私が「静東エリアは車なしでも問題なく暮らせる町が多い」と声高に叫ぶ理由①
こんにちは、Sage/セージです。
最初に解説しときますが、タイトル内の静東(せいとう)とは静岡県東部(富士川以東の県内)のことを指す私の造語。
「静東エリアをストレンジャー(=よそ者)の力で面白く変えていく」というのをコンセプトとするチーム「静東ストレンジャー」を、私は主宰しています。
私は18歳までは出身地である静岡市(県中部エリア)で過ごしたんですが、1983年以降は東京(杉並区→渋谷区→新宿区)で暮らしましたので「人生の2/3はアチラの水を飲んできた」ということになります。
36年間も都心で暮らしてきたわけですから、「下手な東京出身者よりもアチラの世情変遷には詳しい」という自負があります。
平穏期→好景気期→バブル全盛期→バブル崩壊期→不況初期→不況本番期→大混迷期→無軌道期……といった具合に東京および東京民の変わっていく様子を、私は長期にわたって定点観察してきましたが、「東京民の無軌道ぶりが常軌を逸した」のと「想定外の大病を患った」のとで、2019年の秋に静東の沼津市に移住しました。
36年ぶりに静岡民になってまず感じたのは「相変わらずの車社会だなぁ~」ということ。
はるか昔から静岡は「高校を出たら免許を取るのが普通。移動手段には車を使うのが当たり前」と信じて疑わない土地柄なんです。
どちらがタマゴでニワトリなのかは定かではありませんが、たとえ一般事務職であっても採用条件に「要普免」と入ってたりして、それが「高校を出たら免許を取るのが当たり前」という風潮を後押ししてます。
とはいえ「全静岡民が車に乗りたがる」わけではもちろんありません。
車の運転には「事故リスク」や「所有コスト」がついて回りますので、それを嫌って免許を取らない人も一定数います。
いえ、自動車運転には好き嫌い以前に「適性」というのがあるわけですから、「自分には無理だ」とあきらめる人だっているわけです。
世の中がそういう「己の分をキチンとわきまえている賢明な人」ばかりならいいんですけどね、中には「明らかにハンドルを握るのに向いてない」のにもかかわらず車を乗り回し「迷惑運転で世間を騒がす」ような輩もいて、「なんだかなぁ~????」という感じです。
そういう現実を無視して「全員、免許を取れ!」なんて言うのは、あまりにも乱暴すぎる話だとは思いませんか?
そんなわけで「車に乗りたくない静岡民」というのは高卒と同時に故郷を出て「車に乗る必要のない都会」に移り住み、その大半が「二度と戻ってこない」のです。
そういう人は私の友人にもいますし、私自身もその一人でした。
東京に行くと、車に乗りたくない静岡民はホント心が休まるんです。
県内から出たことのない方にはピンと来ないかもしれませんが、静岡で「免許がない」と言うと「なんで?」と不思議がられますが、東京23区だとその逆で「免許がある」と言うと「すごいね~」と感心されます。
ちょっとオーバーに言うと「天動説のパラレルワールドから地動説の世界へ移った」みたいな感じです。
電車・バス路線が毛細血管のように張り巡らされていて、移動手段が公共交通のみで事足りる東京都心部において「免許所持者」というのは「運転する職業の人」か「車を持つことをステータスだと考えている人」に大別されます。
前者は「仕事だから乗っている」だけなんで大半がマイカーを持ちません。
都心部は駐車場がバカ高いので、まぁ当然の話ですね。
それでもなおマイカーにこだわるのは、前述の「車を持つことをステータスと考えている人」で、ぶっちゃけ「一定レベル以上の富裕層」です。
まぁ「車を持ってるか持ってないか、どんな車種に乗っているかでモテ度が変わる」というバブル期の価値観を未だ引きずった人の中には「安アパートに住んで食費を削ってもマイカーを持ち続ける」なんてお方も少数ながらいて、私の友人にもいるんですけど「時代が変わったんだからいい加減やめれ」と繰り返し忠告しています。
要するに都心民は「車への執着」と「金銭の余裕」のある者は免許を取ってマイカーを持つが、それ以外は「免許を取らないし、たとえ取ってもマイカーは欲しない」のです。
車が必要になる何らかの場面が生じたら、そのつどレンタカーを借りればいいだけの話ですからね。
今なら「カーシェアリング」というの選択肢もありますから、高額な購入費や月々の維持費を払ってまで個人所有する必要はないのです。
「車に乗りたくないから上京した」という都外出身者は、決して静岡民ばかりではありません。
他の道府県から来た同輩と出会うたびに私は「車社会文化に悩まされるのは全国共通の問題なんだなぁ……」と痛感させられました。
昨今はドライバーのモラル低下が著しく、あおり運転などの被害が毎日のように報道されているので、我ら免許取得拒否者たちは「あー、やっぱり乗らなくて正解だった」と胸をなでおろしています。
そういうメリットが「車に乗らないこと」にはあるわけですが、当然ながらデメリットもあります。
「東京外だと住む場所が限定される」というのがそれです。
JRや私鉄、地下鉄などの路線が縦横無尽に走っているような地域は全国でもごくごく一部で、大半のローカルは「JR線のみ」か、良くても「JR+私鉄1本」程度。
鉄道のない地域では路線バスが運行されてますが、それも最近は「人口減→利用者減→便数減」という悪循環によって風前の灯火だったりします。
そんなわけで「車がないと暮らせない地域が各地にある」という事実は否めません。
でも、「だから車が運転できない人間は死ぬまで東京にい続けねばならない」ということにはなりませんし、やみくもに落胆する必要もないのです。
ただ単に「車ナシでも暮らせるローカル」を探せばいいだけの話なんですから。
約3年前、JR東海道線における静岡最東端「熱海」の近辺(神奈川県小田原市~静岡県沼津市)に移住しようと決めたとき、私は熱海を中心とした東海道線の11駅(小田原~早川~根府川~真鶴~湯河原~熱海~函南~三島~沼津~片浜~原)すべてに降り立ち、「この周辺は車なしで暮らすのが可能なエリアか否か?」を実地検証しました。
以下は、足を使って得た情報に基づく調査表です。
【神奈川エリア】
■小田原(暮らせる度高し)
新幹線駅で東京との往来至便。運賃の安い小田急線利用で首都圏へ通勤する者多し。駅前の商業エリアは小田原城の城下町の風情が今も濃厚。城までの散策路は風情あり。海側は平坦で暮らしやすそう。
■早川(暮らせる度高し)
駅からすぐの場所に漁港。港の周囲は飲食店がワンサとあってフード系テーマパークの様相。平坦地で徒歩移動はしやすい。少し歩くと文学館もある高級住宅街があって、そこは「相模の田園調布」というイメージ。
■根府川(暮らせる度低し)
駅ホームに海が迫っていて景色は良い。改札を出るとすぐ山に入ってしまい、付近に商店は見当たらない。徒歩で隣駅に行くには山越えが必須だが、山中では害虫・害獣に遭遇する可能性大(注意看板あり)。
■真鶴(暮らせる度高し)
比較的平坦でのどかな漁港の町。町をあげて移住者誘致に熱心で、近年はブランド移住地として全国区の知名度を誇っている。個人商店が元気だが、その代わりにスーパーは一軒のみ。徒歩で隣駅に行くには山越え必須。
■湯河原(暮らせる度高し)
比較的平坦な温泉街&別荘地で、駅近に賃貸物件が多くて家賃も手頃。周辺にはスーパーやコンビニが多くて買い物には困らない。町民は格安で使える「町営温泉」がある。徒歩で隣駅に行くには山越え必須。真鶴側の山中には住宅エリアがあって、故・伊丹十三の旧邸が今も建つ)
【静岡エリア】
■熱海(暮らせる度低し)
新幹線駅で東京との往来至便で有名人も多く住まう人気別荘地(ただし別荘には全国で唯一の「別荘税」がかかる)。「東洋のモナコ」とも呼ばれる景勝地。端的に言うなら「山と海に挟まれた急勾配の町」で、わずかに存在する平坦地は商業施設とマンションで占められており、一般住宅は山の上に建つ。数件の大手スーパーやホームセンターがあるけれども中心部(市役所近辺)に集中しているので買物はしにくそうな印象。
■函南(暮らせる度低し)
駅周辺にはコンビニの一軒すらナシ。町の中心部はJR駅近辺ではなく約4km離れた私鉄駅の周辺。裏手の山の中腹に高級住宅地があるが、そこにも商店は見当たらない。住民の買い物は必然的に「マイカーで中心部まで遠征して」となる印象。
■三島(暮らせる度高し)
新幹線駅で東京との往来至便。三島発、三島止まりのこだま号も目立つ「東京への通勤駅」。周辺は平坦地で徒歩移動は容易。古くから「三嶋大社の門前町」として栄え、京都を思わせる優雅な街並み。市街地を水路が横ぎる「水の都」で環境の良さは近隣でも抜群。あちこちで文化が香る。
■沼津(暮らせる度高し)
平坦な商業地。かつては百貨店の建ち並ぶ静東の中心都市だった。近隣に大型病院が多い。美しく整備されてイベント会場としても活用可能な大型河川「狩野川」が近い。街中にも「余白」が目立ち、使いようによっては大化けする可能性も大なエリア。
■片浜(暮らせる度高し)
海のそばの平坦住宅地。静かな海岸や松林の散策路まですぐ。大手チェーン多数入居の大型商業施設「ららぽーと沼津」まで徒歩30分。スーパーも多く、深夜族には24時間営業の西友が便利。
■原(暮らせる度高し)
平坦地な住宅地で、東京・台東区の谷中を彷彿させる静かな寺町。近隣にはスーパー多し(倹約家の味方「業務スーパー」もあり)。ホームセンターや日帰り温泉施設も。人の少ない海岸に近く、平日の午前中はほぼ貸し切り状態。田園地帯が近く、農家が経営する格安の野菜直売所もある。
いかがですか? 「車がないと暮らせない地形の町」というのは想像してたより少ないでしょ?
とはいえ、たとえ徒歩や自転車だけで痛痒なく移動できる平坦エリアであったとしても「不動産相場が安くない」とか「お得なスーパーがない」というところだと庶民には暮らしにくいので、「自分の生活レベルと吊り合っているのか?」という点についてはご自身での入念な事前リサーチをお忘れなく。
私は「お得に買い物できる店が周辺に多い」おかげで本当に助かってます。
長くなったので、今回はここまで。
次回は、私が「静東エリアは車なしでも問題なく暮らせる町が多い」ということをなぜ声高に叫んでいるのか、についてお話ししたいと思います。
【この項つづく】
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