すんでいた街

各駅停車で数分、聖蹟桜ヶ丘駅を降りる。

2年前に住んでいた家に帰る道を歩く。

以前は知らなかった、「キノコヤ」のドアを開ける。

古民家を改装した2階のミニシアター。

興味がそそられる本棚、壁に掛かる大きな抽象画、きのこのおきもの🍄(そっくり)‥‥。

佐伯美波 監督
「くせのようなもの」(2020)
「ハル、さるく」(2021)
を鑑賞する。

(バイオ4の古城のモデル?)

(この家、キノコヤみたいだ)

(おじさん、ここ広くないんやから、いびき目立ってるで)

(スタンスミスの新品を履いてバットを振る)

(おれの実家の古い軽ワゴン、赤く塗って郵便局の車っぽくしたらかわいい)

上映後は、監督と出演者のトークを聴く。

〈ぼーっとして内容が入らない〉

1階に降りてハートランド・ビールを注文し、外に出て、目の前のガード・レールに寄りかかる。

開いた扉を囲むように、監督、演者、観客がひそひそ話す風景をみていると、定点カメラになったよう。

(背後の大栗川の水の音)

映画中、枯木の前で唐突に挟まれた水の音を聴いたからなのか、脳みそを反響する。

店に入り、カウンターに座る。

「くせのようなもの」に出演された柳谷さんと、映画の感想を話す。

キッチンに立つオーナーの黒川さんから小話を聞く。

こんなお店が、近くあったんだ。

住んでいた時は、知らなかった。

この街が、また好きになった。

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