俳句の遊歩道(`21/6)

木の香降る風の歌降るハンモック
宮入 黎子

 「ハンモック」は緑陰の立木や屋内の柱の間に張りわたす目の粗い網の吊り床が一般的だが布製などもある。掲句はアウト・ドアのハンモックをとりあげ、個性的な解放感を演出しつつメルヘンチックな抒情を醸している。どこか現代詩をやる人がその感覚をそのまま俳句に仕立てたというスマートさ、明るさがあり「木の香」「風の歌」の措辞が詩的なら、何よりも「降る」のリフレインがいい効果をあげている。最近ソロ・キャンプが流行だというがコロナ禍から脱出して「風の歌」を聴きに出るのも一興だろう。

 別に「空泳ぐ鯨の夢をハンモック 芹沢保」がある。

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