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私と『夏芙蓉』の13年の答え合わせ

こんにちは。スタッフのきしみです。
本格的な梅雨入りがやってきた6月。
気圧で気持ちがしんどい時ははちみつ紅茶で乗り切ろう思っています。

そんな6月の中で今一番楽しみなのが、6月17日~26日・池袋のスタジオ空洞で迎えるくじら座なごやの公演『夏芙蓉/ふぶきのあした』です。

こちらの公演は2本立て上演なのですが、特に楽しみなのが『夏芙蓉』。
中学演劇・高校演劇をやっていた方はご存知なのではないでしょうか?
2000年初演のこの作品は高校演劇にとって20年以上にわたる名作なんです!

『夏芙蓉』
卒業式の後、深夜の教室で千鶴は、親友舞子を待っていた。
やがて現れた舞子に、サエとタマイを合わせた四人は、思い出話に花を咲かせる。
たわいもない会話に含まれるほんの少しだけの亀裂が、やがて大きく口を開け、四人を引き離す。

くじら座なごや#06『夏芙蓉/ふぶきのあした』公演特設サイトより

『夏芙蓉』はたった5人の登場人物で展開する1時間程度の舞台作品。
夜の教室で繰り広げる仲良し4人組の会話から少しずつ"なにか"がもつれていく。ふとした会話から予想もつかない展開へとなだれ込んでいく様が観ている人を惹きつけます。

『夏芙蓉』そして同時上演される『ふぶきのあした』の脚本は越智優さんという愛媛在住の劇作家の方です。
高校生たちの姿を描いた作品を主に書き、『さよなら小宮くん』『七人の部長』『見送る夏』など数々の高校演劇の名作を残しています。
一部の作品は高校演劇の名作戯曲集である晩成書房『高校演劇Selection』に掲載されています。
図書館でも借りれますので是非読んでみてください!

さて、ここから個人的なお話になるのですが、私が『夏芙蓉』に出会ったのは中学に上がり、演劇部に入ったばかりの時でした。
初めて演劇にちゃんと触れた時期だったので、
私含め入部したばかりの部員にとって何もかもが新鮮に見えた時期です。

そんな時、顧問の先生が参考にと初めて見せてくれたビデオが他校が上演した『夏芙蓉』の映像でした。
作品自体は高校演劇ですが、中学演劇では高校演劇の既成脚本を上演することもしばしばあります。
その上演映像をみた部員全員が『夏芙蓉』の素晴らしさに感銘を受け、それからしばらく部内では『夏芙蓉』の話題で持ちきりになりました。

私以外を除いては。

なぜか私はその時だけ風邪をひいて学校を休んでいたのです…。
もしタイムマシンがあったなら今すぐ13年前に戻り、学校休めてラッキーだと思っていた中学生の私を学校へ引っ張っていたことでしょう。
「どうしてこの舞台、観に行かなかったんだろう…」
「この劇団の過去作品観たかった…もっと早く知っていれば…」と
後悔するのは今でも本当によくあることですが、
この感情を抱くのはあの時が初めてだったかもしれません。

部内で唯一見逃した中学生の私は悔しい気持ちを抱え、
すぐに図書館で『高校演劇Selection』を借り、
掲載されている『夏芙蓉』を読みました。
勿論ぼろぼろ泣きました。

しかし、やはり文字上だけでは体感できないのが演劇。
ネタバレになるので何がとは言えませんが、
「ある場面」の想像がまったくできないのです。
部員全員が口をそろえて「あの場面は本当にすごい」と言っていたのですが、
その場面はテキストだけだと想像できず、
「どういう演出で表現しているんだろう…?」という疑問でいっぱいになりました。
印象に残った台詞は今でも覚えているのに、
あの時から「こうかもしれない、ああかもしれない」と
たまにふっと思い出してはもやもやする、を今まで繰り返していました。

そして13年後たった今、くじら座なごや『夏芙蓉/ふぶきのあした』のチラシが手元に届いたのです!

左側が少しだけ2つ折になっている仕組みが素敵なチラシです。

くじら座なごやは越智優さんの作品を上演するためにつくった演劇ユニット。
彼の教え子だった方が劇団の主宰をされているだそう…!
これはもう観に行くしかないと思いチケットを取りました。

『夏芙蓉』の初演は2000年。約22年を生きる名作ですが、
もう1つの『ふぶきのあした』は2020年初演で近年発表されたばかりの作品。こちらも名作の予感しかしません。楽しみでたまりません。

チラシの裏面。配信アーカイブもあるそうです…!

そんなわけで色々周りくどくなってしまったのですが、
ついにこの6月で13年間抱えてきたもやもやに終止符を打つことができそうです。あれこれ自分の頭の中で想像してきた場面に答え合わせをしに行ってきます。

たまに「演劇を観続ける意味ってなんだろう?」と思うことはありますが、こういったことがあるからかもしれません。
「観れなかったもやもや」を抱えることはよくありますが、
観たかった作品に再会できた嬉しさを実感できるのも、
観劇を続ける意味の一つかも…とこの1件で思いました。

皆さんもよい観劇ライフを!

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