法はある!諦めちゃダメだ!まずはストレッチパワーを溜めて考えてみよう!」

あ、貴方まで……!

ストレッチマン・ゴールドさん!!!


うおおおおおお!!!
いける、いけるぞ!!!
これだけの人達が集まれば……!


行くぜ!!!


「ちいかわは現在老若男女問わず人気のコンテンツであり、それをあえて気持ちの悪いコスプレにすることは、筋肉ムキムキのアンパンマンに通じる面白さがある!!!」

「ぐううう……!」


「さらにこれでチェックだ! 正直ハロウィンのコスプレにそこまでオモロは誰も求めていない!!! 面白い雰囲気さえ出ていれば十分なのさ!!!!!」

「さあ!」

「ちいかわは現在老若男女問わず人気のコンテンツであり、それをあえて気持ちの悪いコスプレにすることは、筋肉ムキムキのアンパンマンに通じる面白さがある!!! その上、正直ハロウィンのコスプレにそこまでオモロは誰も求めていない!!! 面白い雰囲気さえ出ていれば十分なのさッ!!!!!」


「ぐうううう……!!!」

「……………」
「………………………」

「くっくっく。」

「……!? 急に笑いやがって…! 言い返せるものなら言い返してみやがれってんだッ!!!」


「くっくくくく…!」
「ふっははははは!」
「あっははははは!」
「ふっふふふふ!」
「くっひゃっひゃっひゃ!」
「ひぃーっはっはっはっは!」

「残念でしたァ! お前はひとつ言及を避け続けているものがあるんだよォ!!! それくらいお見通しなんだっつーの!!!!!」


「クッソオオオオオオオオオオオオオ!!!」


「ちいキモが、面白いだと?」
「コイツを見ても同じことが言えるかなァ! 戦人ァ!」


「今度はこっちがチェックメイトだ!!! さあ! 復唱要求ゥ! ちいかわのコスプレしたオッサンは、面白いとか面白くないとか以前に、見るに……耐えないんだよォォォォォ!!!」


「クッソオオオオオオオオオオオオオ!!! おれじゃあちいキモを面白くすることなんて出来なかったんだァァァァァァ!!!!! ちいかわのコスプレで不快感を与えず面白くする方法なんてあるわけねえだろォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!」


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 それでは、この物語は、右代宮真里亞の残したnote片の最後の一文で結ぶといたしましょう。

これを読んだあなた。どうかちいキモの面白いところを見つけてあげてください。
それだけが私の望みです。

 右代宮真里亞

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