たからもの
上の子は結婚しても子供は要らないという。
子どもは嫌いだし、自分には育てられないという。
実際には「案ずるより産むが易し」というのは本当にそのとおりなのだけど、子どもが欲しくない理由は幾重にもなって、もはや一枚一枚剝がして片づける、というような単純な話でもないのだろう。
私だって、いまの世の中で子どもが産めるか、というと、やっぱりちょっと考える。
よくよく思慮してそう決めたならそれでいい。
彼女の考えを尊重する。
彼女が幸せならそれが一番だ。
そう折に触れて伝えていたら、「お母さんみたいな人は少数派なんだよ」と言う。
親に「結婚しないの?」「早く孫の顔を見せてほしい」と言われる人は、いまもそれなりにいるらしい、この令和の時代に。
孫の顔が見たい、というのは、親の願望だ。
子どもを通して自分の願望を遂げようとすることに、私はとても違和感を感じる。
私自身子どもが苦手だから孫という存在にもそんなに興味がない、のかもしれない。けれど。
子どもが幸せに生きること以上の幸せが自分にあるかといえば、「ない」と即答するし、断言できる。
小さいころから知識欲だけはバカみたいに旺盛だった。世の中の知らないことを知り尽くしたいと思っていた。そのために膨大な量の本を読み、勉強もし、それを今も続けている。
でも、そういった自分の巨大な欲望さえも、子どもの幸せに比べたらどうでもいいことだ。
よく「命さえ惜しくない」というけれど、本当にそうとしか譬えようがない、子どもに対する気持ち。
娘は最近婚約した。
遠からず、私の宝物が手から離れてゆく。
でも、どこにいても、彼女が幸せに生きていく限り、私の幸せも果てしなく続いていく。
一生分以上の幸せがこの胸に積もっていく。
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