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【ネット歯科大】唾液検査でわかること

 口に関する検査のひとつに、唾液を用いた検査があります。
 
 唾液検査は、まだすべての歯科医院で取り入れられているほど普及しているものではありません。しかし、多くの研究結果から、唾液を使っていろいろな情報が得られると期待されています。
 
 今回は、唾液検査でどういうことがわかるのかについて紹介していきます。
 
 まず、唾液検査からむし歯に関連する情報が得られます。
 
 むし歯の原因は細菌が作り出す酸です。酸に対して中和する唾液の力を緩衝能といいます。したがって、唾液中のむし歯菌の量や酸性度、唾液の緩衝能を計測することで、むし歯に対するリスクの評価につながります。
 
 たとえば、むし歯菌が多い人は歯みがきのやり方に気をつけるとか、唾液の緩衝能が低い人は日ごろからよくうがいをする、などの対策が考えられます。なお、緩衝能など唾液の力を最大限に利用するためにも、よくかむことが大切です。
 
 また、唾液検査から歯周病に関することもわかります。
 
 歯周病の状態では、歯ぐきが腫れて血が出やすくなっています。この状態を炎症といいます。
 
 そこで、唾液中の炎症に関連する因子を調べることで、歯周病に対するリスク判定につなげることができます。
 
 まだ研究レベルのものが多いですが、そのほかにも唾液の性状と全身の状態との関連を示すような報告も挙がっています。今後の研究の成果から、唾液検査によって要注意となる全身の病気がわかるようになれば、さらに普及することが想定されます。
 
 さて、唾液で検査をすることには大きな利点があります。
 
 それは、唾液はサンプルとして非常に取りやすいものだということです。
 
 検査のサンプルとしてまず思い浮かぶものは、血液でしょう。血液検査は重要な検査であり、医療において広く用いられているものです。しかし、血液を採取するためには基本的に生体に針を刺す必要があります。これがイヤで、血液検査は苦手だという方は少なくないのではないでしょうか。
 
 唾液を取るためには、採血のように針を刺したりする必要はありません。口の中にたまっていく唾液を出すだけですから、痛みはまったくありません。
 
 また、尿検査や便の検査もサンプル採取において針を刺すなどの必要はありませんが、唾液の採取と比べると、明らかに唾液を取る方が簡単です。
 
 一方、唾液を用いる検査には課題もあります
 
 まず、唾液の性状はいろいろな要素によって影響を受けやすいということがあります。
 
 たとえば時間帯や食事の摂取などによって、唾液の性質が変わってきます。したがって、研究などでは採取する時間帯を定めたり、食事の制限をしてもらったりする場合があります。
 
 また、唾液が出にくい方がいることも課題のひとつです。飲んでいる薬の影響で唾液が出にくくなるといったようなケースが想定されます。
 
 唾液を使った検査は、これらのデメリットを克服することによって、今後さらに広がっていく可能性があります。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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