(7/100)台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡『この命、義に捧ぐ』
金門島という島をご存知だろうか? 厦門の東にある小さな島だ。大陸から2 kmと離れていないが、ここは中国領ではない。台湾領の島だ。今回は、この島をめぐる陸軍中将根本博の蒋介石への恩義の物語。
あらすじ
1945年8月15日終戦。
満州国を統治していた関東軍は武装解除し、日本国民はソ連から虐殺や強奪を受け家族が離散するなど、ひどい目にあった。玉音放送を聞いた関東軍は、市民を置いて逃げ帰ったとも伝えられる。
同じ日、内蒙古を統治していた駐蒙軍司令官根本博は、武装解除に応じることなく、そこに住む日本国民4万人を北京まで逃がすことに命を賭ける。敵だったはずの蒋介石は、避難する日本人に暴力を振るうことを認めず、そのおかげもあり内蒙古にいた日本人は、根本を含めほとんどが無事に帰国したと言う。
太平洋戦争終了後の中国は、共産党と国民党の内戦となった。日に日に劣勢となる国民党蒋介石は、上海までも奪われついに台湾まで追い詰められる。このことを聞いた根本は、終戦の時の恩義を返すのは今しかないと考え、台湾への密航を決意するーーーー
日本軍人のイメージが変わった一冊
この本を読んで良かった。
大日本帝国軍人といえば、横暴で身勝手で視野が狭いイメージだった。しかしここに出てくる元陸軍中将根本博は、戦争弱者の一般国民を守り、深謀遠慮の策を講じる、恩義に熱い男だ。メンツや立場ではなく、国体や国民のことを必ず考える軍人であった。
武士の魂を持つ男と言ってもいいかもしれない。根本博は、終戦直後に密航までして台湾に渡る。そして、蒋介石から受けた恩を返すべく、もう後のない金門島での戦い(古寧頭戦役)に顧問として臨み、共産党の大軍相手に大勝利へ導く。
しかし今、台湾の歴史を左右した金門島での戦いに、根本博の名前は出ない。蒋介石亡きあと、「中華民国建国の過程で、日本軍人の力を借りた」とすることを避けているようだ。残念なことだ。