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運命について

露伴の頭の中では「定数」と「運命」は
一体だったのかもしれない

 運命について書こうと思ったとき、まず頭に浮かんだのは幸田露伴の『運命』という小説だった。父が露伴と親しかった塩谷賛の主宰する「露伴会」に関係していた縁で、父の死後私も同人に誘われて「露伴会」には2、3回、顔を出したことがある。同人は露伴の愛読者たちで、「五重塔」以外ろくに露伴を読んでいない私は、隅のほうで身体を縮めて同人たちの発言を聞いていた。

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