アビスパ福岡、鈴木健仁強化部長の5年間総括、その1(序論)

「J2優勝してJ1昇格」が目標だったアビスパ福岡の2019年シーズンだが、結果は「J2残留を決めるのがやっと」という非常に惨めなシーズンだった。さらにレンタル以外の若手が誰も伸びず「来年に何も残らない無為なシーズン」にもなり、シーズン終盤には「こんな酷いシーズン早く終わって欲しい」と多くのサポーターが嘆くしかなかったシーズンでもあった。
個人的には、そんな事態を招いた最大の元凶が、競技部門のトップである「鈴木健仁強化部長の無能さ」だと思っている。14年末に鈴木がアビスパに来てから、強化部長として仕事をしてきた5年間をつぶさに観察しての結論である。

まずは鈴木健仁がアビスパに来た経緯をおさらいする。2014年途中でアビスパ福岡は会社として体制が変わった。経営危機に陥った「西日本新聞主導の大塚社長体制」から「福岡市役所主導の野見山社長体制」で14年頭に再スタートしたもののクラブライセンスにも関わる債務超過の解消に難渋していた。ここでホワイトナイトとして登場したのが、アパマンショップだった。アパマンショップは、グループとしてアビスパ株式のほぼ半数を取得した。15年シーズンからアパマン主導による再スタートを華々しく始めることにした。将来的な目標は「日本初の100億円クラブ」だ。そのためには、アパマン首脳部はスター監督が必要だと考え、何人かの候補の中から合意したのが、「アジアの壁」と言われ、歴代日本代表の中でもレジェンドであった井原正巳だった。ただし選手としては間違いなくスターだったが、トップチームの監督としては新人だった。2002年に引退しS級ライセンスを取得したのが06年。そこからでも8年ほどが過ぎていた。コーチとしては、十分に経験を積んできており、井原自身もトップチームの監督をやる機会を欲していたは間違いないだろう。そして監督としてスタートするにあたり重視したのが、監督としてやりやすい環境を作ることであった。ヘッドコーチには三浦文丈、強化部長には鈴木健仁を連れてきたのだ。マリノス時代の井原会の再現でもあった。「鈴木健仁は井原正巳のおまけ」であったのだ。

個人的には、アパマンショップ主導体制の初っぱなで、結果的には、監督と強化部長を選ぶ順番を間違えた気がしてならない。
クラブのあり方としては、
1:クラブの立ち位置を決める
2:クラブとしてのプレー哲学を決める
3:1と2を実現していくために強化部長を選ぶ
4:トップの監督を決める
の順番で決めていくのが基本である。

「日本初の100億円クラブ」は、「J1の強豪クラブとして毎年優勝を目指す。何らかのタイトルを獲るクラブを目指す」という立ち位置を目指したものだろう。
日本の中で「クラブの立ち位置」となると、
最上位:J1で毎年優勝を狙う日本のビッグクラブ
2番目:最上位のクラブの座を虎視眈々と狙うJ1強豪クラブ
3番目:J1に居続けることだけを目指すクラブ
4番目:J2に居続けることだけを目指すクラブ
現実的に言えば最上位と2番目は、「大企業の大規模なバックアップがあるクラブ」もしくは「人口が100万人以上いる都市のクラブ」に潜在的な資格があると思う。具体的には首都圏、大阪圏、名古屋圏以外であれば、札幌・仙台・広島・福岡の地方中心都市だけ。
3番目がそれ以外の政令都市をホームにするクラブ、4番目が政令都市未満の地方都市のクラブだ。(現状のリーグ構造をアメリカ式に変えない限り、地方の小都市はJ1優勝とかいう夢を見ない方がいいと思うのだ。)
話がそれたが、アパマン主導下のアビスパは、まずは「立ち位置」は決めていた。現状はそうではないが、そこを目指すと。そして、九州の中では福岡であれば、かなり難しいが可能だと思う。(他に九州で2番目以上に行ける可能性あるとしたら北九州ぐらいだ)

ただし、そこからの順番は間違ったと思うのだ。4番目の監督選びが2番目に来て、そこから強化部長で、本来2番目であるべきプレー哲学を打ち出したのは5年目の2019年からであった。
そして、2015年当時のアビスパの現実はと言えば、アパマン体制で盛り返したとはいえ、営業収入が16億ほど。J1昇格は十分に狙える予算規模にはなったものの、J1では最下位クラスで残留も厳しい予算規模である。それは2,3億積み上げた今の19年もそう変わらない。J1に残留し定着していければ、予算規模も拡大していくことは可能だろうが、まずは残留しないと、それも厳しい現実である。
というわけで、鈴木強化部長のミッションは「J1昇格」ではない。「J1に昇格して翌年もJ1に残留し、まずは定着すること」なのだ。それは、非常に優秀な強化部長でないと達成できないミッションであるが、その観点で、鈴木健仁の強化部長としての2015年から2019年を総括してみたいと思う。

(続く)

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