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勝手に「コンパクトシティ」創ります③ 「三島駅南口」は極上の「トシゼン」だ

東京にまったく縁のない方であっても「吉祥寺」という地名には聞き覚えがあるのではないでしょうか。
毎年発表される「首都圏の住みたい街ランキング」「上位常連タウン」としてメディアにもしばしば登場し、それを逆手に取った『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』(マキヒロチ著 講談社)なんて漫画まで描かれているくらいです。

住みたい街

JR中央線快速で「東京駅から28分」と交通の便が良いとはいえ、23区内ではない(杉並区・練馬区と隣接する「武蔵野市」の一部です)吉祥寺がなぜそこまで好まれるのか……土地勘のない方にはピンと来ないかと思います。
私が思うに、あの街の最大の魅力は「わざわざ都心へ出なくても殆どのことがエリア内だけで賄える利便性」だと思います。

駅の両側は商業地として栄え(特に北口には大きなアーケード街闇市時代から続く飲食街などがあります)、南口(公園口)に出てブラブラ歩くと、あっという間に「井の頭公園」という巨大パーク(正式には「井の頭恩賜公園」といいます)に到着します。

ここはまさに「都会のオアシス」と呼ぶにふさわしい名所で、私も訪れるたびに清々しい気分になっていました。
園内には「神田川の源流」である「井の頭池」という池があり、「手こぎボート」が昔から人気です(「カップルで乗ると別れる」という都市伝説がありますが……)。
「動物園」「彫刻館」などもあるほか、かの「三鷹の森ジブリ美術館」にも近くて、年齢性別を問わず幅広い世代が日がな一日楽しめる天国スポットになっています。

駅から公園に続く道には「いせや」という「超有名やきとり店」があって、そこで買ったものを園内のベンチで食べるお客も多いです。
私も幾度となくそれをしましたが、そのつどサイコゥサイコゥ!(©空気階段・水川かたまり)な気分を味わえましたね。
三密回避のために店内飲食が敬遠されがちな昨今は特に「理想的な飲食スタイル」と言えるんじゃないでしょうか。

井の頭公園の素晴らしいのは「安易なハコモノ行政」ではない「真の文化創造」がなされているところ。
たいていの公園では露店営業やパフォーマンス行為は禁止で、井の頭公園でも同様だったそうなんですが、こちらでは「取り締まってもキリがない」ということに途中で気づき、2007(平成19)年より「井の頭公園アートマーケッツ」という試みに着手しました。

これは、「ストリートライブ」「大道芸」「アーティストによる自作商品の販売」などを「一定のルール下で認可・登録して許可する」という画期的な制度。
人気イラストレーターのキン・シオタニさん(首都圏全域でネットされているテレビ神奈川の散歩番組『キンシオ』なんかでも知られてますね)なんかは、アートマーケッツの代表的出身者という感じでしょうか。

キンシオ

行政が文化事業に着手する、というと高確率で「ハコモノを造る」になりがちですが、結果「入れ物だけ立派で中身がスッカスカ」となってしまうケースが少なくありません(どことは言いませんが……)。
それに対してアートマーケッツは「入れ物は造らず『充実した中身』だけを集める」という対照的かつ画期的な試みです。
「これこそ『真の文化事業』である」と私は膝を打ちましたね。

文化といえば、吉祥寺は「漫画家が多く住まう街」としても知られてます。
その理由として推察されるのが、
「仕事に不可欠な画材店や書店が充実している」
「ネーム作業や打ち合わせに使いやすい喫茶店が数多い」
「井の頭公園のような気分転換オアシスが街のど真ん中にある」
「出版社のある神田周辺からすぐ来られるので編集者にとっても便利」
等々です。
漫画家は「時間との闘いを強いられる職業」なんで、「自宅周辺だけで殆どの用が足せる」という利便性の高い立地は理想的なわけですね。

もちろん、「外にもどんどん遊びに行きたい!」というアクティブ人種にとっても吉祥寺は超便利な街で、たとえば「新宿」には中央線快速で14分で着きますし、「渋谷」までは井の頭線急行で16分で行けます(どちらも乗り換えナシです)。
デパートが立ち並ぶ繁華街があって、日用品からディープな趣味アイテムまであらかた売っていて、ランチタイムティータイムディナータイムから夜遊びタイムまでも充足させられる良店が揃っていて、街独自の文化が存在していて、駅から数分の近場に「自然豊かな癒しスポット」まである……これだけ好条件が揃っていれば「そりゃまぁ人気も出るわなぁ」という感じですね。

東京で私が最初に住んだのは吉祥寺から2駅の「荻窪」という街でしたが、当初はほとんど毎晩「ブラブラ歩いて遊びに行ってた」感じでしたね。
「徒歩圏内で一番賑やかなところ」という感じで、なんというか「365日が縁日」みたいな印象だったんです。
おかげでホームシックにもなりませんでした。

冒頭で私は吉祥寺の最大の魅力を「わざわざ都心へ出なくても殆どのことがエリア内だけで賄える利便性」としましたが、これはつまり「理想的なコンパクトシティ化がなされている」ということです。
同じ都下では「JR八王子駅周辺」「多彩な機能が駅周辺に集約された素敵なコンパクトシティ」なんですが、やっぱり「井の頭公園を有している」という点で吉祥寺に軍配が上がります。感じです。

機能性の高さ
は大きな魅力ではありますが、だからといって「機能一辺倒」ではつまらない。
「優れた機能性」「高い文化度」「自然の潤い」が加わっているからこそ、吉祥寺は「中央線随一のブランドタウン」たりえているわけですよ。

「都会」「田舎」のハイブリッド地域のことを近年は「トカイナカ」なんてふうに言いますが、吉祥寺のような「都市」「自然」のハイブリッドを私は勝手に「トシゼン」とネーミングしています。
「いいな~、トシゼン! やっぱ吉祥寺は突出してるわ」とずっと羨んでいたんですが、よく考えたらわが静東エリア(静岡県東部)「三島駅南口エリア」というのも「かなり上質なトシゼン」なのでした。

三島駅

吉祥寺の場合は「繁華街に自然エリアが食い込んでる」という感じですが、三島駅南口というのは緑豊かなスポット「楽寿園」「白滝公園」「源兵衛川」「三嶋大社」等々が「市街地各所に散らばってる」といった感じなので、ルートによっては「自然→街→自然→街」みたいな移り変わりも楽しめます。
実際に訪れないとピンと来ないでしょうが、これはすっごく楽し~~~~いッ!!!!!!!!

白滝公園1

パン屋

源兵衛川

個人店2

菰池公園全景

個人店

蓮沼川アート1

肉の大村

三嶋大社全景

また、吉祥所の「井の頭公園アートマーケッツ」と同種の発想の取り組み一民間企業でありながら試みる「加和太建設」という「サイコゥサイコゥ!」な会社サン(以前に某ネットメディアの仕事で取材させていただきました)もあったりして、文化的な素地は元からあったりします(下の試みはすでに終了してますが、その後も様々な仕掛けを繰り出してます)。

空き地

また、駅前の広大な市立公園「楽寿園」でも「園内を利用して出店やワークショップ等イベントを開催することができます」とHPで謳ってますので、ソフト面(人材面)さえ整えば、吉祥寺を凌駕するような街に育成できるかもしれません。

楽寿園外観

ほんの樹1

私の喫緊の課題は「沼津市内の東海道線3駅を核とする3つのコンパクトシティを創る」というものですが、「偶然の連鎖の果てに『上質なコンパクトシティ』が成立していた」という三島駅南口エリアのほうにも注目していきます。
現状に何が加われば「コンパクトシティとしての完成度」がよりいっそう増すのか? といったことも精査していきますので、どうぞお楽しみに~!

【つづく】

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