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メンタルヘルシーなSNSを探して。Bondeeは私たちのセーフプレイスになりうるか?

「誹謗中傷、自己否定、SNS疲れ」——。
ここ数年、SNSが与えるメンタルへの悪影響についてよく目にするようになりました。
それと同時に、Discordを始めとしたクローズドコミュニティが注目を集め、オンラインコミュニティは今、変化の過渡期にあるように思います。

そんな中、突如現れた新たなSNS「Bondee(ボンディー)」。これまでのSNSとは打って変わり、50人までしか友達を登録できないこのアプリ。アバターを使って友達と会話したり、今の心境を投稿したり。ぶっちゃけ目新しさは感じないこのアプリが、なぜか私達の心を掴んでいるのです。その理由はおそらく「居心地の良さ」なのではないかと思います。

Bondeeは、私たちのユートピアとなってくれるのか。Bondeeに魅了された私の視点をここに記していこうと思います。

いつからか、インターネットは息の詰まる場所になった。

小学生の頃。クラスでは、”インターネット”が大流行していた。
おもしろフラッシュ動画は毎日話題になっていたし、遊びの約束はYahoo! Messagerで取り付けていた。とりわけ流行っていたのは、「ぱどタウン」というコミュニティサイトだった。アメーバピグの前身のようなWEBサイトで、放課後の集合場所はいつも「ぱどタウン」だった。

地域密着型の情報誌「ぱど」を発行する、ぱど(東京・千代田)が運営するインターネット上の仮想都市。現在はサービス終了。

大学生になる頃には、TwitterやFacebook、LINEが定着していた。大学入学前からTwitterで同期の友達を作り、当時は革新的だったLINEの無料通話で何度夜を明かしたか、もはや覚えていない。シャイで口下手なわりに、寂しがりやでかまってちゃんな自分にとって、SNSは人と繋がる大切な場所だった。

そうして、現在。私はSNSとの付き合い方にひどく悩まされている。Twitterを開けば、ネガティブな話題や知らない人のビジネス名言ばかりが流れてくる。TikTokは、迷惑行為や過度な露出で注目を集めようとする人たちが目に入り、欲望の泥沼のように見えてしまう。もちろん、それらは一部ではあるのだが、そういうコンテンツがどうしても流れてきてしまう。クリエイターエコノミーだなんだと言われ、自分自身をブランディングし、発信する場所としてSNSは活用されるようになった。注目を浴びるため、人とは違う個性を表現する場所になったSNSは、まるで一張羅で出かけるパーティ会場のようだ。パジャマでパーティに参加する人など存在しない。(そういう注目の浴び方もあるにはあるが)そうしたリアリティの喪失が、どことなく私をSNSから遠ざけていっているのだ。

リアルの喪失が生む、メンタルヘルスへの弊害

SNSは世界中の人と繋がれる場から、自己表現をし、注目を浴びる場所へと変わっていった。「映え」はもはや当たり前の言葉になり、SNSには、非日常しか存在しない。もし若者の心情を知るためにSNSを見ているならすぐにスマホを引き出しにしまった方がいい。昨日、インスタのストーリーズにあげた高級フレンチ、量が少なかったから帰りにコンビニのおにぎりを買って帰ったし、今朝アップしたかわいいメイクは落とさずソファで寝落ちしたから。というのは、冗談だけど、美しくない部分はSNSにはアップしないのは事実。そうして、「キラキラした瞬間」が並ぶSNSは、自分のコンプレックスを刺激し、自己肯定感を下げていく。昼過ぎまで寝てしまった休日に見たインスタなんか、もう地獄だ。「あの人、朝から美術館なんか行って、充実していてうらやましい。」という気持ちになるだけだ。

そんな中、オルタナティブな選択肢として、たくさんのSNSが登場した。BeRealやGas、Clubhouseなんかも一例だ。例えば、BeRealは、「リアルな日常を共有するSNS」として、映えへの対抗のような形で誕生した。

ユーザーが1日に1回 、フィルターなしの写真を投稿するソーシャルメディアのアプリ。Be Realの詳しい考察記事はhttps://note.com/newpeace/n/n3324dd1a7fb5より。

それは、「非日常ばかりのSNS疲れ」に対する処方箋として、若い世代を中心に流行した。

発火と鎮火の勢いが激しかった「Clubhouse」なんかもそうだ。声のSNSとして、感情が乗っかりづらいテキストSNSへの新しい選択肢として話題を呼んだ。

音声のみのSNS、「音声版Twitter」のようなアプリ。2021年に大きく話題になった。

様々登場したSNSも、流行っては廃れ、結局は”いつもの場所”にみんなが集まっていく。SNSのメンタルヘルスへの弊害はみんな大なり小なり感じているはずなのに。もはや、既存SNSへの処方箋が必要なのではない。SNSなんか辛けりゃアプリごと消してしまえばいいだけなんだから。本当に必要なのは、落ち着ける場所、セーフプレイスだ。パーティが終わったら、やっぱり自宅に帰りたいじゃない。


ヴァーチャルセーフプレイス「Bondee」の誕生

そんな中、現れたのが「Bondee(ボンディー)」というメタバースSNSだ。Bondeeは、簡単に言えば、アメーバピグのようなもので、アバターで会話するチャットSNSだ。新しいところは、「50人までしか友達登録をできない」こと。その”制限”が、居心地のいいセーフプレイスを生み出すことに成功しているのだ。

セーフプレイスである理由として大きいのは、クローズドであるということだ。クローズドコミュニティの流行は以前から言われてきた話ではあるが、「友達オンリーの空間」はほとんどなかった。趣味で繋がる、ブランドのファンなど、テーマで集まるコミュニティばかりだった。友達だけであれば安心感があるのは当たり前だ。知らない人から突然自分の発言を侵害される心配もない。感覚的には、友達だけが集まった公園みたいな空間だと思っている。一人で遊んでいてもいいし、気が向いたら気軽に友達に話しかけることもできる。コロナ禍を経て、友達と遊びに行くハードルが上がってしまったことも要因して、気軽に友達と話せるというのはものすごく貴重な体験なのだ。

また、もう一つあるのは、他人からの関心を気にしなくていいということだ。「SNSで有名になりたい」とは考えていない人でも、SNSで誰の関心も得られなさそうなことはなんとなく発信しづらいのではないかと思う。”いいね”が一つも付かない投稿を続けるのは、相当強靭なメンタルが必要だ。一方で、50人限定の友達コミュニティには関心を求める必要はない。取るに足らないことを言える。むしろ、どうでもいいことしか書くことはない。自分の感情や状態は、だいたいアバターが代弁してくれるから、気軽に投稿できる。Bondeeを立ち上げて、”意識高い投稿”に自己肯定感を削られることはほとんどないだろう。


主体性を持ってSNSを使い分ける

世界中と繋がることができるSNS。ハード・ソフトの進化と共に常時オンライン化は進んでいくだろう。しかし、常時世界中と繋がるなんて、やってられるわけない。自己発信をする場所、趣味を深める場所、友達とのセーフプレイス。様々な場所を使い分け、SNSと付き合っていかなければならない。SNSを用いて、繋がりを広げる時、深める時。安心したい時、刺激を受けたい時。自分が今求めるものを理解し、それにあったSNSを使っていけるようになるべきだ。あくまで主体はユーザーにある。そのためにSNSには多様な選択肢が必要だったのだ。Bondeeは、SNS疲れを癒すセーフプレイスとして、私たちに必要だったものだと思う。そして、これからもBondeeがセーフプレイスとして存在してくれることを祈る(みんな飽きないでね)


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