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Gamma:AIの力でプレゼンテーション作成

海外のテクノロジーやビジネスについてリサーチし、今後日本での展開の可能性があるのかを検証していきたいと思います。今回紹介したいのは、AIの力で簡単にプレゼンテーションを作成できるようにしてくれるGammaです。

1.会社概要

サービス名:Gamma
会社の名称:Gamma Tech, Inc.
本社所在地:カリフォルニア州サンフランシスコ
設立:2020年
評価額:不明

ウェブサイトから会社のプレスリリースを確認することはできないのですが、ニュースはLinkedInで共有していくスタイルのようです。2020年にOptimizely出身者が創業したスタートアップで、2023年3月に正式リリースしてAI機能を導入し、2024年5月にシリーズAで1200万ドルを調達したと報告しています。


2.特徴と利点

2022年以降AIを使ったツールは山のように現れて、多くの人はChatGPT以外の新しいツールを使うことを諦めてしまった人も多いと思います。その中でもGammaは2023年にリリースされてから衝撃的な使いやすさから口コミであっという間に広がり、ローンチから一年程度ですでに1700万のユーザーを抱えていると言います。

Gammaは特にこの一年でコマーシャルを出したりSEO対策をしているわけではないので、まだ知らない人も多いでしょう。あるインタビューによると、80%のユーザーは友人からのオススメやソーシャルメディアから使い始め、残りの20%はオーガニック検索でたどり着いて来たと言います。

Twitterで「Gamma presentation」とタイプして検索してみると、多くの人がツイートで取り上げており、注目の高さが伺えます。

これらのツイートを読んでみると、他社製品と比べたGammaの特徴が浮かび上がってきます:

  • アイデアを入力すればプレゼンテーションを作ってくれる

  • デザインセンスがなくてもきれいな資料にでき上がる

  • Powerpointはもう古い

Twitterではいろいろ煽り文句が使われていますが、僕が実際に使ってみて感じたのは

内容を雑に説明してGammaに放り込むと、きれいな資料にしてくれる
結果として、自分の考えも何故か整理されて新しいアイデアが生まれてくる

という点でした。

「雑に説明」というのはGamma自体も認識しているようで、プロモーション動画の中でその点を売りにしています。

今回の記事では実際にどうやって使用するのかをスクリーンショットを見せながら共有していきます。

3.実際の使用例

それでは実際にプレゼンテーション資料を作成していく手順を見ていきましょう。インターフェースはまだローカライズされていないため全て英語なのですが、資料は強引に日本語で作っていきます。

まずGammaのウェブサイトからGmailなどを使ってサインアップするとダッシュボード画面に入るので、青い「Create New」というボタンを押してください。

すると上のような画面に移動します。

詳しい説明は割愛しますが、もしプレゼン内容をChatGPTなどで文章化している場合には左を選択してコピー&ペースト、Wordなどの文書になっている場合は右からファイルを選択してインポートするのですが、今回は何も事前に準備していないので真ん中を選択します。Gammaと対話して、まっさらな状態から資料を作成します。

作成するのはプレゼンテーションなので左を選び、資料の枚数と言語(日本語)を選択します。無料版だと資料は10枚までで、それ以上は有料版に登録する必要があります。

今回のテーマはその場で考えた
日本のスタートアップが海外市場で成功するためのプレゼンテーション
としました。

何も考えていないので論点を考えてほしい旨を伝えて、雑に「こんなスライドあったらいいんじゃないかな」という内容を伝えると、GammaがOutlineを考えて提案してくれます。この内容はユーザーが上書きで変更することが可能です。


スライド内の文章量やテンプレートを選択していき、最後に右上にある青いGenerateのボタンを押すと、一分もかからないうちに資料が作成されていきました。ほぼ労力ゼロ、所要時間数分でひとまず資料が出来上がりました。

一枚目の薄気味悪い写真はGammaが自動で生成してきたのですが、それ以外のページには写真が入っていないのでビジュアルがいまいちな気がします。そこで見栄えを少し良くするため、成功事例と失敗事例に合うような写真をウェブで検索してもらいます。

単語を入れてイメージにあう写真を選ぶこともできれば、生成AIで全く新しい画像を作ってもらうことも可能です。下の図では失敗事例のためにDisappointedという単語で写真を検索しているところです。

3ページ目は自分のイメージに合わなかったので、画面右に出てくるAI editingの機能を使って修正してもらいます。英語で話しかけられていますが、かまわず日本語で雑な指示を出してみます。

品質管理や顧客サービスは従来からの日本企業の強みだと思ったのでこれをスライドの左にまとめ、右側は今後の可能性を書き出すという形に変えてもらいました(もちろん手動で変更することも可能です)。

今回は実際のプレゼンに使うわけではないので、機能の紹介としてはひとまずこれで完了したということにします。

下の画像が完成した資料です。今回は書かれた文章の内容を精読せずに完了としましたが、作成だけなら大げさではなく5分-10分程度でできたと思います(説明のためのスクリーンショット撮影に少し時間かかりました)。どうでしょうか?

使ってみた感想
まず使ってみてすぐに感じるのは、すごく簡単で直感的に使えるということです。

時間をかけてよく読み返してみると、Gammaが作る中身の文章は結構薄っぺらいことに気づきます。
「海外市場における競合企業を分析し、自社の強みと弱みを把握する。」
「独自の技術、サービス、デザイン、ブランド力などを武器に、競合との差別化を図る。」
など、高校生でも思いつくような文章がコピペされているかのようです。

それでも多くの人が再度使いたいと思うのは以下のようなメリットがあるからだと思われます。

  1. たたき台の作成:下手くそでも文章を出してくれると「そうじゃないだろ」と突っ込みながら修正できるので、一から作成するよりも作業スピードが格段に上がります

  2. テーマの構造化:一つ一つの論点を各スライドにしてくれるので、文章の内容はともかく「この論点について話そう」「別の観点を取り上げよう」という気付きを与えてくれます

  3. デザイン性が向上:デザインセンスがゼロであっても、どこに画像を入れたら客観的に見やすいか気づくことができますし、画像選びも簡単です

総合的な結論として、Gammaが叩き出した資料をそのまま使うことは現時点ではやめたほうがいいと思います。時間をかけてAIの助けを借りて修正していくか、ChatGPTなどのツールを別途利用して内容を洗練させていけば形になるかも知れませんが、専門家が分析した議論としてそのまま出すことはできないでしょう(それができたら専門家自体が必要なくなりますね)。

個人的にはGammaを使うことによって作業の一歩目を始めるときのストレスがなくなりました。これまでプレゼンテーション資料作成時にときどき感じていた行き詰まり感が大幅に解消され、以前よりも見やすくわかりやすい資料を作れるようになったと感じています。

その他の機能

今回は細かく説明しませんでしたがチャートやスマートレイアウトも当然用意されています。ベンズ・ダイアグラムやガントチャート、4象限マトリクスなどを利用する機会が多い人でも心配ありません。

完成した資料は主にGammaのウェブサイト上から画面共有することを想定しているようですが、PDFやPowerPointへのエクスポートもできます。ウェブサイトの埋め込みが必要な方もiframeを利用可能です。

4.価格

値段構成は無料版、Plus、Proの3段階に分かれており、年間契約だとPlusは14,400円(月あたり1,200円相当)、Proは27,000円(月あたり2,250円相当)となっています。毎月の請求にも対応していますが、その場合はそれぞれ月1,500円と3,000円と、価格が少し上がります。

今回紹介した機能は全て無料で使えるものだったのですが、上で説明した通り無料版ではページ数の制限があるので、10ページを超える資料の作成には有料版が必要です。また、AIによるページ編集・修正などを何度も使うためには有料版に登録することになります。

また、拾ってきた論文をコピペしてプレゼン資料作って、という指示を出したときは無料版では利用できないと言われました。他人の論文を簡単にプレゼンに使いたいという「あわよくば」の考えが合ったのですが、読込できる文章量に制限があり自分で要約するという作業が必要になります。手間を避けたい人はPro版を使って試していくしかありませんね。

5.競合

単体のツールとしてみた場合には非常に優秀なGammaですが、AIの分野は進歩が速いので競合もたくさん出ており、どこが生き残っていくのか読めない状況になっています。

例えば生成系AIのブームが始まる前の2018年に設立されたPitchは一歩先を行く機能を提供していたようにも見えていたのですが、今年の1月に従業員120人のうち80人を解雇したと報道されています。

AIプレゼンテーションの分野でGammaの他にもう一つ気になっているスタートアップがStorydocです。Storydocはプレゼンテーション資料のデザインや作成だけにとどまるのではなく、見ている人のエンゲージメントを高める仕組みがところどころに組み込まれている新感覚のソリューションになっています。

動画を入れたりダイナミックなグラフ表示ができ、セールスツールやカレンダーと連携して、プレゼンテーションの次のステップにもつなげることができそうです。アイデアを整理したいリサーチャーとして使うならGammaの方がいいけれど、顧客とのエンゲージメント向上を考えるセールスやマーケティングチームはStorydocの方が魅力的と感じるかも知れません。

ただしStorydocの月額は$30(年払いの場合)からなので、少しお高めですね。Gammaとは違ってセールスに直結するツールなので強気の価格設定なのかもしれません。

6.ターゲット市場

日本で会社が契約することはありうるのか?

GammaはAIの力を使うことで、ユーザーが日本語で話しかけても利用できる水準にあり、日本のユーザーが使うツールとしてもとても魅力的だろうと感じました。

会社の仕事で特定分野の知識は蓄積されているけどプレゼンをしたことがない、誰かに力を貸してほしいと思っている人はGammaとやり取りをしながら自分の知識をGammaに吐き出していけば、資料として最低限の形にはなるので使ってみてほしいです。

一方で会社がまとめて社員全員向けに契約するという形がありうるのかというと、それは難しい気がしますね。会社として社員のスキルアップは歓迎していても、ツールを使って資料作成が簡単になると説明しても会社としてのメリットを理解しにくいですよね。

まだローンチから1年程度のプロダクトなので今後の進展次第でしょうが、現時点での製品を見る限りはプレゼンテーションの機会が多い個人ユーザー(会社員、学生、研究者)、特にデザインのアイデアに自信がない方が主なターゲットになると思います。

興味がある方はまず無料版を使って試してみて、気に入ったら有料版に入ることをオススメします。

7.まとめ

現時点でも機能満載なGammaですが、今のAIの進化のスピードを考えると今後ますます使いやすくなっていくでしょう。

学生時代に始まり会社員になってもずっとプレゼンテーションに四苦八苦してきたコミュニケーション下手な人間としては、このようなツールができたのは本当にありがたいことだと感じています。日本で同じような悩みを持つ方たちにも広まっていってほしいと思い、今回のブログを書いてみました。

もし気になる方がいたら、無料でも使えるのでぜひ試してください!

また他にも面白いツールがあればご紹介させていただきます!

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