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[110](19/100)じつは仏教説話だったかも『鳥打ちも夜更けには』(金子薫)

古典『見聞録』で「楽園」と記された架空の街。三色の花をつけるネルヴァサの花とその葉を食べ蜜を吸う美しい蝶アレパティロオオアゲハがこの街のシンボルだ。

そのシンボルを守るため、アレパティロオオアゲハを捕食してしまう海鳥を吹き矢で殺す仕事を任された3人の男たち。架空の街の通りの名前も地区の名前もカタカナなのに、この3人の名前は、天野、沖山、保田と日本名だ。

仕事をしていくうちに、生き物を殺して生計を立てることに嫌気が差す天野。彼はいつしか、殺した海鳥のための墓を建てるようになる。それでも耐えきれなくなり、最後には仕事を放棄して失踪してしまう。

彼が疾走した先は国の北部、寂れた港町だった。いぐあなという漁師上がりの料理人の店だった。魚を殺して生計を立てていた料理人、海鳥を殺していた天野。ともに殺生で生きていく人間だった。しかし料理人は調理することで自分を納得させていたが天野は…

人は生きていくために、なにかを殺していかなければならない。その殺生に我慢がならない優しい天野に、なんだか仏教の説話を聞いたような読後感でした。

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