グローバルで1兆円企業になる可能性を秘めた若き二人へかける想い
New Innovationsは2023年4月に合計54億円の資金調達を完了し、OMO事業のさらなる拡大に向けて動き出しています。そこでこのたび、引受先となったHERO Impact Capitalの渡邊拓様と、当社CEOの中尾、COOの山田による鼎談を実施。投資における考え方やNew Innovationsへ投資に至った背景、今後への期待などについて伺いました。
グローバルでインパクトを与える企業へ
——まず、HERO Impact Capitalについて教えてください
渡邊:HERO Impact Capitalは、脱炭素社会と超高齢化社会をターゲットにしたインパクト投資ファンドです。次世代研究者や天才ハッカーといった若い才能を、創業前から支援しています。グローバルとローカル両方の視点で、直近20年で最優先に解決するべき地球課題がこの2つのテーマだと考えていて、この領域に対して21世紀最大のインパクトを創ることがファンドの目的です。
地球・人類社会の変化によって大きく新しい産業が産まれてきますし、世の中の「当たり前」を創る企業が未来の1兆円企業になっていくはずです。そういう考えのもと、これまでAI・Robotics・Synthetic biology・Climate Tech・Longevity Tech・Space Tech・Brain Tech等の研究開発を行うスタートアップに投資をしてきています。
——New Innovationsに投資したのは何故でしょうか?
渡邊:私が以前所属していた、DEEPCOREというAI特化型ベンチャーキャピタルで2018年に投資させていただいたことが最初のきっかけです。New Innovationsは中尾さんという天才的なエンジニアが作った会社であり、人口動態が変化する日本社会において新しい「当たり前」を創る、まさにインパクトを生み出せる会社だと確信しています。実際、若いエンジニアや研究者が集まるロボティクスカンパニーとして大きく成長しており、今後1兆円以上の企業価値を有する可能性を大いに秘めています。
──New Innovationsはサービスも製品もない状態での投資から始まりましたが、今では自社製品を開発し、大手企業とのOMO事業も進んでいます。こうして技術や想いが社会に実装されていく様子を間近で見てきて、どう感じますか?
渡邊:率直にすごいです。年齢でいうのもナンセンスですが、とはいえ23、24歳が代表を務める会社でこれほどスピード感のある企業はほかに類を見ません。1兆円、10兆円の売上を生み出していけるようなロボティクス産業において、新しい顧客体験をもたらす会社としてとんでもなく大きな挑戦をしています。
世界的に見ても市場が大きく確立されているコーヒー分野においてロボティクス技術を使うと決めたことも良い意志決定だったのだろうと思いますね。
中尾:マーケットリサーチをしたとき、タピオカにするかという議論もありましたね。僕も渡邊さんもコーヒーは飲めないのですが、それでも結果的にはコーヒーでやると決めてよかったです。市場規模の大きさはもちろんのこと、世の中の流れを把握して、試行錯誤を何百回と繰り返すことができました。
山田:事業構造も売り方も複雑なものを売ろうとしたことによって、様々な事業体に出会うことができたんです。例えばアパレルのAIだったらアパレル業界に特化して詳しくなる必要があります。コーヒーであれば総合商社様、空間を有効活用したい企業様、中にはコインランドリーのオーナー様など、色々なコミュニティの色々なポジションの人に会えて、世の中を知ることができたのは大きな収穫になりました。
渡邊:教科書的には経験豊かなエンタープライズ向けの営業・ビジネス開発担当者を雇うところですが、そうじゃなくて若い世代の二人で仮説検証をやり切ったことがポイントだったのでしょう。
中尾:誰かがやってきたことではなくて、自分たちのやったことを信じて意思決定したかったんです。
——初期からNew Innovationsを見てきて、その成長の理由はなんだと思いますか?
渡邊:山田さんがジョインして中尾さんとタッグを組めたことは、大きな要因のひとつでしょう。
山田さんは私が大学時代に代表を勤めていたNPO活動の中で、彼が高校2年生のときに出会い、縁があってその活動も手伝ってもらっていました。その後、彼が高校時代に企画した映画に渡邊個人が寄付させていただいたこともありました。大学生になった頃、VCに興味があるとのことでDEEPCOREの仕事も手伝ってもらうようになり、その流れで投資先のひとつだったNew Innovationsにジョインしたんです。
山田:DEEPCOREの仕事には2年くらい関わっていました。いろいろな投資先企業を担当していたのですが、New Innovationsに関わるなかで徐々にこの会社に惹かれていきました。最終的にはもちろん自分で意思決定をして、2019年5月に正式に入社しました。
ジョインした理由は大きく3点ほどあって、まず中尾さんが商人だったことですね。ただ夢物語を語るだけではなく、社会に実装されるために奔走し、商売として営むことが重要だと理解している。当時、既に会社にはしっかりと売上がありましたし、ビジネスがすべての思考の前提にありました。
2点目は、ハードウェアを扱っていたことです。2017年当時に話題になっていたAIやVRみたいなトピックスはふわふわしていて、革命的にすごい技術も、技術的にはすごいものでもなく戦略も全く新しくないもの、中にはほぼ嘘のようなものも玉石混交でした。その点、リアルなものは世界から絶対なくならないので、ハードウェアビジネスをやりたかったんです。
リアルな世界をアップデートしていきたいという想いを昔から持っていて、UberやAirbnbがオフライン世界のリソースをオンラインからマネジメントする形式を確立した後に、さらに上位レイヤーで、世の中の物理状態を変化させたり情報の伝達により高度化していきたいと思っていたためですね。
最後に、創業者のアップデートスピードが速いことです。速さに加えて、フィードバックしたときに正しいものは反映され、正しくないものは反映されない意思決定の強さも感じていました。
渡邊:私が中尾さんに出会ったのは、2017年のクリスマスイブです。当時、高校3年生で起業前の段階でしたね。スタートアップをやりたいというので投資しました。
サービスも何もなく、「人」に投資したのはDEEPCOREで初めてでした。実際に商売をした経験があり、お金を稼ぐのは大変だけど楽しいことだと理解しているというのが当時の投資メモに残っています。投資仮説でもありましたし、山田さんが彼に惹かれたポイントと共通していたのですね。
山田:たしかに、頭でっかちでないのは重要でしたね。技術者として手を動かし、必要な情報があれば足を運ぶ人です。中尾さんと働いていくなかで、時間の使い方の比重が徐々に高まっていきました。もともとスタートアップをやりたいという思いも持っていましたし。
渡邊:山田さんが参画後は、中尾さんがよりリスクをとる自由な意思決定を推進しながら、山田さんがバランスをとるという、フェアで補完関係の経営チームとしてタッグを組み始めたのが成長ドライバーになっていると思います。二人とも人間的な魅力があって人に愛されますし、運が良いんです。
共に、ロボットと会社の未来をつくっていく
——New Innovationsのお二人にとって渡邊さんはどういう存在なのでしょうか?
山田:論理的に常に正しいことを言っているので、それを理解できるようにここまで走ってきました。例えるなら、「目次」のような存在でしょうか。私たちが正しいアクションを探っていく際、彼の発言や視点を辿っていくと、答えが見えてくることがあります。
中尾:どこに課題があるかのヒントをくれるんです。具体的なアクションが提示されるわけではないんですけど、「今それを言うということは、ここに課題があることを示唆してくれてるんだな」と。それを自分たちで考えて、アクションするしないを決めてきました。
過去に視察に連れて行ってくれたときのレポートはよく見返しますね。渡邊さんが機会をくれたコンテンツで振り返らないものはほとんどないです。当時の私たちがどう捉えていたのかを後から見返すと、その事象に対する解析の変化に気付くことができます。マイルストーンとしての役割ともいえるかもしません。
あとは、視座を半ば強制的に高めてくれる人です。渡邊さんのおかげで、気付き→解釈→行動変容のループを身につけることができました。ある事象を見つけたとき、負荷が大きいからいったん目を背けたくなったとしても、あえてそこに焦点を当てて、解釈を加えて変わっていくほうが結果的に良い方向に行くことが多く、それにより成長の確度が変わることを教えてくれました。
渡邊:個人的な話ですが、直近5年間で一番の財産は、グローバル市場で圧倒的な投資とM&Aの経験と意思決定を積み上げてきた、前職のDEEPCORE 代表である仁木さんの思考回路を盗む機会をもらえたことでした。仁木さんがソフトバンクグループで得た視座を学ぶというのは、一般的なVCだと経験できないことです。できるだけその学びや思考回路を中尾さんと山田さんにインストールすることで貢献したいなと考えていましたね。
独立したHERO Impact Capitalとしては基本的に若手研究者や10代の天才へ1st Roundでの投資しかやらないファンドなのですが、縁の深い二人ともっと一緒に挑戦したかったので、例外的に今回投資する機会を頂戴しました。
——エクイティストーリーも含めて、アップデートされていく会社の強さを感じますね
渡邊:中尾さんの「前提条件を外す能力」が非常に高いことがその要因です。妄想力とも言い換えられるかもしれません。前職で学ばせてもらった思考回路の1つですが、「自分がイーロン・マクスやピーター・ティール、サム・アルトマンを超える世界一の存在になるには、20年後にどうならないといけないか。では今どうしたらいいのか。」と、日常の中で日本でスタートアップ経営をしているとなかなか辿り着くことができない思考回路を中尾さんは持っていると思います。「グロース市場で上場するために何が足りないか」とか「スタートアップとしての年間成長率を⚪️⚪️%維持しなければ」といった、「ありがちな前提条件」が中尾さんにはありません。
New Innovationsで感じるのは、山田さんが何があっても外せない前提だけ整理してあげて、そこを中尾さんが突破していくようなコンビネーションの良さです。
山田:私たちがよく言う「原理原則に忠実に」とは、まさにそういうことだと思います。「普通こうだからこうするよね」ではなく、中尾さんには前提をインプットしたうえで特攻してもらう。この領域はこういう構造なので、これぐらいが妥当な着地で、これぐらいが無茶な到達点になるので突破してきてくださいといった具合です。
——New Innovationsが1兆、10兆、100兆と成長していくために今後必要なことはなんでしょうか?
渡邊:経営力を強化して、グローバルな事業展開をしていくことです。
New InnovationsはM&Aや新卒採用など、成長につながるもののスタートアップではやりにくい選択肢を検討できています。これは中尾さんと山田さんが前提条件を外して思考することができるからです。社外取締役である仁木さんに加え、より前提条件を外した選択肢を検討できる経営チームに成長できるかが鍵でしょう。二人に加えて、多様で狂気的なタレントが増えていくかが今後のグローバル展開のキーになっていくと考えています。
New Innovationsが目指しているビジョンはグローバルでも必ず受け入れられていくはずです。世界的にみてもロボットは普段の生活に入り込んできていませんし、サービスロボットもまだまだ社会的に受け入れられていないと言っても過言ではないでしょう。
サービスロボットは日本からグローバルに出ていくべき技術テーマのひとつだと思うので、そこに対して中尾さんが5歳から情熱を注いできたロボット開発の経験と能力を活かしていってほしいです。世界にサービスロボットを提供できるようになれば、必然的に1兆円、10兆円企業になっていくと信じています。
インタビュー・構成:堀夢菜
編集協力:中村洋太
※年齢はインタビュー当時のものです。