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【ネット歯科大】型取りと模型

 歯科では、歯の模型をよく使います。模型を作るためには、型取りをする必要があります。今回は型取りと模型の関係について触れていきます。
 
 模型を作るために行う型取りですが、専門的には印象採得(いんしょうさいとく)といいます。印象のための材料には、適度な流動性と、固まったあとの安定性が求められます
 
 印象は、金属製の部品を作製するときの鋳型にあたります。歯の型取りをする場合、ちょうど歯の形のくぼみがある印象を得られることが適切です。その型取りした印象に対して、石膏などのしっかり固まるものを流し込んで固めることで、歯の模型が完成します。
 
 歯の模型の用途はさまざまです。
 
 歯につめものやかぶせものを入れる場合には、削ったところを特に精密に表現した模型が必要です。
 
 入れ歯を作る場合も、模型を使用します。
 
 特に入れ歯の材料が触れる部分は精密さが求められるのですが、それだけでは十分とはいえません。入れ歯を使用する際に入れ歯が沈みこむことによって粘膜はわずかに圧迫されますので、あえて粘膜の圧迫状態を表現するように型取りをすることがあります
 
 それ以外にも、歯や口の状態を記録しておくために模型を使用することがあります。たとえば矯正治療では、歯を動かしていきます。元の状態の記録が大切になるので、模型を取っておく必要があります。
 
 大きなかぶせものを作るような場合においても、かみ合わせを含めて大幅な歯の形態の変化がありますので、術前の記録として模型は有効です。
 
 さて、印象用の材料には、粘土のような材料が用いられてきました。最初は流れがあり、次第に固まるという性質であることが条件です。海藻類に多く含まれるアルギン酸という多糖類や、寒天、シリコーンゴムなどが使用されます。
 
 現在では光学印象といって、口腔内をスキャンすることによりデータとして型取りができるようになってきました。この場合、すぐに模型のような歯の像ができ上がりますので、型取りという表現も適切ではないかもしれません。
 
 すべてのケースで光学印象ができるわけではありませんが、たとえば型取りの材料によって嘔吐反射が出てしまうような患者さんには特に効果的でしょう。
 
 デジタルデータで記録をすることによって、不快感の軽減や時間の短縮、廃棄物の減少、データ移送の簡略化、精度の向上などの利点が期待されています。
 
 現在でも歯科では型取りと模型の作製が多く行われていますが、光学印象がさらに普及すると、近い将来、ものとしての模型の必要性がかわっているかもしれません。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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