ERIC MARTINに気付かされたスケール練習の無意味さ
ボイストレーニングってどんなことをやるのでしょうか?
「先生が弾くキーボードの音階に合わせての発声練習」
これがボイストレーニングのイメージの「代名詞」になっているのではないでしょうか?
テレビ番組等で流れる、歌手のレッスン風景でもよく見られる光景だと思います。
20年以上前に、事務所でボイストレーニングの指導をしている頃は、私もこの「キーボードの音階に合わせての発声練習」を取り入れていました。
でも今は
「やりません」
「本当の声」を出して欲しいから。
26年前のサンフランシスコでの「Mr.BIG」のボーカリストERIC MARTINとのレコーディングで、ERIC MARTINの「生声」を聴いた衝撃から「声の力」の大切さを気付かされたからです。
ボイトレの本当の意味
キーボードを使ってのスケール発声練習、カラオケに合わせて歌を歌って貰い、それにアドバイスするだけでERICのような「声」が出せるようになるのでしょうか?
そのような「いわゆる」なボイストレーニングをやっても「うまい歌」は作れるかもしれませんが「すごい歌」にはならないと。
衝撃を受けると共に、「ボイストレーニングの目的や意味」を本気で考えるようになりました。
ところで「キーボードの音階に合わせての発声練習」を行う目的は何でしょうか?
実は、真の目的を持たないまま、「儀式」のように「とりあえず」でやっているレッスンも多いと思いますが...
例えば「音程を安定させる」ことが目的だとします。
確かに「音程が不安定」という悩みを持つ方は多いので、「キーボードの音階に合わせての発声練習」で、この問題を解決できると良いですよね。
果たしてそれは可能なのでしょうか?
シュミレーションしてみましょう。
先生が弾く「ドレミファソラシド」に合わせて発声練習をしていて、音程が合わない音があったとします。
「その音、合ってないよ。低いよ。」と「間違い」を先生は指摘、「もっと音をよく聴いて」とアドバイスすると思いますが、果たしてそれだけで「音程が不安定」という問題点は解決されるでしょうか?
答えは「ノー」だと思います。
なぜなら「音程が不安定」なのは「結果論」だからです。
「音程が不安定」なのが問題ではなく、
「音程が不安定」を引き起こしている「原因」が問題だということです。
根本的な問題解決のできるレッスンを
体温と体調の関係を考えるとよくわかると思います。
体調がよくないので、体温を測ってみたら38度だったとします。
解熱剤を飲めば体温は下がるでしょう。
でも体温が下がったから「これで安心」「これで問題解決」にはならず、熱が出ている原因を突き止め、そのための治療を行わなければ根本的な解決にはなりませんよね。
それと同じことが「音程が不安定」にも言えます。
何らかの問題があるから「音程が不安定」になっているのであって、その根本的な原因を解明しなければ問題解決ということにはならないはずです。
「キーボードの音階に合わせての発声練習」を行っても、意味がないどころか、それが、例えば「自分は音痴かもしれない」などトラウマになりかけている人に対して、
「もっと集中して!」「もっと良く音を聴いて!」...という指導を行うと
メンタル的にもますます追い詰めてしまう危険性があるのです。
ちなみに私は「音痴」という言葉が大嫌いです。
以前は使われていたけれど、現在では使われなくなった「放送禁止用語」があるように、「音痴」という言葉も使うべきではないと思います。
不用意にこの言葉が使われるせいで、多くの人が「自分は音痴かもしれない」と悩んだり苦しんだり、そして歌が嫌いになってしまうからです。
そういう人を私は多く見てきました。
私の行うレッスンは「渋谷の駆け込みボイトレ」と言われています。
それまでに「音痴」だと言われ傷つき、本当は歌が大好きなのに歌うのが嫌いになった…という人も多くレッスンに来られます。
私は数年前に、テレビ東京の検証バラエティ番組に出演したことがありました。
私の著書「〜ボイトレの"当たり前"は間違いだらけ〜すぐに歌がうまくなる新常識」の検証を行うということで、その当時「業界一音程が悪い」というタレントの人の音程を3時間で改善できるか?という主旨でした。
私はその時もキーボードには一切触れませんでしたし、「音程を良くしよう」という指導も行いませんでした。
私が行ったことは、「コイズミ暗号メソッド」。
音程が不安定になる原因は、主に「呼吸」と「リズム」にあると私は考えていますが、その両方を改善できるメソッドとして「コイズミ暗号メソッド」を使いました。
コイズミ暗号メソッド
歌詞の最初と最後の2音をリズムに合わせて発声していく「コイズミ暗号メソッド」を行っているレッスン風景が流れるなか、
番組のナレーションは「普通のレッスンは行わなくてよいのでしょうか?」
ナビゲーターとしてレッスンに帯同した三四郎の小宮さんからは「こんなことしてたら、時間がなくなってしまうよ!」
など、私のレッスン内容に疑心暗鬼でしたが、番組最後に歌ったカラオケの点数は、レッスン開始前から20点近く上がり、明らかな音程の改善が見られたのです。
司会のカンニング竹山さんからも「鳥肌がたった」と絶賛して頂きました。
そう、「キーボードの音階に合わせての発声練習」は行わなかったのです。
逆に言えば「キーボードの音階に合わせての発声練習」を行わなかったから、3時間で音程改善できたのです。
音程に苦手意識を持つタレントさんに対して、キーボードを使って発声練習は、「最もやっていけないこと、やっても成果が出ないこと」を私は最初から理解していました。
なので、音程が不安定になっている原因である「リズム」と「呼吸」を改善する事に集中したのです。
ちなみに、番組のナレーションでは言われた「普通のレッスン」とは、「キーボードの音階に合わせての発声練習」を指すのだと思います。
明確な目的や主旨を持たない「普通のレッスン」が、「とりあえずやってみる」)という「儀式化」、効果や成果を遠ざけているように私には思えます。
サンフランシスコで、Eric Martinの「本当の声」を聴いていないと、今もまだ「キーボードの音階に合わせての発声練習」を行っていたかもしれません。
ボイストレーニングの目的や意味を教えてくれたEric Martinの「本当の声」に感謝します。
一人でも多くの人に「ERICみたいにゾクゾクするような凄い声」を出せるようになってもらいたい
生まれ持った「本当の声」を出してもらいたい
「本当の声」で自由自在に歌ってもらいたい
そのサポートを、これからも全力で行っていきたいと思います。
小泉 誠司
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