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地元と関わりを持ち続けて。協力隊活動で得られた、地域とのつながり

2022年7月、KENPOKU PROJECT E(茨城県北地域おこし協力隊)(以下、PROJECT E)として着任した小佐野志保(おさの・しほ)さん。

屋号・しほハートサービスを掲げ、地元・日立市を拠点に、移動販売や高齢者の見守りといった地域の生活支援ステーションの形成を目指し、活動してきました。

今回は、まもなく協力隊卒業を迎える小佐野さんと松本美枝子マネージャーとの対談を実施しました。


生まれ育った地元で、ゼロからのスタート

「地域の生活支援ステーション~コミュニティの醸成、その他のサービス~」をテーマに
地元・日立市で、PROJECT Eとして活動する小佐野志保さん

松本美枝子マネージャー(以下、松本。敬称略):小佐野さんは地元・日立市で、移動販売や地域生活支援コミュニティの醸成などをテーマに活動されていると思います。日立市にUターンするきっかけは何かあったのですか。

小佐野志保さん(以下、小佐野。敬称略):協力隊着任以前は、介護事業や不動産業などの会社で働いていました。コロナ禍の外出制限をきっかけに、高齢者の買い物事情などに関心を持ち、移動販売や見守りサービスを事業にできないかと考え、東京で起業塾に参加。今後を模索する中で、PROJECT Eの制度を知り、協力隊として日立市にUターンしました。

松本:起業を目指すのは初めてだったと思います。また、日立市が地元とはいえ、しばらく離れていたことで不安などはありませんでしたか。

小佐野:2016年に開かれた「茨城県北芸術祭」で日立市を訪れたときに改めて地元の良さに気付きました。しかし、それと同時に生まれ育った街のはずなのに、地元について何も知らない自分に対してモヤモヤとした気持ちになったんです。協力隊としてUターンしましたが、おっしゃる通り、初めての起業と繋がりも何もない状態でのスタートだったので、不安な気持ちでいっぱいでした。

松本:そういう不安な気持ちを少しでも解消できたような出来事はありましたか。

小佐野:着任してすぐに、松本マネージャーを含めて茨城県県北地域おこし協力隊マネジメント(以下、協力隊マネジメント)事業のサポートで、すでに活動している協力隊や地域の農家さんなどと繋いでいただいたことです。また、地域おこし協力隊の拠点「メゾン・ケンポク」という事業のトライアルができる場所があったことも活動をする上では大きかったと思います。

周りのサポートが、つながりを広げて

2022年10月、メゾン・ケンポクで開催の「地域エキスパート養成講座」で登壇した
小佐野さんら協力隊員と参加者の皆さん

松本:ありがとうございます。小佐野さんは、他の隊員の活動視察やイベントなどにも積極的に足を運んでいましたよね。そういう繋がりや協力隊マネジメント事業のサポートについて、改めて振り返ってみていかがでしたか。

小佐野:協力隊マネジメント事業のサポートがあることは心の支えでした。長い間地元を離れていると、Uターンしても結局は繋がりもなく、真っ白な状態でのスタートになります。誰とどのように繋がったら事業を展開していけるのか全く分からなかったので、サポートに助けられていました。エリア単位のサポートは、茨城県内でも県北地域だけだと思いますので、私を含め県北で活動する隊員は、本当に恵まれていると思います。

松本:ありがとうございます。さきほども着任後に協力隊マネジメント事業のサポートに助けられたというお話がありましたが、より具体的なエピソードがあれば教えてください。

小佐野:メゾン・ケンポクで、日立市で仕入れた野菜の販売やその野菜を使用し協力隊仲間に野菜ジュースを作ってもらいお客様に提供したことです。協力隊として着任してたった3か月弱でトライアルの場を持たせていただけたことは、協力隊マネジメント事業のサポートがあったからこそ挑戦できたと思います。全3回のトライアルでは、同じ日に他の隊員もメゾン・ケンポクで、ヨガ教室やコーヒー販売などご自身のイベントを開いていました。最初は緊張をしていたので、やることは違えど、同じ場所に協力隊の仲間がいることも心強かったです。

松本:売り上げも良かったですよね。私から見て小佐野さんは、日立市を拠点に活動する隊員との定例会やメゾン・ケンポクで活動する隊員との定例会にも積極的に顔を出してくれていたことがとても印象的でした。

小佐野:いつどこで活動のヒントになるような情報を得られるか分かりません。情報交換することで更に次に繋がると思い、できるだけ参加するように心掛けていました。

松本:その通りだと思います。メゾン・ケンポクでの出来事といえば、協力隊マネジメント事業と県北生涯学習センターとの共催で「県北を発信しよう!地域エキスパート養成講座〜地域おこし協力隊応援編〜」が開かれ、主に日立市の地域活性化に携わる方々が本講座に参加してくれました。小佐野さんも登壇者の一人として、プレゼンテーションしてくださいましたね。

「地域エキスパート養成講座」で自身の活動についてプレゼンする小佐野さん

小佐野:百年塾に関わる皆さんからは、日立市を盛り上げたいという気持ちがとても伝わってきます。そういった方々の前で、自分の活動をプレゼンテーションできたことは良い機会だったと思います。また、グループ別のワークショップで地域の皆さんとどう関わっていけるかということを考えられたのも、とても意味のある時間だったと思います。

松本:メゾン・ケンポクで開催できて良かったです。講座の後、何か次に繋がる出来事がありましたか。

小佐野:この講座がきっかけとなり、元気に人に優しいまちづくりを目指す日立市の女性団体「日立女性フォーラム」の皆さんの前で、自分の活動をプレゼンテーションする機会もいただきました。更にこの繋がりから発展して日立市での地域活動におけるキーパーソンとなる方に出会うこともできました。

松本:一つの出会いがどんどん次に繋がっていきますね。小佐野さんの行動力もあると思います。現在の小佐野さんの活動拠点・日立市役所金沢交流センターとの出会いも、キーパーソンの方がきっかけでしょうか。

小佐野:そうですね。移動販売など地域の生活支援ステーションを作っていきたいと話した際に、現在の活動拠点である金沢交流センターを紹介していただきました。2023年4月から皆さんと一緒に活動しています。

松本:小佐野さんは、地域や人と繋がるのが上手ですよね。金沢交流センターはどんな施設ですか。

小佐野:ありがとうございます。金沢交流センターは、市民同士の交流を促進する施設です。市民自ら生涯学習事業を展開したり、介護予防に取り組む高齢者の自立した日常生活を支援したりして、コミュニティ活動の拠点となるような場所を目指しています。

松本:小佐野さんの活動テーマや目指す方向と一致した場所といえますね。金沢交流センターでの普段の活動や思い出に残っていることがあれば教えてください。

金沢交流センターのボランティアスタッフの皆さんと小佐野さん

小佐野:普段は地域の方がさまざまな目的で集まる多目的ホールでのお手伝いなどをしています。思い出に残っているのは、金沢交流センターの職員の方と一緒に全部で3回、フリーマーケットを開催できたことです。近隣の大学生や高校生も手伝ってくれて、世代関係なく住民文化祭のような形で盛り上がりを感じられました。キッチンカーや野菜、コーヒーの販売なども行われ、多くの方に楽しんでもらえたイベントだったと思います。

協力隊活動は、人生の糧となる

明るい雰囲気と笑顔が絶えない活動現場

松本:年齢や世代関係なく、地域の繋がりを感じられる素敵なイベントですね。まもなく、協力隊活動も終わりに近づいていますが、改めてご自身の活動を振り返ってみて、どんな思いを感じていますか。

小佐野:最初にもお伝えしましたが、着任したばかりのころは、日立市は地元なのに分からないことばかりで不安な気持ちを抱いていましたが、1年8か月という協力隊としての時間が地域や地域の皆さんとの繋がりを強くしてくれました。協力隊卒業後は、日立市と関係人口になりますが、着任以前の私と今の私では、地元への思いも異なります。何かあれば安心して戻ってこられる、そんな存在になりました。協力隊としての時間は決して無駄ではなく、私の人生において宝物です。心から感謝しています。

松本:小佐野さんの思いを聞いて、とても安心しました。最後になりますが、小佐野さんのようにUターンしても不安な気持ちを持つ隊員も多いと思います。これから着任する後輩に向けてアドバイスをいただけたら嬉しいです。

小佐野:協力隊1年目は特に悩むことが多いと思います。県北地域は協力隊へのマネジメント体制が整っており、マネージャーやコーディネーター、アドバイザーといった皆さんが定期的に個別面談をしてくださいます。2年目になるとある程度は活動の軸や進むべき道が見えてくるのですが、1年目だと不安な部分も多いです。まずは一人で悩むのではなく、面談をできるだけ多く重ねて自分の活動の糧にしてもらえたらと思います。そのほか、他の隊員や地域主催のイベント、協力隊マネジメント事業チーム主催の「円卓会議」のような場に積極的に参加することをおすすめします。そのような場では、何かしらの情報が得られるので、活動の視野が広がっていくと思います。

松本:ありがとうございます。そんなふうに思っていただき光栄です。これからも小佐野さんのことを応援しています。頑張ってくださいね。

小佐野:こちらこそ、ありがとうございました!

(撮影:松本美枝子)
(執筆:谷部文香)

Profile

小佐野志保
茨城県日立市出身
KENPOKU PROJECT E(茨城県北地域おこし協力隊)
活動拠点:日立市
屋号:しほハートサービス
活動内容:地域の生活支援ステーション~コミュニティの醸成、その他のサービス~

松本美枝子
写真家、アーティスト
一般社団法人 自由と地図 代表理事、茨城県県北地域おこし協力隊マネージャー
常陸太田市で拠点「メゾン・ケンポク」を運営し、地域のネットワークを構築