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【ネット歯科大】口腔内写真の活用

 歯科治療において、患者さんの口の中の写真を撮ることがあります。口腔内写真といい、その用途は多岐にわたります。今回は、口腔内写真の活用法について触れていきます。
 
 口腔内写真を撮る目的の第一に、経時的に変化する口の中の状況を記録しておくという意味があります。
 
 歯の治療をダイナミックに行うような場合、最初のかみ合わせの位置とは異なる位置で新しいかみ合わせを作ることがあります。歯を削ったりかぶせものを入れたりしていくと、当然、かみ合わせの状態が変わります。
 
 そこで、変わる前や、治療途中の区切りとなる場面において写真で記録しておくことは、治療においてたいへん有用です。たとえ小さな詰め物であったとしても、変えてしまってからだと元の状態をなかなかイメージできません。
 
 また、歯を削ったりしないケースでも、矯正治療など歯を積極的に動かしたりする場合は、やはり治療前の記録が不可欠です。口腔内だけでなく、顔の正面や側面の写真を撮って記録しておくことも大切になります。
 
 さらに、歯周病の治療においても、意外と変化があります。歯石の除去を進めることで歯の表面がどれだけきれいになったかだけでなく、写真で比べると歯ぐきの様子もけっこう変わっていることがよくわかります。
 
 歯科治療にともなって歯が動いてくることもしばしばあるので、写真で記録を取っておくことにより、予想していなかった変化にも気づけて、対応できるようになります。
 
 逆に、写真がなかった場合、患者さんご本人も歯科医療者も、印象だけで話をすることになる危険性があります。そうすると、話がかみ合わなかったり、変化に気づけなかったりすることから、トラブルにつながりかねません。
 
 口腔内写真を撮る主なタイミングは、初診時や、治療がある程度進んだ区切りにおいてです。それ以外にも、手術中の記録としてや、複数の歯にわたるかぶせものを入れる前後での状態を評価したりするために写真を撮っておくことがあります。
 
 これらは治療に必要なための写真撮影ですが、それに加えて学会や研究会での発表のために口腔内写真を撮ることもあります
 
 歯科医学の発展のためには、学会などでの症例検討は欠かせません。めずらしい症例だけでなく、通常の病態であっても新しいアプローチをして効果が大きかった場合など、発表が有用であるようなケースは意外と多くあります。
 
 特に治療効果に関して、結果的に大きな改善が得られた場合のことを考えると、できるだけ多くのケースにおいて術前写真を撮っておくことが重要になります。実際に、術前の口腔内写真がないために発表を断念せざるを得ない、などという悲しい経験もあります。
 
 学会などで症例写真を使用させていただく場合、個人が特定されないように配慮することはもちろん、使用に際して患者さんに同意を取ってから使用することがルールとして決められています。もし使用してほしくない場合は、写真使用に同意しないという意思を示していただくことに、なんの問題もありません。
 
 このように、歯科治療において、口腔内写真による記録はたいへん意義のあるものです。写真の活用法についてご理解いただければ幸いです。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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