「チーテン」逃さないで
Мリーグ2021の2022年2月4日(金)の第2試合で残念な場面がありました。EX風林火山の二階堂瑠美プロがラス目で迎えた南1局の終盤で「チーテン」に取らなかった選択と、解説の藤崎智プロがそれについて全く触れなかったことです。
特に、試合の流れにかかわるとても興味深い判断だったのにもかかわらず、その意図を説明しなかった藤崎プロにはがっかりさせられました。
第2試合はEX風林火山の二階堂瑠美プロ、KONAMI麻雀格闘倶楽部の伊達朱里紗プロ、U-NEXT Piratesの瑞原明奈プロ、赤坂ドリブンズの鈴木たろうプロの並び順。
南1局を迎え、持ち点は南家・伊達43300、西家・瑞原23700、北家・たろう22700、東家・瑠美10300です。
12巡目に1索をツモったたろうプロの手牌です。5萬か9萬を切れば聴牌です。
たろうプロは場況からカンチャンの6萬よりも8萬のほうがあがりやすいと判断。3人に安全牌だった9萬ではなく、5萬を切って黙聴に構えます。ドラも赤ドラもない安い手だったので、リーチには踏み込みませんでした。
このとき伊達プロはメンゼンでイーシャンテンでした。
鳴き仕掛けしていた瑞原プロもドラを2枚、赤ドラを1枚持つイーシャンテンです。
親の瑠美プロの手牌です。たろうプロの切った5萬をチーします。
瑠美プロは「345」の三色の形でチーし、6索を切ってイーシャンテンに取りました。
この5萬のチーは「456」の三色の形でもできます。3萬を切ってイーシャンテンです。
こちらは1索が入っても聴牌に取れます。瑠美プロの手牌を持っていたら「456」で鳴く人のほうが多いように思えます。けれども、瑠美プロは瑞原プロらに3萬・6萬を切りずらかったようです。「345」で鳴くのも十分ありではないでしょうか。
残念だったのは瑠美プロが次巡、たろうプロから切られた6筒をチーせず、聴牌に取らなかったことです。
ラス目の親で捨て牌も3列目の終盤に入っています。聴牌逃しの流局で最後の親番を失うことは避けたいです。鳴き仕掛けをしていた瑞原プロらがすでに聴牌していて、先にあがられてしまう恐れもありました。
この場面では6筒をチーし、聴牌に取るのがベストの選択ではないでしょうか。6萬が危険とみるのならば8萬を切り、カンチャンの7萬待ちに取れます。
8萬のほうが危険とみるのならば6萬を切り、8萬と2索のシャンポン待ちに取れます。
たろうプロは試合後、YouTubeの配信で瑠美プロの聴牌取らずについて「普通ではないけど面白い選択」と話していました。
たろうプロによると、3筒・6筒が出やすい場況だったので、この手であがるには6筒のチーを見送り、先に萬子か索子を面子にし、3筒・6筒待ちの聴牌にしたくなるのは分かるとのことです。また、切られた牌が三色で安目となる6筒だったことも瑠美プロの判断に影響したのではないかととらえていました。
一方で、捨て牌が3列目になっていたことを取り上げ、「冷静に考えれば鳴きかもしれない。損得を考えれば鳴いたほうが得」とも述べており、たろうプロが瑠美プロの立場だったらチーテンしていたと思います。
もっと早い巡目だったらチーテンの見送りはありだったかもしれません。
瑠美プロはチーテンの見送り後に聴牌できず、親番を失いました。結局4位で対局を終えました。
瑠美プロが6筒をチーしなかったとき、聴牌を取らなかったことについて解説の藤崎プロは一言も発しませんでした。
藤崎プロは瑠美プロが「456」の形で5萬を鳴いたほうが良いと考えていたようで、その説明ばかり力が入っていて、たろうプロから6筒が切られたときに何の反応もありませんでした。
試合後のインタビューで瑠美プロに聞いてもらえるのではないかと楽しみにしていましたが、「456」と「345」の話に終始し、なぜ聴牌を取らなかったかについての問いはありませんでした。
瑠美プロが6筒をチーしなかった瞬間、多くの視聴者は「なぜ」と思ったはずです。その意図を読み取り、伝えるのが解説の役割です。
対局中なのでたろうプロの配信のような詳しい説明はできないのはもちろん承知しています。瑠美プロがチーしなかった理由について、短くても良かったので藤崎プロなりの考えをきちんと示してほしかったです。
まして、チーテンしなかったこと自体に藤崎プロから何も言葉がなかったのはがっかりです。チーテンできたことを見逃し、気づかないままだったと想像します。豊富な知識と経験を持つ「麻雀忍者」はどこへ行ってしまったのでしょうか。
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