アビスパJ3降格回避のためにやるべきこと:まずは「まともな能力のある強化部長」を連れてくること

最下位岐阜に完敗して2019シーズンの半分を終えたアビスパ福岡。2018年実績では「J2で6番目ぐらいのトップ人件費」で最低でもプレーオフ圏内を狙える位置にいないといけませんが、J3降格圏の21位に沈んでいます。シーズン開始当初の目標であったJ1昇格どころの状況ではありません。ここに来て、J3降格も現実味を帯びてきてしまいました。はっきり言って非常事態です。
非常事態の始まりはペッキアの突然の辞任から始まりました。「放り投げイタリア帰国事件」はクラブにとってはアクシデントでしたが、その対処として、内部昇格で久藤清一を監督にしたのが、さらに状況を難しくしてしまいました。久藤はプロのカテゴリーでは監督経験のない新人監督でした。そして、それをサポートするコーチ陣の安易にアカデミーから内部異動させました。またヘッドコーチ格の藤崎もアカデミーでしか監督経験がありません。プロレベルでは「経験不足」のコーチングスタッフ陣で、発足当初から多大な不安がありましたが、残念ながら危惧していたことが現実になってしまいました。
久藤新人監督では、チームを立て直せずJ3降格が待っているでしょう。シーズン途中でチームを立て直すのは、経験のある監督でも難しいことなので、久藤が悪い訳ではありません。一番の問題は、久藤を監督に選んだ方にあります。具体的には川森社長と鈴木健仁強化部長ですが、川森社長は、サッカーに関しては、素人なので最大の問題は鈴木強化部長でしょう。今回の監督人事だけではありません。鈴木強化部長の仕事は、問題が多すぎなのです。

鈴木強化部長は、アビスパの前は、新潟でスカウト担当でした。強化部長としては、アビスパが初の就任となります。2019シーズンで5年目の強化部長です。日本代表のレジェンドである井原正巳を監督として招聘する際に、おそらく井原さんのリクエストで連れてきました。「井原さんのおまけ」で来たようなものですね。鈴木部長も、詳細は省きますが1年目は昇格しましたし良かったと思います。
ただし2年目からは、ダメ編成が続きました。

・2年目のJ1では、圧倒的な最下位でした。井原さんの能力も少し問題がありましたが、鈴木部長の編制の問題も大きいものでした。ケガ持ちでろくに稼働できず名古屋を放出されたダニルソンを獲得しましたが、アビスパでも危惧通りにケガ続出でろくに稼働できませんでした。またJ2でしか実績のないキム・ヒョヌンは、やはりJ2レベルでしかありませんでした。残留できたかどうかは分かりませんが、この二人の替わりに、J1レベルのボランチとCBの外国人を獲得できていれば、もう少しまともな残留争いはできたと思います。
・3年目はベテラン揃いの編成で、J2前半戦は首位で折り返すも、夏場で案の定失速し、4位でシーズン終了、プレーオフ決勝で上位の名古屋に引き分けで逃げきられて昇格できませんでした。ただ、あのチームで上がっても、伸び代がなく逆に力が年々衰えるベテラン揃いのチームでは、J1に定着できなかったでしょう。
・4年目はプレーオフ圏内にも残れずに7位でシーズン終了。
・5年目は、シーズン半分終了時点で21位で昇格どころか降格圏。
振り返れば分かるように年を追うごとに右肩下がりの結果です。
強化部長という職は、1~2年ぐらいで判断するものでありませんし、鈴木強化部長の場合は、アビスパで新人強化部長から始めたということもありましたが、今年で既に5年目、「強化部長としての鈴木健仁」には見切りをつける時期が来たと思います。

鈴木強化部長のダメなところは、「日本で実績のない外国人選手」獲得では、明らかに成功したのはセランテスぐらいで、その他は、ほとんど失敗してるということでしょう。デメロ、エウレー、ミコルタ(ミコルタは結論出すには早いかもしれませんが、失敗に終わるでしょう。スピードが武器の選手がスピードがなくなってしまって使い物にならなくなったところを獲得してしまった感じですね)など死屍累々です。もちろん、全ての移籍を成功させることは、有能な強化部長でも不可能ではあります。ただし、全体として「失敗してない」ぐらいには帳尻を合わせない(獲得した5人中、2人は失敗しても3人は成功ぐらいには)といけませんが、明らかに帳尻が合っていません。川森社長が必死で集めてきたトップ強化費用を、はっきり言って「ドブに捨ててきた」ようなものだと思います。
あとは日本人選手の顕著な「レンタル頼り」というのもダメですね。1年目のJ1昇格を決めたシーズンの後の大きな問題としては、レンタルの主力3人(亀川、中村航輔、酒井)の残留問題がありましたが、亀川しか残せず、昇格した戦力を残せませんでした。J1で戦う相手に、そのままレンタル続けてくれるほど、J1は甘くはありません。その反省から、翌年からは確か「自前の選手にこだわる」と発言していましたが、いつのまにか、「お手軽レンタル」に頼るようになってしまいました。
レンタルは、金のないJ2下位クラブやJ3クラブなどが、お手軽に戦力を整えるのには効果的な方法ですが、長期的な戦力積み上げには向きません。活躍すれば、経験を積めれば自分のクラブに戻ることが前提です。
レンタル揃いのチームで昇格しても、レンタルバックされて、シーズン開始前から戦力ダウンを強いられ、J1でぼこぼこにされて1年で逆戻りが関の山でしょう。それが分かっていたから、ペッキアはレンタル選手を明らかに外す起用法でした。その点で「放り投げたイタリア人」よりも長期的展望がない、その場しのぎなのが鈴木部長の編成の特長でしょう。「ベテラン揃いの編成」も長期的展望が欠けていますが、「レンタル揃いの編成」も長期的展望に欠けています。
また「自分が選んだ監督」にも関わらず、「編成が少人数でレンタル選手を揃えたにも関わらず監督が使わない」など、井原さん以外の監督とのコミュニケーション能力にも問題がありそうですね。
もう一つ、ペッキアとコミュニケーションを取れていなかったのではないかというものが、アビスパスタイルの問題でしょう。

目指す形・Avispa Style
http://avispaf.jugem.jp/?eid=1742
ここで強化部としては、アビスパスタイルとして、「4月愛媛戦での30本のパスをつないでのゴールが象徴している」という動画を上げています。しかし、ペッキアの話では「理想は、ハイプレスでボールを奪取して3本か4本のパスでシュートに向かう」というものでした。ペッキアの目指していたスタイルは、イタリアでは「リパルテンツァ」と呼ばれるもので、「ハイプレスでボールを奪いショートカウンター。跳ね返されても、また高い位置で奪い返し少ないパス本数でゴールへ向かう。それを繰り返す」というスタイルだったと思いますが、明らかに、鈴木強化部長の考えるアビスパスタイル(パスサッカー)とは違っていたと思います。
そういう意味で、ペッキアとは就任した時点で、きっちりとコミュニケーションを取れていないまま契約してしまったという気がしてなりません。
あとは内部昇格なので、強化部長的には「久藤の監督能力、コーチ能力は把握」してないといけませんが、今の惨状を見る限り、鈴木部長には、「監督の能力をきっちり分析して評価する」能力が欠けているとしか思えません。

新人強化部長からの出発ということもあり、長い目では見てきましたが、既に5年目、将来的には分かりませんが、現時点で「強化部長としての能力が圧倒的に不足しているし、強化部長に絶対必要な長期的展望もない」のが、今の鈴木強化部長でしょう。
今のアビスパの競技マネジメントで、一番の問題は鈴木強化部長に「能力」も「長期的展望もない」ことであることは間違いありません。とはいえ、サッカー素人の川森社長に「競技面での問題」はどうこうできる訳ではありません。そして今のアビスパで編成能力のある人間はいない。この非常事態においては、トップで編成担当を経験した人間を連れてくるしかでしか打開できないでしょう。このまま鈴木部長のままだと、久藤の後は藤崎が就任しそうですが、藤崎でダメなら、もう、その時点で手遅れ(J3降格)になってる可能性が高いでしょう。
鈴木強化部長は「新潟での実績十分なスカウト」に異動して貰うか、新しく来る強化部長の補佐役に回るか、もしくは辞めて貰うしかないと思います。

個人的に頭に浮かぶ新強化部長候補は、今のところは柱谷幸一ですが、他にも探せばいるでしょう。とにかくJ3降格の危機という緊急事態です。久藤にはトップの監督からは引いて貰うしかありませんが、順番的には、先に「まともな強化部長の選任」からが基本です。新任強化部長が就任し、それから監督人事に手を付ける。それが、まともな順番です。
そう考えると、いますぐ動かないと手遅れになる可能性が高いでしょう。

アビスパ経営陣の早急な決断を求めます。

更新頻度は多くないですが、よろしくお願いいたします。