見出し画像

自分に合ったフレキシブルフィラメントを選ぼう #3Dプリンター #TPU #TPE

TPUと書かないのは理由があるが、あとにしよう。
FDM(FFF)方式の3Dプリンタで印刷できるフィラメントには柔らかい樹脂もある。フレックスフィラメントとか、フレキシブルフィラメントとか、TPUフィラメントとか言われる類のやつ。
と言う訳でその違いをスペック表から読み解いてみよう。
そうすれば、自分が買うべき軟質フィラメントが見えてくる。
印刷のチューニングが大変なのに印刷してみるまでどんな柔らかさの部品ができるのかわからないのは辛い。
そもそも自分のマシンで印刷できるのか?

さらに印刷にも一定の難しさがあるが、それはこちらの記事を参照してみてほしい。

そもそも素材は何なのだ?

私もそんなにエラストマーに詳しいわけではないが、軽く整理しておこう。
(とはいいつつも以前は車のマットとかカーペットの設計してたね)

TPE:ThermoPlastic Elastomer
熱で柔らかくなるエラストマー(ゴム)を指す。細かい組成は問わない。
普通の黒いゴム(カーボンブラック入り加硫ゴム)は熱で柔らかくならないのでこれには入らない。
TPUは熱で柔らかくなるのでTPEの一種という感じ。

TPU:Thermoplastic PolyUrethane
ポリウレタン系の熱で柔らかくなるエラストマー。
配合によってTPUといっても色々な柔らかさ、低温でどうなるか、高温でどうなるか、グリップ、等が大きく違う。
基本的には耐熱温度は80℃程度、対候性、耐油性、耐溶剤にも強いが、熱水などには強くない。

TPEE:ThermoPlastic PolyEster Elastomer
(TPC:ThermoPlastic Copolyester)

この表記はあんまり馴染みが無いかもしれないけれど、ポリエステル系の柔らかいやつがTPEEである。あんまりフィラメントになっている種類は無いと思うが、
ColorfabbのnGenはTPC(特段柔らかくない)だし、nGenFLEXはTPEE(柔らかい)と呼んでいいだろう。

フィラメントでは見ないTPE
塩ビも可塑剤をたくさん入れると軟質ポリ塩化ビニルという柔らかい塩ビになる。たぶん溶けても粘っこいので押し出しが難しかったり、温度を上げすぎると塩素ガスがでるからフィラメントが無いんだと思われる。
ポリアミドも柔らかい種類のやつがあるが、フィラメントとしてはPA6とかが使われていることが多いっぽいけど、PA6は柔軟性はあるけど柔らかいエラストマーではない。
一応アミド系TPE(TPAE)というポリアミドとポリエステルあるいはポリエーテルを合わせた柔らかい樹脂があるらしい。

Wikipediaもちょっと見ておこう。
ただ信頼はしすぎないように。

柔らかさの単位と伸び

柔らかさというのは難しい。
耳たぶ👂と餃子🥟の皮どちらが柔らかいんだろう?
豆腐📛は頬っぺた👦より柔らかだろうか?
なすび🍆とおにぎり🍙はどちらが柔らかいんだろう?
さっぱりわからん。

固さを測るのには何かを押し当ててたりこすり付けたりして、その凹みや傷を見ると硬さがわかる。でも柔らかい物に傷はつかないことも多い。
そこで、ある一定の厚みに加工した柔らかいものに重りをのせた時の沈み込み量を測るという方法で測ります。
ゴムやプラスチックの柔らかさを測るデュロメーターという装置があります。
一般的にデュロメーターには2種類あって普通のプラスチック的な固い物はDスケール、ゴムのような柔らかいものはAスケールという押し込む先端の丸みや押し込み力の違う装置で測ります。
測った値はショア固さと呼ばれて80Aとか60Dとか言ったりします。
値が小さい方が柔らかいですが、別のスケール同士は比較はできません。

あと、90以上や20以下の数字が出たら適正なスケールで測り直しになります。

画像検索してみましたが、ストップウォッチみたいな見た目ですね。

画像1

どれぐらい変形しやすいか(柔らかいか)はもちろん重要なのですが、幾ら柔らかかろうが力をかけて変形してくれないとちぎれてしまうので、どれぐらい伸びて、どれぐらい元に戻るのかというのは非常に重要です。

ブランド物のフレキシブルフィラメント

安いのから多少値段のするものまでいろいろなTPEがあるが、今回もちゃんとデータシートがあったり、毎回同じ仕様のものが買えるものを中心に紹介しよう。
印刷したことがあるものは、印刷の感じも覚えてる限り印刷難易度も含めて書いておく。
(国内の取り扱いが怪しいやつもあるので、直接海外から買うのもアリ)

NinjaTech NinjaFlex

85Aで柔らかでとてもよく伸びる。
TPUフィラメントとしては先発組で結構有名なんじゃないかな?
ちょっと信じられんぐらい伸びる。伸びすぎて千切るのにだいぶ苦労する。660%とか伸びる割に結構戻るのでびっくりすると思う。
フィラメントの時点でふにゃふにゃなので印刷難易度は結構高め、エクストルーダーギアのほんの少しの隙間から逃げ出すので、エクストルーダーの改造などは十分な準備と対策を。
9色展開。

NinjaTech Cheetah(Semiflex)

95AでNinjaFlexよりはかため。Dスケールでは測らないのかな?
いつの間にかSemiflexはCheetahと名前が変わったらしい。
NinjaFlexよりは固いがまだまだ全然やわらかい。これでも580%伸びる。NinjaFlexよりは多少印刷しやすいけど、油断は大敵。
7色展開。

NinjaTechはほかにもEEL(導電性のあるフレキシブルフィラメント)やARMADIRLLO(防振ゴムみたいな感じ?)というのを出しているらしい。使ったことはないが。

Colorfabb  nGenFLEX

95Aで数値上それなりの柔らかのように思ってしまうが、柔らかいのは伸び始めだけでそこから先はコシがある感じ。薄い部品でも自重でつぶれるほど柔らかくはないので、そういう用途だとよい。
同社のnGenの高耐熱セミフレキシブルグレードと思っていい。ポリエステル系なので、TPUではない。
フレキシブルさのあるやや柔らかい樹脂という感じで、押し出ししやすく、耐熱性が高めで130℃ほどある。ボーデン式のエクストルーダーでも印刷できる。ダイレクト式ならABSやPLA並みの印刷速度60mm/sとかでも印刷可能。
やや高めの印刷温度と反り対策がそれなりに必要なので、温度についてはABSを印刷するぐらいの気持ちでかかった方が良い。温度はOKだがTPUが印刷できるか不安ならこれから試すのはアリ。
色は3色(ナチュラル、グレー、ブラック)
低温にも高温にも強く、タフで柔軟性が欲しい部品にはピッタリ。

ホッティーポリマー HPフィラメント スーパーフレキシブルタイプ

60Aと非常に柔らかい。
日本のやつが紹介出来てうれしいよ。でもスペックシートなりテクニカルデータをホームページに出してほしいな。
500g16000円ぐらいする。(Monotatoの方がAmazonより安かった)
PLAとTPUを混合して作っているのとフィラメント時に伸展させるらしく、フィラメントの芯の部分が固くてコシがあり、出力後の柔らかさの割に印刷しやすいらしい。展示会でフィラメントを触ったことがありますが、結構面白かった。
色は7色。

Polymaker  PolyFlex TPU95

名前の通り95A。安心のPolymaker製。
330%ほど伸びるので、結構伸びる。
印刷したことはないので、その辺はよくわからない。
(試したら更新します)
6色展開。

eSUN eTPU-95A/eLastic(TPE-85A)
/eFlex(TPU-87A)/Flexible TPE 83A

eSunは4種類ほどフレキシブルフィラメントが確認できるが、Amazon.jpで買えるのはFlexible TPE 83Aだけである。
しかしFlexible TPE 83Aは公式HPにはデータが見当たらないので新製品なのかと思ったが、自分の手元にはeLastic TPE-85Aとラベルの貼ってあるものが届いた。
TPEは総称であるが、資料を漁るとSBS(スチレン-ブチレン共重合体)であり、柔軟性や復元性に優れる。耐油性は悪いので注意。

横並び比較表

フィラメント選びには一通りの情報は出そろったが、横並びで見ると特性の違いがずいぶんと見えてくる。
というわけでこの辺からは購入して読んでいただければと思う。

ここから先は

1,119字 / 1画像

¥ 600

記事をサポートしていただくと、一層のやる気と遊び心を発揮して新しい記事をすぐに書いたり、3Dプリントを購入してレビューしたりしちゃうかもしれません。