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【ネット歯科大】顎関節の動き方

 口を開け閉めするとき、上下の顎をつなぐ関節である顎関節(がくかんせつ)は巧妙に機能しています。今回はその顎関節の動き方について触れてみます。
 
 まず、顎関節とは、下顎の骨と頭蓋骨(とうがいこつ)の一部である上顎の骨(正確には側頭骨という名前の骨です)との接合部分のことです。ちなみに、頭蓋骨はいくつかの頭の骨が組み合わさってできた構造となっています。
 
 顎関節は左右2か所にあります
 
 骨と骨とは関節で接続しますが、基本的にひとつの骨と別の骨とが作り出す関節は、1点でつながっています。これは、全身の関節で同様です。
 
 しかし、顎関節だけは左右の2点で接合しています。これは人体の中でも特殊な構造です。このため、左右の不調和があると、顎関節症など痛みをともなったトラブルが生じる可能性があります。
 
 さて、口を開ける際には顎関節にも動きが生じます。その動きは、2種類のものに分けることができます。
 
 ひとつは、単純な回転運動です。
 
 これは左右の顎関節を結んだ線を想定して、その線を軸とし、下顎がその軸を中心にして回転運動しています。
 
 下顎骨の最上方部である関節側の先端は下顎頭といわれ、左右両方にあります。下顎頭は1-2㎝程度の丸い構造です。回転運動をする際、正確には左右の下顎頭を結んだ線を中心軸として、下顎骨が動きます。下顎が下に回転することで、口を開けることになります。
 
 また、もうひとつの動きとして、下顎頭が顎関節において前方にスライドする動きがあります。
 
 下顎頭は、関節として向かい合っている上側の頭蓋骨の一部分をレールのように使い、前方へスライドするように動くこともできます。
 
 このように、顎関節は2つの動き方を駆使して、上手に口の開閉運動を行っています
 
 基本的に、小さく口を開けるときは回転運動のみが起こり、大きく口を開けるときは回転運動に加えてスライドの運動も起こります。
 
 顎関節は、左右の耳の穴から2-3㎝前方にあります。ためしにいろいろな大きさに口を開けてみると、それぞれの運動を実感できるのではないでしょうか。
 
 なお、顎関節にトラブルが生じた顎関節症では、これらの動きを担う部分のどこかに問題がある可能性があり、問題の箇所によって複数のタイプに区分されています。
 
 口を開けるための筋肉を開口筋(かいこうきん)といい、4種類の筋肉があります。骨や筋肉を中心として、関節を形成する軟骨などの多くの部分が支えることにより、顎関節の運動が成り立っています。
 
 普段なにげなく行っている口を開けるという運動も、このように考えてみると非常にうまく調和したものと感じることができます。あらためて、生体とはよくできたものです。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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