見出し画像

火炎ゴリラになって張梁を焼き、特殊部隊になって目を焼く - 『ウォーロン』と『COD:MW2』

東京ゲームショウが3年ぶりにリアル開催された。往時には敵わないものの、ずいぶんな盛況ぶりだったらしい。実に喜ばしい話……なのだが、俺自身は別の用事で行けなかった。というか、ゲームについて偉そうにあれこれ書いたり愚痴ったりしている割に、俺はこの手のイベントにほとんど行ったことがない。情けない話だ。

一昔前であれば、俺のようにイベントに行かないやつはメディアの書いた体験記を指をくわえて読んでいるしかなかったものだが、今はやや状況が良くなった。というのも、TGSに合わせて色々なタイトルの体験版やオープンベータテストが配信されるので、それを遊ぶことで一部分とはいえ熱狂を共有できるようになったからだ。

TGSと同時に配信された体験版から気になったタイトルをいくつか遊んだので、2つほど紹介したい。

Wo Long : Fallen Dynasty

古くは『NINJA GAIDEN』、最近では『仁王』で有名なコーエーテクモのスタジオ、Team Ninjaが手がける新作アクションゲーム。Wo Long……ウォーロンとは漢字で臥龍と書き、まだ世に能力を示していない傑物のことを指す。プレイヤーはまさしくその臥龍となり、三国乱世を駆け抜ける。大体は中国版の仁王2みたいなものだろう。

ジャンプがあったり通常攻撃でスタミナが減らなかったりするあたり、『ダークソウル』に対する『SEKIRO』が『仁王』に対する『ウォーロン』なんだね……と最初は思っていたのだが、進めていくとだいぶ違った印象になってきた。このゲームはわりかし複雑かつ独特で、他の死にゲーの感覚を引っ張ると痛い目を見る。

氣勢を前借りして命脈を絶つ

本作のキモと呼べるのが、"氣勢"と呼ばれるシステムだ。中央をゼロとしてプラスマイナスに振れるようになっており、画面下部のゲージで状態を判断できる。ガードや回避でゲージを消費し、マイナスに振り切れると体幹が崩れて絶対絶命になるのはSEKIROなどと似ているが、この氣勢がMPも兼ねているというのがユニークな点だ。

バフやデバフを起こす仙術や、通常技よりダメージの大きな氣勢攻撃、各武器に紐づいた武技といった特殊な技を使うことでも氣勢は消費され、マイナスに振れていく。逆に、素早い通常攻撃を当てることで氣勢はぐいぐいプラスされる。なので、ゴリ押しの攻めが強い。最初から武技や仙術をガンガン使って先手を取った後に通常技でラッシュをかけて氣勢のマイナス分を回収、もう一回武技と仙術をぶっ放し、氣勢を削がれた敵を絶脈(SEKIROでいう忍殺、仁王でいう組み討ち)でトドメを刺す。このスタイリッシュゴリラ戦法は思わずニヤついてしまうほど爽快だ。

スタミナとMPを氣勢として統合し、さらにそれを前借りさせることで、死にゲーとしてはありえないような苛烈な攻めを実現する。『ウォーロン』においては攻撃こそ最大の防御であり、ヒットアンドアウェイすら生ぬるい。『Bloodborne』のプロデューサーが本作のプロデューサーを務めていると聞いて色々と合点がいく、エッジの利いた戦闘システムだ。

……しかしながら、体験版の段階では2つ問題がある。

遊び方分からないしパリィは信用できない

一つは、この戦闘システムの面白さや戦闘のコツをチュートリアルではあまり教えてくれないことだ。本作には氣勢以外にも後述の化剄などシステムが色々あって、チュートリアルではそれらの端的な説明とちょっとした体験程度しか行われない。それぞれの要素がどう繋がっていて、どう使えば有利なのかといった要領が全然つかめないのだ。

俺の場合、最初は勝ち筋がいまいちわからず、道中で妖虎に散々殺されたりして苦労した。それで業を煮やして、回避や防御を考えず攻めまくってみたらアッサリ勝てたときにやっと『もしかしてこのゲーム……初手から氣勢全ツッパしたほうがいい!?』と気付いたというわけだ。弾きでターンを奪い、体幹を削り切った敵を忍殺するという明確な勝ちパターンが最初から提示されていたSEKIROが、今更ながらとても親切に思えてくる。

それを真っ先に言えよ!!!!

二つ目の問題は、氣勢に並ぶ重要なシステムである"化剄"についてだ。これはSEKIROでいう弾きにあたり、相手の攻撃にタイミングを合わせてボタンを押すことで攻撃を受け流し、攻守を逆転できる。攻撃の出がかりに受け流し判定のある"化剄転撃"という技もあり、これでカウンターを決めると、氣勢のマイナス分をすべて回復することができる。エネミーからすると不条理極まりない一括返済だ。理想としては氣勢を全ツッパして最大火力を出した後に相手の反撃を化剄転撃してずっと俺のターンしたいわけだが、これが案外決まらない。

というのも、化剄の判定が妙にシビアで、雑魚敵の攻撃を合わせるのにも難儀してしまうほどだからだ。受け流し判定の発生タイミングを分かりやすい効果音(SEKIROでいう弾きのチャキチャキ)で教えてくれたりもしないので、化剄をミスったときに早すぎたのか遅すぎたのかよくわからないというのも理不尽さを募らせてよくない。なんなら化剄が成功したときですら、エフェクトが地味すぎて反撃が遅れがちになる。通常のガードが極端に弱い『ウォーロン』において化剄は防御面での要となるはずなのだが、信用するにはちょっと危なっかしい。

いつのまにか火炎ゴリラになっていた

プレイヤーというのは正直な生き物で、信用できないシステムは自然と使わなくなる。俺はプレイ当初こそ化剄を使った流麗な立ち回りを真面目に狙っていたのだが、気が付いたら守りをかなぐり捨てて武技と仙術を乱れ打つゴリラスタイルが板についていた。体験版で俺が選んだクラスは攻撃偏重の火属性だったので、厳密にいえば火炎ゴリラスタイルだ。

今回の体験版のボスは黄巾族の頭の一人である張梁で、第1形態はこちらの通常攻撃で怯むようなへなちょこ野郎だ。当然ながら、人間をやめた異形の妖魔となる第2形態が本番となり、丁寧に立ち回らないといけない……はずなのだが、何度かリトライして面倒くさくなったので火の仙術で焼きまくっていたらスリップダメージで倒してしまった。火炎ゴリラのせいで締まらない死に方をした張梁は無念だろうが、戦場はルール無用だ。

南無阿弥陀仏

視認性や要素の複雑さで若干とっつきにくいところはあるものの、ものすごく攻めの強い『ウォーロン』は、似たり寄ったりになりがちなソウルライクゲームの新機軸としてかなり良い線をいっていると思う。いま不満に思っているところも来年初頭の発売までに調整されるだろうし、十分期待できるタイトルだ。

Call of Duty : Modern Warfare 2

コールオブデューティの新作は年中行事のように発売され続けているが、今年は特別感が強い。2019年にリブートされ大ヒットしたModern Warfare(MW)の直接の続編にあたる、MW2が発売されるからだ。MWはその名の通り現代戦が舞台で、実在する最新の銃器を使用できるリアルな演出がウリとなっている。2019年版MWは緩やかな死を迎えつつあったCODシリーズの中興の祖と言えるような楽しいゲームで、ここ5年で俺が一番ハマれたCODでもある。

では、その名作の後を継ぐMW2はどうか?

こういうのでいいんだよ

今回遊んだオープンベータの全体的な印象は、良くも悪くもMW1からほとんど変わらなかった。CODシリーズとしては重たい動作と、少し長めに調整されたキルタイム。ゴテゴテにカスタムしたM4を担いで戦場をドスドス駆けずり回って、バカみたいなリスポーンと敵の角待ちにブチ切れる……。

オープンベータを遊んだ限り、MW2はMW1のDLCと言われても通用しそうなほどゲーム性に変化がない。キャンペーンモード以外ほとんど変わらないゲームにフルプライス出すのは、見る人が見れば狂気の沙汰かもしれない。だからといって下手にいじられたら途端にまずいゲームになりそうだし、実際そうなった歴史もあるので、俺としてはむしろ変わっていないことに安心した。ラーメン屋に行って、鶏ガラ醤油に厚めのチャーシューが2枚にメンマが4切れほど乗った正統派ラーメンが出てきたときのような、暖かみのある安心感だ。こういうのでいいんだよこういうので……。

考えてみたら、リブート前の旧MW2がかなりハジけたゲーム性になっていたから、同じ名前を冠する本作がことのほか不安だったのかもしれない。呪いの言葉"ワンマンデンクロ"を聞いて頭を抱えるFPSプレイヤーは多いはずだ。

イカしたモーションと目を焼くエフェクト

基本的な手触りは呆れるほどに前作のままだが、変化したところもないではない。例えば、モーションの多彩さだ。角を回り込んだ敵プレイヤーが、特殊部隊さながらに銃を傾けて入ってきたときは驚いた。まるで詐欺PVだ。どうやら、今作はキャラクターの姿勢や周りのオブジェクトに合わせて動的にモーションが変化するらしい。見かけ上の演出にすぎず、ゲームバランスには大した影響も与えないけれど、このモーションの変化は臨場感が跳ね上がる良い改善点だと思う。

モーションの他に視認性も変わった……残念ながら、悪い方向に。CODには昔からギリースーツ(モリゾーみたいなモサモサしたスーツで草むらと同化する)があったりして視認性をフェアに担保するようなゲームではなかったけれど、だとしても今作はかなり厳しい。俺がオープンベータを遊んだPS5版ではHDRで画面の明暗がクッキリしたせいで、物陰にいる敵は本当に見えにくくなってしまった。フラッシュバンを食らったりするとテレビが画面をビッカビカに光らせてくるので、割とマジに目が痛くなってくる。ダイレクトアタックはeスポーツマンシップに反するからやめなさい。

発砲炎マズルフラッシュのエフェクトがさらにリアルになったのはいいことかもしれないが、眩しすぎて撃ってる間に敵を見失ってしまうことが多発するようにもなった。MW1と比較すると銃の反動が増加した(気がする)のも相まって、ストロボの如く激しく明滅する発砲炎の中で遠くの敵をキレイに仕留めきるのは見かけ以上に難しくなっている。CODに限った話ではないが、リアルさの追求が遊びやすさとトレードオフになるというのは悩ましい話だ。

目によろしくないという問題はあるものの、思わずもう1試合やってしまう中毒性の高さはやはりCODならではだ。2段ジャンプして壁を走ったりウルトが云々でメタがなんたらとかややこしいことを考えずに没頭できる、ピュアでジャンクでクラシックな面白さがある。友人とのパーティプレイ用にヘッドセットを新調しようかなどと思っているあたり、俺は自分で思っている以上にこの新作に浮かれてしまっているようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?