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HappyBirthday

これまでお誕生日のお祝いは、必ず当日に家族全員でしてきた。
朝その人が出かける前までに起きてきて「お誕生日おめでとう」と言い、夜ケーキを買ってきて(もちろんプレートが乗っている)、ロウソクを立て、火をつけ、「Happybirthday to You」と歌い、ロウソクを消す。
残業があろうがなかろうが、彼氏がいようが彼女がいようが、家族優先。
今まで一度も欠かしたことがない。

そんな家族そろっての行事も、先日の娘の誕生日が最後。
娘は来月には引っ越していくし、何より新しい家族を作るので、ウチが第一ではなくなる。
息子が「全員で歌うのも最後だねぇ」と感慨深く言うと
「いやいやいや、帰ってくるよ。歌を歌いに帰ってくるよ」と娘が言うので、他全員で「それはどうなの」と言ったのだけど、たぶんウチが大好きな彼女のことなので、誰かの誕生日ごとに帰ってくるだろう。
そして同じように毎回歌を歌って…
でも、それが一巡して、また娘の誕生日になったら、さすがにその日はパートナーとお祝いするだろう。
そこで本当に区切り。

子供が巣立つというのは、そういう家族の行事を一つずつ仕舞っていくことだ。
ろうそくの火を一つずつ消していくように。
親には幸せな記憶だけが残されて、でもそれで十分。

部屋の明かりを消して、ろうそくの灯ったケーキを囲んで歌うとき。
本当にただ純粋な幸せがそこにある。
子どもは中学生のころなんか、たぶん「めんどくせー」と思っていたんじゃないかな。
でも、親のわがままにいつも付き合って、その日は必ず開けて、お誕生日のお祝いをしてくれた。
そういう積み重ねが、大切な人を思う気持ちが、子どもたちの中にも息づいてくれていたらとても嬉しい。

娘もそれなりに大変な人なので、それをパートナーさんに預けることができるという安堵と、たからものを手放す少しの寂しさと。
でも、ウチで消したろうそくは、別の場所で温かく灯るだろう。
心から、幸せになってほしい、と願っている。





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