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居座る客には水を注ぐといい?

「お席は2時間制になります。」
受付の言葉に適当な相槌を打ち、友人と2人テーブルに着く。時刻はだいたい12時15分。

久々の会合であったためか会話は弾んだ。料理は多分、美味しかった。

気がついたら時刻は14時30分、料理が盛り付けられていた皿が回収されたのはもう1時間以上前だった。
入店から2時間を超えている。店の入り口に目をやると数組の客が席が空くのを待っていた。

そろそろ追い出されるかな、と考えていると案の定ウェイターが私達に近づく。

「お前の言いたいことはわかっているぞ」心の中でそう呟き荷物をまとめようとしたその時、
ウェイターは私達に退席を命じるのではなく、なんと空になっていたグラスに水を注いだのだった。

この店の再来店が確定した瞬間だった。
時間を少しオーバーしている状態でもウェイターは水のサービスを怠らない。
確かに席の2時間制は伝えられたが、料理の到着と同時に「ごゆっくりどうぞ。」とも言われた。この店は後者の価値観を優先しているのだ。客の回転率よりも、居心地のいい空間を提供することに店の価値を見出しているのだ。
ストレスフルな社会に、一瞬の忘却と安らぎを与えてくれる。
経営者と握手はおろかハグ、添い寝までしたい気分だった。


水が注がれてから3分後、ウェイターが再度テーブルに近づき、
私達に今すぐ帰るようにと言った。

「はい。わかりました。」
言うしかなかった。言葉の意味は理解できたが、何を言っているのかよくわからなかった。さっきの水はなんだったんだ?
頭がグラつく感覚がした。記憶にないだけで本当に殴られていたのかもしれない。

帰り際、忘れ物がないか確認するためにテーブルを振り返ると、
透明なグラスに水がほぼ満タンで残っていた。

店を出てすぐ友人が私に言った。
「最後の水のサービスが好印象だった。あの水があったから、すぐ席を空けなきゃって思ったよ。」

「なるほどね。」
私には、よくわからなかった。

これが「返報性のルール」か・・・

『影響力の武器』に登場する「返報性のルール」をご存知でしょうか。

誰かに何かを与えられると、お返しをしたいと考えることです。
いわゆる「ギブアンドテイク」です。

友人からプレゼントを貰ったのに、何も返さないのは気まずいですよね。

要求に対してイエスを引き出すテクニックとして応用できる「返報性のルール」ですが、
上述した内容もその一種なのかなと後から感じました。

「すでに時間はオーバーしているのに、水を提供してくれるなんていい店だ!」
という恩義があったため、ウェイターの退席要求には応じざるを得ませんでした。

相手に要求を飲んでもらいたいのであれば、先に水を飲ませてあげると良いかもしれませんね(?)。

また、皆さんはくれぐれも時間制の店では時間通りに店を出ましょう。
お店の従業員様と外で待っていた皆様、すみませんでした。

以上、影響力の武器を感じた日常の一コマでした。

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