見出し画像

くつをつくった


はじめに

2021年末から、革靴作り教室へと通っている。
1ヶ月6時間コース。
だらだらと通い続け、2年3ヶ月が経過した2024年2月にやっと1足目が完成した。
その感想をリアルノートにまとめていたが、せっかくなので内容を加えつつ、noteにも上げようかと思う。

きっかけ

2021年末。
その頃、なんか習い事したいな~と思っていた。
一時期ベースを習っていたので、また楽器にしようか。
手を動かして何か作るのも好きだから、手芸系でもいいなぁ。
運動は苦手。でも、体は動かした方がいいかな?

駅の構内を歩いていると、私の視界に入ってきたものがあった。
靴作り教室のポスターだ。
なんか面白そう!
とりあえずどんな感じか知りたいなと、見学に行くことにした。

見学の詳細は割愛するが、通うかどうか迷っている私の背中を押した一言がある。
靴を完成させるまでに1年以上はかかると言われ、想像以上に時間がかかることにビビる私(もっとすぐできると思っていた)に、先生から「楽しいと思いますよ。」と言われたのだ。
その一言で、とりあえずやってみるかと入会することにした。

気づき

靴を作ってみて、気づいたことや自分の中で変化したことがいくつかある。

サードプレイスができた

時間のかかる靴作りではあるが、2年以上は長すぎる。
その理由は、靴作りが難しかったから。
……と言うわけではなく(いや、大変なんだけど、先生に言われたとおりにやればいいだけではある)、手を止めて、他の生徒さんたちとおしゃべりしたり、ごはんを食べている時間が長すぎるからだ。
始めは、お金を払っている時間中だし、ちょっともったいないかも?と思うこともあった。
でも、いつのまにか、そんなことはどーでもよくなった。
靴教室が私の大切なサードプレイスになっていたのだ。
大人になって30歳も過ぎると、ライフステージが変わったせいか、気軽に連絡できる友人の数が減ってしまう。
そんな中、くだらない話で大笑いできる仲間たちができた。
年齢も性別も職業も各々抱えている事情もばらばらなのに、会って話すと楽しい時間を共有できる人たちがいる。
それって、とても貴重なことだと思う。
私の通っている教室は日程を自由に選べるので、人に流動性があるのもいい。
教室の外で会ったことはないが、そのくらいの距離感が心地いいのかもしれない。
(みんなで旅行行きたいねという話もあり、それはそれで楽しみ。)

命への感謝が増した

大きな一枚の革から必要な分を切っていく工程がある。
その時に、場所によって厚さや表情が違ったり、中には乳首を発見することもあったりして、生きている時の姿を想像することがあった。
人間のために産まれて生きて殺された家畜たち。
私はその命をいただいている。
実家で猫を飼っているので、そんな動物たちとうちの猫との違いは何なんだろう?人間って勝手だなぁ……とぼんやり思うこともあった。
しかし、その家畜たちの命をできるだけ無駄にせずに有効活用することが、せめてもの償いになるのではないか。
いや、これは自分自身が納得するためなのかもしれない。

職人さんへの尊敬が増した

だらだらしながら作っていた私ではあるが、この靴を完成させるまでに100時間はかかった。
時給1,000円だとしたら10万円!
かなりいい靴が買えるじゃん。
オーダーメイドの靴屋さん(ちなみにこちら Forest shoemaker(@forestshoemaker) • Instagram写真と動画)から、昨年夏にオーダーしていた靴が5月に届いた。お値段、5万円弱。
……いやいやいや。道具とか場所代とか光熱費とか人件費以外にもお金かかるじゃん!?それで足りるの???
プロだから、もっと早く作れるだろうし、私の製作時間には型紙作りや試作靴の工程も含まれているけれど。
一つ一つの工程を丁寧に仕上げているだろうし。
本当にこんな値段で買えちゃっていいんですかね???って思う。

私は適当な性格だし、ましてや1足目だし、よく見ると(よく見なくても)変な部分があるのだが、プロは違う。
商品として作れるようになるまで、どのくらいの時間をかけたのだろう。
教室にも通ったのだろうか?
どの革を使うのか、どんなデザインにしようか……そんなことを考えながら、試作品もたくさん作ったんだろうな。
個人のお店だと、事務的なことや営業的なものもご自身でやられているだろう。
シンプルに、すごいなぁと尊敬してしまう。

靴の構造を知れた

靴は「履くもの」だったけれど「作れるもの」にもなった。
今まではデザインや履き心地重視であったが、構造やディティールに注目して見られるようになった。
どうやって縫ったんだろう?
どういう製法で作ったんだろう?
何かを知ると、わからないことが増える。
それが楽しい。

自信がついた

長い時間をかけ、一つのものを作り上げたことにより、自信がついた。
「私、靴作っちゃったんだから、何でも作れる気がしてる。」
靴が完成した時、ぽろっと口から出た。
元々、何かを作ることが好きだった。
けれど、時間のなさや疲労を理由に、継続した行動につなげていなかった。
でも、時間って作るものだ。
一週間に一時間でもいい。
「いろんなものに興味があるから、どんどん作っちゃうぞ~~~!!だって、私、靴作っちゃったんだから!」という気持ち。
作ることだけではなく、やろうと思ってやっていなかったことに、どんどん取り組んでいきたい。
楽器もまたやりたいし、文章も書きたいし、絵も描きたい。
植物療法も勉強したいし、短歌も詠んでみたい。
いろんなことも学び直したい。
やりたいことがいっぱいだ!
少しの時間でも積み重ねていけば、実りにつながると、今の私は知っている。

実際に履いてみて

自分の足を計測して型を作ったので、もちろんジャストサイズ。
そうはいっても革靴だしなと思ったのだが、長時間の歩行でも問題はなかった。

自分でデザインして、自分で革を選んで、自分でパーツの色を選んだ。
ダブルモンクでクラシカルな雰囲気もありながら、バックルの形を○と□にして面白みも加えたのがポイントだ。
二年前に深く悩まず構想したわりには、自分という人間をわかっているな、私。
靴を眺めていると、過去の自分と話している気持ちにもなる。
ちなみに、試着する際などにアピールできるよう、中敷きには「わたしがつくりました」と書いたが、今まで突っ込んでくれた店員さんはいない。

履いてみると余計に愛着がわく。
靴は自分自身。自分の一部。
たくさんの景色を見せてあげたい。

おわりに

教室に入会した、あの時の自分に感謝だ。
さて、二足目は何を作ろうか。(完成してから半年間、靴教室なのに革小物を作っている人)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?