M&Aの人事 ー総合格闘技ー

評価調整がひと段落して少し時間ができましたので、ブログの更新を再開します。

今回はM&Aのお話です。
僕のキャリアの中で当事者として大型のM&Aに2回関わってます。
1回目は複数の子会社を統合するプロジェクト。
2回目は会社分割と分割した会社の売却です。

統合プロジェクトは各社ばらばらの人事制度を統合することを行いました。等級、評価、報酬、退職金、交通費、文体育イベント、社員番号の統合、などなど。実態は20名くらいのメンバーで分担してそれぞれの主担当が検討しているものについてプロマネを行っていました。

分割プロジェクトは、デューデリジェンスから始まり、人の移籍関係、福利厚生関係の分割スキーム(健保、DB/DC、共済会などを含む)などなど。こちらは人事では数名で分担して進めているもののプロマネでした。

それぞれ会社の事情が異なるので、たまたま困難がなかった点と、残念なくらいてまどった点がそれぞれにあり、そこを含めて得たM&Aのポイントを上げたいと思います。

1.ビジョンが成否を決める

M&Aはいたって政治的です。まったく無関係の人が集まり、異なる利害関係の下で議論をするので、「説明がつかない」という無敵のワードで個別論になりがちです。それを少なくともある程度の合意形成するためには、〇×をジャッジするための錦の御旗であるビジョンを掲げることが重要になります。何のためのM&Aか、M&Aが起きた背景、そしてM&Aの先にある世界。それを人事も経営の視点に立って共有し、それの実現に一番いい方法は何かを決めることがとても重要になります。(どうせ全員が納得するなんて不可能なのだから、後々の傷を浅くしようという話)

2.一番めんどくさいのは年金制度

制度設計となると等級からはじまり評価、報酬といった機関制度に注目がいきますが一番厄介なのは「退職金・年金」の制度設計です。なぜ厄介かといえば、法律によってガッチガチに決まっているので、基本的に「下げる」ことが許されません。そして「1国2制度」も許されません。そして、すでに年金を受給しているOBやOGまで出てきて、引き下げの合意をとろうとすると、ブーブー言われます(そりゃそうなんですが)となると「上げる」一択なのですが、原資の関係で「上げ」られるわけがないケースがあります。

そして、ディール自体が流れる可能性が発生するのです。(自分のプロジェクトでも、本人が希望に応じて給与の一部を拠出する退職金制度を導入していましたが、いくらの支払い義務があるのか?を先方にしつこくきかれました。外部機関に預けている保険で運用してもらっているので基本的にリスクはほぼ0なのにもかかわらず。。。)

3.デューデリジェンスは日ごろの積み重ねがものを言う

年金の部分にもかかりますがデューデリジェンスは、あれ出せこれ出せを毎日言われ、この数字とあっちの数字があっていないと突っ込まれます。その時日ごろいかにデータをマネジメントしているか?が重要になりますし、今回のデータと前回のデータがなぜ異なるかを明確にできないと信用を失いディールが失敗に終わる可能性もあります。また、どの会社も突っ込まれると痛い部分はたくさんあります。その時に先方にどのようにレポートするか?嘘はつかず、特に大きな問題はないことを伝えるかは担当者の文書能力が問われます。(先方は背景事情を理解しない中で、リスクを嫌うので、ちょっと書き方をミスると心配になり、あれこれ突っ込みが発生し、背景からすべてを理解してもらおうとすると、さらに突っ込みどころが発生しと厄介です。)このスキルも一朝一夕で見つくものでありません。そのため、日ごろの鍛錬がものを言います。

とまれ、この2つのPJは僕の自身の成長には欠かせないものになりました。人事M&Aは制度、数字、労務幅広な知識と足りない部分へのキャッチアップ力が求められます。まさに総合格闘技です。そしてM&Aに関するスキルは、これからの戦略人事に必要なノウハウの一つであることは間違いないと思います。

PJが終わると「M&Aなんてやるもんじゃねぇ」と思うのですが、あれはあれで楽しいんですよね。終わった後の打ち上げで充実感を感じるのはM&A関連が一番な気がします。

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