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また歩き出せばいい

(名前は仮名)

 9月のそろばん検定の4人の結果が分かった。

 初めて受験した小学5年生のA君は、『先生あのぅ、24を入れる時の親指がこうなってあーなって‥』と受験終了後に少し興奮していた、そして続けて言った。

 『どうしよう、どうしよう落ちたら‥‥』とても不安気な表情を浮かべた。

 「大丈夫、落ちたらまた受ければいいのよ。
もし、自分が道路で転んだ時はどうするの?いつまでもそのままで、そこで泣いているかなぁ」私が問いかけた。

『立つ』

「立ってからどうするの」

『歩く』

 小学3年生のB君は、検定前はかけ算が苦手なんだとやや不安気だったが、検定当日になると、隣の席で受験をする小学5年生のCちゃんと、開始時間の少し前まで楽しそうに会話をしていた。二人とも検定経験者なので、気持ちに若干の余裕があるようだった。

 しかし、二人はいざ検定が始まるとたちまち集中して、一心不乱にそろばんの玉をはじき始めた。その背中は実に力強かった。

 小学2年生のDちゃん(以前に登場した愛ちゃん)も含めた4人の合格発表の日に、B君は堂々と『僕は絶対に合格してる』と言ってのけた。


 他の3人は緊張の面持ちであったが、全員合格だと分かると、その場が別次元の世界に入り込んだように、明るく賑やかな場になった。

 学習塾とそろばん塾を併設している代表者の先生が、いつもカメラマンとなり合格者の写真撮影が行われる。

 椅子に腰掛けてカメラの調整をしているその先生の周りに、『写真撮影だー』と1番はしゃいでいるA君を中心に、4人が賞状を片手に集まってきた。先生の膝を取り囲むように、可愛い子犬がまとわりつくかのようだった。

 そして、賞状を持って微笑む4人の一人一人の撮影会が無事に終了した。
その写真は、過去の合格者たちの写真と並んで壁に貼られ、教室を更に明るくした。

 ご家族に合格の賞状を見せる、其々の子供たちの笑顔と得意気な顔が脳裏に浮かぶ。

 ご家族の支えの下、成長をしていく子供たちを間近で見る喜びを感じ、私も少しでも成長していきたい。

よろしければ、是非サポートをして頂きますようにお願い致します。 貴方のサポートが、大変励みになります。良い物が作れるように、色々な経費にしたいと思っています。