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スパイラル(花瓶)モードの可能性を引き出す #3Dプリンター

FDM(FFF)方式の3DプリンタのスライサーにはスパイラルモードやSpiral Vase 、花瓶モードと呼ばれるモードがある。
が、たぶん3Dプリンターユーザーの45%は使ったことが無い。
さらに言えばあと45%は花瓶を数回出力して終わり。
残りの8%も簡単な形状の自作の容器を出力しているぐらいであろう。
残りの2%が知っているかもしれない魔法がある。
(※ポポポ3Dプリント研究所調べ)
「では偉大なスパイラルモードの魔法の神髄をお見せしよう」

そもそもスパイラルモードとは何なのか

この辺は自分の記事があるので、読んでいただければよいと思う。

なぜスパイラルモードを使うのか?

はっきり言ってしまえば、機能を持った樹脂の塊を3Dプリントするとき、ノズルの先から樹脂が出ていない時間は殆どの場合無駄である。
そして構造的な機能の殆どは強度的な裏付けを除きその表面で機能するのだから、表面のみを重点的に印刷するスパイラルモードは高速に有用なパーツを作る際に威力を発揮する。

トラベルやリトラクション自体は樹脂がノズルから出ない無駄な時間であり、印刷時のトラブルの原因であり有害でさえある。もちろん複雑な形状を印刷する場合に完全に避けることは難しいが、その頻度を減らす努力はすべきである。

しかし有害なこれらを避け、最小化する努力を3Dモデル製作者もスライスする人もあまりやらない。あるいはそのようにしようという主張をほとんど聞かない。DfFFF(Design for FFF=FFF方式のためのデザイン)、そしてスライスする上でのテクニックとして非常に大切なものであるにも関わらずである。

スパイラルモードでは初期の数層以外ではリトラクション無しで印刷が可能であり、もし3Dモデルに対して少しの工夫をすることでスパイラルモードでの印刷が可能になるのであれば、印刷品質と印刷速度両方に対して大きな効果がある。
スパイラルモードには素晴らしい点がいくつもあるが、それを引き出すのはやや難しい。もしいくらかの工夫でスパイラルモードで印刷が可能ならこれは非常に大きな武器になる。

スパイラルモードを使用する利点

・印刷時間が短くなる
トラベルやリトラクションがほとんど無いので印刷時間が短い。

・強度が高い印刷が可能、
糸引きを考慮する必要がないので、積層強度を重視して高めのノズル温度を設定可能になる。

・印刷トラブルや欠陥が少ない印刷になる
また、リトラクションやトラベルによって生じるトラブルや欠陥が発生しない。

・印刷が綺麗である
スパイラルモードではトラベルやリトラクションによる樹脂の押し出し停止が発生せず、一定速に近い状態で樹脂が押し出される。またZ軸はゆっくりと連続して動くため、バックラッシュなどによる影響は最小限となり、非常に美しい印刷が得られる。

・うまく調整すると欠陥の少ない柔軟性に富んだ造形物が得られる
樹脂繊維の途切れがなく、基本的に薄肉な造形物が得られるので、積層の癒着強度をきちんと確保すれば柔軟性に優れ高強度の造形品が得られる。

スパイラルモードの欠点

・設計が難しい
本記事で主に解決する1番大きな問題である。
ほとんど知られていないテクニックをいくつかのこの記事で紹介したい。
(少なくとも私は記事や本で目にしたことが無い)

・不可能な形状がある
この記事で紹介するテクニックでかなりの物がスパイラルモードで作れるだろうが、それでもトポロジー的に不可能な形状はある。
特に、『断面が分離される事が機能として不可欠な場合』はスパイラルモードはうまく機能しない。(スライス自体は正常に可能な場合もある。)
その場合は適切な部品の分割などによって対処する必要があるだろう。

・3Dモデリングとスライス設定が独立ではない
これは『3Dモデルをマスターとしてに、それに近づくようにスライスし造形する』という一般的な原則からは外れる。
スパイラルモード前提での3Dモデリングとスライスは不可分であり、車輪の両輪である。だからこそ3Dプリント部品の性能と生産性を限界まで押し上げる方法の一つである。

実例とデザインテクニック

高級なフィラメントを購入したが、大きなリールのまま吊るしておくと吸湿するし、他の人にも分けたりしたいのでフィラメントリールを作る必要性がでてきた。
最初は普通にスライスしていたが印刷時間が長いので、スパイラルモード用に再設計したので、その際に使用したテクニックを例に紹介しよう。
CuraのPREPAREビューだと一見なにがどうなっているのかよくわからないが、カスタマイズしたスパイラルモードで印刷するとこんな感じに印刷されきちんと機能する。

3Dデータ

賢明なこの記事を興味深く読んでいる人であれば、STLデータを見れば何をやっているかいくらか察しが付くかもしれない。
というわけで、この辺から有料記事にさせていただき、解説はどうしても気になる人に読んでいただきたい。
(もちろん、どうせなので購入してくれると嬉しい。)
ThingiverseにあるファイルにはFusion360用の.f3d形式のデータも入っている。履歴をさかのぼってスケッチを修正すれば好きな厚み、角度、容量、内径のデータが作れるので活用していただければうれしい。

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