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頸動脈ステント留置術はいつするか

頸動脈ステント留置術(CAS: carotid artery stenting)は、頸部血管の狭窄に対してカテーテルでステントを留置し、頸動脈を拡張する手術です。
頸動脈狭窄症をほっておくと、脳梗塞を発症するリスクになるため、特に頸動脈狭窄症が原因で脳梗塞を発症した患者さんでは、治療を行うことがあります。

頸動脈狭窄が起こる原因は?


多くは、動脈硬化が原因で、狭窄部にはプラークといわれる物質によって頸部血管が狭窄しています
頸動脈エコーや頸部血管MRAで評価すると不安定プラークという形でみつかることが多いです

頸動脈ステント留置術をする意味は?


よく患者さんやご家族が勘違いされることとして、脳梗塞がよくなると思われることです。頸動脈ステント留置術は、次の脳梗塞を予防する手段であって、現在の麻痺や感覚障害を改善する治療ではないです。
そのため、十分時間をかけて頸動脈ステント留置術の適応や合併症が起こるリスクを評価した上でおこないます。
頸動脈が狭窄しているだけでは自覚症状はなく、一般的に脳梗塞を発症し入院中に頸動脈エコーや頸部血管MRAで評価した際に発見されることが多いです。頸動脈狭窄によって脳梗塞を発症したと考えられる場合は(これを症候性頸動脈狭窄といいます)、次の脳梗塞を予防するために頸動脈ステント留置術を検討します
もちろん、手術をしてもその後も脳梗塞予防の内服は継続する必要があります。

頸動脈ステント留置術をする時期は?


一般に脳梗塞を発症して2-3か月経過した後に手術を行うことが多いです。理由としては、先程の不安定プラークを安定化させる必要があるからです。2-3か月の間に動脈硬化リスク、すなわち高脂血症、糖尿病、高血圧などをしっかり管理して、すこしでもプラークを安定化させてから行うことが重要といわれています。

論文紹介


脳梗塞が立て続けに起こっている場合や、狭窄率が非常に高度である場合など、状況によっては脳梗塞発症早期に頸動脈ステント留置術を検討する必要がある場合があります
今回の読んだ論文では脳梗塞発症数日以内に頸動脈ステント留置術を施行した症例と、今までどおり数か月後に施行した症例を比較し、その安全性やステント再狭窄・閉塞率などを評価しています
以下抜粋ですので、詳細は論文で確認ください


Abstract
目的

症候性頸動脈狭窄に対するCAS施行のタイミングについて評価する
方法
single-center dateでretrospectiveに2014年から2019年の間で症候性頸動脈閉塞もくしは有意狭窄で入院した患者を対象に事後解析を行った。
Emergency CAS群: TIA/stroke発症しその入院中にCASを施行した患者
Elective CAS群:TIA/stroke発症し退院後にCAS目的に再度入院した患者
Primary outcomeとしてCAS後3か月間で脳卒中、心筋梗塞、CASに関連した死亡を発症した頻度
Secondary outcomeとして周術期合併症と再狭窄・閉塞の頻度とした
結果
Emergency CAS群: 75人, 脳梗塞発症後2日までで50%の患者がCASを施行した
Elective CAS群: 104人, 脳梗塞発症後2か月までで56%の患者がCASを施行した
Emergency CAS群では同側の頸動脈閉塞をした症例が多く(17% vs. 2%, p<0.001)、全身麻酔を施行した例が多かった (19% vs. 4%, p=0.001)
両群でPrimary outcome (5.7%, 1%), Secondary outcome (9%, 4.8%)に有意差は認めなかった
再狭窄・閉塞率については13か月のfollow-upで有意差を認めなかった(7%, 11.6%)
解釈
症候性の頸動脈狭窄・閉塞に対してのemergency CASはelective CASと同様の安全性と効果があるかもしれないが、single-center dataでsmall sample sizeである

ステントデバイスなどの改良など医学の進歩で論文の結果では統計としては両郡で有意差はなしとのことですが、ただし、本論文の症例数は少なくretrospective な解析などlimitation も多く、合併症の数としてはやはり早期におこなった群で多いと思われました。

参考になれば嬉しいです

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