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2時間程度で書ききる話シリーズ

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人生を迷路にしてるのはだーれだ?

ふと目が覚めると、迷路に立っていた。 暑い。屋根はなく今日は晴天だ。背丈よりも高い壁の上を風が吹き抜ける。その風を感じようと手を伸ばす。 ちなみに、ここが外なのに迷路だと分かったのは、さっき通りすがりの人が、親切にそう教えてくれたからだ。 他にも何人かの人がいて、どうやらここは広く、多くの人が迷い込んでいるようだ。 汗だくの人や、昼寝している人までいて、話し合っている人たちもいる。 「東京ドーム○○個分の広さらしいぞ」 「あちこちにヒントがあるらしい」 「ゴールには塔が立

君が5歳若くならなくても。

相方が、入院することになってしまった。 約3週間の入院が必要な程の大怪我で、心から心配だ。 直接は言えていないが、心から申し訳なく思っている。 なんせ私のせいで入院するようなものだ。 初めてこんなに離れる事にも、多少の不安を覚える。 相方と一緒に病院に着いた時から、正直君のことは目に入ってた。 “あの子も綺麗だけど、やっぱりウチのがいいな” こう思っていたのは嘘じゃない。 別に驚かせたい訳じゃないから言っとくが、相方とは愛車の事だ。 もうひとつ言っとくと、本当は愛車の

もし黒帯が取れたなら、白帯を巻きたい。

もし仮に僕が柔道をやっていたとして、黒帯など取れた日にゃ、四六時中巻いている気がする。 さすがにそれは出来なくても、どうにか少しでもチラ見させられる方法を模索すると思う。 汗と涙を積み重ねてようやく巻く事ができた黒帯だろうし、こんなにも自分の実力を顕在化できるアイテムはそうないと思うから。 ただ、それをゴールにしたくないと思ってしまうのだ。 もしも街中で黒帯をひけらかしている人がいたら、個人的にはあまり印象が良くない。 凄いな〜とは思うだろうし、それが評価されることに

令和2年12月8日、僕は死んだ。

もう少し正確に言うと、殺されてしまった。 もともと、長生きしたいと思うタイプではなかった。 太く短く生きられればそれでいいと、若い頃から思っていた。 それでも自分の人生を“太い”と思うことは、結局少ないままだった。 嫌なことばかりではなかったし、どちらかと言えば恵まれていた筈なのに。 何故そう感じてしまっていたのかなど、今となっては分からない。 妻がいて、子供もいた。 涙よりかは遥かに笑顔の方が多い生活だった。それなのに。 こんなことになるくらいなら遺書くらい書いてお

料理の極意は「強火は使うな」だそうだ。

結論から言うと、その通りだと思うようになりました。 なんなら、弱火こそ最強かもしれないと思うようにもなりました。 自己紹介が遅れましたがワタクシ、中火と申します。 基本的にずっと、強火に憧れていましたが中火どまりでした。 そして、弱火なんて弱いだけだと思っていました。 もちろん僕は、“火”ではなく“人間”です。 最近、料理が上手になってきたんです。 同じ素材でも、同じ料理でも、美味しくなってきた気がします。 その大きな理由は「強火を多用しないようになった」からだと思い

もしも僕が図書館の本だったなら、付箋だらけで奥の方に仕舞われた本だと思う。

回りくどい言い方はやめますね。 インプットばかりでアウトプットの苦手だった僕だからです。 言いたいことも伝えたいこともあるのに 「ここにいるぞー!読んでみてくれー!」 とは叫べませんでした。 僕がいる本棚の奥の方から見える、新刊や話題作やベストセラーが並べられる棚を眺めながら「うらやましくなんてないよ」なんて思っていました。 そして同時に「なんでみんな僕を手にとろうとしないんだろう」と首を傾げていました。 考えても答えが見つかることはなく、いつも“自分という本の中身”に