ウクライナ侵攻 今までのまとめ~時事問題対策も兼ねて~

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの攻撃を始めました。記事を書いた5月中旬の段階で2か月半。これからもまだまだ続くとみられています。では一体今の状態はどうなのか? 時事問題対策を兼ねてまとめてみます。

(時事問題対策として簡単に目を通したい場合は、見出しと太字を見るだけで対応できるようにしました)

そもそもウクライナとは?

基礎情報

ヨーロッパの東側に属する国です。首都はキーウです。
外務省によれば、

面積約60万キロ(日本の約1.6倍)、人口約4000万人(2021年、日本の約3分の1)の国です。ウクライナ人が約8割、ロシア人約17%(=ウクライナにいる6人に1人がロシア人)という民族構成です。
宗教はキリスト教。キリスト教の中でも様々な分類がありますが、その中で「ウクライナ正教及び東方カトリック教」が多いです。

ウクライナの特徴

ウクライナの特徴として、「穀物の輸出」と「東洋のシリコンバレー」があげられます。
穀物の輸出
ウクライナは昔から小麦の生産が盛んです。2020年現在、世界5位の輸出量を誇っています。ちなみに1位はロシアです。(補足:生産量ではありません。ちなみに生産量1位は中国、ロシアは3位、ウクライナは8位、2018年)。
しかし、今軍事侵攻で小麦の生産どころではなく、農業用のトラクターが奪われたりと悲惨な目に遭っています。さらに、ウクライナの南側に黒海という海があり、そこから船で輸出しているのですが、ロシア軍が付近を監視しているため輸出できない状態になっています(オデーサの項目参照)。となると、小麦を売れずウクライナ国内に残ったまま、という状態が続いているのです。
東洋のシリコンバレー
まずシリコンバレーについて。一般にアメリカのある地域を指します。「シリコン」とはケイ素(Si、原子番号14)の意味ですが、「シリコンバレー」の場合はケイ素を使った半導体のことを意味します。そこから派生して、半導体を使ったIT産業・コンピューター産業を意味します。また、「バレー(Valley)」とは、「谷」の意味です。つまり、コンピューター産業が集まったアメリカの地域を意味します。
ウクライナはIT産業が盛んとも言われています。そのことから、世界的に見てアメリカの東側・あるいはヨーロッパの東側にウクライナが位置することから「東洋のシリコンバレー」と呼ばれています。
今回取り上げるのは、NFTとインターネット・アーミーです。

  • NFTとは、「非代替性トークン(Non-Fungible Token)」の略で、「代わるものがない印」という意味です。要するに、一般にインターネット上のデータは生み出した人が不明ですが、それをインターネットの暗号技術によって生み出した人を確定させる技術を言います。これによって書き換えを防ぎ、偽物が出回らないようにしているのです。今回の軍事侵攻によって、ウクライナを助けようとインターネット上でNFTが付いた作品を売買することで、その売り上げをウクライナ支援に使う、そのような取り組みが始まっています。ウクライナの特徴を生かした形と言えそうです。

  • 「インターネット・アーミー」については、今回の軍事侵攻のあとに立ち上げられました。「インターネット上で戦う戦士」という意味です。「自分たちが戦場に行くことは難しい。命を懸けて戦うことは難しくても、ウクライナの情報をもっと広める活動でウクライナを守ることができるのではないか」という思いから始まりました。ロシアではウクライナ国内の情報が得られないので、ロシア国内の人に対してどうやって情報を伝えるのか伝えること。アメリカの政府役人に軍事支援を増やしてもらうためにツイッターで呼びかけること。ウクライナの惨状を伝えること。これらのようなことを通じて、少しでもウクライナの味方を増やしたりロシア軍を追いやったりする助けをしているということです。

「戦争」ではなく「侵攻」というのか?

戦争は国際法の観点でいえば、「宣戦布告」をした後に特定の国に攻め入ることを言います。今回、ロシア側は「ドンバス地域(ウクライナの東側、ドネツク州とルハンシク州)のロシア人を保護する」ための「軍事作戦」という言い方をしています。
このことから、国際法のルール下においては「戦争」ではないのです。
ただ、やっていることは戦争だということで「プーチン大統領の戦争」のような言い方をする人もいますが、宣戦布告をしていないという観点からすると正確ではありません。

現在の推移

戦況推移は以下のサイトが参考になると思います。
ウクライナ情勢 ロシアによる軍事侵攻 最新情報・解説 - NHK特設サイト 

ロシアは今何を目指しているのか?

今、東部と南部を占領して、オデーサの西側にある国モルドバまでロシアの領土にしようとみられます。実際、ヘルソン州というクリミア半島北部にある都市を占領しているとみられています。

首都:キーウの状態

日本政府ではもともと「キエフ」という言い方をしていました。3月下旬、日本政府は「キーウ」に名称を変更しました。
これによって、日本のメディアのほとんどは「キーウ」という名称を使うようになりました。
なぜ名称変更したのか? 「キエフ」とはロシア語読みなんです。一方「キーウ」はウクライナ語での読み方です。ウクライナ侵攻後、国会関係者の間で「ウクライナを攻めているロシアの言葉を使って表現するのはふさわしくない。連帯を示すためにもキーウという表現を用いるべきではないか?」という意見が増えてきました。最初、政府(内閣・外務省)は「ウクライナからの要望がない」として変更せず、もしくは「キエフ(キーウ)」のような併記をしていました。しかし、3月23日、ゼレンスキー大統領が日本の国会で国会議員の前でオンライン演説をしたこともあり、名称が変わることになりました。
現地読みというのは、歴史の教科書でもあります。その一例が「李承晩ライン」で有名な「李承晩」です。日本語では「りしょうばん」、韓国語では「イスンマン」と読みます。日本では昔は「りしょうばん」と読んでいましたが、現在では併記もしくは「イスンマン」と読むのが一般的になっています。

キーウ中心部ではロシア軍に攻められることはありませんでしたが、最初はキーウ周辺までロシア軍が攻めていました。しかし、3月30日ごろからロシア軍の人たちは撤退。ロシアの方向へ帰っていきました。
撤退後、キーウ近くの町ブチャでは、多数の市民の遺体が横たわっていました。国際法の観点でいえば、市民を殺してはいけません(戦争・殺人はもちろんいけませんが、国際的な法律には「兵士ではない人(=市民)は殺してはいけません」と書いてあるということです)。「ロシアはそれを守っていないじゃないか」というわけです。
いま、キーウにかかわらずウクライナ軍がロシアから奪い返した町では市民の遺体が発見されています。「兵士ではない人を殺した」ということで、ロシアは国際司法裁判所という裁判所で裁かれることになるでしょう。

ロシアが攻めてきたことにより避難していたウクライナの人たちも、少しずつキーウに戻っている人もいるとのことです。
ただ、ロシアはキーウにミサイル攻撃を実施したり、もう一度キーウを攻めるのではないか?という見方もあって、キーウは必ずしも安全とは言えません。ですが、3月よりも普通の暮らしが戻ってきています。

マリウポリの状態(南東部)

マリウポリという町では、「要衝(軍事的に重要な場所という意味)」と言われ、今回の軍事侵攻では重要な町として報道されました。そこにはアゾフスターリ製鉄所という鉄を作る工場があります。戦争になったときのためにと、地下6階まであるそうです。4月中旬ごろから、このアゾフスターリ製鉄所だけがウクライナの占領地とされていました。この製鉄所には、「アゾフ連隊(アゾフ大隊)」というウクライナの軍の中でも強い部隊がいます。ロシア軍はここを攻め込むことはできず、地下貫通弾というコンクリートなどを突き破って地下に避難している人を攻撃する兵器を使って攻撃したのではないかとみられています。ウクライナ側からすれば、製鉄所の周りはロシア軍がいますから、住民を避難させることや支援物資の補給、軍事物資を補給することができません。製鉄所内では衛生状態が悪いといわれていました。
そんなとき、4月21日にプーチン大統領はマリウポリを完全掌握したと発表し、攻撃をやめるよう命令しました。その後、4月26日にグテーレス事務総長がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談。そのときに「人道回廊」という避難ルートをつくることに合意。5月に入り、この人道回廊で製鉄所の中に残っていた多くの住民を避難させることができ、ウクライナのゼレンスキー大統領も避難ができたと主張していますが、まだ残っている住民もいるのかもしれません。ただ、人道回廊を設置してもロシア側は攻撃を散発的に続けていました。
製鉄所周辺ではまだ戦闘が続いていると、製鉄所内のアゾフ連隊(大隊)は主張しています。

「製鉄所の地上戦」 アゾフ連隊が動画公開  - 産経ニュース (sankei.com)


オデーサの状態(南部)

オデーサでは5月10日、ロシア側によってミサイル攻撃されました。その日、EUの大統領とウクライナの首相が会談していました。このオデーサはウクライナ南西部に隣接するモルドバまで支配を広げるための「要衝(軍事的に重要な場所)」とみられています。
ここには小麦を輸出する倉庫があり、ここから船で黒海を通ってアジアやアフリカに小麦を輸出しています。黒海にはロシア軍が待機していて、小麦を運ぼうとしたら攻撃されるかもしれません。そういうことでウクライナは小麦を海外に運べず、1日約220億円の損失を出しているということです。

ハルキウ(北西部)

ハルキウでは、軍事侵攻が始まった2月下旬には多くのミサイルが飛んできてロシア軍が攻めてきました。その後激しい攻防が続き、周辺の町は占領されてしまいました。
しかし、現在ウクライナ軍が周辺の町を奪い返したというニュースが入っています。これから、ハルキウの住民の証言が私たちに届くのかもしれません。
ブチャと同じようなことが起きていないことを願うばかりです。

西部リビウにもミサイル攻撃がある

西部リビウは、ウクライナの西に位置するポーランドに近い主要都市です。ロシアから遠いところに位置するためロシア軍が攻めてくることはありません。そのため3月や4月上旬は日本のメディアでもリビウから記者が報告していました。
しかしヨーロッパが支援する兵器をポーランドを経由してリビウに入ってくるため、ロシアは「兵器工場があるから」という理由でミサイル攻撃をしています。石油貯蔵施設が攻撃されたこともありました。リビウにはウクライナ国民も大勢避難しています。ロシア軍兵士の脅威はないものの、ミサイル攻撃は続いている状況です。

海外の対応

海外の対応を簡単にまとめます。

アメリカの対応は?

アメリカはウクライナに兵士を派遣することはありません。「ロシアが他国の領土に攻めるのは許せない、だけどロシア軍と戦えば、核兵器が使われるかもしれない。それならば、ウクライナに兵士を派遣するのではなく、兵器を支援しよう」、このような方針です。そのために次々と兵器を贈っています。ただ、アメリカで作られるよりもウクライナなどに送っているほうが多い兵器もあり、これからどうやってウクライナを支援するか、課題になっています。

ヨーロッパの動向は?

ヨーロッパの国もウクライナの国内に入って戦闘をすることはありません。アメリカと同じ思い、第三次世界大戦にならないようにという意向です。
特にフランスのマクロン大統領はロシアのプーチン大統領とも会談しています。
ヨーロッパで大きな動きは、ロシアの石油を今後買わないという方針を決めたことです。特にドイツでは石油や天然ガスの輸入のうち、約55%をロシアからです。ドイツにとっては、ロシアからの石油を買わないとなると経済的に厳しいです。そのような痛みをしてでもロシアは許せない。ヨーロッパの国々の強い意向が表れています。
そのドイツはロシアの代わりに中東からの天然ガスを買う動きを進めていますが、その中東から人権侵害を指摘される国もあって、難しいかじ取りが予想されています。

中国の対応は?

中国は表向きは中立の立場です。ロシアとは軍事的に仲良くしておきたい、一方ウクライナとは軍事的な関係がある。そのような背景から中立な立場をとって、あまりロシアとウクライナの情勢に介入したくないようです。
本音は「早く停戦してほしい」というとこでしょう、戦争が続くと中国の経済的にダメージを受けるからです。
ただ、ブチャで市民の遺体が横たわっていたことを報じる際、ロシア側の「ブチャでの遺体はウクライナのデマ」という主張を報道していました。また、ウクライナではロシアとの戦争で中国製のドローンも使っていたのですが、うまく機能しないということも明るみに出ています。ウクライナは「中国製のドローンを使うな」という指示も出ている状況です。このようなことから、「本当は中国はロシアを支援しているのではないか?」という声も出ています。

中東・アフリカの影響

中東・アフリカにとっては、小麦が入ってこないことが大きく影響しています。中東の人たちが食べているものの中には小麦から作られているものもあります。しかし中東・アフリカの国からしてみれば小麦が入ってこなくなり、食料の値段が高くなっています。
食料が入ってこないと、この地域では過激派組織の勢いが増す可能性が指摘されています。「小麦から作られるものが高いのであれば、武器を使ってでも奪い取ろう」「小麦の値段が高いのは、政府が悪いからだ。武器の力を使って政権を変えてやろう」というわけです。
このような過激派が台頭すると、その地域が不安定になり、その地域から避難する人が増えてしまいます。こういう人が増えないためにも早めの停戦が望まれます。

日本にいる人への影響は?

日本にウクライナから避難してきた人が約900人います。この人たちへの支援が進んでいます。
北方領土の問題は交渉がさらに停滞するとみられています。北方領土周辺で軍事演習が始まったりと、挑発行為が続いています。
また、ロシアから石油を買うことをやめるのか、検討が進んでいます。
それに大きいのは物価高です。これは日本だけではありませんが、石油・小麦・油・アルミニウムなど、ロシアで多くとれるものを海外からの輸入に頼っています。石油は、ガソリンや燃料の原料であり、プラスチックの原料であったり、用途が多様です。小麦は、ラーメン、うどん、パン、ケーキなどに使われます。私たちがスーパーで買っている商品の値段を上げるというニュースもあります。加えて企業も、商品の値段の上昇を大きくすると買ってもらえない。となると、企業の利益も減ってしまう。そのため倒産する企業も出ています。100円ショップのような低価格がウリの企業は厳しい経営となっています。

最後に
今までのウクライナの状況をまとめました。
情勢を見る際に参考にしていただければありがたいです。

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