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文大統領、慰安婦判決困惑も既にステージは慰安婦も徴用工も関係ないところへ

韓国の文大統領が新年の記者会見で、日韓の間にある慰安婦判決を受けて少しですが言及しました。ちなみに、韓国での記者会見内容に関する扱いではトップが”虐待死した養子に関しての失言”、その他、”朴槿恵元大統領の恩赦について”、”検事総長と法務部長官との泥沼の結果”、”不動産政策”、”南北問題”などが先で、韓国内ではあまり日韓関係や慰安婦判決への反応は多くない印象。

ドア大統領は日韓関係についての質問に、「過去の歴史は、過去の事故、未来志向の発展は、そのままにしていかなければならない」とし「過去の歴史も事案ごとに分離して解決策を見つける必要がある」と述べた。ドア大統領は続いて「輸出規制と強制徴用判決の問題を外交的に解決するために、日韓両国は、複数の次元の話をしている」とし「そんな中で慰安婦判決の問題が加わり、正直少し困惑のは事実だ」と述べた。

ドア大統領はまた、日本政府が慰安婦被害者に慰謝料を支払うように求める最近の裁判所の判決について「2015年韓日政府間慰安婦の合意が両国政府間公式合意だったという事実を認める」とし「その土台の上、被害者お婆さんも同意する解決策を見つけるように、日韓の間で協議する」と述べた。

特に日本が鋭敏に反応する強制徴用賠償問題については「強制執行の方法で(日本企業の資産が)現金化されるもする方式は、両国関係のが望ましいと考えていない」と述べた。

ドア大統領は「そのようなステップになる前に、外交的解決策を見つけることが優先だただし、原告が同意することができなければならない」とし「原告が同意する方法を両国政府が協議して韓国政府がその部屋に原稿を説得する方法で問題を着々と解決していくことができると考えている」と述べた。

[출처: 중앙일보] "위안부 판결 곤혹스럽다" 달라진 文대통령 태도에 日 당황

文大統領の認識、態度が変わった?

この発言の中でちょっと目を引くのは「2015年の慰安婦合意は日韓両国政府間の公式な合意だったという事実を認める」という発言でしょうか。

慰安婦合意に関しては、2017年に慰安婦合意検証タスクフォースが文大統領に出したレポートを受けて、文大統領は「手続き的にも内容的にも重大な欠陥があり、被害者と韓国民が排除された政治的合意で極めて遺憾である。被害者中心の解決、国民と共にする外交という原則の下、早期に後続措置を用意する」という立場を表明していました。

韓国世論はおそらく「早期に後続措置を用意する」を「無効あるいは破棄して日本と再交渉する」と読んだでしょう。少なくとも「欠陥のある合意を履行した上で再交渉する」だろうと思ったはず。
ただ、合意内容の履行を以て最終的かつ不可逆的に解決という合意だから、再交渉を口にするだけで合意に対する違反になる。
おそらくそのところは「公序良俗に違反する契約は無効」と同じ理屈でごねるつもりだったと思います。勝手な願望に基づく根拠のない見通しですけど、そう考えるのは半島気質なのでしょうがない。

しかし、文政権のやったことと言えば、旧挺対協など支援団体の妨害や煽られた世論によって機能不全に陥っていた財団を設立目的を達成できないという理由で解体。慰安婦像は民間のしていることだから…と、放置したことぐらい。再交渉どころか、何を日本に言っても「慰安婦合意を守れ、履行しろ」と言われて黙ることぐらい。でも、今回、慰安婦合意は二国間政府の結んだ公式の合意だと認めた。

日本側は「どうせ、今まで何もやらず放置し、これからもやるつもりもないことを公式の合意と認めたところで行動がなきゃ何も変わらない」と冷淡な反応ですが、韓国サイドとしては違う。これまでの反日暴走の大きな根拠がひっくり返ることになるからです。


韓国政府は本気で困惑していた?

当初、慰安婦裁判の判決が出た時に、文大統領が「今回の判決に困惑している」と述べたという報道がありました。日本側は「何を今さら」という冷ややかな反応がほとんどだったと思いますが、どうも、本気でそうだったらしい…という話も後日談で漏れ聞こえてきます。

日本は外務省はもちろん、あらゆるチャンネルで交渉や会合を持つ時に、今度の慰安婦裁判はヤバい、判決が出れば日本が勝つことなどあり得ないし、そうなれば日本と韓国の関係は完全に破綻する…と、機会があるごとに韓国に言い続けていたそうです。

ところが韓国サイドの反応は概ね「三権分立で司法に介入など怖くてできないし、判決が出ることなどあり得ない。却下されるに決まっている」という楽観的なもので、日本サイドの反応が過敏な心配性というものだったと。

朴槿恵元大統領政権時代の国による司法への介入が疑惑として持ち上がり、日本相手の裁判が遅延されていたことへの追求を文政権時に積弊精算としてアピールしてきたし、その結果、官僚が次々と逮捕されたり社会的に抹殺されたりしているのを目の辺りにしている現政権のメンバーが、そんなこと、万が一次の政権で暴露されたら終わりですからね。

文政権が判決が出た時に何も対策をしていなかったとしても不思議ではないし、仮にそういった不安材料があったとして文大統領の耳に入っていた可能性はおそらくゼロ。徴用工裁判で三権分立で司法には介入できないという建前で押し切っている以上、慰安婦裁判にそれと反する行動はできない…という雰囲気が全体を包んでいたでしょう。


差し押さえ資産の現金化とかもう関係ない

さて、そうして文大統領と韓国政府が、韓国のヤバい立場を取り繕うとして徴用工裁判や慰安婦裁判の差し押さえ資産の現金化はまずいとか、日韓で解決策を見出そうとか必死ですけど、二つの裁判で既にそういう話はすぎているのです。

判決は…
1.日本の併合は不当
2.(1)により日本統治時代は不法
3.(2)により日本統治は日本が朝鮮民を不法に支配する非人道的行為
4.(3)により日本統治時代に日本が関わること全てに精神的苦痛を味わった
5.(4)により当事者および当事者の子孫が、日本を相手に精神的苦痛に伴う慰謝料を請求する権利を有する

…ですね。

徴用工も慰安婦も実際に非人道的行為があったのかどうか、当事者が企業や日本政府だったのかどうか…などの事実関係の認定をしていません。判決では、それらがあったことは歴史的事実で明白…なんですね。徴用工では損害を立証する必要のある賠償ではなく、精神的苦痛への慰謝料としているのが画期的で、裁判所が認定すればOK。プラス、慰安婦裁判で日本統治が不法で非人道的行為には日本の主権を免除することはできないとしたのが画期的。

そうなると、例え合法の取引であっても、果ては教育を受けたことであっても、日本が関わっている以上、朝鮮民として精神的苦痛を味わったので慰謝料を請求する訴訟を裁判所が却下できるのか?…世論の賛同を得られるかどうかにも関わりますが、韓国民全員の被害者認定のためならやるでしょう。

日本の併合や統治が不法だとすると、それを前提とした日韓基本条約も不備のあるものになるし、文大統領や政府与党の歴史観では、基本条約の交渉をした韓国政府は正当な政府ではない。正しい歴史への修正と補償を裁判所や今後、憲法裁判所が政府に求めれば対応せざるを得ない。

あらゆる日韓関係のベースとなる日韓基本条約破棄に向けて、世論の暴走は止まりません。その結果、あるいは副産物として総被害者立国の韓国ができて、全ての国民が日本に慰謝料を請求できる権利を持つ…となれば、妄想とは言い切れなくなります。

そんな事態になるパンドラの筐を韓国司法や政府が開けてしまったのですよ。たかだか数千万円の慰謝料で大騒ぎしているわけではないのだ、ということを理解して貰えれば良いと思います。


韓国内がK-分裂

さて、文大統領が2015年の慰安婦合意を公式の合意と認めたことで、観光に合意の履行を行う義務があることを認めたことになります。内容に無批判に従うとは言えないでしょうが、無効だとか死文化だとか再交渉なんてことは言えなくなる。せいぜいが、合意内容を履行した上で、さらに交渉を持ちたいと言う程度かな。アクロバット理論を駆使して、日本は韓国を無視できない…という根拠なき自信に基づけば、やります。

その前に、徴用工や慰安婦で差し押さえされる資産の現金化を止める手立てを探らなければならないでしょう。

しかし、それは司法や世論の思ってた方向性と違う。

韓国は、人権と被害者を無視した合意など堂々と破棄し、日本に慰安婦合意の再交渉を求め、被害者中心の賠償と謝罪と正義を要求し、日本を屈服させた民主主義と人権先進国として華やかな立場に立つ…はずだった。

そのために、世論は韓国内にはびこる悪しき親日派を売国奴として糾弾し、排除し、美しき清き韓国を実現させようとしたし、日本に負けない韓国を具現化するNO JAPANに熱中した。

司法も文政権と政権与党、その支持者の思想が描く韓国の歴史に基づいた判断をするようになり、世論と政府が描く美しき清き韓国のための判決を出すようになった。政府や世論や国際社会と日本の司法ができないことを韓国の司法がやり、歴史的な判決に韓国司法の名が刻まれるように。

ま、今回、歴史的世界的にとんでもない判決をする司法として確実に名前は刻まれましたが。所得主導成長経済という文大統領の社会実験が経済学の教科書に載るのと同時に、今回の判例もまた法律学の教科書に載ることでしょうけどね(笑)。

***

それはさておき、政府が日和ったせいで、暴走している世論と司法が置き去りにされ、過激に突っ走るものと疑問に立ち止まるものの思惑が離れていくK-分裂がこれからの韓国のトレンドになりそう。コロナで成長する分野と停滞する分野のK-成長がもう一つのトレンドでしたが、しばらくはこの視点で眺めてみるのが面白いかも。


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