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#55 君は「ラテカセ」を知ってるか?

昭和の子どもにとって「自分の部屋にテレビを置く」というのは大きな憧れでした。
当時はまだテレビは超高級家電であり、「一家に一台しかなくてチャンネル権争いに日々明け暮れている」なんて同級生もいたくらいです。

そんな時代に子どもたちを「アッ!」と言わせたのが「ラテカセ」でした。
正確に言うと「ラジオテレビカセット」で、その名の通り「ラジオ」と「テレビ」と「カセットレコーダー」が一体化した夢のマシン。
値段は、あの頃で10万円くらいしたんじゃないかな~。

月の小遣いが3000円だった私にとってそれは「この世にはあるけど自分とは接点のない半ば架空の存在」。
カタログとか雑誌広告とかを眺めながら「はぁ~・・・」とため息をつくのがせいぜいでした。
しかしあるとき、ラテカセと接近遭遇する機会が巡ってきたんです。
なんと「ラテカセを買ってもらった」という同級生がいたのでした。

そいつは、いわば「ちびまる子ちゃん」で言うところの花輪くんポジションな奴。
そいつの部屋で見せてもらったラテカセは燦然と輝いて見えて、私は圧倒されました。
「ほ、欲しい・・・」と、心の底から呻くような声が湧き上がってきたものの、わが家の経済状況では夢のまた夢。
「ばーちゃんにこないだラジカセ買ってもらったばかりだもんなぁ~・・・」
そう自分に言い聞かせながら、私はため息つきつつ帰途に就いたのでした。

その後、「新しい機種に買い替えたことで不要になった親の部屋のテレビが俺の部屋に払い下げられて来る」という嬉しいハプニングが起き、「自分専用テレビが欲しい問題」は呆気なく解決しました。
とはいえそれでも「ラテカセ」のインパクトは魅力的で、ずるずると未練を引きずっていた私なのでした。

ラテカセ


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