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100%赤字のサービスをリリースする理由

1. はじめに

はじめまして! とら(@NewEchoSounds) と申します。
現在、慶應の3年生でデータ分析や行動経済学を専攻しており、普段は大学生にアプリ開発を教えたりしています。
そして今回、「NewEchoSounds」(NES)と「NewEchoSounds for Artists」(NES for Artists)という二つのサービスをリリースしました!!!


しかし、自分でも客観的に見るとどんなサービスか伝わりづらいと思う部分があったり、「絶対このサービス赤字だから、なんか怪しくない?」とも正直感じます。そのため、どんなサービスなのか・目的は何なのか等、詳細にご説明できればと思い、今回筆を執った次第です。稚拙な文章かとは思いますが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。

2. 「NewEchoSounds」,「NewEchoSounds for Artists」とは

NESを一言で表すと、「誰もがノーリスクで挑戦できる楽曲販売プラットフォーム」です。
内訳としましては、

NewEchoSounds:リスナーが楽曲を購入するサイト
NewEchoSounds for Artists:アーティストが楽曲をアップロードするサイト

となっています。まず、楽曲販売を希望するアーティストの方が、NES for Artistsに登録・アップロードします。その際、曲名などに加えて販売価格を自由に設定できます。その後、NES for Artistsにアップロードされた情報をもとに、NESの販売ページが作成され、リスナーの方は販売された楽曲を購入することが可能になるという仕組みです。そして、発生した売上やダウンロード回数といった情報がNES for Artistsのアーティストページに反映され、出金などの操作ができるようになっています。

続いて、NES最大の特徴である「自由価格販売」について説明していきます。
自由価格販売とは、「売り手が価格を複数種類設定し、買い手が自由に支払う価格を選択することができる」という新しい売買の仕組みです。
具体的には、アーティストがNES for Artistsに楽曲を登録する際に通常販売価格を自由に設定し、その価格に応じて2・3・10倍の3種類の価格が応援販売価格として設定され、買い手は通常価格と応援価格の計4種類を自由に選択して対価として支払うことができます。また、通常価格の設定において、無料を選択することも可能なため、より広範囲に拡散することを目的とした場合でもマネタイズを両立させたまま、認知の上昇を図ることが可能となっています。
また、通常価格分の売り上げに対してのみ手数料が掛かる仕組みのため、「アーティスト目線は必ず収支がマイナスになることがない」上に、応援価格分の売上には一切手数料が掛からないため、他の投げ銭(スーパーチャットなど)とは異なり、リスナーの応援がアーティストに100%還元されます。

例えば、アーティストが通常価格を100円で設定した場合、200円(×2)・300円(×3)・1000円(×10)の応援価格が同時に設定され、どの価格に対しても通常価格100円の20%である20円しか手数料として掛かりません。通常価格を無料に設定した場合、手数料は0円となります。

このようにNESでは、サブスクリプションサービスへの登録料などの初期コストによって、アーティストが赤字になってしまうタイミングを完全に無くしているため、「誰もがノーリスクで挑戦できる」上に、応援価格分に手数料が一切掛からないことで、「リスナーの応援が100%届く」サービスとなっています。

3. 目的について

これまで、良い点ばかり述べてきましたが、唯一悪い点があるとするならば、それは運営が100%赤字なことです。利益が通常価格への手数料しかなく、その手数料も無料の価格設定を誘発するインセンティブ目的に過ぎないため、圧倒的に維持費などの方が大きいです。しかし、それでも僕がこのサービスを作った理由は、マネタイズ目的ではなく研究目的だからと言えます。この日本において、「自由価格販売がアーティストとリスナーの双方にとって最適である」ことを実データから証明したいと考えています。
その中で、僕が自由価格販売が最適であると考える理由は、「行き過ぎた価格競争からの脱却」「違法試聴や海賊版への対抗策」「日本のポテンシャル」の3つです。これから順に説明していきます。

⑴ 行き過ぎた価格競争からの脱却
昨今のCD販売は価格競争の末、シングル1枚1000円が相場となっており、非常に均一的と言えます。これは、自分の推しているアーティストの曲だとしても、あまり好みではないアーティストの曲だとしても、同じ価値ということを意味しています。果たしてこれは正しいのでしょうか。本来、多くの人に愛される音楽も、熱狂的なファンがいる音楽も、同じ尺度で評価を受けるべきだと思うのですが、現状はファンの熱狂度合いが反映されず、どれだけ多くの人に聴かれたのかを示す販売数しか注目されていません。
そのため、NESでは「楽曲を買うか・買わないか」の結果である販売数だけではなく、どれだけ「楽曲がリスナーを熱狂させたか」が反映される応援価格という仕組みを作っています。

(2) 違法視聴や海賊版への対抗策
オンラインサービスが普及してきたことで、コンテンツが多くの人に届きやすくなった一方で、コピーを利用した違法視聴や海賊版が横行してしまっています。
それに対し、NESでは通常価格を自由に設定する際に無料での販売を選択できるため、応援価格だけでのマネタイズが可能になっています。これにより、無料とマネタイズが両立する仕組みが確立されれば、違法視聴や海賊版のインセンティブである「無料」が意味をなさなくなるため、「どうせ同じなら正規のものを利用しよう」という人が増えると考えられます。

(3) 日本のポテンシャル
今の日本はITなどをはじめとして、諸外国に遅れをとっている状況と言えます。今一度、立ち止まって日本の強みとは何なのか、見つめ直す必要がある中で、自由価格販売が日本の強みを存分に活かすものであると考えています。
人気の無い場所にポツンと立っている自動販売機が、外国人からみた最もクールな日本の一面である、というエピソードを聞いたことがあるでしょうか。これは、誰にも盗られずに24時間365日自動販売機が外に立っていることが、世界的に見たら珍しいということだそうです。他にも、無人の直売所やおみくじ売り場を思い出してみてください。誰も見ていない時に、代金を支払わないこともきっと容易にできてしまいます。しかし、このような利用者の信頼ありきの仕組みが成り立っているのは、日本人の良心に基づいた行動の産物なのでは無いでしょうか。強制されていなくても、サービスを受けた分の対価を支払う考えが成熟した日本の文化的価値観であれば、自由価格販売を完成させ、新たな売買の形として日本の強みへと昇華させることができると考えています。

4. 最後に

このように、NESはビジネス目的ではなく、研究を目的としています。このサイトを大きくしてデータを蓄積し、自身のデータ分析という基盤を用いてデータの中に事実を見出すことで、一見不合理に思える自由価格販売が実は合理的であると証明したいと考えています。そのために、多くの方に利用してもらえるよう努力していきますので、ご協力していただけたら幸いです。

ここまでお読み頂きありがとうございました!何か質問や意見等ございましたら、気軽にTwitter(@NewEchoSounds)までご連絡ください!


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