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BBTクローン再生計画(8)初のオールナイト上映会にドキドキできたウブだった頃

上映回や座席が指定されるようになったあたりから、プライベートで「映画」というのを観る機会がほぼ無くなりました(仕事ならあるけど)。
なんというか「キッチリ管理されすぎてて逆に居心地が悪い」気がするんですよね。

「朝イチで弁当持って映画館に行って気が済むまで何回でも見続ける」というのが子供時代からの私の映画鑑賞システム。
最低でも「2回」、気に行った作品だと軽く「4回」は観てましたので、「映画館を出た時には台詞をほぼ暗記してる」みたいなこともザラでした。
毎回入れ替え制の現在では、こんな贅沢な観方はもうできませんね。

昭和世代における映画館とは「好きなタイミングで入って好きなタイミングで出られる」ところ。
上映が始まって半分過ぎた頃に入り、その次の回の半分まで観て出る……みたいな観方を多くの人がしてました。
上映回・座席指定チケットを早くに買っておかないと入館できない現在ではもう不可能な観方ですね。
……あ、すでに絶滅危惧種となったポルノ館とか名画座だったらまだ可能か。

名画座といえば、土曜の夜に行われていた「オールナイト上映会」が懐かしいですね~。
「大林宣彦監督作品特集」とか「薬師丸ひろ子主演作品特集」みたいにテーマを決めて、館主がチョイスした作品を夜通し流すんです。
現在なら全国津々浦々にDVDレンタル店がありますし、配信サービスなんかも各種ありますので、かなりマイナーでマニアックな作品であっても容易に見ることができる。
でも昭和期はそうはいかず、だから映画ファンは常に情報誌をチェックし続け、「あ! 大森で今週、●●の特集やるじゃん! 行かなきゃ!!!!」みたいな生活をしてたんです。

私の「上京したらすぐやりたいこと」の上位にランキングされてたのが「オールナイト上映会に参加する」でした。
念願かなって最初に行ったのは「東宝特撮映画特集」。
ゴジラみたいな怪獣モノは「ラドン」くらいで、後は「マタンゴ」「妖星ゴラス」「ガス人間第一号」みたいな人間モノ(?)でしたね。

深夜の映画館で初めて観たそれらはホラー・サスペンス・スペクタクルの要素が満点でドキドキさせられましたが、それ以上にドキドキしたのが「真夜中にこんな場所に1人でいて補導されやしないか?」ということ。
もう高校生じゃないんだから、たとえ警官や補導員に遭ったって「ちょっと、君ィ!」とか言われる恐れはないってのにアパートに帰りつくまでドキドキしていたまだウブな自分は、振り返ってみると我ながらカワイイと思いますね。

ネットが普及してリアルとヴァーチャルの境界が曖昧になる中で「大人世界」と「子供世界」の境目もかなり曖昧になりつつある気がします。
リアル対面が基本な世界なら、子供は一目で子供だと分かりますので、大人の世界に入り込んで来たら「コラコラ、ここは君にはまだ早いよ」と退場させられる。
けれどもヴァーチャルな場では、現実には「7歳の小一女児」だったとしても「社会人一年生の22歳です」と自己申告したら周囲は納得してしまうのです。
結果、「まだ見るべき段階には至っていないグロいもの」を垣間見てしまいトラウマを抱えることになるようなことも……。

やはりメンタル的には「段階を踏みながら徐々に世界を拡げていく」のが一番だと思うんです。
昭和歌謡には「大人の階段上る」「大人の世界を覗いてみたい」的な歌詞が色々ありましたが、ああいう思いを抱ける環境がベストなような。
私のBBTクローン再生計画では、そういったものも蘇らせたいと思っています。

私にとっては「オールナイト上映会に行く」というのが「大人の階段を一段上る」ことであり「ようやく覗けた大人の世界」のひとつでした。
嗚呼……できることならもう一度「こんな所に来てしまって補導されたらどうしよう……」とドキドキしてみたいもんです。どう考えたって無理だけど。

画題「今じゃもう『補導』なんてされたくたってしてもらえませんやね」

文芸坐


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