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瀬戸内寂聴さんの「今」思うこと、そして「戦争」への思いを小川キャスターが取材しました

「生きているうちにやりたいことは全てやった」
そんな風に語ってくださったのは
作家の瀬戸内寂聴さんです。

97歳の「今」思うこと、
それから「戦争」への思い

うかがってまいりました。

(2019年7月26日放送より)

京都・嵯峨野にある 「寂庵」

寂聴さんが開いた寺院です。
97歳となった今も
月に1度の「写経の会」には、
できる限り顔を出しています。


「なにか願い事があって、写経している人、手をあげて。病気が治るようにとか、自分の何かがうまくいくようにとか、何かあるのね。効果はありましたか?」

世代をこえて慕われる寂聴さん。



特別な思いをもって訪ねてきた若者もいます。
中島健太さん(34)です。

“まるで写真のような繊細な絵”
特徴の写実画家。

タレントのベッキーさんを
モデルにした作品で一躍有名に・・・。

「寂聴さんを描きたい」と、
やりとりを重ね、
絵の制作が決まりました。

その制作現場を
のぞかせてもらいました。

これでもまだ、描き始めたばかり。
写真を見ながら、小さな皺まで
一本、一本、描き込んでいきます。

●中島健太さん
「写真的な絵だからこそ、なにが写真と違うのか、自分の中で思いをこめるという作業に時間をかけるのかなと」

中島さんは、寂聴さんから
こんな言葉をかけられたといいます。



そして今月、ようやく作品が完成。
寂聴さんは喜んでくれるでしょうか。

瀬戸内寂聴さんを描いた
写実画家の中島健太さん。

半年かけて完成させた作品を、
ついにお披露目です。

色とりどりの花が咲きほこる
扉をひらくと・・・
アジサイに囲まれ、
柔らかな表情を見せる寂聴さん
が・・・。

中島さんの思いがこもった
肖像画を前に笑みがこぼれる寂聴さん。

一方で、絵からにじみでる自分の印象に、
少しだけ“違和感”も覚えていました。

あらためて、聞いてみると・・・。

●小川キャスター
「絵を初めてご覧になって…」


30代前半で作家デビュー。
しかし平坦な道のりではなく、
不倫など、私生活にも批判が集まりました。


「“いい人間”としては、私なんかしてきたこと全部反対。人がどう思おうが、自分のしたいことをする。」

●小川キャスター
「いま、寂聴さんの言葉の力を持って、
もっとも伝えたいことは?」


「生きるってことはなんでいきるのか、やっぱり愛するために生まれてきて、愛するために生きている。愛するということは究極ゆるすこと」

22歳で結婚した寂聴さん、
終戦は、中国で迎えました。

翌年、ふるさとの徳島に戻ると
あたりは、一面焼け野原・・・。

母・コハルさんが
防空壕で亡くなっていたことも
知りませんでした。

●瀬戸内寂聴さん
「非常に愛している人は、どれだけ離れていても必ず知らせるとかいうでしょう。死んだとき分かるって。あれ、ウソよ。母はね、私のことを好きだったのね、かわいくてしょうがなかった。それが、防空壕で死んだことも(当時)まったく知らなかった」


「戦争で被害を受けた人たちって悪くない。
悪くなくて、被害を受けて、本当に残酷ですよ」

作家として人気が高まっていた
51歳で、出家。

執筆活動の傍ら、
繰り返し「反戦」を訴えてきました。

大正から令和まで
4つの時代を知るからこその実感です。

「あさ目が覚めたら、まだ生きていたって、いつ死ぬかなって、そればっかり考える。われわれの世代は書き残す、言い伝える、言い伝えて残す、その義務があると思う。自分だけの小さな平和を守るのではなく、後世に伝える義務があると思います」




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小川)
実際に寂聴さんに会って
ハッとさせられたのは
驚くほどみずみずしい方だったということです。

ころころ変わる表情に、反応に
そして、繰り返しおっしゃっていたのは
「生きる」とは、
このように「何かをしなさい」、
この世で「何かをしなさい」ということだと

「傷つかないで生きるより
色々な経験をして傷ついて、痛い目にもあって
それを味わうことのほうが
生きたなって思えるのよ」 
と。

そういった生き方を重ねてきたからこそ
97歳とは思えないみずみずしさの
ようなものがあるのかなと感じました。

星)
私が印象的だったのは
「いい戦争はない」という言葉ですね。

瀬戸内さんと同じ世代の
宮澤喜一さんとか野中広務さんも
同じようなことを言われていました。

戦争を知った世代、戦争を体験した世代は
「いい戦争はないんだ」ということを
繰り返していましたけども
ここ20年くらい、日本でも世界でも
「いい戦争はあるんだ」と
「正義の戦争はあるんだ」と
そこには日本は協力すべきだという議論が
どんどん高まって
そういう風潮ができている
んだけど、
はたしてそうなのかどうか

このまま瀬戸内さんが最後に
そういうことについて
非常に重く問いかけているような
気がしましたね


動画版はこちらからご覧いただけます ↓
https://www.youtube.com/watch?v=oE-rKKx1fOg