『40代になってやっと気付いたスラックスの魅力』
・スラックス。
・これまでの40年の人生においては、その言葉の響きにどうしても ”おじさん感” を感じていた。
・パンツを買う場合、その選択肢としては、ジーンズ、チノパン、カーゴパンツ。
・もっとあると思ったけど意外と出てこない。
・それぐらい、これまでの人生はそのうちのどれかでなんとかなっていた。
・スラックス。
・これまでの人生において、それは、”スーツのパンツ部分” であり、”おじさんが休日に履くダボッとしたズボン” でしかなかった。
・僕は古着が大好きだか、これまでの人生において、古着屋さんのスラックスコーナーに時間を費やしたことはなかった。
・素通りする日々。
・そこにあるのに、ない存在。
・物質として見えているのに、概念として存在しない特異な存在。
・それが "スラックス" だった。
状況は一変する
・2021年、40歳を越えてしばらくした時、状況は一変する。
・新しい古着仲間たちが、スラックスを嬉々として買って楽しんでいた。
・そう言われると、たしかに、スラックスがかっこよく見えてきた。
・しかし、どうしても引っかかるのは、そのシルエット。
・ジーンズなどは、お店で手にとって広げてみたとき、そのシルエットが比較的容易に想像できる。
・履いたときの自分がイメージできる。
・しかし、スラックスの場合、手にとって広げてみるとなんだかダボッとして見える。
・ウエストやレングスなど、サイズ的にはOKなのに、イメージの中ではうまくいっていない。
・わかりやすく言うと、”ボンタン” のような形がどうしても浮かんできてしまう。
実際はそんなことはなかった
・古着仲間たちが楽しそうにスラックスを語るので、恐る恐る買ってみた。
・そう、スラックスはあまり注目されていないことが多いので、ジーンズと比べると平均価格が安い。ように思う。
・そして家で恐る恐る履いてみると。
・なじむ。すっと馴染む。
・なにこれ、シルエットもきれいじゃない。
・そうか、履くとこうなるのか。ハンガー越しにみている感覚とは全然違うのか。
・そしてふと、古着屋で顔を上げ周りを見渡すと、今ままでとは全くちがう景色が広がっていた。
・スラックスが、たくさんのスラックスが僕のことを見ていた。
ーーーやっと見つけてくれたね
ーーーずっと待っていたよ。
ーーー君はすこし、他のみんなと比べて時間がかかったようだね。
ーーーああ、何度も何度も通り過ぎて。
ーーーそうさ、ずっと呼んでいたのに。
ーーーぼくらはここにいるよ、ってね。
ーーーまあいいいさ、これからはずっと一緒さ。
ーーーさあ、こっちだよ。
井の中の蛙 スラックスを知らず
・そうか、スラックスコーナーに気付くと、古着屋さんはこんなにも広く感じるのか。
・いままで、僕は小さな囲いの中で、パンツと言えばジーンズとか、という小さな概念の中で生きてきた。
・四十にして惑わず。
・四十にしてスラックスを知り、もう惑うことはない。
・ほんとうに、これまでの2倍、古着探しが楽しくなった。
・そして、ほんとうに、これまでの2倍の速度で押入れの肥大化が進行し始めた。
(end)
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