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[レポート]有松・鳴海 尾州スタディツアー

今年度の「NEW TRADITIONAL」では、さまざまな伝統工芸の産地を周り、伝統工芸を新たな視点で発信している職人やコーディネーターらとの交流を通して、福祉の現場にもいかしていけるような視点を見出すためのスタディツアーを国内4箇所で実施しています。
焼き物の産地、常滑に続き、第二弾は絞り染めで有名な有松・鳴海、そして日本最大の織物の産地である尾州です。
本日、1月19日(火)のオンライントークセッションでは、現地で実践にとりくむコーディネータの案内のもと工房やメーカーなどをまわった2日間をレポートします。
関心のあるみなさんは、ぜひ、ご視聴ください!
そして、当日ではありますが、今回の2日間のかんたなレポートを記します!
写真も掲載しています! 

ぜひトークセッションとあわせてお楽しみください。

==================================<オンライントークセッション>絞り染めの有松・鳴海、織物の産地 尾州から考えるNEW TRADITIONAL

日時:2021年1月19日(火)18:00~19:30
申込方法:要事前申込(本日の17時までお申し込みいただくことができます!)
下記の申込フォームからお申込みいただくか、nt@popo.or.jpに件名を「オンライントークセッション参加希望」としてお名前、ご所属、メールアドレス、をお知らせください。受付が完了した方から、順次youtubeのURLをご案内いたします。
▼申込フォーム
https://forms.gle/djLHMppjvEf8nD8T6

主催:一般財団法人たんぽぽの家/助成:日本財団DIVERSITY IN THE ARTS
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●ツアー報告

12月9日(水)10日(木)に、愛知県に絞り染めで有名な有松・鳴海、そして日本最大の織物の産地である尾州を訪問。
2日間の訪問先をコーディネートしてくれたのは、長年NPO法人ひょうたんカフェにて、織りと障害のある人の仕事づくりに取り組んできたNPO法人motif代表の井上愛さん、2018年より合同会社ありまつ中心家守会社をたちあげた共同代表の浅野翔さんです。
事務局からは、Good Job!センター香芝の森下静香とたんぽぽの家アートセンターHANAの坂本栞が訪問しました。

1日目:12月9日(水)鳴海・有松への訪問

◎鳴海
◯ニコニコハウス鶴里・有限会社こんせい
http://www.nikoniko-house.jp/page1
https://shiborikonsei.com

有松・鳴海絞は、江戸時代に誕生し、日本国内における絞製品の大半を製造しており、国の伝統工芸に指定されています。
ニコニコハウスを利用する耳に障害をもつ堀江隆浩さんは、施設で絞りと出会ってから独学でその技法を学び、今ではこんせいの大切な委託先の一人として仕事を受けています。堀江さん自身、絞りの仕事にとてもやりがいを感じており、仕事が完成したときには納品準備完了の電話を職員が知らない間にこんせいにしていることもあるとのこと。堀江さんの絞りで作られた服は名古屋河村市長も愛用しています。
こんせいの近藤さんは、委託先として堀江さんの仕事を高く評価し、いつも学ばせてもらっているとのこと。絞り自体が内職のようにまちでいろいろな人が担ってきた背景があり、こうした事例も伝福連携のとてもいいケースであると思いました。

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こんせいの近藤さん、チューブのようにみえるのは絞った布

◎有松
その後、鳴海から有松へ。「ありまつ」というのれんがまちのあちこちにかけられ、とても風情のある街並み。
有松では、伝統工芸をさまざまなものと掛け合わせながら繋ぎ、その魅力を広めている方々を浅野さんから紹介してもらいました。

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◯Aya Irodori 大須賀彩さん

http://www.ayaosuka.com
絞りに関わるようになって14年目という大須賀さんは、新しい職人のスタイルを体現しているような人。
コラボや自主製品もふくめた商品づくりに加え、店舗の運営、そして店舗や小学校や大学、高齢者福祉施設などでの絞り染のワークショップなども行っています。
とにかく、ご自身が絞り染が好きで、やりたいことをとことんやりながら、その好きなことを一般の人でも触れやすいかたちで提供している。
SNSなども使いながらブランディングし、絞り染を新しい魅力で窓口をひろく開いているところが印象深かったです。

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◯cucuri 山上正晃さん

https://www.cucuri-shibori.com
次に、cucuriというファッションブランドが若い人にも人気の山上さんへ。
山上さんは産地問屋ですが、産地が以前から抱えていた課題、また今、どうしたら有松絞が若い人にとっても魅力的な仕事になるかを考え、いろいろな人と連携しながらさまざまな取り組みを行っています。
以前であれば、仕事に量があったが、現在は量をこなす生産体制だけではなく、一つのお店で自主のブランドもふくめてできることを増やしていくような視点もメーカーとして必要なこととのこと。
cucuriは、しぼりをドレスシャツや蝶ネクタイなど、さまざまな商品に展開することで新たなお客を得ています。
山上さんとは、絞りはなかなかやりたい人が少ないが後継者育成をしていくことが課題との話のなかから、障害のある人の仕事としても仕組みをつくることができれば、たとえば施設外就労などの仕組みを使っての可能性があるのではないかという意見交換もすることができました。

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◯久野染工場 久野剛資さん

https://shibori-zome.com
久野染工場さんは、2014年に浅野さんに紹介していただき、Good Job!プロジェクトの一環として、名古屋の障害のある人と絞り染をかけあわせたものづくりの実験を以前に取り組んでいただいたことがあり、それ以来の訪問となりました。
https://readyfor.jp/projects/arimatsu-shibori

海外の有名なファッションなどに評価され、さまざまな依頼を受けてきた久野染工場さんですが、最近ではファッションに加え、インテリアにも力をいれているとのことです。
立体の美しさや、絞りだからこその機能性。絞りのクリエイションを追求し、工芸から工業へという視点で、ものづくりの提案を行ってきています。
久野染工場さんもですが、こうした産地を訪れると、海外のブランドなどからの依頼に応え、有松・鳴海の名前としは出なくても製品として提供しているところが多いことを実感します。

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2日目:12月10日(木)尾州への訪問

糸から布、そして縫製して製品にするまで。同じ地域の中で、たくさんの工程を分業しながらものづくりを行なっている繊維の産地・尾州。職人の平均年齢が約80歳といわれるこの場所で、その在り方や技に魅了されて活動する若い世代の方々にお会いました。

◎尾州
◯木玉毛織株式会社 木全元隆さん 

https://kitamakeori.co.jp/

尾州の機屋として特徴的な北向きの高い位置に窓があいた、ノコギリ屋根のなんとも魅力的な工場。
尾州が一番活気があったころにたてられたという工場の建物には、今では木玉さんの工場に加えて、尾州のカレントの見本工場やいろいろな会社が入っているとのこと。
落ち綿という繊維が短いために振り落とされてしまう綿を使い、「ガラ紡」という機械でつくられた製品は、とても暖かい手触り。
私もずっと以前に奈良で購入した靴下が木玉さんのガラ紡でつくられたものであることがここにきてわかり、とてもうれしく思いました。


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◯尾州のカレント 彦坂雄大さん
https://bishu-current.jp/index.html
今回のツアーで、コーディネーターの井上さんから、とにかく「本気の人があつまった自主的なサークル」
でいい活動ときいていた、尾州のカレント。
メンバーそれぞれが別々の工場や会社に勤めながら週にー度集い、産地や製品のよさを伝える方法について考え、新しい価値を生み出すべく活動しています。
木玉毛織さんの「きたまビレッジ」という構想にひかれて、ここの場を拠点として活動がはじまったそう。
今回の新型コロナ感染拡大はアパレルにとっても、100年で最初の危機かもしれないけれども、そもそも、今までのようにこんなに服がいるのか、売れることが減っていくことがマイナスではなく、もしかしたら正常なことで産地を安定させるところに戻っていくということを考えているとのこと。
そして、まずは、尾州産地をなんとかする、人が集まることを証明するために、文化祭だったり、工場を見てもらうようなツアーも企画しています。
参加するメンバーがそれぞれ、広報や企画、営業などの専門性をもちながら、それぞれの会社から信頼をもってもらい、送り出してもらって、尾州のカレントに参加している。この仲間づくりも、福祉の現場でものづくりをする私たちにとっても参考になるやり方だと思いました。
今回、訪問した全員(私たちやカメラマンも含めて)が、尾州の布の魅力を実感して、びしゅうのずぼんを発注して帰りました!

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◯末松グニエ文さんのお話 

https://www.aya-suematsu-guenier.com/

フリーランスの写真家の末松さんは、10年もの間この尾州の地に魅了され、写真におさめつづけています。
伝えていくためのアーカイブ。第3者からの視点で、尾州の魅力についてお聞きしました。
こうした人がいて、織り機や職人さんの魅力を発信してくれるからこそ、若い人が尾州に足を運ぶきっかけになっています。


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◯葛利毛織工業 葛谷 聰さん、大井さん
https://factelier.com/season/2015/suit/kuzurikeori/#
同業者の方もタイムスリップしたかのように心躍る機織り機「ションヘル」が何台もあるこの工場。
その高級で唯一無二な素材に惚れ込んだ、芸能人の方の衣装や「これを再現してほしい!」という依頼なども数多く手がけています。
ここにも、長年の経験と技術を誇る職人さんと、それに惚れ込んで門をたたいた若い世代の方の姿がありました。
もともとはヨーロッパから輸入した服地の文化だけれども、海外で発表した際に、いまではヨーロッパにもここまで高密度の生地はつくられていないと驚こかれ、足元の宝に気づいたとのこと。
高齢の熟練の職人さんたちにまじり、葛利さんでは若い人が働いており、どうしてかをお尋ねしたところ、2012年に「100年会社を続けようと思って覚悟を決めたら、若い人もやってきた」とのこと。
ションヘル織り機や、ここでの技術にひかれて就職し、学びながらはたらいているようすに、産地の新しい可能性を感じました。

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「産地」の大きなエネルギーに触れたツアーでした。工程やそれを行う場所がたくさんあるからこそ、福祉との掛け合わせにも大きな可能性があると、みなさん話してくださいました。
産地での新しい取り組みや、考え。そこから、福祉の現場でもきっと学ぶことがありそうです。

ツアー写真:近藤大芝




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